THE LAST STORY>Four-leaf clover< ⑨ー2
THE LAST STORY>Four-leaf clover<
求めてる事を必死に伝えてくる人って哀れに見えない?
大声で叫んだって手に入るわけじゃないのにね。
声に出して音で伝えようとしている内は伝わらない。本当に欲しいものは相手に感じさせるんだよ。
だけどな何回も夢見ては現実突きつけられてを繰り返してきたから当たり前に夢見てるふりしかできなくなったよね。
みんな毎日平気な顔して生きてるように見えるから、他人の気持ちなんて分かるわけないんだ。
When this war is over, I pray that only happy memories in Fukuoka will remain in your heart and my name and existence will be erased from your memory. Good bye.. And... Thank you very much
『この戦争が終わったらお二人の幸せの中から俺の名前を抜いてください【※中略】お二人の心に福岡で過ごした幸せな記憶だけが残りますように願います
さようなら ありがとう』
こんな言葉を二十歳そこそこの人間に言わせる戦争の悲劇
第9話 It all for you その②
第15中隊が霧島方面に転出する日の前日
第15中隊の隊長補佐の佐脇和馬は水澤の見舞いに医務室に来ていた
『存外、元気そうで何よりだな〝戦傷病〟になってなくて良かっぜ』
※戦傷病 いわゆるPTSD的なモノ
『これまで、まるでボロボロの布切れのようにバラバラな遺骸を沢山みて来た
そして俺自身もまたボロボロになった
だけれどボロ布でも雑巾ぐらいの役にぐらい立つはずだとも思う
だいたい戦傷病なんざになってる暇なんざねぇだろ』
『そりゃまあな...仮に聞くが、お前は誰が敵なら戦えるんだ?』
『唐突過ぎだろ!でもまあ、仮に答えるなら俺は出来ることなら誰を敵としても戦いたくない
個人的な恨みがあるわけじゃない相手でも戦わなくてはならないのかよ...と
ずいぶん昔の俺なら言ったかもな』
『なら、今は違うということだな?』
『立ち向かう相手は"敵じゃなく自分自身"
自分の弱さに討ち勝てば道は開ける俺はそう信じている』
二人のやり取りを聞いていた里山星看護官は言う
『弱くたって良いじゃないですか、弱いってことは"それだけ優しい"ってことですから
強くなくても良いし、弱くても良いと私は思います』
『弱い=優しいか...そんな風に捉えたことも考えたこともなかったなぁ 』
『んなモンは人それぞれだろ?
だけどな、立ち向かう勇気のないヤツは今という時には"死ぬ"ぜ...』
『結果、四の五の理屈はいらねぇんだよ!覚悟は出来てんだからな俺もお前も』
ーーーー
生きてるからこその命だろ?ごみくずみたいにさ殺られてたまるかよ!
どいつもこいつも面倒くせえ連中だ...そんなに生きたいのか?
生きたいに決まってんだろ!
だったら勝手に生きてろ!だいたいお前らの生き死になんざ俺には興味なんざねぇんだからよ
勝ったヤツが強いんじゃねぇ最後まで諦めずに生き残ったヤツが強いんだぞ本当の意味で
硝煙の先に何が見える
ほんとのとこ希望か?絶望か?なんてな、自身の捉え方次第さ
幸せも不幸も..
だから...お前ら絶対に死ぬなよ
約束もない保証すらない
今ある当たり前な日常が ずっと続くと思ってた
だけどね
当たり前な日常や日々が突然に変わる時
いままでの日常や日々の有り難みを知り
当たり前なことを忘れてたことに気付く
生きてるんじゃなく
生かされてるんだ俺らは。
――水澤の作戦――
15中隊転出より遡ること1週間前
西野詩音が執務室代わりにしている校長室にて水澤は西野詩音と次官の月島零
そして15中隊長 梶原亮太郎、副長 西野忠道※詩音と忠道は叔父と姪の関係※
隊長補佐 佐脇和馬 副長補佐 藤井一弥 通称:ふじかず※隊長以下を含め親愛を込めてそう呼ばれている
彼らに、とあるオペレーションについて水澤から説明を受ける為に集まっていた。
『まず、兵法
整然と統率され規律の取れた軍隊は士気が高いため攻撃を加えてはいけない
そして孫子十三篇「軍争篇」
名将は敵に鋭気がある時を避け、敵に惰気を見たら攻めるものである
整然と進軍してくる敵や堂々とした陣を正面から相手に戦ってはならない
現状、幸か不幸か遅延し延伸した戦況と補給路
敵軍を此処、九州及び日本国から追い出す為に敵の
弱点を突けば良い
その敵の弱点は補給にある。
敵は南に進めば進むほど輸送線が伸び、それだけ危険も増大する。
敵の主要補給線は、いずれもいったん博多に集まり、博多から大宰府に運ばれ戦線のあちこちに伸びているから、本来なら物質補給基地の大宰府をおさえれば、敵の補給網を行きも帰りも完全に麻痺させることができる。
弾薬と食料の補給がとまれば、敵はたちまち手も足も出なくなって混乱し、我が方の小さくとも補給充分な兵力で簡単に圧倒することができると考えている。
そして俺はこの作戦の成功については、俺はこれを確信している
大宰府奪還を成功したあと博多を攻め、敵軍は補給が完全に止まったところへ我々の軍から
あちこち挟み撃ちにあい、退却の道も断たれて総崩れの状態となり半島へ逃げ帰るより他ならないだろう
もちろん白旗を上げ投降する敵も出ると予測している
つまりは、この作戦をやれる度量と覚悟が軍にあるか無しかを俺は聞いている
あるのであれば、岡村田とやらの戯言に乗って民兵を組織し霧島にて期を伺うと良い
わざとらしく負けたふりを続けながら期を待ち
敵が完全に油断したところを徹底的に叩きオペレーション レッドストームの第一段階の九州奪還は果たされるだろう
もし、俺達がこのオペレーションを失敗した場合、もしくは霧島から撤退し枕崎まで追い詰められ..降伏を余儀なくされた場合
金雲日は大陸の宗主国の大将の習金衛に沖縄を譲渡するだろう
習金衛が沖縄を得れば台北侵攻は楽なモノとなるだろう
北韓の経戦能力の源は中露の援助があればこそ
北韓が南韓のみならず、この日本に九州にまで来て戦い続けている根元と意味はそこにある
この地が敵に陥落され征服されることの意味も理由も其処にある
大邱進軍の敗退、邦人奪還作戦から中京への核攻撃
北韓は核を使い日本国の一億人の人質をとっている状況下で優位に戦いを続けて来たが
このオペレーションを断固遂行し勝利を得れば俺達の国は民族は解放される訳でもない
北を徹底的に叩き潰さなければならない
そして核の恫喝に屈し敗北し子供や孫の代に同じ惨禍を余儀なくされることは避けなければならない
例え何億人でも人質取られようと戦い続け勝利することでしか俺達は生き残れない
だからこそ問う『軍にソレをやれる度量と力は在るのか』と
水澤の熱弁に静まりかえった部屋の沈黙を破って佐脇は笑いだす
『とんだ策士が居たもんだな、なぁ?ふじかずサンもそう思うだろ?』
『敵に回したら大変だろうな』と言い笑う
『気に入ったゼ!梶さん【※梶原隊長のこと】やろうじゃねぇか!このオペレーションレッドストームとやらを』
『副長は?どう思う?』
『西野秘書官殿に一任致します。』
『叔父さまは私に責任を負わせたいわけね』と言って詩音は笑い
『私の全てを水澤くん、貴方に賭けるわ』
『賭けか?勝負事となっては負けるわけにはいけませんねぇ隊長殿』
藤井一弥は悪戯っぽく言い
『この勝負..必ず勝って見せねば我々は末代まで国民を守れなかった賊民と罵られるだろう』
『では、勝負に乗るってことで良いか梶さん』
『ああ、水澤くんを信じよう』
『全てを貴方に賭けても、全てを貴方に背負わせたりはしないわ
私は参謀総長の第一秘書官として自身の下した決断の責任は負うわ』
『責任と責務は似てるようで違うものだ..先任の総長のような真似だけはしないことを約束して欲しい』
『生きることが敵に背を向けない唯一の責務で生き抜くことが責任を全うすることだと言いたいのね
わかっているわ..私は貴方を裏切らないから心配しないで..』
『強いヤツが勝つんじゃねぇんだからよ 〝生き残ったヤツが勝つ〟んだ!』
『そうさ、生き抜くことでしか我々は全てを守れぬ』
『先ずは、山口参謀総長に代わり
わたくし西野詩音が命令を下します!
オペレーションレッドストームを必ず完遂すること
そして、生き抜くことを命じます!』
この翌日に西野詩音は此処の守りの為に不本意ながら民間人を軍人として組織することを決意
そして、自身の全てを水澤に託し..いや、自身の全てを水澤に賭けてオペレーション レッドストームの完遂に奔走して行くのである
ーーーー
15中隊が西野らと霧島方面に転出して1週間
榊や川中達が臨時応集で軍兵となった連中を日夜訓練し続けている
その姿を水澤は見ていた
このにわか仕込みの兵隊じゃ此処を守ることも不可能だろうと思っていた
守るべき時は絶対に守るという気概のないヤツら
そんなんじゃ守るべき相手すら守れず死ぬだろ
コイツらもアイツらも...
この国の人間は、ぶん殴られないと目を覚まさない
いや、例えぶん殴られたとしても目を覚まさねぇか
今のコイツら見てたら、そう思ってしまう
まったくだらしねぇ...。
時局を読み違え適切な判断と行動が出来ないのは〝未だに奴らは自分には関係ない〟そう思っているからだ
始まりは終わりの始まりであり終わりもまた次への始まりの事象である
生まれた時代を選べない俺達が何故?〝今という時に出逢い〟そして、近くても遠く離れいても〝同じ時間を生きている〟
それを関係ねぇって言うのならば
その言葉を口にした者は..はたして存在しているのだろうか?
存在しているからこそ関係ねぇだの言い無関心を装い生きている
なぁ?あんたらに解るかい?
結局 "一番大事なのは自分"
自分にとって大切で大事だから失いたくない
そんな "独りよがり" で "単純" で "醜くも愛おしい感情" を抱いた人間達
"どれが本当に正しい選択なのか『保証』なんざ ひとつもない..."
今この時を悔やみたくない
出逢ったことも、堕ちてゆく現実も "受け入れて" 抱き抱えて "あの太陽のように沈もう"
いつかまた訪れるであろう "未来" を夢見て...。
教えてやるよ平等という言葉の意味をその存在を
〝死〟だけが誰にだって平等に背負っているモノ
THE LAST STORY>Four-leaf clover<
第9話 It all for you その③ へ つづく。
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