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THE LAST STORY >Moon crisis< 赤坂 安莉 Anri Akasaka Story ⑦

挿絵(By みてみん)


今を生きていくことだって立派な夢

明日を生きれなかった人の

生きていれば恩返しできる

やり直せる励ませる

感謝できる

笑顔になれる

いつか希望を持って

まだ生きたいと思える


自分に出来ることがみつかる


祈ることができる想うことができる


どんなささいなことでも行動することができる

出来ること出来ることでいっぱい


今日を生きたかったあの人の大切な夢夢の続きを一生懸命生きる


しあわせも後悔も、全部自分が決めること。


自分自身がしあわせだなぁって思えればそれでいいし、自分が後悔していなかったらそれでいいんだよ。


人と比べることじゃない。


自分の人生なんだから。


進むために

何かを終わらせるのは辛いけど

いつか思い返した時に正しい答えだったと

感じられればいい。


そう思えるように

毎日を精一杯生きていこう。


そうする事でしか

示す事が出来ないんだ

きっと...







THE LAST STORY >Moon crisis< 赤坂 安莉 Anri Akasaka Story


第七話 Tragic Heroes


川中と榊は駆け寄り水澤の名を何度も何度も呼ぶ


"ふざけんなよ...なんでアンタだけがこんな目にあわなけりゃなんねぇんだよ..."


水澤を背負って川中は管理棟に向かう

黙ったままその姿を伊藤は見送り捜索終了を無線で伝え自身も管理棟へ向かう




菅野の話を聞いていた佐脇は三崎軍医らの所に行き防御人員減を気にもせずキャンプ場へ再び負傷者を運ぶ


医療班の到着まで少しまた時間がかかるが多少なり救護用の物品は携行しているので多少の助けにはなるだろうと思い

三崎の指示に従い救護にあたる



川中達が水澤を見つけた頃ぐらいに三崎は管理棟付近まで戻って来ていた


そして

管理棟の入り口で川中の姿とその背中に持たれかかる水澤の姿を見た三崎は川中に状態を問うが川中は黙ったまま三崎に


ただ一言


『医者なら助けろ!』


そう怒鳴って水澤を床に下ろす



水澤の状態を見て三崎は一瞬だけ川中に目をやり

中に運べと言う


川中は頷き水澤を抱え中へ入って行く

佐脇は水澤の状態を見てそいつは外だなと言ったが


三崎は無視して水澤の状態を再度確認し川中にカーテンの切れ端とガーゼを渡し

お腹の傷を押さえておけと言う

それを見た佐脇は無駄なことに時間をかけるよりやるべきことは他にあると言う


『状況がそれを許さない状態じゃない今は..諦めたくないんだ!』


三崎はそう言うと、川中が指示通り傷口を押さえてることを確認し心肺蘇生法を開始する

無茶なことをするなと思って言いかけたが三崎の表情を見て佐脇は黙って別な負傷者の手当ての手伝いに行く


三崎が心臓マッサージをする度にガーゼが血を含み ついには飛び出し川中の顔にかかり川中の手の圧が下がる


しっかり押さえて!三崎は怒鳴る


わかったと言う風に川中は頷き傷口を圧迫しなるべく出血しないようにはするが

さすがに止血しきれるような傷じゃない


それでも必死で押さえ水澤が息を吹き返すことだけを祈っていた


その手の甲に他の誰かの手が重なる

榊も足をひきづりながらも管理棟内に来ていた


そして、さらに強く手と手が重なる

その手の持ち主は同期生の黒木と森村だった


三崎は一心不乱に人工呼吸と心臓マッサージを繰り返す

そうこうしている間に15中隊の医療班が到着し負傷者を見て回る

15医療班の軍医師長付け医務官(看護官)里山(さとやま) (きらり)が三崎軍医を見て首をかしげ佐脇に聞く

軍医殿は何をしているので?

佐脇はさぁ?というジェスチャーして言う

状況がどうとかで必死なのさと少し笑って言っているのを榊は何も知らんくせに...へらへらするなと言い佐脇を睨む

睨む顔に見覚えがあるなぁと佐脇は思い以前どこかで会ったか?と榊に聞く


脊振山陣地であったかも知れねぇなあ

けどよ、今はそんなこと関係ねぇだろ!手伝う気がねぇなら出て行け!



榊の怒鳴り声を聞きつけ赤坂安莉が中に入って来て水澤の姿を見つけ


『水澤さん!』と名前を呼び


佐脇を押し退け水澤の傍に寄り水澤の痛々しい程の姿に涙を流す


泣いてる暇あるなら手伝ってと三崎は言う


安莉は静かに頷き傷口を押さえる川中達の手の上に自身の手を置き押さえる

安莉の後を追いかけて来ていた森下まりあも加わる


『一分でも一秒でも長く息をしてないと困る連中が此所に居るんだ...アナタは自分の価値をもっと自覚しなさい..死ぬんじゃない!帰ってきて!戻ってきて!』

三崎軍医は涙声になりながら言う



"神様お願い..彼を..水澤さんを助けてください.."と

私は傷口を圧迫し続けながら祈り続けていた



















ゲホッ!ガハッ!ゴホッ!ゲホッ!




ゲホッ!ゲホッ!




ぶくぶくと血の泡を口からあげる


三崎はすぐさまその血を自身の口で吸出し血で気道がふさがれないように吸出しは吐き吸出しては吐き



すると看護官の里山が三崎に代わって血を吸出すから水澤の怪我の治療をと促す


里山が気道の確保を行い三崎が怪我の治療を行う姿を見つけた稲葉軍医が入ってくる


続けて西野秘書官も入って来て


水澤の姿に目蓋を熱くする思いを必死に堪えながら治療の手伝いに加わる







━━━━━━




佐脇達に偵察を命じに偶然に偶然とは言え

西野秘書官と菅野以下兵員と民間人を収用することになったが

民間人らの行き先をどうするべきか?

第15中隊隊長 梶原大尉と参謀次官の月島は思案していた

梶原中隊は直に霧島方面に展開し敵を食い止める役割を担うことになっている


現状、どこもかしこも敵の脅威にさらされることには変わりはない

指揮所にしている小学校を宛がうしかないが

その後の防衛に割ける人員も余力も中隊にはなく

他の部隊も余力は残っていない



キャンプ場に居る佐脇達に梶原は撤収を命じ菅野や民間人連れて戻らせ


菅野以下兵員は、一旦15中隊の補充要員とし15中隊が霧島方面へ出陣した後の此所の防衛にあたることの任務を勤める者が必然的に必要となっていた。



霧島防衛陣地の指揮権は作戦部長の岡村田中将にあった

岡村田は臨時の応集と言う名の事実上の兵役召集を行うように参謀総長第1秘書官の西野詩音に迫るが西野は『国法に逆らうことは出来ない』と、これを拒否し

15中隊共々、民間人もこの地に留め置く方針を取った


これに対し、岡村田中将はこの後も再三に渡り西野秘書官に命を下すことになる




━━━━━







私達民間人と負傷兵ら共に水澤さんも指揮所になっている小学校に移動となり

臨時の医療室に運ばれ三崎軍医達の集中的治療が行われている

学校だから病院ってわけではないけれど

一応の医療器具や薬は揃えられている


此処でなら、助けられる


三崎軍医はそう言っていました。


━━━━━



それから幾日過ぎたでしょうか?


水澤さんはキャンプ場で息は吹き返しましたけれど

でも未だ目を覚まさないまま深く眠っていて


私達は窓越しにしか姿を見れないもどかしさを感じながらも


私もまりあちゃんも水澤さんが生きて在ることに安堵もしていました。



━━━━



榊さんと川中さんはキャンプ場で再会した同期生の黒木さん達と共に指揮所(校内)警備の任を西野秘書官に命じられ任務についてらっしゃいました。




西野秘書官は再会した参謀次官の月島次官と中隊長の梶原隊長や隊長補佐の佐脇らに決して『私の意に逆らって民間人の臨時の兵役召集をしないこと』と厳命を下し


決して奴(岡村田)の良いようにはさせない

私達参謀部こそが全権指揮をとるべき存在だと言って


それは、前任の参謀総長の佐藤中将の遺訓であり遺言でもあるからだと言っていました。



民間人の中でキャンプ場での戦いを経験し下手をしたら死亡していたかも知れないという理由から水澤の扱いについては西野秘書官が自身の管轄下におき

稲葉、三崎両軍医と里山看護官に水澤の治療の一切を預けてらっしゃいました。








━━━━━━



小学校に移ってから

水澤さんの状態は悪くはならないけれど良くもなっていない様子で覚醒と深淵を繰り返しているみたいで


私とまりあちゃんは毎日のように里山(さとやま) (きらり)看護官の手伝いを口実に水澤の様子を見ていた

包帯を取り替えたりシーツを新しいものに替えたり

時に手をとり、時に話かけたり

そんな姿をまるで彼女か奥さんのようだなと三崎軍医や稲葉軍医にからかわれたりもしながら

水澤さんの本当の意味での意識の回復を祈り続けながら

私もまりあちゃんも心の中では、どんな形であれ生きてくれてる

その事実だって私達には幸せなことだとも思っていましたが


だけれどそうも言ってられない状況が水澤さんを含め訓練兵の彼らを待ち受けていた


かくも残酷な運命を時代は与え彼らを支配していく


私とまりあちゃんの未来に待ち受けるモノ


水澤さんと訓練兵の榊さんや川中さん達の運命...


そして...死してもなお在り続ける人の想い...


硝煙の向こうに消え逝く軌跡は彼らを救えるのでしょうか?




終わりという名の始まりに向かう軌道列車は、ただ無言で終着駅へと走り続ける


こんな時代という哀しみの風を切り裂いて突き進む



それぞれの明日(未来)に向かって...。



THE LAST STORY >Moon crisis< 赤坂 安莉 Anri Akasaka Story


第八話 What does it mean to love a dirty world ? へと


━ つづく ━


※この物語はフィクションです。登場する人物や団体は架空のモノです。

実在する人物、団体とは何ら関係ありません。



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[一言] 一分でも一秒でも長く息をしてないと困る連中が此所に居るんだ...アナタは自分の価値をもっと自覚しなさい..死ぬんじゃない!帰ってきて!戻ってきて! ぐっとくる言葉ですねಠ﹏ಠ どんどんと見…
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