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THE LAST STORY > The front line <

挿絵(By みてみん)


インスタ限定版の転載です


ーーーーーー



THE LAST STORY

> The front line <


Yoji Kawanaka & Junya Sakaki


スゥゥゥーン!と空気を切り裂く音と耳を覆いたくなるような爆発音と轟音に敵味方の入り乱れた銃声や怒号、罵声、悲鳴


俺達は卒業を待たずして脊振山防御陣地に送られ戦いの只中に居た。


"Battle of Sefuriyama Base"


山の麓から山頂にかけて幾重にも掘り進められた塹壕しかない

この山で俺達はこの世の地獄を見た


俺は敵兵にマンウントをとられ覆い被されて身動きが取れなくなって必死で仲間の名前を叫ぶ


「淳也!淳也!助けてくれ!淳也!!」


その口を塞ごうと敵兵は俺の首を締め上げようとして来る


ガウン!


一発の銃声の後、敵兵は身を横に倒して自身の脇腹当たりを押さえ苦しむ


「川中!!大丈夫か?」


声の主は俺の腕を引き上げて顔を覗き込む


相変わらず目付きの悪いというか鋭い眼光の榊が俺の全身を見るような視線をした後


「陽二?イケメン顔が台無しだぜ」と笑う


「うるせぇ..」


助けてやったってのに、その言い種かよみたいな顔を榊はして

俺の腕を引き上げていた手を離す


周りを見渡すと、其処らかしこに敵味方の亡骸と怪我を負い叫ぶ兵隊

見るも無惨な状態で話したくない程の惨状が広がっている


「陽二、本隊は山頂へと逃げちまってる

俺達も早いとこ逃げようゼ」


目の前の惨状に俺は少し..いや、だいぶ腰が引けていたし、軽々しく志願なんざしたことを後悔していた


最初は、さっさと開業出来るまとまった金が欲しかった


だけど、今は命が惜しい


こんな戦争はすぐに終わると思っていたし、ちょろと実戦参加して危険手当てをいただいてバックレるつもりだった


そんな甘い考えを、この戦場は命もろとも吹き飛ばしていく


「イケメン?さっさと行くぞ!」


榊は俺にそう言って敵味方関係なく横たわる亡骸を踏みながら山を登って行く


俺も同じように踏み分け登る


背中に誰かの助けを求める声を無視して

爆発音で聞こえないふりをしながら


脊振山防御陣地という地獄の山を登った


中腹あたりにさしかかる頃


視界には、ほんの数日前まで緑が覆い繁り季節柄、少し紅葉を始めていたはずの景色は

すっかり変わり果ててしまっていた


木々は倒れ、山の地肌が剥き出しになり燃えていた。


「此処もかよ。」淳也はそう吐き捨て、はぁ~っため息をし「陽二、こりゃダメかも知れねぇ...。」


「ダメ?」


「たぶん敵に制圧されてんじゃね?」


「けど、まだ銃声もするし敵のだけど、砲撃も続いてんじゃねぇかよ?

まだ味方が居る証拠だろ?」


「ば~か、俺が言ってんのは、此処から上に進むのが無理ってこった」


眼前にも背後にも敵に囲まれて居る


そう淳也は言いたいのだろうぐらいは俺にもわかった


逃げ場ない地獄


それが、あの山の実態


軍は訓練兵の俺達を捨て駒という弾除けの盾にしていたのかも知れない


事実、あの山での戦いで俺達と同じ訓練兵は正規の軍人より多くの命を失っていた


「日が暮れを待って行動するしかねぇかもな...とりあえず身を隠せる場所を探そうぜ淳也」


「そうだな...」


身を隠せる場所...そんな場所はなかった


訓練の一環としてという名目で掘らされた塹壕は砲爆撃で姿を消し

あの努力すら無駄だったことを思い知らされた


それからどうやって菅野教官に拾われたかなんざ覚えちゃいねぇ


それくらい俺達は生きることに必死だった


生きるということの意味も重要性も、そん時に知ったさ


軽々しく死にてぇなんざ言うなよ

その命は誰からもらったモンか?よく考えろよ?


俺達は生きること、そして生き残ることに全てを賭けていた


そう、あの人に出逢うまでは...


あの人は誰かの為に生きてるくせに

自分の為だけに生きていると言う


違げぇだろ?


あんたにゃ自分の命より大切な "あの娘達" が居る


俺も榊も、その背中を追いかけた。


いつか追い付いて追い抜いてやる!


勝負事となりゃ負けるわけにはいかねぇだろ?


なあ、陽二。


違げぇねぇわ。


俺達は生きたさ、あの地獄をな

生きたからこそ、今の俺達が在る


もう少しで咲くだろう桜の木の下で次の最前線に兵隊として立つ


あの人と一緒に。。。



THE LAST STORY

> The front line <


Yoji Kawanaka & Junya Sakaki


━ 終 ━

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