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星の導く未来を探して  作者: akiura
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001 ☆ 《聖剣テトラ》

初投稿です。


※投稿後に個人名と国名を直しました。

☆は空から降ってくる。



光輝く☆の導きは、いつでも空から降ってくる。



私は両手を空に掲げ、☆の導きをゆっくりと待つ。



「これでまた、君に近づいたね」



私は両手に包み込んだ☆を大切に抱えて微笑んだ。



あたり一面に広がる星空をも嫉妬させるような光輝く☆の導きは、きっと私をそこに誘ってくれるだろう。





ーーーーー






星の導きに選ばれし子らよ。


真なる星を見つけ、世界を導きなさい。




私が13の頃、眠りにつく前に受けた啓示のような声。


それが世界中のごく一部の子供たちに発せられていたと知るのはこのすぐ後のことだった。



《タウルス王国》の第一王子として生を受けて14年。

政治などの王子としての教育はもちろん、武芸や魔術も積極的に学んできた。

同年代の貴族子息をみても私は優秀な部類だと自覚している。


「アルデバランよ。行ってくれるな」


父であるエルナト王は正面の私を鋭い目でしっかりと見据えながら声を掛ける。

僅かではあるがどこか沈痛な面持ちのように感じるのは、自身の息子を死地になりかねない場所に送ることに対して思うところがあるのだろうか。


「おまかせください」


私は短くながらも自信を込めてしっかりと返答した。


「任せだぞ」


エルナト王はゆっくりとうなずく。


「失礼します」



謁見の間を後にし、自室でゆっくりと紅茶を嗜む。

先ほどの王とのやり取りはすでに決まっていたもので形式上の意味しか無い。

啓示を受けてその後世界の情勢が変わってから、この日に私があの地に向かわなければいけないことは決まっていた。


12の国の中心。

《終わりの地》


外周は深い森におおわれ、中心には雲をも超える山岳。

人類は当然未踏。

外周の森に足を踏み入れるだけで”普通の人”であれば意識を保つこともできない魔の森。

そんな場所に、私はこれから向かう。


だがその前に、厄介ごとは片づけておこう。



「誰だか知らないが、あまりにも無粋ではないか?」


「それは失礼。これからは正面からお邪魔してもよろしいかしら?」


「紅茶で良ければ歓迎しよう」


ベランダのドアから入ってきたのは真っ白なひらひらとしたワンピースの少女。

王城というこの場には似つかわしくない、シンプルな装いで、手には同じく真っ白な剣。


「あら、紅茶は好きよ。次があれば是非お願いしたいわ」


「次があれば、ね」


瞬間、私は椅子に立てかけていた聖剣テトラを素早く横一線に振るう。

真っ白で異質な少女を真っ二つに裂かんとする一線、いや”一閃”はベランダ側の壁すらも大きく引き裂く。

そんな必殺の一撃とも言えるような一閃を、まるで容易に、まるで軽やかに跳躍して交わす少女の様は、まるで遊んでいるかのような陽気さすら感じる。


「次は私の番ね」


キンッ


少女は手に持った真っ白な剣を縦横無尽に振りぬいた。

縦横無尽だが、その様はしかし一瞬。

高速で振られた剣のあたり一面を切り裂きつつ、私への一撃も忘れず放ってきた。

当然私への攻撃は受け止めたわけだが。


ゴゴッ


ゴゴゴゴッ



「これは、とんだ大掃除だな」



ゴゴゴゴゴゴゴッ






・・・






「全く。旅立ちの前に自室をキレイさっぱり無くされるとは。まあ、あと腐れなくてそれもよいかな」



自室のあった三の丸は完全に崩れ去りあたり一面は瓦礫の山。

砂埃もまだやむ気配がない。


「にしても、兵士の声も聞こえてこないとは。厄介な力が働いているということかな」


スッ


背後からの剣筋をとっさに右にかわす。

そのまま反時計回りに振り返り右手の聖剣テトラを横なぎに振る。


(かわされたか。)


手に切った感覚はなく、かわされたことが分かる。


(次は右か。)


キンッ


今度は剣と剣が交わる重い感覚。

そこからは高速の剣技の応酬。


少女は体格に似合わず、重く速く鋭い剣技を放つ。


(強いな。あの剣の持つ力だけではない。もう”星”を手に入れているのか?)


「ふっ」


聖剣テトラで地面を巻き上げることで消えかかっていた砂埃を再度巻き上げる。


(悪いが聖剣の力、使わせてもらう)


「聖剣テトラよ、星に願う、一時の煌めきを!」


ゴゥッ


薄い光がまとわりついた聖剣テトラを構えて砂埃の中でゆっくりと待つ。


次の瞬間を。


次の、少女が向かってくる瞬間を。





ーーーーー





幼いころから王になるための教育を受けてきた。

なんでもそつなくこなすことができたし、王子としての立場も嫌いじゃなかった。


6歳の時、隣国の第2王女であるアルヘナ王女と会った。

アルヘナは私の一つ下で5歳。

どうやら私の婚約者ということになるらしい。


可愛らしい顔立ちとブロンドの髪。

私としては特に不満もなく、時期が来ればそのまま結婚するのだろうと思っていた。


しかし、私が12歳の時だ。

王城に遊びに来ていたアルヘナはお茶会の席で突然倒れた。

毒、だと思う。

だと思うというのは、原因が分かっていないということだ。

倒れたアルヘナは、命は助かったものの未だに目覚めていないらしい。

当然隣国との関係は悪化した。


茶会での犯行であれば当然犯人は《タウルス王国》内の人間の可能性が高く、さらに言えば茶会の準備を行った使用人の線が有力だ。

だが、犯人は分からなかった。

倒れた原因も分からないのだ。犯人がわかるはずもない。

しかし、これが国内の何者であったとしても防げなかった《タウルス王国》には責任があるし、関係を悪化させるには十分な理由だった。


一方で、これが他国の陰謀の可能性も当然考えられる。

表向きは《タウルス王国》と隣国の《ゲミニ王国》の関係はそこまでよくはないとしつつも、裏ではひそかに情報のやり取りなどを行い、この事件の原因を探っている。

原因が他国にあり、両国を害する目的であったのならば再度手を取り合い対抗するし、やはり原因が両国のいづれかにあるのであれば関係は悪化したままだろう。


そんなこんなで、最も関係の良かった《ゲミニ王国》と疎遠になり、《タウルス王国》は12国の中でも比較的孤立していると言える。


以前はそれでも大きな問題はなかったのだが、”今の世界”では少なくない問題がある。

それは・・・





ーーーーー





(左かっ!)


私は光をまとった聖剣テトラを左方向に振りぬいた。

聖剣テトラの能力は斬撃の飛翔。

それは一部の達人が行う風の斬撃ではない。

纏った光の量によって威力や飛距離は左右されるが、光の斬撃だ。

聖剣テトラによる切断面は、まるで研磨したかのように美しくあらゆる硬度の物を切り裂く。

私自身の剣の腕も相まって、斬撃の速度はとても人がかわせるものではない。

少女と最初に接敵した際の斬撃は光量も足りておらず構えもできていない状態だった。

しかし今回は完全な構えの上に星の煌めきを使った一撃。


(取った!)


ドスッ


「え?」


ゆっくりと下を向くと私の心臓からまっすぐに突き出る真っ白な剣。


「なぜ・・・」


「この聖剣ナノの能力は”残影”。星の力で残像を作れるの。あなたが切ったのは私の残影よ」


そうか。

さっきの背後からの一撃もその残影とやらで、だから背後に剣を振っても切った感覚が無かったのか。


「これはただの残像ではなく、気配のある残像。初見で見破るのは難しいかしら?」


「・・・いい能力だ。知っていれば、どうにかできたかもな」


いや、孤立している《タウルス王国》では他国の聖剣の能力を知るすべはほとんどない。

もしかしたら、これも何者かに仕組まれていたのかもな。


「・・・アルヘナ、すまない。私に君を救うことはできなかったらしい・・・」


ドサッ


少女はゆっくりと聖剣ナノを引き抜く。


「ごめんなさい。これは星の導きを受けた運命。恨むなら星を恨んでね」


地面に落ちた聖剣テトラはゆっくりと光になって消えていく。

その光は聖剣ナノに吸い込まれるように。



オフューカス歴119年


《タウルス王国》の第一王子アルデバランは国葬にて見送られた。


長男であるアルデバランを失った王エルナトは心労から体調を崩し、後に第二王子のアインに王位を譲り渡すのだがそれは別の物語。





ただし、その物語が紡がれるのかは”星の導き”次第。





星の導きがどちらに傾くのか。





空はゆっくりと、だが確実に廻っている。



前書きの通り初投稿です。


よろしければあなたの手で↓の星を導いてください。

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