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浦川 日歌里ノウラジュウニシ【side:U】

残り火へのごめんね

作者: 歌川 詩季

「蝋燭と蛾」のつづきにあたります。

 (とも)っているあいだは

 そのぬくもりに身を寄せておいて

 その炎に身を焦がしておいて

 消えてしまいそうになったら

 その最期を看取(みと)ってあげもせずに

 つぎの光へと飛び去ってしまう

 背中の薄っぺらい(はね)よりもなお 薄情な()のぼくは


 ごめんね

 恨んでくれてもいいよ

 それがきみが 今際(いまわ)のきわに

 くゆらせた煙のひとすじに

 こめた想いだっていうのなら それでいい



 まだ消えないでいてくれるのなら

 ほんとうは もうちょっとだけでいいから

 きみのぬくもりに身を寄せていたかった

 きみの炎で身を焦がしていたかった


 そんなこと

 どの口で言うんだって

 どうせ これまで甘い蜜を吸うしかしてこなかった

 その口で言うかって

 もし なじってくれるのなら

 それがきみが 最期の断末魔に

 たちのぼらせた煙のひとすじに

 こめた想いだっていうのなら それでいい


 だけど

 背中の薄っぺらい(はね)よりもなお 薄情な()のぼくは

 きみがその最期をだれかに

 もしかしてぼくに

 看取(みと)ってもらいたかったのかなって気もするし

 きみがその最期をだれにも

 もしかしてぼくにも

 見られたくないのかもって気もするんだ


 ぼくには そのどっちが正しいのかなんてわからないし

 きっと きみにたずねる勇気もないから


 ごめんね

 きみが消えてしまいそうになったら

 その最後を看取(みと)ってあげもせずに

 つぎの光へ飛び去ってしまうことを選ぶ



 ごめんね

 まだ消えないでいてくれるのなら

 ほんとうは もうちょっとだけでいいから

 きみのぬくもりに身を寄せていたかったけど

 きみの炎で身を焦がしていたかったけど

 お題ごと、ちがう動物にしようと思いましたが。つづきにあたるということで、こちらも「蛾」です。


「星の残り火」では、残り火があやまって。

 こちらでは、残り火にあやまっております(苦笑)


挿絵(By みてみん)


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蝋燭と蛾
のつづきです

【同一課題作品】
炎夢螺《ほむら》
作者:日浦海里先生
― 新着の感想 ―
[一言] 前作も好きだったのですが、こちらも精一杯の愛情と優しい心根が伝わってくる作品で、すごく好きです。 繰り返される「ごめんね」がとにかく愛情に溢れていて、それでも必ずきてしまう終わりの無常さに悲…
[一言]  最期を知らねばいつまでも心に残るかもしれない。  潰えた姿ではなく、輝く姿のままで覚えていられるかもしれない。  薄情ではなく、手放さないために。  そんな風にも思えました。
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