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CODE:IMPERIALRebellion-叛逆の燈火-  作者: すぴか@
第8章 救出作戦
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19-1 お姫様としてみてるんじゃない!

 次の日。

 俺達は昨日の話も含め、今後の計画を決める会議を開いた。

 俺達の事を整理すると――。


 今いるこの領地……メリューヌ領地は、ローズライト神導王国の、ルティリーゼ妖精王国国境付近に位置する、最も帝国に近い場所にある。俺達はメリューヌ領主……「マーク・メリューヌ」の居城を現在拠点にしている。前までの拠点は、あの死霊術師(ネクロマンサー)……マギリエルの放った合成魔物(キマイラ)によって壊滅した。残っていた人員諸共……。

 何をしようにも、裏をかこうとも、奴らは俺達の動きを読むように、確実にこちらを出し抜いていく。それはもう、嘲笑うようにな。今までは本当に幸運が重なっただけ。こっちに致命傷は与えられて生き残ってはいるものの、こっちからの攻撃は奴らにとって、かすり傷程度だ。こんな事で本当に奴らに勝てるのか? ……師匠が濁流にのみ込まれたあの日。傭兵団……いや、この同盟の士気は著しく下がっていた。そりゃあそうだ。師匠だってこの同盟の大事な戦力で、存在自体が希望となっている人も大勢いた。俺だってその一人だ。そんな師匠が死んだと知らされたなら。当然の結果だろう。

 だけど、ここ1か月で失ったものは大きくとも、得たものだってその分大きい。まずはシビルばあさん。この会議で、友人である団長、デコイさん、先代と同じく親しくしていたエスティア公が説明してくれた。ばあさんの正体は「パメラ・メガリ・アルクトス」。俺は知らないけど、過去にあった「ナインズヴァルプルギス」の第七位「メラムプース=ザ・セヴン・メガリ・アルクトス」の養子であり弟子なんだとか。それになんと、ラケルや母さん、帝国先代皇帝である父さんの親友であり、帝国を離れた後は持ち前の(ドライブ)で団長やラケルや他友人の領主たちや、ローズライトの国王と連絡を取っていたそうだ。で、ラケルから生前指示があったようで。


「もし僕が死んだら、僕の代わりにアレンを助けてあげてほしいな」


 と言われたので、遺言を果たす為に、"老体に鞭打って"ここまで来たんだと。

 そして今、得意技である未来予知を使って、この同盟を確実に有利な方向にもっていく。と自信満々に語っていた。普段の口調や様子からは全然想像つかねーけど。とりあえずばあさんのおかげで、クーゴ兄ちゃんは死なずに済んだし、傭兵団だって犠牲者を出したものの、生き残る事が出来た。


「しかし、云千もいた義賊団を失ったのはかなり痛手じゃなぁ。相手は理すら超越する魔法の使い手もおるし、その他にも厄介な(エネミー)が勢ぞろいだぞい。年齢もあるが、儂の(ドライブ)や予知能力を以てしても、出し抜く事はほぼできんじゃろて」


 ばあさんがらしくない弱音を吐く。


「あの、魔法と言うのは、それほどまでに強力なのですか?」


 姫さんが恐る恐る手を挙げて、ばあさんに尋ねると、彼女は頷いて団長の脇腹を小突く。説明しろと言わんばかりに。


「魔法ってのはな……本当に世界の概念すら無視するような代物だ。その力は、もう何百何千何万何億にも遡る程の過去。女神エターナルの使者である、調停者エンブリオが人類に与え、当たり前にあるようなものだったんだ。だけど、今の俺達と魔王のように人類は争い、愚かにも調停者に与えられた力を向けたんだ。調停者は絶望しながら、この世から追放され、人類は一度魔法で絶滅した。……そんな話をバーバラ……あ、いや、あの魔女から聞いたんだ」


 なんというか、スケールのでかすぎる話だなあと、俺は思っていると。エルはまた考え事をしているのか、俯いていた。その後、カズマサが腕を組んで首を傾げる。


「絶滅したのに、魔法が使える人間が存在するのでござるか?」

「ああ。ある意味先天性の病みたいなものだよ。こっちじゃ文献に載っていたり、詳しい事は王族なんかが知ってる話だが……そういや東郷武国では魔法の存在はどういうものなんだ?」


 団長の問いには、シャオ兄ちゃんが答えてくれた。


「魔法……は、多分「神術」の事やんな。前にも言うたやろ、東郷武国ではいろんな神サマを信じとる。その内の「神」を自分の中に憑依させる「術」。本当に一握りの人間くらいしかできんくてな。それに該当するんは……ああ、姫サンのそれが一応「神術」や言うて、首長から直接聞いたんよ」

「えっ!?」


 シャオ兄ちゃんの言葉に、姫さんが思わず声を出してシャオ兄ちゃんの方を見た。


「わ、私の巫術が、神術だったのですか!?」

「誤解せんといてな。あんさんの母様が神術使いだったんや。それを何割か受け継いで、姫サンの力になっとるだけや」

「母上の……」


 姫さんが胸に手を当てて俯くと、カズマサは感動したように「すごいでござるなぁ」と言っている。


「……だいぶ話が脱線したな」


 と、エスティア公が咳ばらいをした後にそうつぶやく。


「つまり、魔女がいる限りは我らに勝ち目はないと?」


 続けてそうばあさんに尋ねる。


「勝てない事はないぞ。アレンがいる限りな」

「えっ」


 ばあさんが俺を指さすので、思わず間抜けな声が出る。


「アレンの力は魔法のように、理を超越する力。我々が持つオーラを貫く事ができる。無論、魔王に唯一勝てるのは、アレンしかおらん。断言するぞ」


 ばあさんがそう言い放つと、ヘクトが手を挙げた。


「だったらアレンさん一人で魔王に立ち向かえるよう、お膳立てすればいいという事ですか?」

「そりゃ、アレン一人でもいいんじゃないかなとか、そう思う時期が、私にもありました」


 ばあさんは咳ばらいをしながら続ける。


「よいか。戦争っちゅーのは一人でやるものではない。ましてや少人数で勝てるわけもない。どんな精鋭部隊とて、1000人が10万人に勝てるわけがないじゃろ?」

「極端すぎますが、まあそうですね」


 ヘクトは納得する。


「じゃあ、どうすってんだ? どうやって俺達は帝国に勝つことができる?」


 副長は手に持っているボトルの中身を、口に入れながらそう尋ねた。当然の疑問。帝国に勝てなきゃ、最後は皆仲良く冷たい泥の中だ。


「儂らが勝つための……「策」は、ある。」


 ばあさんは、再び口を開いた。ばあさんの策とは、まず帝国に向かっているという、ローズライト神導王国の王女「エイリス」姫を救う。ばあさんが見える範囲では、姫を救うか否かで俺達の運命が変わるんだという。……久しぶりに聞いた名前に、俺は「うげっ」と声を出した。

 あの姫さんの事が嫌いだから。

 なんて思っていると、姫さんが俺の服の裾を引っ張った。


「なんて声出してるの。誰かを助ける時に出す声じゃないわ」

「……」


 俺はフードを深く被って、姫さんから顔を逸らす。姫さんは「どうしたの?」と聞いてくるが、俺は無視をした。


「姫さん、そいつがなんで「お姫様」が嫌いか、わかるか?」


 副長がふと姫さんに向かってそう尋ねると、姫さんは「いいえ」と答える。そりゃそうだ。だって詳しく言ってないし。言ってもわかってくれないと思う。……副長は俺の方を見た後、俺の頭をぐしゃぐしゃと掻きまわした。


「同族嫌悪だよ、結局」

「は、半分当たってるけど、半分違うよ」


 同族嫌悪……いや、それもある。俺自身が皇族ってのも、もちろん理由だ。姉とも思ってねえけど、(ソフィア)も俺の姉で、皇女で。あいつも自分のワガママをごり押して、世界を苦しめてる。

 まあ、それもあるけど……王女様ってのは無駄にプライドが高くて、すぐに決めつけて、上から目線でモノを言う。そういうところが嫌いだ。あの人――エイリスも俺の話を聞かず、俺をソフィアソフィアと連呼して、話を聞かない。で、知らない事は知らない。知りもしない。世間知らずで、その立場に胡坐をかいてふんぞり返ってる。……これのどこを好きになれってんだよ。

 俺がそう言い終わると、姫さんの方を見る。


「俺、世間知らずって嫌いだ。知ろうとしない、知らない事を知らないままでへらへら笑う奴って、昔の俺みたいで。知ろうとしないで、閉じこもってる奴と同じじゃないか」


 ラケルに会うまでは、俺も何も知らない子供だった。クラテルに食われそうになりながら、怯えて、逃げて、知らないままでいようとしていた。俺も、知ろうともしない、怖がってた奴だったんだけど……


「同族嫌悪って言われちゃ、それでおしまいだよ。実際、俺、自分と同じような人間の上に立って、優越感に浸ろうとしていたかもしれない。そんな自分も嫌いだ。嫌な人間じゃないか」


 「そんなことは」と言う姫さんの方に振り向いて、俺は彼女の瞳を見据えた。


彼女(エイリス)が、あんたみたいな人だったら、きっと……俺はあんたにひどい事を言わずに済んだかもな……」


 俺がそうため息交じりに言うと、突然、俺の頬に衝撃が走った。パアンと乾いた音が鳴り響き、俺は何かに叩かれたような痛みを感じて、頬に手を当てる。

 目の前には、怒ったように目を吊り上げて、唇を尖らせる姫さんの顔があった。本気で怒っている事はわかるんだけど、なんで怒っているかは理解できなかった。なんで、怒ってるんだ?


「このアホ。アホレン! あなたやっぱ何もわかってない! 私の事……まだ「チサト」じゃなくて、「お姫様」として見てるんじゃないっ! 最低。昨日のエイトとの会話を聞いて、「この人って中身はとても繊細なんだな」って思ってたけど、違うわ。あんたは繊細じゃない。自分の嫌いなものを受け入れようともしない! ましてやそれを見下してる! それは繊細じゃなくて、「傲慢」よ。このクソガキ!」


 姫さんの口から「クソガキ」と言葉が出たので、カズマサとシャオ兄ちゃんが驚いて、姫さんを落ち着かせようと宥めるが……


「あー、もう。あんたなんか私も嫌いよ。この……タコ! 一生引きこもってなさいよッ!」


 そう言い放つと、会議室から勢いよく飛び出していく姫さん。





 しん。読んで文字の如く静寂に包まれた会議室。皆顔を見合わせて、この状況をどうすればいいのかわからないでいるみたいだ。


「……ま、僕も概ねチサトさんに同意しますよ」


 ヘクトが会議室のその静寂を破るように、そう声を出す。


「……俺が間違ってるのか?」

「間違っちゃいないですよ。人間誰しも、嫌いなものや好きなもの。十人十色ですよ」

「じゃあ、なんで姫さんは出て行った?」

「それは自分で考えるべきッスよ」


 そこにスカイ兄ちゃんが口を挟む。


「アレン君、チサトちゃんってどんな人カナ?」


 突然の問いに、俺は少し言い淀んでから、答えを言う。


「えーっと、気の強いお姫様?」


 その答えに対して、ヘクトは深いため息をつき、スカイ兄ちゃんは頭を抱えて困り顔。……意味が解らない。


「……「クソガキ」」


 と、副長が腕を組んでそうぼそりと言った。




―――




 その後、カズマサに宥められた姫さんが、会議室に戻ってくる。だけど、俺の方へ顔を向けないどころか、俺の事を無視している。……関係修復はあとにしよう。今は、王女様を追いかける事が先決だ。と、ばあさんが、テーブルの上に地図を置いて説明していた。

 既に王女様は帝国の国境を越え、城へ赴いている頃だろう。と。


「魔王は……お主を亡き者にしようと、あの手この手をなんだって使うじゃろな」

「……ん、まあ。そうだろうな」

「わかっておるなら話が早い」


 ばあさんが肩をすくめると、クーゴ兄ちゃんが手を挙げた。


「しかし、シビルさん。オレも経験したからわかるんだがな。正直、あのこの世のものとは思えんあの力は、まさに魔王の称号にふさわしいものだったぜ。どういう風にして、魔王に勝つってんだ?」


 クーゴ兄ちゃんは自分の経験したことを語りつつ、そう言うと。


「魔王に勝つには王女様の力も必要なんじゃよな~」


 ばあさんがそう言いながら顎を撫でた。


「どちらにせよ、王女を救う事で、ローズライトの国王にも恩を売る事ができる。俺は賛成だな」


 と、団長も頷いた。あんまり言い方は良くないが……でも、それが最善の選択なら。とも思う。

 正直、今はなどんな些細なものでも、どんな細い糸でも、縋れるものはなんだって縋りたい状況だ。だから、ばあさんの言う通りにしてどんな結果になるかはわからないけど、今より一歩でも多く進めるのなら、進むしかない。それ程までに、追い詰められている状況だ。


「王女様を助けに行くのはいいですが、誰を向かわせるのですか?」


 姫さんがそう首を傾げると、ばあさんは俺と姫さんを指さす。


「お主ら二人と、他傭兵団の諸兄姉」

「はあ!?」


 俺と姫さんは同時に声を上げ、俺の顔を見た姫さんがバツの悪そうな顔でこっちを見る。


「こんな人と一緒とか……」

「……」


 俺も同じような顔をしてる事が自分でもわかる。歯ぎしりをしながら、ばあさんに文句を言おうとしたんだけど、ばあさんはそれを制止した。


「気持ちはわかる。……じゃが、魔王に一泡吹かせられる奴が、お主と姫殿くらいしかおらんのも現状。お主と姫殿の次点で、アルテアかフィリドラかクーゴじゃが、この3人を失ったら完全に負け確じゃし。まあ、死ぬとは思わんが、死ぬんじゃないぞ♪」

「軽すぎるんだよ!」


 俺が反論しても、ばあさんは口笛を吹きながらそっぽを向いてしまう。ああ、もうこれは何を言っても無駄だな。そう察した。


「……で、傭兵団の面々が帝国に向かう間。俺達はどこへ?」

「フォートレス王国に向かう。国王に謁見するから、ついてこい」


 ばあさんが、クーゴ兄ちゃんの肩を掴むと、「せいぜいか弱い老婆を守る盾となれ?」といやらしい笑みを浮かべていた。クーゴ兄ちゃんはというと、その顔を見るなり、とても嫌そうな顔で半目になっていた。


「じゃ、出発はいつにするんスか?」


 スカイ兄ちゃんがそう尋ねると、団長が答える。


「明朝だ。王女殿が帝国の国境を越えたという事は、急がねばならん……が、まだ準備ができていない奴もいる。特に、アレン。お前はチサトとなんとか仲直りしろ。命令だ」

「えぇ……」


 俺は声を上げると、姫さんがこっちを見るや


「こんな小さい男と仲良くなるとか、ありえませんね! 私はヘクト君と組みます!」

「……」


 姫さんがヘクトの手を引くと、何か言いたげにヘクトは俺の顔を見るが、そのまま姫さんは、会議室を後にして出て行ってしまった。モーゼス兄ちゃんがその後、「あらあら」と言って、俺の肩にぽんと手を置きながら。


「俺と組む?」

「……」


 俺もヘクトと同じように無言で俯く。


「面倒だなぁ、ガキ共ってさ」


 先ほどまで無言だった副長がそう言い、ボトルの中身を口にしていた。

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