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CODE:IMPERIALRebellion-叛逆の燈火-  作者: すぴか@
第4章 波乱の予感
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11-3 やらなきゃ、やられる

 カズマサの案内で、俺達はそこから近場の廃村まで来ていた。……もう何十年も放置されている事だけはわかるその廃村に、首長の一人娘である、「渕舞(エンブ)千智(チサト)」が隠れているんだって。……正直、廃村に身を隠すなんて意味のない事を。って思った。

 帝国には「魔女ゴーテル」って、魔法使いがいる。奴がその気になれば、姫さんを捕らえたり、なんだったら殺す事だってできる。簡単だ。……なんせ、俺達がイルミナル領にいた事すら見えてたんだ。あいつらの掌の上で踊らされてる感じがして嫌だけど、こちらから何かを仕掛けたって、今は勝てるはずがない。……そう団長も副長も言ってた。せめて、魔法に対する対抗策、もしくは、それに匹敵する程の軍事力。手札が揃っていない以上、今動く事は愚行に等しい。らしい。

 だけど、魔女が姫さんを狙わない理由は……考えられるのは恐らく「泳がせている」。もしかしたら、「利用するだけの価値はない」と判断したのかも。


「その線が大きいかもしれないわね。魔王の事だし、「一人じゃ何もできない」と切り捨てて放置してるんじゃないかしら」

「あの女ならありえそうだな」


 師匠の言葉に俺は同意する。

 すると、カズマサが振り向いた。


「アレン殿は魔王に会ったんでござるか?」


 俺は頷く。


「ああ。何度か殺し合った。まあ、でも。引き分けばっかで終わってるけどな」

「……やはり、姉弟が殺し合うなど――」

「カズマサ、喉が大事なら、それ以上口にするな」


 低い声でカズマサを威嚇すると、カズマサは慌てて道案内に戻った。……今のは俺の意思か? クソッ、だんだん自分の意思なのか、神竜の意思なのかよくわかんなくなってきた。頭がおかしくなりそうだ。



 しばらく歩くと、なんだか仰々しい赤い建物? ……いや、なんかのオブジェか? 門のようなものが道を示す様に並んで立っている。それに、石の階段が山の方へと続いている。

 モーゼス兄ちゃんが、赤い物を見上げながら首を傾げた。


「シャオ君、この赤い物はなんていうの?」

「これは鳥居。なんや、神サンと人間の世界を分け隔てる門らしいで」

「神様……エターナル神の事ですか?」


 ヘクトがそう聞くと、シャオは首を振る。


「いや、東郷武国では一つの神を信じとらんねん。「八百万(やおよろず)」言うてな。全ての物事には神が宿っているっちゅー考え方や。だからどんなもんも、どんな事も、感謝して大切にせえへんといかんのよ。それが、東郷武国(うちら)の一種の信心やね」


 面白い考え方だ。……俺達の国じゃ、神を信じる人はエターナル神を唯一神だって決めつけてるのにな。国も違えば文化も考え方も違うのは、本当に面白い。ヘクトの方を見ると、嬉々としてメモを取り、必死に読み返している。ヘクトの奴もこの国の考え方を面白いと感じてるみたいだ。

 山頂の方を見上げると、鳥居が続いているのか、赤色の線がぐんにゃりぐにゃぐにゃと曲がり曲がってひねくれながら、てっぺんまで伸びていた。カズマサが、その山頂を指さした。


「この階段の上にある「神社」に姫様や護衛達を隠してござる。かなりあるが、頑張って登ってくれ」


 ジンジャー? あれか? 食べると身体が温かくなる奴。


「それはショウガでござる。神社とは、神を祀る社。文字通りでござるよ」


 上の神社では「雨照霊狐尊(アマテラスタマギツネノミコト)」という、天候を司るとされる狐の神様が祀られてるんだと。……名前長いな。この辺りでは天領であるカグツチを守る神様だと崇められている。神社も高い場所にあるのは、天に一番近いこの山に建てるのが最適だから……って言う事らしいけど、実際はどういう理由かは不明なんだってさ。


「たけえな。何段あるんだ?」


 副長が山頂まで続く鳥居を見ながら一言。


「3000段前後って「神主」が言うてたよ」

「さ、さんぜん……」


 段数を聞いてヘクトが呆然としていた。うん、多分絶望しちゃったのかもしれない。なんだかショックを受けて、目を見開いて口をぽっかり開けている。……こんなヘクトの顔は見た事ない。俺はかわいそうに感じて、ヘクトに声をかけた。


「きつくなったら言えよ、ヘクト。俺がおぶってやるから」

「……必要ありません」


 ヘクトは我先にと階段を上り始める。……素直になりゃいいのにな、あいつも。



 この長い長い階段を登った感想……うん、俺はもう階段というものを登りたくない。そう思った。

 俺達傭兵団はやっと神社なる場所へとたどりついた。古ぼけた木製の建物、狐のような形の像が建物の前に対になって置かれている。お世辞にも綺麗な建物とは言えないけど、掃除が行き届いているのか、かなり古ぼけている割には綺麗だった。

 カズマサが靴を脱いで、神社の中へと入っていく。そして、扉? の前に立つと、ノックを3回鳴らした。


「姫。ただいま戻り申した。……報告がございます故、入室の許可を願いたい」


 扉が、木をこすりつけながら開く音がして、音と共に扉も開いた。中からは、壮年の男の人が顔だけ出してカズマサと、周囲にいる俺達を見回した。


「……姫を今お呼びいたします。しばしここでお待ちください」


 男性がそう言うと、再び扉が閉まった。



―――



 神社を案内してくれたこのオジサンが「神主」って人らしく、この人とこの人の部下、あと姫さんの従者の人とかがこの神社で身を隠しているんだって、俺達を案内してくれた神主が言ってた。俺達は神社の中を歩く。団長、副長、それとモーゼス兄ちゃんと俺……ついでにエルとデコイさん。あとはカズマサとシャオ兄ちゃんも姫さんに会うために、靴を脱いで中へと入った。神社の中は意外と広く、屋敷の中みたいだ。木製の床が俺達の体重を感じる度に、ギシギシと音を立てる。廊下は外の光を招き入れてるおかげで明るく、庭には緑色の葉をつけた大木が、そよ風を受けてさらさらと流れていた。

 とある部屋の前で神主が座り込んで、扉を引く。スーッと音を立て扉が開くと、中に入るよう促された。俺達は姫さんと対面する。


「はじめまして、私は「アルテア・エクエス」。傭兵団を束ね、指揮する者です」


 団長は代表して俺達の紹介をしながら、自分たちの目的を伝えると、姫さんは俺達に座るよう許可をくれた。


 姫さんの第一印象は、なんというか、痩せていた。俺達傭兵団だって、金もないし今は帝国が何でもかんでも管理している時代。満足に毎日食べられるわけじゃないから、結構痩せてる方なんだけど、姫さんはなんというか、骨と皮しかないんじゃないかってくらい、病的な痩せ方だ。

 長い黒髪はぱさついててるし、目の下には隈がある。紅白の見た事のない服。美人なんだけど、見ただけでわかる。ずっと何かに悩まされているって事が。


「……魔王!?」


 彼女は俺の顔を見てびくっと体を震わせた。俺は一応フードで顔を隠してはいたんだけど、俺の顔をずっと覗き込んできて、顔を見たんだろう……つか、こいつもあいつらと同じみたいに、俺を魔王と呼んでくる。いい加減うんざりしてくると思って、言い返そうと口を開くと、カズマサがそれを察したように俺を制してきた。


「姫、この方は魔王の双子の弟君でございます。魔王を討つべく、仲間を集めている最中だとか」


 カズマサがそう補足すると、姫さんは「そ、そうですか」と一言言うと、俺をじろじろ見る。……ったく、見てくんじゃねえよ。俺は舌打ちをしながら肘をついてそっぽを向いた。


「改めて自己紹介させていただきます。私は、「渕舞(エンブ)千智(チサト)」。どうぞ、チサトとお呼びくださいませ、傭兵団の皆様」


 姫さんと団長達が話を進めるのを見ている中、俺のフードの中にデコイさんがひょいっと入り込む。背後にエルがいた。

 俺達は小声で話し合う。


「ねねね、あのお姫様。なんだか内側に黒い何かがいるみたいだよ。で、お姫様を締め付けてる」

「は? なんだよそれ。神竜か?」

「違うね。でも、神竜に匹敵する悍ましい魔物には違いないよ」

「……なんでわかる?」

「エルがそう言えって」

「なんで直接言わねえんだよ、エル」


 エルはじっと俺を見ている。なんだかそわそわしていて、落ち着くことができない状態だ。


「エル?」


 俺が小声でエルに話しかけると、エルは苦虫を噛み潰したような顔で目を泳がせている。……こんなエルは初めて見た。どうしたんだ、こいつ。だけど、やっと決心したような顔を見せて、俺に顔を近づけた。


「……あのチサトの中の黒い蛇が、我らを狙っているようなのだ。落ち着かん……アレン、なんとかしろ」

「な、なんとかしろつったって……」

「チサトも気づいているのではないのか? あの者の中の蛇が自分を食い殺す事と、アレンを狙っているのを」

「じゃあ、早く離れた方が――」

「アレン、そんなことしたら多分、チサトちゃんって子、死んじゃうよ。誰かが封印を破ったせいで、蛇がどんどん大きくなってるんだから。今はチサトちゃんがなんとかできてるけど、随分時間が経っちゃってるせいか、僕らの手に負えるかどうかもわかんないくらい、肥大化してるし」

「じゃあ、どうすりゃいいってんだよ!?」

「そこをなんとかしろっていってんの」

「無茶言うなっつーの!」


 俺とエルとデコイさんが話し合っていると、隣にいたモーゼス兄ちゃんが顔を向けた。


「……どうしたの?」

「あ、いや。足がしびれてきただけだ」


 今は大事な話し合いの最中。せめて、話し合いが終わってからじゃないと。俺だって考える時間が欲しいんだって。

 俺は瞳を閉じて集中した。確かに、姫さんの中に黒く渦巻くなんかがいる。いや、渦巻くってレベルじゃない。太くて長い黒蛇が何匹も集まって、姫さんに巻き付いて締め付けてるんだ。もしかして、こいつも俺みたいに魂を繋ぎ合わせて――いや、あんな人体兵器が何度も成功できるはずがない。冷静になれ。この国は他国との交流がほとんどないつってたし、帝国や他国が交流を試みようとしたのは云十年前。それ以降は放置していたってデコイさんが言ってた。つーか、さっき誰かが封印を破ったって。つまり、元々姫さんの中に閉じ込めてたって事だからーつまり?

 くそっ、俺だけが考えても結論出ねえ。こうなったら、後で皆と話し合う時間を作って、すぐに――


 俺はもう一度姫さんの方を見る。


「……!?」


 黒い蛇と目が合う。……とぐろを巻いて、俺を狙おうと頭を低くしている。――こいつ、俺を狙っているのか? 俺は悪寒が走って身震いする。


「……どうされましたか、アレン殿?」


 姫さんがこちらを見て、心配そうに顔を覗き込んでいた。だけど、その背後では、八匹くらいか? 多数の蛇の頭が、蛇の真っ赤な瞳がこっちを捕らえて、蛇睨みをしてくる。いや、もうやぶれかぶれだ。今なんとかしねえと。事情を話してる間に、黒蛇(あいつ)が姫さんを食い殺すかもしれない。……俺は唇をかみしめた。


「団長、ごめん。俺――」


 俺は団長への謝罪を最後まで言い終わる前に立ち上がり、皆が注目する中、俺は素早く姫さんの目の前まで迫り、右腕を変形させ姫さんを掴んで、壁に叩きつけた。

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