表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
CODE:IMPERIALRebellion-叛逆の燈火-  作者: すぴか@
プロローグ 胎動する燈火
6/139

0-6 一緒に買い物をしにきたわけで

 俺と団長とバロン、そしてエルは村へと出てきていた。村と言っても活気はあるし、人もいる。俺も修道院にいたころはたまにだけど、ちょっと……いや、だいぶかな? まあそこそこ歩いた先に街があった。そこもかなり人がいたけど、比べると少ない。

 村には広い田畑があった。農具を使うオジサンやオバサンが、汗を流しながら忙しそうに畑を耕している様子が見える。……シスターやエレノア、ルゥと一緒に畑で野菜を作ってた時を思い出すな。今年も野菜を育てる予定だったんだけどな。俺がそう暗い顔をしていると、エルが俺の顔を覗き込んでくる。


「どうした、アレン。浮かない顔だな」

「え? いや、俺も畑で野菜を作ってたんだけどさ」

「野菜……何を作っていた?」

「え、トマトとかトウモロコシとか、あとナスとかパプリカやピーマンとかも――って聞いてねえ」


 俺が話している途中で、エルは畑の方を見ていた。聞いてるのか聞いてないのかわからないが、そっちに興味を持ってかれたみたいだ。


「聞いていた。とにかく野菜を育て、それで自給自足していたのだろう」

「もちろん、それだけじゃ足りねえから、近くの街まで麦とか肉とか買いに来てたよ。なんて街かは忘れたけど」

「ちゃんと食べていたのか、お前」

「食べてたよ」


 エルは俺の身体を見るや、首を振る。


「年頃の子供にしては痩せている。これから戦う力を得ようというのだ。もっと体を鍛え、筋肉をつけろ。でなければ、弟妹を取り戻そうなど、夢のまた夢物語という奴だ」

「う、っせーな。わかってるよ言われなくても」


 俺達がそんなやり取りをしていると、俺とエルの間に団長が声をかけてくる。


「エルの言う通りだな、アレン。食事は身体を作る為に必要な事だ。今夜は豪勢にしてやるから、食べて飲んで寝て、明日から訓練を重ねりゃいい!」

「そりゃわかってるけどよ……隣にいるバロンも俺と同じくらい細いだろ」

「ん、僕……?」


 バロンを指さすと、彼はびくっと体を震わせ俺を見る。


「バロンは俺達みたいな戦士じゃないからいいんだよ、適材適所だ」

「ちぇっ、俺もぎんゆーしじんになりたいぜ」


 俺が冗談交じりに言うと、エルは表情と声音を変えずに俺に突っ込んでくる。


「お前の頭では無理だな」

「なっ……お前、俺がバカだって――」

「違うのか?」

「くっ……確かに座学は苦手だけどよ……」

「座学も子供の内にやるべきだ、我も付き合うぞ」


 エルの言葉に何も言い返さず、そっぽを向くと、団長が立ち止まる。


「行きつけの店だ。ちょっと待ってな」


 団長がそう言うと、店の中へと入っていった。

 残された俺とエルとバロン。バロンは困ったように「ま、待ってよ?」と一言。俺も頷いて、その場で待つことにした。だけど、なんか待ってるのにも飽きてきたし、バロンと会話することにした。バロンの事をもっと知りたいしな。


「バロン、お前はいつから傭兵団に?」

「ぼ、僕……その、ちょっと前からかな……」

「なんでこの傭兵団に入ってきたんだよ」

「え、っとぉ……僕の街が帝国軍に襲われて、それでっ、それで団長に助けられてって感じ、かな……」

「俺と同じ感じか。……じゃあさ、赤い髪の男、知らないか? 変な赤い剣を持ってるやつ」

「えっと、わかんない。僕、隠れてたから……」


 なんだ、街が襲われたからてっきりアイツもバロンを……とも思ったんだけどな。


「アレン、「赤い奴」とは?」


 エルが俺の方を見て赤い奴について聞いてくる。


「俺の腕と目を持って行った奴だよ。すげえ怖い奴で、俺の姿を見て笑ってたんだ……」

「腕と目を……?」


 バロンは俺の話を聞いて、ぎょっとしたように縮こまる。


「その、なんだか嫌な感じのする腕……エルちゃんのだって言ってたよね」

「ああ、そうだ」


 俺の代わりにエルが答える。


「エルちゃんは何者なの?」

「知らぬ」


 エルは即答した。まあ、俺にも知らんとか言ってたしな。


「でも、この黒い腕……きっと良くないものだよ。なんだか、怖い」


 バロンが俯きながらそう言うと、エルもそれに頷く。


「我もそう思う。今は腕の形をしているが、いつどうなるかはわからん」

「……この腕、一体――」


 俺が腕を見ていると、突然村の入り口の方で悲鳴が聞こえた。それに、何か血の臭い……血の臭い!?


「まさか!」


 俺はバロンが引き止める声が耳に入る前に、悲鳴の聞こえる場所へと駆け出した。急いで、なるべく急いで!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ