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CODE:IMPERIALRebellion-叛逆の燈火-  作者: すぴか@
第3章 失われていく自我、浸食する憎悪
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8-5 真実は語られる

 俺と団長、そしてエルはとりあえず別室を案内され、そこで話の続きをすることにした。長くなるとのことで、大きめのポット――多分俺の頭の二回りくらい大きい。それが乗っているワゴンを運んでくるメイドと執事。……全部飲むつもりかよ。

 テーブルにカップが丁寧に並べられて、俺達は話ができる万全の準備ができた。

 ラケルは「じゃ、語るわよ~」なんて言いながら、表情は真剣そのものとなり、改めて全てを語り出す。


 「神竜グラディウス」。それは帝国の皇城の地下深くに封じ込められていた、(ひかり)(やみ)を司る魔物で、初代皇帝が封印したらしく、代々皇帝のみがその地下へと行くための鍵を受け継いで、その封印を守っていたらしい。その入り口は、城が蓋をするように建てられていて、少なくとも50年前までは塞がれていたらしい。……だけど、ナインズヴァルプルギス第2位「カティーア」は何らかの理由でその鍵を盗み、第1位「ザ・ワン」の技術をも盗んで、グラディウスを生きたまま捕縛することに成功。グラディウスの魂に至るまで、その存在を2本の剣へと作り替えた。

 それだけにとどまらず、魂を二分して、俺とソフィアの身体に組み込んだんだと。そして、身体は母さん……その時の皇后である「アシュレイ・ルーギウス・ベルゼ・フィスタ」を二分して、俺達の身体に組み込んで、ヒトの形にしたんだと。あとは奴らが情報操作して、母さんは病死したという事にすればいい。その事実を知っているのは、ナインズヴァルプルギスの面々と、一部の宰相達、そして当時の近衛騎士だった者達。団長とか、副長、それにモーゼス兄ちゃん、それからクルーガー公と東郷武国を除く各国の王様達も知っているんだと。だけど、その事を口外しないように、カティーアは口封じの為に彼ら全員に術式を刻んだ。「口外すれば体の内側にいる蛇がお前達を喰らうぞ」と彼女はせせら笑ったそうだ。今は、カティーア自身が死んでいるので、その術式は効果を失っているそうだが、時間が経ちすぎた今では、それを公表したところで、世界も人々も今更変わる事はないだろう。

 ラケルはカップの中身を口にしながら、諦めたように言う。


「君達を赤ん坊の頃から育てれば、将来必ず帝国、そして世界を良い様に支配できる。と、考えた。だから実行されたんだ。その恐ろしい計画が」


 ラケルの表情に陰りが見える。


「カティーアは、真実を知り、陛下を守る為につきっきりになったゴーテルも、いずれ自分の邪魔になる僕達もあらかじめ封じておき、僕らは辺境に追いやられた。国王たちにも同じように術式を刻んでおき、陛下を飼い殺しに……とはいかなかったね」


 力なく笑いながら、再びカップの中身を口にするラケル。飲み干した後、「おかわり~」と気の抜けた声でカップを指で躍らせながら、メイドを呼んでいた。


「まあ、アルテアも知ってると思うけど、カティーアは野心に溺れた宰相共に闇に葬られちゃった」


 ラケルは肩をすくめ、ケラケラ笑った。……もう笑うしかない。という脱力感すら感じる。


「宰相共はなんで陛下を殺そうと思ったと思う?」


 ついでと言わんばかりに、ラケルは俺を見て尋ねてきた。……そういやなんでだ? ソフィアを傀儡にして、操って、気に入らない奴はあいつに処理させりゃいい。でもそうしなかった理由ってなんだ?

 俺は首を傾げると、それまで静かに腕を組んで話を聞いていた団長が口を開いた。


「神竜の憎悪の影響……とかか」


 また非現実的な事を……と俺は鼻で笑っていたが、エルもラケルもその言葉を聞いて、真顔で俯いてしまった。


「僕はそう考える。「憎悪の連鎖」って奴かな。憎悪はまた憎悪を呼ぶ。しかも、神竜と呼ばれるくらいの魔物だ。何かしらの影響力はあっても不思議じゃない。……とはいえ、こんなの机上の空論だし、その辺の真実は僕にも、ましてやゴーテルにもわからない。もしかしたら何も関係なくて、頭の弱い奴らが勝手な行動を起こして、陛下の恨みを買っただけかもしれない。そのおかげで今大陸はとんでもない事になってるっていうのに、無責任に死んじゃうんだから……」


 ラケルは頭を抱えてため息をつく。

 俺は気になっていることがあるので、ラケルに質問をしようとした。


「なあ、ラケル」

「……アレン君。僕、一応君の一回りも二回りも年上なんだよ。年上に向かって呼び捨てはないかなぁ」


 笑顔なのだが、邪悪すぎる何かを感じるその表情に、俺はぎょっとして咳払いをする。


「か、閣下」

「はい、なんでしょう。閣下です」


 ダメだ、もう疲れる。スルーしよう。


「エルと、あいつの傍にいるあの小さい子……って一体なんだ?」

「ああ、エルとその子が「呪われた聖魔の双剣」そのものだよ。名前は「影毒のアニムス」と「光念のアニムス」。武器としての名前は「影毒の竜剣「アジ・ダハーカ」」と「光輪の聖剣「アルトリウス」」ってゴーテルが教えてくれた気がするなあ。ややこしいから僕はどっちも「グラディ・アニムス」って呼んでるんだけど」


 確かにややこしい。もうエルでいいよ。

 エルはというと、器用に片手でカップを持って、中身を口にしてる。俺はもう一つ気になる事があるので、ラケ……閣下に顔を向けた。


「もう一つ気になる事があるんだけど」

「なんだい?」


 ラケルが笑みを浮かべ、お茶のおかわりを口にする。


「エルとあの子はなんで人の姿をしているんだ?」

「お、いいところに気づいたね」


 ラケルはにっこりと笑い、とりあえずカップの中身をまた飲み干して、一滴も残さない。そして、カップをテーブルに置くと、エルを指さした。


「アレン、君が強く願ったから、エルがここにいるんだ。エルは君の望みに呼応して、君の手助けをしている。……陛下の傍にいるあの子も同じさ。君達の望んだ通りに力を与え、望んだ通りの容姿もしている。なぜなら、グラディウスの魂が双剣を呼び出して、君達の願いを叶えたから。分かれていた魂が強い願いで呼び寄せて、アレンとエルを引き合わせたってワケ」


 ……エルは俺が望んできてくれたのか。

 俺はエルを見るが、エルはその話を聞いても涼しい顔で、テーブルのビスケットを、さくさくと音を立てながら口に入れていく。だんだんリスみたいに口の中が膨らんでいった。


「エル、話を聞いて思う事は――」

「あいあ(ないな)」

「ああ、うん……お前はいつも通りでよかった」


 エルは口に含んだビスケットを飲み込むと、俺を見る。


「我は、お前に望まれて生まれたが、お前ではない。我は我だ。グラディウスがなんだとか、アレンがどうとか、お前の正体がなんだとか、我には関係ない。我は我の考えでこれからも動く。それだけだ」

「なんでエルは俺を助けてくれるんだよ」

「我がそうしたいからだ。問題か?」


 こいつは……


「いや」

「なら、今まで通りでいいだろう」


 エルはそう言うと、またビスケットを口に含む作業を始めた。……確かこいつ、別に食べなくても大丈夫とか言ってなかったっけ。なんて考えているが、こいつも少しずつ変わってるのかもしれない。

 俺達のやり取りをラケルはじっと静観していた。


「エルがいる限りは、アレン、君は大丈夫かもしれないね」


 ラケルがそうつぶやくと、にっこりと笑った。


「え、どういう意味だよそれ」


 俺がそう聞くと、ラケルは笑うだけで何も答えない。よくわかんねえや……。

 ラケルはその後、一息置いてカップをテーブルに置くと、顔を上げて俺達を見た。


「アルテア、イルミナル家は同盟は結ぶ。アレンとエルは、世界を変える為の鍵になりそうだ。ま、変わらず世界は滅ぶかもしれない。どちらにせよ、彼らの存在は「ターニングパーソン」って奴かな」


 なんかスカしたような表情とか態度は、最初は気に入らなかったけど、「俺はこいつの事好きかも」。俺はそう思った。




 俺達の話が終わると、ラケルは立ち上がり、窓の外を見る。俺はそんなラケルを見上げると、彼の表情の変化に不穏な物を感じ取った。ラケルの表情が一変し、怒りと焦りが混じったように歪めていたからだ。


「フラクタ、フリジア! 兵を――」


 ラケルの怒号と同時に、部屋が爆散した。

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