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CODE:IMPERIALRebellion-叛逆の燈火-  作者: すぴか@
プロローグ 胎動する燈火
10/139

0-10 強くなるために頑張るわけで

 その後は何事もなく、夜を迎えた。団長への晩飯は師匠が「フィリドラと会ったら気まずいだろうし」なんて気を使ってくれて、持って行ってくれたし。晩飯時には、傭兵団のみんながいろいろ気を使ってバロンや団長を一切話題に出さず、俺にいろいろ質問を投げかけてきた。「修道院ではどんな生活だったのか」、「好きな食べ物は」、「明日からの予定はどうするか」なんてとにかく無難なもの。まあ、それはそれで助かるんだけどさ。晩飯が終わった後は、部屋に案内された。小綺麗な小屋で、中は俺が目を覚ました部屋と同じような構造だった。俺はベッドに寝ころぶ。このまま眠ろうかと思った。

 ただ、その日は団長の事やバロンの事。それにフィリドラの姉ちゃんが気になる事を言うもんだから、寝つけなかったけど、姉ちゃんの言ってた事はとりあえず忘れることにした。今は団長の回復を待つしかねえしな。それに……バロンの事……守れなかった悔しさが今更涙になってこぼれる。


「クソッ、俺って本当に……」


 いや、とにかく今は寝るか。俺はベッドのシーツで涙を拭きとった。


「賢明な判断だ。お前は今は疲労困憊のはず。今は休め、我も楽できる」


 なんて言いながらエルは俺の寝ているベッドの脇で座っているだけで、寝ようともしない。部屋の明かりはもう月明かりだけ。青白い光に照らされる彼女は、なんだか神秘的な風貌な感じだ。


「なあ、昼の続きなんだけどさ」

「まずはお前自身が強くならねばならん。肉体的にも、精神的にも」

「なんだよ精神的にって。昔の修行とかじゃあるまいし」


 俺は小馬鹿にしたようにいう。精神論なんて結局気持ち次第だろ。


「莫迦者が」


 エルはそんな俺を一喝してくる。


「また同じ話をさせるつもりか」

「うぐっ……」

「まあいい。今日は我も疲れた。明日からはレベッカに手取り足取り教えてもらえ。我も手伝おう」


 なんだよ、手伝うって……まさか


「剣にでもなるつもりかよ」

「……む、その発想は無かった。考えておくとしよう」

「……は?」


 エルの予想外の反応に俺は思わず声を出す。まさか、剣になるとか言わねえだろうな? ……そんな馬鹿な。いくら不思議人間でも、剣になるなんて。


 そういやこいつ、一向に寝ようとしないな。


「エル、寝ないのかよ」

「我に睡眠は必要ない」

「寝ないで疲れをどうやってとるんだよ」

「我は人間のように欲求や生命維持の為の行動は必要ないのだ」


 ふぅん、じゃあそう言う事ならほっとくか。






―――







 翌日、俺達は村の広場にいた。とりあえず、互いの力量を図るべく師匠との手合わせをする事となり、俺は剣を手に取る。剣と言っても、練習用だから木刀なんだけどさ。すると、俺の手に取った木刀を見てエルが肩をすくめる。


「そんなモノで強くなるなど到底無理だな」

「いや、だって真剣なんか使ったら死んじまうだろ」


 俺がそうエルに言うと、エルは「ふん」と鼻を鳴らし、彼女の姿が突然黒い影に飲み込まれた。ずずずって音を立てながら、どんどん小さくなっていく。俺も周りの皆も驚いていると、黒い影が晴れ、そこには赤と青色が交じり合った、毒々しい見た目の両手剣が転がっている。剣には動く竜の瞳があり、俺を見つめた。


『我を使うといい』

「どぅあえ!? 剣が……剣がしゃべった!?」


 俺は剣から声がしたので、驚いて背後に腰を抜かして尻もちをついた。


『おい、我だ。エルだ。驚くな』

「い、いや、剣がしゃべるもんだから驚くだろ普通!」

『我は普通ではないぞ』

「……確かに」


 俺は納得すると、その様子を見ていた師匠が近づいてきて、にっこりと笑う。


「エル、私は木刀を使うから、刃をどうにかできたりしない?」


 師匠の言葉に、エルは目だけを師匠に向けて、「構わん」と答えた。刃がどうなったのかはわからんけど、多分これで師匠が怪我する心配はないと思う。


「ま、最初だしね。力量がどれくらいか試すだけだから。全力で来てね。ああ、"ドライブ"の使用は禁止ね」

「どらいぶ……?」


 初めて聞く言葉だ。


「ああ、そうか。ドライブっていうのは、ざっくり言わせてもらうと、ある日突然目覚める特殊能力みたいなものよ。私のドライブは速さに関するもので、素早く動けたり、物を速く投げたり。とにかく他人より速く動けるって覚えて頂戴」


 師匠が説明したあと、エルは「ほお」と声を漏らす。


『そういえば今更気づいたが、レベッカ。お前のドライブとやらが見えるな。確かに、スピードに関する能力のようだ』

「わかるのか?」

『レベッカだけでない、他の傭兵団の皆も"見える"』

「へえ」


 師匠が感心するように目を細めた。傭兵団の皆も「すげえな」とか、口々に言う。


「じゃあ、俺は?」

『お前自身のドライブはない。いや、我と同化した事で、我自身の力である「毒」と「影」を自在に操ることができるようだな。誇りに思うといい』

「うえ、なんだそれ。気持ち悪」

『……』


 エルは俺を睨みつけてくる。師匠は「まあまあ」とエルを宥めた。


「じゃあ、アレン。エルを使うって事でいいわね?」

「ああ」


 俺の返事に頷く師匠。やっと手合わせに入れそうだ。







―――







 俺と師匠は互いにドライブを使わずに武器を打ち合う。俺は初めての戦闘だからか、振りは正直適当だし、師匠に剣をぶつけようと大きく振りかぶる。だが、俺の動きを読むように、師匠は剣を躱しては俺の身体に木刀を当てる。結構いてえ。っていうか、エルは両手剣だから結構振りが大きくなっちまうのも原因だから、余計に疲れる……!


「私、ドライブ使ってないけど、動きが遅いわね」


 師匠は俺を挑発するように言いながら、俺を確実に疲弊させようと木刀を身体に当ててくる。俺はどんどん息を切らしながらされるがままだ。

 エルはというと、俺がだんだん疲れてきているのに、何も言わなかった。


 まあ、その後10分も経たない内に俺が疲れてその場で仰向けになって倒れちまうんだけど。


「エルぅ~、なんで何も言わねえんだよ~」


 俺がエルに向かって文句を垂れると、エルはもう元の姿に戻って俺の隣にしゃがみ込んで、俺を見下ろしていた。


「助言が必要だったか?」

「べつにぃ。ただ、ずーっと黙ってされるがままだったじゃんよ」

「お前がな」


 もう言い返す気力もなかった。悔しいけど、戦った事なんか昨日のアレ以前、全くなかったからな……戦闘の訓練や実戦を経験した師匠に敵うはずもない。悔しいが、それだけは確実にわかる。


「初めての戦闘はどうだった?」


 師匠は俺の顔を覗き込んで、笑みを浮かべている。


「俺の無力さに悔しさでいっぱい」

「最初はそんなモノでしょ。いきなり私が負けたら、私は必要ないしね。ま、これでも飲んで休憩して、早速修行を始めましょう」


 師匠がそう言うと、俺の頬に何か冷たい物を当ててくる。瓶……白い瓶だ。


「それ、井戸で冷やしておいた牛乳よ。頑張りましょ♪」


 俺はそれを受け取ると、「ありがとう」と一言言って、瓶の中身を口に入れた。……生き返る気分だ。そう思いながら牛乳を飲み干す。



 その後は何事も起きることなく数日経って、団長が目を覚ます。何とか動けるまでには回復したようだ。すげえな、団長。てなわけで、団員は一ヶ所に集まって会議中だ。俺もそこにいる。


「……心配かけたな、皆」


 団長の言葉に皆は様々な反応を見せるが、各々嬉しそうだったり喜んでいたり。信頼されてんだなぁと俺は思った。


「俺が寝ている間に、何か変わったことはなかったか?」

「特に。帝国軍の追撃でも来るかと思ったけどね」


 師匠がそう答える。


「だが、今日中に移動することにしよう。あっちには魔女がいる」

「いつか言ってた、皇帝ソフィアの手下だっけか」


 俺は思わず疑問を口にする。確か、そんな事言ってたっけ。


「ああ。「バーバラ・ゴーテル=ヤーガ」。奴は魔法が使える。俺達の居場所を割り当てるなど簡単だろう」

「……だったら結構マズい状況なんじゃねえの?」

「その通りだ」


 俺の質問に団長は頷く。じゃあ早く動かないと……。


「バーバラ。あいつは現皇帝を溺愛してる奴でな。皇帝の邪魔になると判断したものは容赦なく処刑する」


 フィリドラの姉ちゃんがため息をつきながらそう言う。


「ここ数日静かだったのは気持ち悪いが、急いで移動した方がいいな」


 姉ちゃんの言葉に、皆頷く。団長は「すぐ支度しろ」というと、皆行動を始めた。


「バーバラ……というのは、あの日遠くでこちらを見ていた奴の事か?」


 エルがふとそんなことを口にする。


「は? なんだよ、何の話だよ」

「帝国軍が攻めてきた日、遠くからこちらの様子を伺っていたカカシがいた。先ほど、魔女は魔法が使えると言っていたな。そのカカシは様々な色を持っていた……つまりは、そのカカシは、そのバーバラとかいう魔女ではないか?」

「……見てやがったって事かよ」

「そうだな。こっちの動きは筒抜けだったという事だ」

「その後は?」

「お前が暴走していたころはずっと見ていたが、お前が正気に戻ったころは消えていた」


 エルが淡々と答える。……魔女が直接俺達、いや、傭兵団を観察してたって事かよ。


「魔女、そいつとはどこかで確実に会いそうだな」


 俺は誰に言うでもなく、そうつぶやいた。

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