16 冤罪と処刑と救出劇
冬。そして、ここは岩手。最高気温五度だと、今日は暖かいねーなんて世界。でも、どんなに寒くても、スカートは長くしない。その代わり、ガーターストッキングを導入。スカートとストッキングの間に十センチだけ露出した絶対領域というのを残すと、素足よりもエロく見える素敵なアイテムだ。
このストッキング、聖子さんに作ってもらったのだけど、炎魔法の加熱がエンチャントされてる。それだけじゃなくて、夏は冷風機能に切り替えることもできて、素足よりも快適。ああ、もっと早くもらえばよかった。
そしてもうすぐ二年生。俺は身長が五センチ伸びた。茜は三センチ伸びた。差が付いたのに気が付かなかった。
胸は俺も茜も一カップアップしてHカップになってしまった。これも、服が伸びる素材になっていたから気が付かなかった。でも、セディールが一年で一カップアップするのはともかく、茜は普通の日本人なのになぜ一カップもアップしてしまったのか…。しかし、Gカップでも無理があったのにHカップになるのを許してしまった…。ただし、仕事のときはGカップまで小さくしている。それが規則だ。
学業の方は結局、一年間、茜の中間テストと期末テストの半分くらいは、俺が発話と読心で面倒を見た。茜は高校でやっていける学力なんてなかったんだ。
でも二年生からはコース選択がある。俺は普通の高校を出たから、専門系の科目は受けたことがない。せっかくだから、やったことない科目を受けたい。
自分の勉強をしながら、茜のサポートもできるだろうか…。
「この農園では学校もやってるのよ。ヒスターニアの学園と、日本の小学校から大学院までの内容よ」
「えっ…、早く言ってくださいよ…」
「だって、あなたは茜ちゃんと高校生活をすることが目的だったんでしょう」
「そうだったわ…」
「せっかくだから最後まで頑張ったら?」
「はい。でも、茜の面倒を見ながら付いていける不安で…」
「そうだ、あなたの端末に授業動画のアプリが入っていたでしょ?」
「えっ、何ですか、それ…」
「小学校から大学院までの全学年の全授業を録画した動画よ」
「もう!早く教えてくださいよ!」
「農園の学校に行ってる子には教えてるんだけど、あなたはすぐ日本に行って高校に行くって言うから、言う機会を逃したわ」
「なるほど…。農園の学校を見学させてください」
「日本の高校と時間がかぶるわよ」
「うう…」
「ここでの授業風景も録画してあるから、アプリで見られるわよ」
「ああ、それなら」
農園の学校での授業風景を見た。転生者と召喚者が勉強しているようだ。皆、俺のように志半ばで死んで転生した人や、勝手に召喚された人だから、真剣に勉強している。
元からここに住んでいた人は、今二十歳を超えている大人か幼児しかいないようで、学校には行っていないらしい。
ここで勉強できるなら、高校で真面目に勉強する必要ないかな。でも、学費が無駄に…。やっぱり高校で頑張るか。せっかく工業高校なんだから、機械科進んで農園で受けられない実習系を充実させよう。そして、地球の機械技術と異世界の魔道機械技術のハイブリッドを目指そう。
俺が機械科を選んだら茜も付いてきた。アプリ動画で予習復習していれば、自分も遅れを取らずに茜の面倒を見られる。
なんだかんだいって、俺は学年トップの成績をキープしてやっている。公爵家の血が優秀で助かる。
茜もなんとかギリギリでやってる。テストで発話と読心を使ってサポートするのは、落第しないようにするので留めることにした。やはり、ズルして優秀に見せても意味がない。茜はドジっ娘キャラのままでいい。
そして三年生。俺は身長一六五でバストはIカップ。茜は一六一センチでバストはIカップ。仕事のときにGカップまで小さくしなきゃならないのが不満。
成績トップにもかかわらず大学に進学しないと言ったが、認識阻害のおかげで俺に関することは問い詰められることはない。
「お姉ちゃん、あと半年で卒業だね」
「ええ、そうね」
このまま学業をこなしつつ、何気なくすごしていれば、晴れて茜と結婚だ。
広いベッドの上で茜と二人。これからもずっと…。窮屈ではないベッドで…。
「お姉ちゃんは、いつも寝るとき誰のことを考えてるの?」
「えっ?それは…、茜のこと…」
「お姉ちゃんはいつも心ここにあらずだよ。私以外の人のことも考えてるよね」
「そんな…」
「いいんだよ。私とすごしてない五年間の間に、お姉ちゃんにも好きな人ができたんでしょう。大事な人だったんじゃないの?」
「そんなこと…」
そんなこと…、ある…。俺はずっと、寝るときやシャワーを浴びているときにコレミナとエリスのことを思い出していた。
「あるんでしょ。気になってるんでしょ。お別れも告げずに来ちゃったんでしょ」
「うん…」
「会いに行こうよ」
「うん!」
しかし…、ヒスターニアからサイカトリーまでは三千キロ。俺の魔力で瞬間移動できるのは十キロまで。幸い魔力を消費しないので、三百回繰り返せば行けるが…。連れてきてもらったときと同じようにあいかさんに頼むしかないか。
「あいかさん!」
「レディの部屋なんだからノックくらいしてね」
「あ…、あの…、私と茜をサイカトリーの連れて行ってください!」
「茜ちゃんも行くの?」
「私も行きたい!お姉ちゃんの彼女に会ってみたい!」
茜は俺を女だと思っているんじゃないのか…。なぜ彼氏ではなく彼女という言葉が出てくるんだ…。
「それに、その格好で行くの?」
「あっ…」
ベッドで話をしていて慌ててきたから、ネグリジェままだった。
「顔はどうするの?」
「私はサイカトリーで指名手配されているかもしれないので、顔はこのままの方が都合がいいです」
「そう…。穏やかじゃないわね…。じゃあ、私が付いていくわ。でも、とりあえず明日にしたら?就寝時間よ」
「そうでした…」
「明日までに情報収集しておくわ。明日は土曜だから、学校は休みでしょ?恵子さんには私から伝えておくわ」
「すみません…」
部屋に戻って、茜とベッドに入った。
「ねえお姉ちゃんの彼女ってどんな人?」
「えっと…、彼女っていうか、二人とも私のことを慕っていてくれて…」
「二人もいるんだ!」
「あ、うん」
「いつも三人で寝てたの?」
「うん…」
「いつも三人でお風呂入ってたの?」
「お風呂はないけどシャワーを…」
「それでいつも、ベッドとお風呂で上の空だったんだね」
「ごめん…」
「いいよ。明日、会えるといいね」
「うん…」
翌日…。
「二人とも、行くわよ」
「あれ…、おはようございます、あいかさん…。今何時…」
「六時よ」
「まだそんな時間…」
茜は当然夢の中。
「今日、コレミナ・フラタゾラム公爵令嬢とエリス・フルジアゼパム侯爵令嬢とミスリー、元ゾルピデム子爵令嬢の公開処刑が決行されるみたいよ」
「まさか!ミスリーまで!」
っていうか、ミスリーの家名、聞いたことなかった…。家を出たからもう子爵家ご令嬢ではなかったのだろうけど。
「さあ、これに着替えて」
「これは…、サイカトリー王立学園の制服…」
しかも、今の俺の体型で、スカートの丈が丁度パンツが見えるように調整されており、シャツの胸のボタンは上の三つが止められないように調整されている。そして、学園の制服にはなかったガーターストッキング付き。
しかも、あいかさんも同じ制服を同じように着こなしている。
「はい、こっちは茜ちゃんの分」
茜の体型は、俺と少し差が出てしまっているが、眠ったままの茜を念動で浮かせて制服を着せたら、同じ着こなしになった。
「なんで三年前の私と同じ…」
「三年前のあなたたち三人の映像を見たけど、これが標準なんでしょ?」
「そ、そうです…」
そう、これが俺たちの戦闘服!
「じゃあ行くわよ」
「あっ、茜を浮かせたまま」
気が付くと、サイカトリーの王都。裏路地?
「もう、茜ちゃんは置いてきてもよかったんだけどね。とりあえず、茜ちゃんの念動を解いてくれたら、私が操作して歩かせるわ」
「は、はぁ」
茜の念動を解くと、緩やかに着地して自立した。そして目を瞑ったまま、まるで起きているかのように歩き出した。こんな魔法まであるのか?
裏路地から少し行くと、見慣れた広場に出た。そして、見慣れない立て看板が一つ…。
(本日、朝七時、コレミナ・フラタゾラム公爵令嬢とエリス・フルジアゼパム侯爵令嬢とミスリー、元ゾルピデム子爵令嬢の公開処刑を執り行う。罪状は、失踪したセディール・タンドスピロン公爵令嬢と共謀し、トラゾド・サイカトリー第二王子殿下を陥れ、国家転覆を狙ったこと)
「よくもヌケヌケとこんなでたらめを…」
「でしょ?酷い世界よね。ぶち壊すべきよ」
「はい」
「三人はもうじきここに運ばれてくるわ。見えたところでダミー人形と交換よ」
「ダミー人形?」
「ええ。ほら、来たわ」
来た。台座に乗せられた、コレミナとエリスとミスリー…。
「はっ?」
「あれっ?」
「えっ?」
遠くに見える三人の声が、なぜか側から聞こえる…。
「ここはどこですか?」
「景色が変わった?」
「今まで台座に乗せられていたはずなのに…」
三人は俺の側にいた。ああ、交換って、瞬間移動か。俺は思わず三人に抱きついてしまった。
「コレミナ!エリス!ミスリー!」
「すみません、どなたですか…。あ…」
「あ、なんか懐かしい感触」
「このお声は…」
あ、顔を変えてるんだった。俺は、顔の変形魔法と体型変化の魔法を解いた。
「わたくしよ、セディールよ」
「セディール様…、のお声ですが…」
あれ…、戻らない…。
「あ、何年も体型変化の魔法を使いっぱなしだと、細胞が入れ替わって定着しちゃうのよ」
「えっ…、身長もこのまま?」
十五歳の時に一七五センチから一五五に小さくして、三年近く経って一六五になったけど…。元に戻ったら一八五くらいにはなると思ってたのに…。コレミナとエリスは一八〇はある。俺が二人を見上げる形になっている…。
「この子は魔法で顔を変えてるけど、セディール・タンドスピロンなのよ」
「信じて!三人とも」
「「はい!セディール様!」」
「セディールお嬢様…なのですか…」
「ええ、そうよ…」
「でも、そちらに目を瞑ったままで同じ顔の方が…」
「あっ…」
茜…、まだ寝てた…。
「こっちはあとで紹介しますわ…」
「あの…、広場の台座に、私たちと同じ姿をした人たちが…」
「あれはあなたたちの形をした人形よ」
「そっくりです…」
「あなたたちのクローンだからね」
「クローン?」
「えっ…、あいかさん…、クローンを代わりに処刑させるんですか?」
「いいえ。まあ見てて」
「はぁ」
クローンってものが存在してるってことも驚きだけど…。
「これより、コレミナ・フラタゾラム公爵令嬢とエリス・フルジアゼパム侯爵令嬢とミスリー、元ゾルピデム子爵令嬢の公開処刑を執り行う!失踪したセディール・タンドスピロン公爵令嬢と共謀し、トラゾド・サイカトリー第二王子殿下を陥れ、国家転覆を狙った極悪人である!」
刑の種類は?例えクローンでも、どんな刑でも、見たくないんだが…。
「刑の内容は、炎魔法による火あぶり!」
やめてくれ!見たくない!
処刑人の放つ炎の魔法が、三人に到達する寸前………、姿が変わった!一人は、トラゾド・サイカトリー第二王子。一人は、セルシー・ジアゼパム。一人は、誰?知らないぞ。
「きゃーっ、殿下がぁー!」
「早く火を消せ!」
処刑人は魔法を放つのをやめているのに、燃え続ける三人。水魔法で水をかけて火はようやく消えた。
いやぁ…、俺の大事な三人じゃなくても、これはどうなのか…。
「あれは、あなたの知っている王子とセルシーじゃないわよ。あれも、クローンの皮を被っているだけの人形なのよ。ちなみにもう一人は、王子の側近よ」
「はぁ…」
残されたのは、酷い火傷の王子とセルシーと側近。そして、三人は拘束を解いて、なぜか辺りの建物を破壊し始めた。
「きゃー、殿下!お気をたしかに!」
「セルシー嬢、やめなさい!」
「あいかさん…、あれはいったい…」
「目には目を歯には歯を。あなたたち、四人であれを倒しなさい」
「「「「えっ…」」」」
「そうすれば、汚名を晴らせるでしょう」
「なるほど…」
「あ、あなたはセディールの顔を作らないとダメね…。予定外だわ…。鏡をあげるから、ちゃちゃっと作っちゃいなさい」
「は、はい」
「三人は囚人服じゃまずいから、学生服に着替えてね」
「「「はっ?」」」
三人は一瞬にしてサイカトリー王立学園の制服にチェンジした。ミスリーまで…。ミスリーは二十六歳のはず…。まだまだ私もイケるってやつだ。
そして、スカートは丁度パンツが見える程度、シャツは丁度ボタンが三つ閉められない程度のサイズを忠実に守っている。ガーターストッキング付き。でもミスリーは少し恥ずかしそうだ。元子爵令嬢の二十六歳には、少々厳しかったようだ。
その間にも、建物を破壊している王子たちのクローン人形。
「人間を傷つけたりしないですか?」
「建物だけよ。それも、あとで直すわ。でも、攻撃したら軽く反撃するわよ」
「それってわたくしたちにも…」
「そうよ。顔はできたわね。じゃあ行ってらっしゃい」
「「「はい!」」」
「はい…」
一人だけ乗り気でない俺。もう、汚名とかどうでもいいから、もうおうちに帰りたい…。
そしていまだに立ったまま眠っている茜。茜はお留守番だ。
町を破壊する悪魔に取り憑かれたような王子たちを退治する正義の味方という形で、俺たちは参上した。素晴らしい茶番だ。えん罪はえん罪で返す…か。あ、でもセルシーちゃんは日本人のはず…。俺はセルシーちゃんに填められたのかもしれないけど、彼女も被害者なんだ。その辺、考えてるよな、あいかさん。
「国家転覆を企んでいたのは、コレミナ嬢とエリス嬢に化けた、トラゾド殿下とセルシー嬢だったのよ!王子たちは化けの皮が剥がれて暴れているわ!みんな応戦して!」
「「「はい!」」」
あいかさん…、酷い茶番だ…。コレミナたち三人はノリノリだ。
コレミナは炎の弓矢の魔法をセルシー人形に放つ。セルシー人形はそれを回避。手ごわいな。そして、聖なる弓矢を放って反撃してきた。おい、人形だろ?聖魔法を使うのか?
エリスは雷の弓矢の魔法を側近の人形に放つ。側近の人形はそれを回避。そこに、ミスリーが光の弓矢を打ち込んだ!ミスリーの魔力は、コレミナやエリスに比べて弱いのか、側近の人形は多少ひるんだだけで動き続ける。
俺は、セディールが小さい頃に家庭教師に習ったきりの攻撃魔法、闇の弓矢を王子のクローン人形に放つ。王子の人形はそれを剣でいなし、俺に飛びかかってきた。ちょっと、それって手加減してくれてるのか?
くそっ、剣に弓矢で応戦するのは無理だ。俺は避けきれずに……、
ガイーン!剣と剣がぶつかり合う音。王子人形の剣を受けたのは……茜?茜が手に持っているのは……曲刀…、日本刀?茜は、そのまま王子の人形と打ち合い。茜…、そんな素速い動きができたのか…。俺の目には速すぎてよく分からないぞ…。茜は刀に雷の武器の魔法をかけた。えっ…、茜にそんな魔法は…。電撃を帯びた刀の攻撃を受けた王子人形は、しびれて動きが鈍くなったようだ。
ん?茜は目を瞑っている…。目を瞑っていてもその動き…。いや……、いびきをかいている…茜は眠っているのか?じゃあ、あれはあいかさんが念動で操っているのか…。茜があんな動きするわけないよな…。
と思ったら、あいかさんはコレミナと一緒に、炎の矢を撃って、セルシー人形を攻撃している。茜はあいかさんに操られてるんじゃないのか…。あいかさんの魔法はこの世界の魔法の範疇を超えすぎてて理解不能だ…。
あいかさんとコレミナの炎の矢はセルシー人形を打ち倒した。
あいかさんの作った人形だから、適当なところでやられてくれるんだよな?
じゃあそろそろ、王子人形も…。よし!王子人形も倒れた!トラゾド王子殿下の剣によって。




