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異世界の悪役令嬢に転生した俺は日本に戻って…  作者: はぴぴ
2章 悪役令嬢は日本へ
15/21

15 悪役令嬢と変身ヒロインと文化祭

 日曜日。休日は旅館の泊まり客が多いので、朝五時に起きて仕事することになっている。でも、


「茜、起きて!」

「むにゃむにゃ…」


 茜は朝に弱い。平日だってこんな感じだ。眠ったままの茜を念動で浮かせて服を着せる。


 それから、洗顔と歯磨き代わりの清浄の魔法。そう、この部屋には最初から色々な備品が備え付けてあったが、石けん類や歯ブラシはなかった。あいかさんにもらいに行ったら、清浄の魔法で代用しろと。なるほど。

 風呂にもコンディショナーしかなかった。身体を洗ってから風呂に入るという習慣の代わりに、清浄の魔法をかけてから風呂に入っている。風呂は身体と心を温めるためだけに設置しているようで、毎日入っていない人もいる。


 あとは髪の毛を解いて、仕事しやすいように結んでやるくらい。

 寝ぼけたままの茜の支度をしていると、エリスを思い出す。ああ、もう忘れなければ…。


 教会内なら門外不出の魔法を使ってもいいと言われている。念動や体型変化など、ここに来て教えてもらった魔法だ。だから、眠ったままの茜を念動で食堂まで運んでいたら、他の住人が目をむいていた。ここで魔法を使って驚かれるとは…。


 食堂の席に茜を座らせる。寝ぼけた茜の口に料理を運ぶ。懐かしいな。前世でもよくこうやっていた。しばらく食べさせていると、


「お姉ちゃん…、おはよ…」

「おはよう、茜」


 こんな感じだ。ようやく茜のスイッチが入って、いざ仕事へ。



 旅館のロビーで客の見ているテレビ…。


『今月は、○○国がメリディアンの支援を受けました』


 メリディアンとは、日曜朝八時半に放送している、女児向け変身ヒロインアニメ…のキャラのような格好をした、地球上に存在する本物のヒロインである。

 六十年ほど前に突如現れ、魔法の力で戦争を制圧し、魔法の力で衣服や食べ物、すみかを提供している。

 そう、地球にはすでに魔法の存在が知られている。だからといって、この旅館で魔法が使われていることを知られてはならない。


 衣装は魔法少女風だし、中身も一四〇センチくらいの女の子なのだが…。実際は、胸はPカップの爆乳をこれでもかというほど見せつけて、パンチラするほど短いスカート、ウェストは太ももよりも細い。顔はアニメキャラのように目がぱっちりとしていて、人間離れした美しさ。そして、六十年間容姿が変わらない。

 あれ…、ここまでいっていて気がついた…。


「ねえ、お姉ちゃん。お姉ちゃんって、メリディアン?」

「ち、違うわよ!」


 俺はあんな格好はしたことない。…が、体型は酷似しているな…。胸はあそこまで大きくないが…。


「じゃあ、農園に住んでる誰かかな?」

「そうなのかも…」


 そうだ、ここには俺みたいなボンキュっボンはざらにいるのだ。Pカップの人もいっぱいいる。なぜPというサイズにこだわっているのかは分からないが…。


 メリディアンは合計七人。髪色は、金色、水色、薄紅色、ややピンクっぽい銀色、あとは黒が三人。

 明るい水色と薄紅色は、サイカトリーやヒスターニアの貴族に見られる、光沢のないべた塗りしたような色だ。

 金は見事な金色で地球ではなかなかお目にかかれない。セルシーちゃんがこんな色だった。

 ピンクっぽい銀髪…、農園に来てから見たことがある…。

 黒髪は日系人か。闇魔法使いの色ではない。顔はちょっと日本人か分からない…。


 仕事を終えて、あいかさんの部屋に真っ先に向かった。


「なるほど…。ここで生まれて育った人はあまり気にしていなかったようだけど、転生者や召喚者はそういうことが気になるのね…」

「ということは…」

「でも、それ以上追求したら、認識阻害をかけるわよ」

「えっ…」

「さあ、さっさと帰りなさい」

「は、はい…」


 あいかさん、もしかしてメリディアン…。身長は違うけど身長なんて俺も弄ってるし。

 あっ、あいかさんの、何でも作れる魔法!メリディアンは建物だけでなく、インターネットなどのインフラ設備も一瞬で作り上げてしまうという。やっぱり、あいかさんはメリディアンの一人だ!

 それが分かったところで、まあ何かすることもない。あいかさんは認識阻害と言っていたが、あれは、消すわよという雰囲気だった…。もう忘れよう…。



 忘れようと思っていたのに…、


「文化祭の出し物は、多数決によりメリディアン喫茶に決定です!」


 教室のタッチパネルモニタに列挙された、出し物の候補。メイド喫茶二票、水着喫茶十二票、バニーガール喫茶一票、ベリーダンサー喫茶一票、タヒチアン喫茶一票、メリディアン喫茶十三票。

 俺と茜に着せたい衣装の投票じゃないんだぞ。でも、あえていうなら水着がよかったなぁ。まあいいか。メリディアンも十分露出度高いし。


「でも、衣装、どうするんだ?」

「実は、俺、メリディアンの本物の衣装を二着だけ持ってるんだ」

「「なんだと?」」


 メリディアンは難民や貧しい地域の人々に、衣服を提供している。その中に、毎回メリディアンの衣装がアタリとして含まれているのだ。当初は手に入れてこそのまま使う者はほとんどおらず、プレミア価格で取引されていた。だが、メリディアンは昔は毎週活動していたし、今でも毎月活動しているから、徐々に普及していって、今ではそれほどの値段で取引されてるワケではないが、それでも数十万はするのではないか。


「フフフ…。俺のコレクションを開放するときが来た。この二着は茜ちゃんと(かおる)ちゃんに着てもらおう。残りの女子の分も、模造品になってしまうが、全員分あるぞ」


 春香の護衛を解いてから、俺の名はちゃんとみんなに覚えてもらえていた。


「おまえ、メリディアンマニアだもんな」

「衣装の費用や手間がなくせるなら任せる」

「よし、女子もそれでいいな」

「いいわよ」


 準備はとんとん拍子に進み、文化祭は明日に迫った。


 衣装を試着した。俺はブラックで、茜はレッドだ。

 だがメリディアンというのは身長一四〇センチなのだ。一五五センチの俺と茜には入るわけない…こともなかった。いろいろな部分が不思議と伸びる素材になっていて、普通の十歳の子でも着られるようになっている割には、俺たちみたいなGカップでも苦しくない。でも、スカートはさすがに伸びるわけなくて丈が足りない。懐かしい。十歳の時、十五歳相当の体つきだったのに十歳のスカートをはいていた日々。でも、パンツ丸見えというのは日本の高校の文化祭ではまずいらしくて、水着をはくことになった。スクール水着じゃなくて普通の水着でよかった…。


 そして、靴は十五センチのハイヒールブーツ。下駄タイプではなくて、ほぼつま先立ち。これも少し小さめだが、紐で縛るタイプだったので、なんとか入った。でも、不安定過ぎてこけそうだ。サイカトリーにはハイヒールという文化はなかったから履いたことなかったが、なぜか履きこなせた。これは良い。俺の長い足がさらに長く見える。

 でも、茜は転びまくっている。このままでは茜は配膳できないので、転んでパンチラする専門となった。水着だけど。


 この衣装…、縫い目が全くない。聖子さんが紡いだんだな…。うちの農園の誰かがメリディアンなのは確定だ…。


「茜ちゃん…、香ちゃん…。メリディアン、似合いすぎだよ…。おれ、メリディアンコレクターやっててよかった…」

「二人ってもしかして…」


 ああ、認識阻害のエンチャント追加だ。俺たちとメリディアンの関係ついて…。


 他の女子は、普通にコスプレ衣装屋で売っているものを着用。谷間ができるほどの胸の持ち主は俺と茜の他にはいないが、スカートの長さは忠実に再現されている。



 こうして迎えた文化祭当日。メリディアン喫茶と水着喫茶とメイド喫茶の戦いの火蓋は切られた。えっ?何それ?

 いつの間にか、他のクラスと喫茶店勝負することになっていた。


「うちには茜ちゃんと香ちゃんという切り札がいるのだ!負けるはずがない!」


 対戦相手は両方とも三年生。普通に考えると色気では分が悪いが、俺と茜にかなう女子などいない。


「いらっしゃいませ。ご注文はこちらの端末をご覧になって、わたくしにお伝えください」


 文化祭は地域の人も入れるようになっている。客は近所の企業のお偉いさんか?

 俺はご令嬢スマイルで客を迎え入れた。悪役令嬢の高笑いではない。そこはセディールから受け継がなくてよかった。


「このメニューだと、食品衛生管理者が必要じゃないのかね?」


 メニューにはコーヒーなどの飲み物だけでなく、軽食も載っている。


「うふふ、あちらをご覧ください」

「なるほど。失礼した」


 レジの上に立てかけてあるのは、食品衛生管理者、綾瀬香の画面と、調理師、綾瀬香の画面を表示した端末。恵子さんに言われて取得していたのだ!というのはウソで、あいかさんに偽造してもらった。実務経験が必要なので、そうそう取得できない。

 でも、この日のために、そして、俺の女子力を見せつけるために、資格を持っていることにした。公爵家のシェフにまで教わって王子の弁当を作り続けた俺の料理をとくと味わえ!

 といいたいところだが、俺は、というか女子はウェイトレスを外れることができないので、男子に料理の腕を磨いてもらった。女子は破廉恥な衣装で表に出ているのだから、男子が裏方を頑張るのは当たり前。俺が料理を教えたら喜んで請け負ってくれた。


「それで、ご注文をどうぞ」

「ああ、この公爵家のハンバーグというのをライスとコーヒーのセットで」

「かしこまりました」


 端末でメニューを選ぶと厨房にそれが伝わるシステムなんてのは、無料アプリで公開されていて、文化祭のような場でも気軽に使える。

 でも、ここでは客席の端末はメニュー代わりだ。ウェイトレスが別の端末を持っていて、客はウェイトレスに注文を口頭で伝える。八十年くらい前まではこういう形式で注文を取っていたらしいが、ウェイトレスが客席を訪れる頻度を増やすために、わざと口頭で注文を取っている。おかげで大忙しだ。

 ちなみに茜はハイヒールで転ぶからウェイトレスとしては使えない。転ばなくても配膳係として使えないことは旅館の仕事で証明済みだ。だから茜には外を回って客の呼び込みをやってもらっている。


 ふう。メリディアン喫茶は大盛況のうちに終わった。


「みんな、お疲れ様」

「いやぁ、香ちゃんは料理もできるなんてすごいね」

「ホント、調理師と食品衛生管理者もできるなんて…」

「こんな本格的な喫茶店ができるとは思ってなかった…」


 どこで習ったのかとか、免許をいつ取ったのかとかいう質問は魔法により抑制されている。俺は才色兼備。理由なんてどうでもいいじゃないか。


「茜ちゃんも呼び込みありがとう」

「私、転んでただけだよ…」

「それがいいんだよ」


 そういえば、ずっと自分の店に付きっ切りで、他のところを見て回るのを忘れてた。まあいいや。自分たちで作り上げるのが楽しいのであって、他の人が作ったものなどどうでもいいのである。


「みんな、勝ったよ…」

「「「「やったー」」」」


 勝負してるとか言ってたっけ?なんの勝負?売り上げだったら軽食は有利に働くし、客の数だと軽食がある分回転率が落ちて不利だし。味?コーヒーの?勝負になるの?料理はけっこう自信あるよ。

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