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異世界の悪役令嬢に転生した俺は日本に戻って…  作者: はぴぴ
2章 悪役令嬢は日本へ
13/21

13 悪役令嬢は高校入学する

 高校の制服が届いた。もちろん胸のボタンが閉められない。さすがに入学早々これはまずいので、聖子さんに同じ素材で、胸の収まるシャツを仕立ててもらった。でも…、胸元の開いてない服には違和感がある…。セディールの記憶にも、胸元の開いてない服を着ていた記憶はない…。

 スカートはまあ、普通にはけた。でもおかしい。パンツが見えないのには違和感がある…。セディールも学園でパンチラしなかった日は一日たりともない。

 いや、これは日本の高校の制服なんだ。サイカトリーと一緒にしてはダメだ。でもパンツが見える寸前なら日本でも大丈夫だよな。結局スカートも聖子さんに作ってもらった。

 もちろん、茜も同じ物を作ってもらった。


 制服姿で学生証用の写真を撮った。胸元まで写すわけじゃないから改造制服でも問題ないはず。あいかさんのくれた携帯端末のカメラは性能が良すぎる。美人に写りすぎて困る。

 この写真を添付して入学の手続きをした。端末からオンラインでできる。数日したら、端末に写真入りの学生証IDが発行された。これで端末が学生証として使える。

 結局、茜は中学校の卒業式に行かなかった。高校の入学の手続きは、滞りなくできたから、卒業資格はちゃんとあったんだろう。

 ところで、俺は偽装した学歴だが、問題なく入学できた。こういうのって人間がチェックしてないんだな。



 そして水沢工業高校入学式の日がやってきた。


「お姉ちゃんと高校!楽しみ!」

「ホント、楽しみね」


 旅館から学校までは歩いて三十分。この身体に転生してから三十分も歩いたのは初めてかもしれない。小さくするの魔法は筋力も落ちてしまうのだが、とくに疲れたり足が痛くなったりしなかった。


 この大きな胸は、歩くだけでたっぷんたっぷんと揺れる。だが、肩が痛くなったり疲れることは全くない。無重力ブラジャーの魔法が過度な負担を吸収してくれるからだ。それなのに重量感と揺れを堪能することができる。やはり、教えてもらった魔法の中で一番のチート魔法だ。


「お姉ちゃん…、おんぶ…」

「もう少しがんばって…。今は双子なんだから」

「うう、そうだった…」


 ほんとうはおぶってやりたい。昔みたいに。でも双子がおんぶで登校するのはちょっと…。今の俺は十八歳の男ではないし、茜も十歳ではないのだ。


 ところで、茜は魔力が上昇して、十キロの物を浮かせられるようになった。やはりそこで、魔力向上の薬の提供は打ち切られた。

 そこで茜が試したのは、自分を浮かせること。もちろん茜は四十五キロはあるので、浮いたりはしないが、体重を十キロ減らすことができるようになったのだ。それにも関わらずこの体たらく。

 茜…、勉強も運動も、低スペックかもしれない…。今はボンキュっボンだが、もともと高校生にしては発育が良かった。やはり、栄養分が胸に吸いとられているのでは…。

 いや、俺は茜の五年間を知らない。どんな学生生活を送ってきたのだろう。引き取ってくれた親戚とはうまくいってたんだろうか。

 まあいい。これからは俺が茜に勉強を教えてやれるし、何があっても守ってやれる。


 ところで、茜が自分の身体を浮かせようとするまで、俺は自分が空を飛べることを知らなかった。俺は念動で一万キロまでの物を浮かせられるので、自分の身体はもちろん、車でも家でも持ち上げられそうだ。

 だからといって地球で飛んでいると、魔法の存在がばれてしまう。ヒスターニアでもサイカトリーでも飛ぶ魔法なんてものはなかったので、自由に飛んでよい場所などないのだ。


「はぁ、はぁ、やっと着いた…」

「お疲れ」


「ねえ、お姉ちゃん、みんな私たちのこと見てる…」

「そ、そうね…」


 道行く生徒たちが、皆俺たちのことを見ている。サイカトリー王立学園のときと違って、胸もパンツも見せてないはず。それなのになぜ…。そうか!忘れていた。日本にボンキュっボンの女子高生なんて存在しないことを…。

 サイカトリーにいたときは、俺は学年一の美人で、胸も一番大きかった。コレミナとエリスは俺に次ぐ美人で、胸も二番目に大きかった。それ以外も、貴族といったら基本美人で巨乳のボンキュっボンが当たり前だったのだ。お嬢様というのは男にアピールするために水着のような制服を着て露出をするのが当たり前。そういう世界だった。

 そして、ヒスターニアに来たらどうだ。周りはセディールなんて目じゃない美人のボンキュっボンばかり。胸はLカップが最低ラインで、Pカップがざら。Gカップなんて仕事着みたいなもんだ。それに旅館の人たちもみんなGカップだったけど、オフのときはLとかPにしてるに違いない。

 ここ数年で、美形や胸の大きさに対する感覚が麻痺していた。Gカップボンキュっボン美人が高校生に通ったらどうなるかなんて、火を見るより明らかだったのに、今の今まで気がつかなかった…。そして誰も止めてくれなかった…。みんな感覚が狂ってるんだ…。


 熱い視線を浴びながらの入学式。お前ら壇上の校長を見ろよ。俺たちのことを見るんじゃない。

 俺は大学に行ってないにも関わらず、入学式というものを五回も経験している。茜は開始一分で寝に入った。


「お姉ちゃんと一緒のクラスだ!」

「だって、そうしてもらったじゃない」


 クラス分けの掲示板に集まった。実は、茜と同じクラスになるように、あいかさんに仕組んでもらった。茜と違うクラスなら、学校に通う意味は全くない。それに、茜は一人じゃやっていけなそうだ…。

 教室の席に座った。名前順で他にア行はいないから、茜は左端の最前列。当然、俺は茜の後ろだ。もし綾瀬って苗字でアとカの間に誰かいたら、別のクラスに行ってもらうようにあいかさんに頼んだと思う。いや、名前順なんて最初だけだから、こだわってもしょうがないんだが。


 オリエンテーションが終わって、下校の時間だ。


「ねえ、俺、…」


 後ろに座っていた男子が俺に声をかけ…たのを遮って、


「ねえ、私、飯田春香。綾瀬かお()ちゃんよね、一緒に帰らない?」


 その後ろの女子が声をかけてきた。しかも名前を間違えられた。まあ今までも間違えられて生きてきたのだ。おまけに、女にも間違えられる。小さい頃はコンプレックスだったが、いつの間にかどうでもよくなった。

 そして、今は女であるというのは間違ってない。ある意味既成事実となった。やっぱり、神が意図的にやったとしか思えない。


「よろしく。でも私の名前はかお…」

「そっちは茜ちゃんね。さあ行くよ」

「はぁ」

「あ~れ~」


 名前を訂正しようとしたら、俺と茜は春香という子に腕を掴まれた。そして、教室をあとにした。

 振り向くと、残念そうな男子の姿。俺に声をかけようとしていたやつだけでなく全員だ。なるほど、連れ去ってくれてありがたい。あのままあそこにいたら、抜けられなくなっていただろう。


「ここまで来れば大丈夫」

「あの、春香ちゃんだっけ、ありがとう」

「飯田さん、ありがとう。でも、帰る方向は同じなのかしら?私たちはこっちで合ってるけど」

「ねえ、あんたたちって、聖天の氷上旅館の関係者?」

「えっ、なんで分かるのかしら…」

「その…あんたたちの胸が旅館の従業員と同じ大きさだから…」

「えっ、そんなことだけで特定されたちゃうのね…」

「ということは、関係者か」

「ええ、住み込みでバイトしてるわ」

「あの旅館はGカップの美人が拝める場所として有名なんだよ。おかげで、観光客も増えたし、企業の誘致とかも進んでるよ」

「そ、そんなバカな…」

「旅館の温泉に秘訣があるんじゃないかと思って何度か通ったけど、豊胸の効果は得られなかったよ…。でも、ニキビとか体調はすごく良くなったし、美肌効果は抜群だね」

「それはよかったわね…」


 あの温泉には、湯船自体にエンチャントがかけられていると聞いた。聖属性魔法の仲間回復の効果を弱めて。十二時間ほど入っていれば、癌も治してしまうらしい…。

 それから、あいかさんに教えてもらった清浄の魔法も。湯船自体を清潔に保つだけでなく、人にかけると体内のウィルスや細菌、老廃物を除去してくれる。ちなみに、乳酸菌などの善玉菌は残してくれる。

 そして、ヒスターニアの大浴場と同じく、魔法の化粧水が入っているらしい。

 そんな奇跡のような温泉をやっていて、魔法の存在がばれないのだろうか…。しかも、温泉より美人従業員のが売れてるのか…。


「そこであんたたちの登場さ。なんであそこの従業員は美人揃いなの?」

「それはね、認識阻害!」

「えっ……、えっと…、」


 闇魔法、認識阻害。人にかける魔法で、対象物や事柄を認識できない。存在を認識できないのではなくて、その物体や事柄を疑問に思ったり話題にすることができない。

 この場合は、直前の疑問、つまり、旅館の従業員は美人揃いという事実を認識阻害した。


「どうしたのかしら?」

「なんか重要なことを聞いていたような…」

「氷上旅館の温泉で体調が良くなる秘密のことよね」


 っていうか、旅館の名前初めて知ったよ。


「そう、それ…を聞いてたんだっけ…」

「私も勤め始めたばかりで知らないのよ。ごめんなさいね」

「いや、いいよ」

「それより、飯田さんは帰る方向、こっちで合ってるのかしら?」

「あ、ここで曲がるんだ」

「そう。なら、ここでお別れね今日はほんとうに助かったわ。ありがとうね」

「あ、うん…、どういたしまして…」

「それじゃあ、また明日ね」

「またねー、春香ちゃん」

「ばいばい、茜ちゃん、かお()ちゃん」


 ああ、名前を訂正できなかった。

 春香と別れて見えなくなったところで認識阻害の魔法を解いた。すると、ドタドタと音が聞こえてきて


「思い出した!なんで旅館の…」

「認識阻害!」

「あっ…」

「どうしたのかしら?」



 さて、帰ったら旅館の仕事だ。茜も十キロの物を念動で持ち上げられるようになったので、手で持っているように見せかけて念動で運ぶようにした。これなら、手が滑っても物を落とすことがない。と思ったら、


「お姉ちゃーん、助けてぇー」

「まあ、何やってるの…」


 魔法のイメージが途中で途切れて、十キロの物の下敷きになっていた…。魔力の上昇だけじゃなくて、魔法のイメージを磨いたり、途切れさせないように集中させるほうも練習しないとだな。


 ちなみに、本来なら、あいかさんの世界、オプテイシアの魔法も魔力を消費するので、魔力十の人が念動で扱えるのは、十キログラムの物を一秒とか、一キログラムの物を十秒とかで魔力が切れてしまうらしい。もし十秒とかじゃ使い物にならないな。

 でも、魔力回復の魔法をかけてもらっているから、何秒でも疲れることなく持ち続けられる。


 仕事を終えて、部屋で茜とゆっくりしている。


「今日は疲れたねー」

「ホントね」


 男子だけではなく、女子まで目を光らせているとは…。もう、胸や美貌を認識阻害してしまおうか…。

 んー、何のための胸と美貌だっけか…。俺は男にモテたいわけじゃない。なら、何のために…。そうだ、自己満だった。男の心を持った俺が、女の身体をした自分を眺めて楽しむのが目的だった。それだけだったっけか…。

 でも茜はどうなんだろう…。


「茜は男の子にモテたい?」

「ううん」

「えっ?」

「へっ?」

「じゃあ…」

「お姉ちゃん。私、お姉ちゃんと結婚したい」

「えっ…」


 茜は小さい頃からずっと、お兄ちゃんと結婚すると言い続けてきた。まだそんなことを言っているのか…。でも、お兄ちゃんという言葉がお姉ちゃんに変わっていることに違和感はないのか?

 兄妹では結婚できない…。そもそも、俺は今、男ですらないし…。茜は俺が男だったことをすっかり忘れてしまったようなのに、そういうところは男扱いするのか?なんにせよ、女同士で結婚なんてでき…、あっ…。

 あいかさんは女同士で子供を作る方法を確立したと言っていた。どういうことだろう。でも、女同士とはいえ、俺たちは姉妹。やはり姉妹では…。いや、俺はセディールなのであって、セディールと茜は、全く血がつながっていない。ということは、女同士で子供さえできれば、俺と茜は結婚できるのか?


「あの…、女同士の子供について詳しく…」

「もうお相手が見つかったの?」


「私がお姉ちゃんと結婚する!」

「なるほど、お相手は妹さんね。いいわよ」

「わーい!」


「えっ、そんな軽くていいんですか?」

「遺伝子的につながりがなければ何も問題はないわ。軽いか重いかは自分たちで考えなさいよ」

「えっと…、そうですね…。今は無理です…」


「えー、お姉ちゃん、早く結婚しようよぅ」

「だって、学校はどうするのよ」

「あっ…」


「まあ、婚約ってことでいいんじゃないかしら。どうせ、日本の法律では同性婚はまだ認められてないみたいだし。ちなみに、ヒスターニアでは認められているのよ。ここで結婚式を挙げるといいわ」

「「えっ!」」

「同性婚したかったヒスターニアの王女が、言葉の魔法で強引に法律改正したのよ」

「そんなことが…」

「そして、初めて女性同士の子供を作ったのもその王女」

「なるほど…」

「もう、少しボケてきてるけど、まだ会えるわよ。聖子さんのお店に膝まである金髪の人がいなかった?」

「いたような…」

「彼女がヒスターニアの元王女、セレスティーヌさんよ。今は聖子さんと同じ八十四歳」

「「ええええ!」」

「彼女は同性婚だけじゃなくて、正室扱いの重婚も法律で認めさせたのよ」

「それってどういう…」

「聖子さんとセレスさんと、あとフェナさんとアンテベーナさんという四人で結婚したのよ」

「四人で結婚…」

「四かける三わる二で六つ子を四人のおなかに宿したのよ」

「どういう割り振りに…」

「それは永久に秘密」


「じゃあ、とにかく私、卒業したら、お姉ちゃんとの子供、欲しいです!」

「分かったわ。そのときにまた相談してね」

「はーい」


 部屋に戻った。


「お姉ちゃんと婚約、お姉ちゃんとの子供、嬉しいな!」

「茜…、言ってること分かってるの?」

「うん。私、子供の頃からずっとお姉ちゃんと結婚したいって言ってるじゃん」


 だからお兄ちゃんがお姉ちゃんにすり替わってること違和感を覚えないのか…。

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