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異世界の悪役令嬢に転生した俺は日本に戻って…  作者: はぴぴ
2章 悪役令嬢は日本へ
11/21

11 チート高校受験

 聖子さんのお店から地下通路を通って、俺たちの部屋に戻った。


「服をもらいに行ったのに、体型まで作ってもらっちゃった」

「よかったわね。ここまでの体型調整は私でも難しかったと思う」

「いいなぁ、お姉ちゃんはデフォで綺麗で」

「体型変化の魔法を解く必要はないし、茜ももうデフォがそれでいいじゃない」

「そうだよね…。ふふふふ…」

「でも茜も十五歳にしては良い体つきしてたしてたわよ」

「ファンタジーのお嬢様に褒められて光栄です!」

「「はははははっ」」

「茜が美人になったから、私ももうちょっと美人にしようかな」

「そうだね。私、お姉ちゃんより美人になっちゃった!」


 俺の顔は美人のセディールの顔のパーツを、一つ一つマニュアルで弄ったものだから、美人の茜に合わせるのは少し苦労した。


「これで完全に双子だね」

「そうね。でも…」

「お姉ちゃんの髪の毛、真っ黒…」

「そうなのよ…」

「まあ、区別できていいかな」

「うん」


 本当は髪の長さも合わせられると言われたのだけど、俺の闇のような真っ黒の髪に茜は魅力を感じなかったのか、長さを合わせるとは言わなかった。だから、茜の髪は肩の長さのままだ。


「さて、そろそろお昼の時間ね。食堂に行きましょうか」

「食堂があるんだね」


 食堂は昨日、あいかさんに案内されていた。教会の一室に、百人以上収容できる、教会よりも広い食堂があるのだ。

 メニューはサイカトリーにもあるようなものから、日本食もあったりして、いろいろ無料で食べられる。

 ただしこの農園で使われている言葉はサイカトリー語、というかヒスターニア語だ。茜はメニューが読めないし、周りの人とも意思疎通ができないので、あいかさんに翻訳魔法をかけてもらった。翻訳魔法は、召喚者がこの世界に連れてこられたときにまずかけられる光魔法らしい。これで、茜はメニューも読めるし、周りの人とも話せるようになった。


「この牛肉、めちゃめちゃ美味しいよ!」

「ホント?昨日来たばかりだから、まだ三種類しか食べてないのよ」

「食べてみなよ、はい、あーん」

「あーん」


 俺たちは席に対面に座っているから、茜はテーブル越しに俺にフォークを差し出した。だが、一五五センチの身体には大きすぎる胸が皿をひっくり返してしまった…。


「あらら…」

「あぁぁ、服が汚れちゃったぁ…」

「茜はまだその胸に慣れてないようね」

「うん…。えへへ…」


 胸が大きすぎてドジをやって照れてる妹…、可愛すぎる…。

 でも、人のことは言ってられないのだ。俺は身長一七五センチから一五五センチに小さくしたとき、胸だけはGカップのままにしたので、相対的には胸が大きくなってるのだ。おかげで、腕が胸に遮られて、料理の皿が遠くに感じる。手をいっぱいに伸ばして料理をすくうのはとてもやりにくい。

 案の定、俺も料理をこぼしてしまった。まあ、昨日も同じようにこぼしながら食べたんだが…。


「お姉ちゃんも汚したー」

「うう…。清浄!」

「おおー、綺麗になった」


 あいかさんに教えてもらった魔法。ほぼすべて、ものを移動させる念動が基本になってるらしい。だから、闇魔法なのに汚れや細菌を除去できるのだ。念動系の魔法は、基本、光魔法でも同じことができるらしい。

 茜と自分の汚したところを、魔法で綺麗にした。


 でも、俺たちの汚したのなんて序の口だ。周りの人はもっとこぼして汚しまくってるのだ。なぜなら、ここの女性は最低でもLカップ、最大Tカップくらいあるんじゃなかろうか。でも仕事をするときはだけはGカップまで小さくしなきゃいけないらしい。じゃないと、仕事にならないからと。

 ここでは俺たちの胸なんて、最小サイズなのだ。


「ううう、ウェスト細くなったせいか、すぐおなかいっぱいになった…」

「そんな効果まであるなんて…」


 俺も身体を小さくしたから、胃縮小している。

 結局、俺は牛肉を食べ損ねたけど、可愛い妹の姿を見られたから満腹になった。そういえば、サイカトリーには牛らしき生き物はいたけど、牧場にいたのは地球の牛じゃなかろうか。



 部屋に戻った。


「あ、ベッドをもう一つ増やしてもらうのを、あいかさんに頼み忘れたわ」

「えっ?昔みたいに一緒に寝ようよ」


 茜は俺が死ぬ前まで、一緒のベッドで寝てた。いくら俺が親代わりだからといって、普通、十歳にもなれば親離れして一人で寝ると思うが、他に家族がいなくて寂しかったんだろうな。

 でも十五歳になってまでそう来るか。ああ、俺は身も心も女だと思われているから、抵抗がないのか…。顔も姿もそっくりにして、双子になった気分だもんな。

 ああ、また罪悪感が…。でも、また茜と一緒に寝られる日が来るなんて思ってなかった。


「それがいいわね」


「って、寝るにはまだ早いね」

「ねえ、私も高校受験をするから、少し感を取り戻しておきたいわ」

「じゃあ、問題集見せてあげるよ」


 備え付けの机に問題集を広げて、椅子に座った。胸が机の上にデーンと居座って、問題集が埋もれてしまった…。

 今までこんなことは…、セディールと同じサイズなのに…。ああ、セディールのときは学園に通っていたけど、まともに勉強なんてしたことなかった。

 仕方なく、問題集を少し机の奥にやった。ペンが遠くて書きづらい。だがそれが良い。これは茜の問題集だから書き込んだりしないが。

 高校受験の問題は、まだ頭に残っていた。ときどき忘れている内容もあったが、セディールの脳みそは優秀なのか、すんなり頭に入っていった。学園で勉強したことがなかったから、初めて知った。


「お姉ちゃん、全部分かるの?」

「うん」

「これ教えてよ」

「いいわよ」


 妹と密着して勉強。ときどき胸がぶつかり合う。ああ、あの二人はどうしてるかな。俺がいなければゲームキャラとしての役割を果たせずに、普通の人間として生きていけるのだろうか。いや、もう二人のことは忘れるんだ。俺は日本人の女子高生、綾瀬香として生きていくんだ。



 夕食の時間。昼間と同じように二人でこぼしながら食べた。ちゃんと食べられるようにならないと、高校には行けないな…。

 夕食を食べ終わり、部屋に戻った。


「お姉ちゃん、お風呂入ろ!」


 茜はもはや、俺が兄だったことを完全に忘れてるんじゃなかろうか。


「えっと、この部屋にはシャワーしかないから、大浴場に行ってみる?」

「温泉?」

「温泉じゃないけど、美肌効果のある化粧水を混ぜてるんですって」

「何それ!行ってみよ!」


 俺がときどき仕入れていた輸入品の魔法の化粧水…。一瓶で男爵屋敷くらい建ってしまうような高級品…。

 まさか、ここで作っていたとは思わなかった。でも、美肌にするって魔法もあるしなあ。まあ、魔法を解いても美肌が続くなら、安く譲ってもらえないかあとで聞いてみよう。


「お姉ちゃん、顔が赤いよ。まだお風呂入ってないのに」

「気のせいよ」


 大浴場は目のやり場に困る。もう学園のシャワー室の脱衣所は慣れていたんだが、ここはセディールなんて目じゃない美人で巨乳ばかり。

 他の住人もさることながら、茜も平気で俺の前で裸をさらしている。体型調整のときにさんざん見たが、見慣れていいもんじゃない。


「お姉ちゃん!ジェットバスだよ!」

「そんなのあるんだ…」


 ここには、地球のものを魔法で実現したものがいっぱいあるんだな。

 他には打たせ湯とか冷水風呂とか、一通り日本の入浴施設にありそうなものがそろってた。だが、まだ若いし健康そのものなので、興味があったのは化粧水風呂くらいか。


「楽しかったね!お姉ちゃん!」

「ええ、そうね」


 茜は子供のままだな。茜の笑顔と美肌効果が得られるなら、ここに通うのもいいか。



「それじゃ、寝よ!」

「うん」


「お姉ちゃん可愛い!」

「え、茜の方が可愛いわ」


 聖子さんが作ってくれたネグリジェを着た茜は可愛いな。と思って眺めていたら、ブーメランだった。


「お姉ちゃんと一緒のベッド…、五年ぶり…。うゎぁぁぁん」

「茜…、ほんとうに一人にしてごめんね…」


 でもお()ちゃんと一緒は初めてかと…。

 ベッドの上で茜は俺に抱きついてきた。大きな胸が邪魔でぎこちない抱きつき方。

 茜はそのまま泣き寝入りしてしまった。


 一五五センチの二人には広すぎるベッドだ。その真ん中に、俺と茜は胸を絡ませあって眠った。



 それからしばらく、俺と茜は受験勉強だ。旅館には全く用がない。でも、俺が旅館勤めを選ばなかったら茜とは出会えなかったんだから、受験が終わったら感謝を込めて働こう。


 しかし…


「お姉ちゃん、ここどうやるの?」

「えっとね、」

「お姉ちゃん、わかんなーい」

「ここはね、」

「お姉ちゃん、ここやってー」

「はーい。って違うでしょ!」

「あれ?」

「茜は水沢工業、行く気あるの?」

「うん、お姉ちゃんと行きたい!」

「じゃあ、もうちょっと…」


 これはもしや、脳に行くべき栄養分が胸に行っているというやつ…、なわけないよな…。

 こうなったら最後の手段。


『茜、聞こえる?』

(聞こえるってなんだろ?あれ?)「お姉ちゃん、口動いてない」

『心の中でしゃべってみて』

(心の中って…『あー、あー、マイクテスっ』これでいいのかな)


 本当は、心の中の声に出す必要はない。読心は考えの表層を読むのだから。でも心を読むなんて言うと、嫌われてしまいそうだ。


『それでいいのよ』

『すごーい、お姉ちゃんと頭の中でお話しできる!』(すごーい!)


 茜は素直だなぁ。心の声と考えの表層が同じことを言っている。


『茜はこのままでは水沢工業無理よ』

『がーん…』(がーん)

『だから、これは最後の手段よ。試験中、分からないところがあったら、私に聞きなさい』

『マジか!お姉ちゃん、女神!』


 ひどいカンニング。女神は女神でも邪神だ。いや、悪魔だ。

 もし俺が問題を解けなければ、他のやつの心を覗けば、同じ問題を考えてるやつが一人くらいいるだろう。


 読心はかなり魔力を食う魔法で、学園のときは三十分しか使えなかった。だから、コレミナとエリスが俺に話しかけたいときは、手に触れて合図してもらって、そのときだけ読心を使っていた。

 でも、今は魔力消費ゼロの魔法がある。いくら魔法を使っても、魔力を消費しない。ずっと読心しっぱなしにできるのだ。これが学園にいるときにできればな。コレミナ…。エリス…。二人のことは忘れなければ…。


 こうして、俺たちはカンニングする気、満々で試験に臨むことになった。


「お姉ちゃん、願書提出しなきゃ」

「そうね。写真撮らなきゃ。あ、中学校の制服なんてないわ」

「私の貸してあげる」

「それじゃ当日着ていけないじゃない」

「とりあえず、写真だけ撮っちゃおうよ」


 茜はクローゼットの中から、中学校の制服を出して着替え始めた。


「お姉ちゃん、写真撮って」

「それじゃダメでしょう…」


 それはかつての自分。いや、それよりすごい。胸のボタンは四つ開いていて、スカートからパンツは丸見え。


「華奢にしてもらったと思ったのに、お尻大きくなってた…」

「私に合わせたんだもの」

「どうしよう…」

「服のことなら」

「聖子さん!」


 聖子さんに中学校の制服を作ってもらった。胸元のボタンを閉められるように、シャツは胸の形になっている。露出はないけど、胸の入った包みは破壊力抜群だ。


 この制服で願書の写真を撮った。茜はこの顔で写真を撮るってことは、もう元の顔には戻れないってことだ。まあいっか。



 そして迎えた試験の日。


「お姉ちゃん、今日はお願いね!」

「少しは自分でがんばってよ。自分の分だってあるのよ」

「はーい」


 ちなみに、胸に遮られていても文字をかけるように練習した。だいぶ不格好だけど。


(うーん、この単語なんて意味だっけ…。さっそくお姉ちゃんに聞くか。『ねえ、』)

『それは関係代名詞で、昨日彼が話していたことを思い出した、ってことよ』

『ありがと!』


(3x-2=4なら…『おね…』)

『xは2よ』


(陽子と同じ重さの…『お…』)

『中性子』


(織田信長の…)

『本能寺の変』


(ふー。なんとかできた…)

『あなたほとんどできてないわよ!』

『えー…。お姉ちゃん、私が聞く前に全部答え教えてくれたから…』

『えっ、ああ、分からなそうだったからよ』


 心の声を聞く前に、考えてる段階で返事してたかも…。

 ちなみに、他のやつの心を覗く機会はなかった。

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