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お兄様と一緒


入学早々のアトラス殿下の無茶振りに答え、平和な学校生活が・・・始まら無い。


離れない。


アトラス殿下が側を離れないのだ。授業中は流石に来ないが休憩やお昼、移動教室の時などは必ず側に来る。

貴方は失礼ですが犬なの?


今も「オフェーリア嬢、先日のお礼をしたいのだが、何がいいんだ?」と休み時間、目の前のイスに座りずぅ~っと聞いてくる。


「特に大した事はしてません。お礼は辞退させて下さい。」お礼なんてうっかり受け取ったらまた頼まれそうで嫌だ。絶対に。



「それより殿下、すいませんがもう少し離れて下さい。」と注意するも一時的な物ですぐ側に来る。何で?犬属性?


さすがに入学して10日ほど経つ。

私、そろそろ友達欲しいんだけど。


この学校、13歳で入学し16歳から自動的に高等部へ移行するんだけど、あまりメンバー変わらないのよね。

外部生もあまり入れないと聞くし。

卒業までボッチはさすがに悲しすぎる。


ハッキリ言って殿下のおかげでクラスから、と言うより女子から浮いてる気がする。あぁどうしよう。


あっ、そう言えば今日はお兄様と晩ご飯を食べに行く日だ。店を予約しとくからおめかししておいで。って言われたんだった。

何食べさせて貰えるのかなぁ?楽しみだ。


そう言えば2人でご飯を食べに行くのは初めてかも。とニマニマしてたらアトラス殿下に変な目で見られた。


そんな考え事をしていたらあっという間に放課後になった。


ざわざわした教室を出て、寮へ一目散に帰る。部屋に着くと急いで事前に用意しておいた服に着替えて髪型をチェックする。


「うん、バッチリね!」と鏡の中の自分にOKを出して部屋を出た。


寮の玄関の前でキョロキョロしながら待ってると、すぅっと1台の馬車が止まった。

小窓がパカっと空いたと思ったら、お兄様が顔を出した。

「お待たせ、まぁ乗りなよ。」と言うが早いか、御者が恭しくドアを開いてくれた。


ゆっくりと腰掛けながら「お兄様お久しぶりですね。お元気でしたか?」と挨拶すると、にっこり微笑みながら「あぁ、オフェーリアも元気そうだ。中々頑張っているらしいね。レオン殿下から聞いてるよ。」

と話してくれた。


会話が始まったのを合図に馬車が動き出した。


馬車はしばらく走ると郊外の一軒の古びたお店の前で止まった。


先にお兄様が降り、その後私の手を取り(ぎゃーっ)真紀ちゃんうるさい。


馬車から降ろしてくれた。


近くで見ると格式の有る大きなお店だった。門構えも立派だ。

重厚な玄関へ着くと正装したボーイに予約を聞かれる。


何とレオン殿下の名前で取っていたらしくいわゆるVIPルームへ案内された。


この店のVIPルームは離れなのね。


玄関から5分ほど歩いたかな?お兄様も私も静かにボーイに案内され、離れへ通されると、入り口にコートや荷物を預けて席までエスコートされた。


こんな格式の有るお店は初めてだ。

もうここですでに心臓に悪い。

今日の服装おかしくないよね?アクセサリーも下品じゃないよね?


(王子、張り切ったんやな~~)と場違いな真紀ちゃんの呟きが聞こえた。


給仕係がセッティングをし、食材の説明をしてくれた。

お兄様が「じゃあ戴こうか?」と言う言葉を合図に食事がスタートした。


案の定、前菜からやはり手の込んだ物が呈される。

(さすがやな。。。)と真紀ちゃんの声が聞こえた。


真紀ちゃんの声が聞こえたのはここまでであとは沈黙していた。

恐らくだが分析してたんだろう。


デザートはもちろん最後のコーヒーまで手を抜かず美味しかった。


コーヒーを飲みながら、「お兄様、ぜひレオン殿下にお礼をお伝え下さい。とても美味しかったと。」とお兄様に感想を伝えた。


お兄様もゆっくり一口飲むと

「いやいや元々はレオン殿下が、以前我が家で食べたオフェーリアの料理がとても美味しかった。

お礼がしたいとおっしゃったんだ。」


そんなの気にしなくても良かったのに。


「そうだったのですか。それよりお兄様は今どのようなお仕事を?」と聞くと


「あぁ、レオン殿下に取り立てて貰えたので側近を務めさせて貰っている。本来ならあり得ないポジションだと思う。そうそう

あの時のオフェーリアの料理を一緒に食べた残りの2人も一緒に側近になっているよ。」

とにこやかに話してくれた。

本当に仕事が楽しいのね。お兄様。



オフェーリアはうんうんと頷きながら

残りの2人?あの方達ね。名前あんまり覚えてないんだけど。と失礼な事を思っていた。



「そうだ、レオン殿下よりお前に伝言がある。」とお兄様が思い出したように話し出した。


ちょっと眉を潜めつつ

「それは何ですか?何か作らされるのはちょっと。。。」


--あんまり面倒は嫌だなぁ。


「いや、王宮の薔薇が今見ごろなんだ。

良かったら案内するから見においで。

とおっしゃってる。他の貴族達もたくさん見に来てるよ。」


ほっ、良かった。


んーと考え「わかりました。考えておきますね。近いうちにお返事のお手紙出します。」と答えておいた。


レストランから再び馬車に乗り寮へ送ってもらった。


別れ際にお兄様に袋を渡した。


パンを何種類が作っておいたのだ。

ここらへんは真紀ちゃんが寮の台所を借りて、張り切ってやってくれた。

ありがとう、真紀ちゃん。


「ありがとう。良い香りだな。皆んなで食べるよ。」とお兄様は微笑み、(きゃっ!!)と声が何処からが聞こえるが気のせいだろう。うん聞こえなかった。


寮の前で別れ自分の部屋へ帰ってきた。

(貴方のお兄様ってすごいわね。

ますます男前が上がってるんじゃ無い?)

と真紀ちゃんがやや興奮気味に出てきた。


「真紀ちゃん、お兄様好みなの?」


(違います、違います。鑑賞して愛でているのです。すでに雲の上の存在です。)


となんか聞き捨てならない言葉が聞こえる。悪意は無いのでまぁいいか。

パンはお兄様も喜んでくれてたし。


脳内会話をしながら机に向かうと椅子に座り引き出しからノートを取り出す。


もうこれで5冊目だ。


「真紀ちゃんやっとく?」と聞くと

勝手に手が動きだす。

サラサラサラ~と描かれて行く。

おっ、今回は創作レシピね。

今日の料理で感性が刺激を受けたか?


続けて今日の日付けと店の名前を書き出した。



ふんふんふん、なるほどね。真紀ちゃん的には今日のお店は70点だったんだ。


ちょっと点数辛くない?


肉に火を入れすぎ、デザートのタイミングが悪い。と注意点をあげていく。そうなのね。わからなかったけど。


あっ、パンが不味かった。

とも書いてある。そりゃそうよね。元々真紀ちゃんパン屋さんだもの。パンにはちょっとうるさいか。


でも内装や雰囲気は素敵だったなぁ~。とオフェーリアが感想を伝えると


あっ75点に上がった。その辺は私に同感したのね。ふふふ。

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