ランスロット
「父さん、母さんただいま戻りました。」と玄関から元気な男の子の声がする。
ちょうど3人でランチを食べた後だったので、すぐ席を立ち出迎えに玄関へ行った。
「お帰り、ランス。帰りの馬車は大事無かったか?」とお父さんが聞いていた。
「はい、とても快適に過ごせました。最初は学校から5時間ほど掛かるので心配でしたが。以外と大丈夫でした。」と答えていた。
「無事で良かった。ご飯は食べたの?」とお母さんが聞くと、「実はまだで、、、、。」と答えていた。「今、料理人のカイルに頼んで何かこしらえて貰いましょう。」と早足で食堂の方へ歩いて行った。
ランスロットはオフェーリアの方へ向くと「ただいま、オフェーリア。」と笑顔で抱きしめてくれた。
(きゃー!)と聞こえたが無視しておこう。さっきまでのお返しだ。
「お兄様、学校のお話したくさん聞かせて下さいね。楽しみにしてたんです。」とオフェーリアが言うと
「もちろんさ。まずは腹ごしらえだ。」とパチンッとウインクをしたお兄様にエスコートされて食堂へ向かった。
(お兄様って一体幾つなのよ?)と聞こえて来た。今度は頭の中でキチンと答える。
「13歳よ。今年から貴族学校へ入学したの。」
(本当に13歳?信じられないんだけど)
「嘘じゃ無いわよ。」
と頭の中で応酬していたら、「オフェーリア黙ってしまってどうしたんだい?」とお兄様に心配されてしまった。
「ちょっと考え事してました。大丈夫ですよ。」と慌てて答えた。
◇◇◇
夕食時、久しぶりの家族揃っての食事を楽しみながらランスの学校生活について話を聞けた。
王都にはたくさんの飲食店があり、週末には学友と食事を楽しみに行く事があるらしい。
勉強はやはり楽では無い。オフェーリア、領地でしっかり勉強しておくと良いよ。とアドバイスされた。
話しを纏めるとお兄様の学校生活は順調満帆と言う事でした。。。
ご学友は何と第3王子を初めとし、騎士団長の長男や宰相の次男などそうそうたるメンバーだ。凄いお兄様!!
「彼らは私の身分に関わらず対等に付き合ってくれている。いずれは彼らを助けサポートする仕事に着けたらと思っている。」と家族みんなの前で真面目に話した。
お兄様はしばらく実家を堪能して帰っていった。
帰り際に
「次は友達を連れて帰ってくるよ。オフェーリア楽しみにしてて。」と言った。
お兄様が帰ったあと、両親に「私、料理がして見たいの!」とお願いした。
もともと真紀ちゃんの事が無くても料理は興味があったし、お兄様の話で王都では色々な料理の店が有るって事だった。
2人とも最初はびっくりしていたが「料理人に見て貰いながらだったら良いよ。」
と二つ返事でOKしてくれた。
次の日に料理人のカイルに「お料理教えて下さい。」とお願いに行った。
「奥様から話しは伺ってます。わかりました。しばらくは基礎をお教えします。」と笑いながら了解してくれた。
まずは包丁の握り方。
(懐かしいわぁ)と真紀ちゃんが喜んでいた。やっぱり料理が好きなんだなぁ~と関心した。
包丁で野菜を刻み簡単なサラダを作った。
「お嬢様、とても筋が宜しいかと。」とお褒めの言葉を頂いた。
次の日は野菜の皮むきをした。ジャガイモと人参だ。
カイルの見本を見ながら(私の方がうまいわ)と失礼な言葉が響いたが無視しといた。
上手に出来た(当たり前か。)ので、再びカイルに褒められた。
そんな感じで次々にカイル師匠?に付き添って貰い料理の腕を上げて行った。
そして、オフェーリアが12歳になった時に「もう、私にお教え出来る事は有りません。」と弟子を卒業する事になった。
「師匠、ありがとうございました。」とお礼を言うとカイルは破顔した。
その頃には週末の家族の団欒の食事は、オフェーリアが振る舞う事が増えていた。
特に日常の食事は真紀ちゃんは口出ししなかった。(あっ、でもたまにアドバイスはくれる。)
オフェーリアも貴族学校に入る勉強もしなくてはならないので平日はカイルの仕事だ。
◇◇◇
そんな折、最近あまり帰って来ていなかったランスロットが帰郷すると連絡が来た。
お兄様お戻りになられるの久しぶり。
3年振りかしら?と思わず微笑んでいると
(あのお兄さん、どれぐらい成長しているのかしら。13歳でアレなら16歳ならもう怖いもの知らず?ね。)
と真紀ちゃんが何やらブツブツと囁いていた。
とうとうランスロットが帰ってくる日になった。
この週末に帰ると連絡が来ていたので密かに美味しい料理を作ってお兄様を驚かせてやろう。と思っていた。
だが
「お父さん、お母さんただいま帰りました。」と聞こえた次の瞬間
玄関が一気に騒がしくなった。
「こちらこそ光栄の至りでございます。」
とお父さんが話すのが聞こえた。
たまらず部屋から出て、玄関のホールを階段上から見ていると、お兄様を先頭に4名の見目麗しい貴人が立っていた。
びっくりして固まっていると、兄様と目が合った。
微笑みながら「オフェーリアただいま。」
と階段上にいるオフェーリアに挨拶したのだ。
オフェーリアは階段をゆっくりと降りながら、「お帰りなさいませ、お兄様。」と側まで歩み寄るとランスがオフェーリアを抱きしめ「ただいま。」ともう一度言った。
(ぎ、ぎゃー!!)・・真紀ちゃん煩い。
その瞬間横から「ランス~その子が妹さんか?紹介してくれよ。」と声が掛かった。
「これは失礼、妹のオフェーリアだ。」と紹介した。
「オフェーリアと申します。」と優雅なカーテシーをして見せた。
「お兄さんには似てませんね。妹さんは美人だ。」と言われドギマギした。
「オフェーリア、こちらが僕の学友で左から、レオン殿下、ゲイル、トーマスだ。」と紹介された。
覚えてられるかしら?と不安に駆られたが、にっこり笑って済ませておいた。
(お兄様もすごかったけど、周りも凄いわ。オーラが、オーラが。)と真紀ちゃんが出てきて語っていた。
あっ大切な事聞くのを忘れてた。
「失礼します。ちょっと確認しておきたい事が、、、。
今日から食事をこちらでお召し上がりになられるかと思うのですが、好き嫌いをお聞きしておきたいと思いまして。」と話しかけた。
3人がそれぞれ顔を見合わせて「僕たちは騎士団の団員でもあるんだ。遠征にも出かける事もある。その場合は現地の食事を取る事が多いんだ。だから何でも食べられるよ。」と笑いながら答えてくれた。
(上等じゃん!)と謎な声が頭から聞こえたが無視しておこう。久しぶりにヤル気になってるみたいだし。
「では後ほど。」とその場を後にした。




