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【最終話】そして旅立ち



想いが通じた!と知ったアトラスの行動は早かった。

王族を説き伏せ、臣籍降下を申し出たのだ。


「王族に未練はない、王子は第3までいたら充分。」とあっさりした物だった。


そしてオフェーリアの両親とお兄様の所へ行き、「オフェーリアと共に生きたい。」と結婚の許可を貰った。


さすがにこれは早いとオフェーリアが反対したが、ガンとして譲らず。


(良いじゃん、もう有りのままのアトラスを受け入れてやんなよ~)と真紀ちゃんが何故か後押しした事もあり結婚が決まった。


両想いになってからわずか3ヶ月の出来事だった。


この事は世紀のロマンスとして国中の話題をさらった。


真紀ちゃん曰く

(アトラス手回し良すぎやろ。一体いつから準備してたんや)


「真紀ちゃん、多分だけどあの入学式の時からだと今になって思うの。」


あの入学式で目があってから、本当に、本当にアトラス殿下はしつこかった。

そして虎視眈々とオフェーリアを狙い続けてついに仕留めたのだから、もうあっぱれとしか言いようがない。


その後、王宮のレストランの方は後進に譲り、アトラス殿下は王室の支援の元、その約1年後オフェーリアの実家近くにレストランを開店させたのだ。


この時すでにアトラスとオフェーリアは22歳になっていた。


また料理長にはオフェーリアを据え、自分はオーナーに治まった。



・・・とある日の厨房にて



「アトラス様そちらは後どれぐらいで行けそうですか?」


「そうだな、後10分は欲しい。」


「じゃあその間にワインの在庫見て来ますね。」


そんな会話が繰り広げられる。


(・・・慎ちゃんと一緒だった時の私だ)と真紀ちゃんが呟く。



オフェーリアが地下のワインセラーにワインの在庫を見に降りた、その時電灯がチカチカと点滅し、ふっと体の感覚がおかしくなった。



この感じ覚えがある。

いつだったかしら。




・・・迎えに来た。


(そうだね。そろそろだと思ったよ。)


そこに初めて真紀ちゃんと出会った時の光り輝くお兄さんがいた。


(約束は守ったよ。愛する伴侶を得て大好きな料理を仕事にして、オフェーリアは幸せになった。もう私もいい加減次へ行こうと思う。)


「・・・真紀ちゃん、行っちゃうの?」


(あぁ、楽しかったよオフェーリア。今までありがとな。アトラスと仲良くやんなよ)


「真紀ちゃん私の方こそありがとう。絶対に真紀ちゃんの事忘れない。」




・・・そろそろ行くぞ。


オフェーリアの中で真紀ちゃんの存在が小さく小さくなっていくのがわかる。

あぁ真紀ちゃん行くんだね。

次は必ず幸せになってね。

応援してるよ。



(またな、オフェーリア。。。。)



気がつくとワイン棚にもたれかかっていた。


すぐにそばの柱時計を見たが時間はほとんど経ってない。3分ほどか?


「真紀ちゃんたぶんどこかへ生まれ変わってしまったら、私の事は忘れちゃうんだろな。」


上を向いているのにポロポロと涙が溢れ出てくる。


「でも、私を幸せにしてくれた真紀ちゃん事を私は絶対忘れたりしない。真紀ちゃんの作ってくれたノートと共に生きていくよ。」と誓った。


結局、ノートは8冊になっていた。


アトラスとオフェーリアのレストランは次々と規模を拡大させ、貴族、平民問わずたくさんの人々に愛されています。


そして真紀ちゃんのレシピは門外不出として、大切にレストランの奥に保管されています。


たまにお父様、お母様やレオン殿下達も来られ舌鼓を打ち、楽しく過ごして帰っていきます。



この国は小さな国ながら近隣諸国から美食の国家として愛されて、後世に語り継がれて行きました。










                終わり



◇◇◇◇◇


あとがき



最初はレオン殿下とくっつけようと思ってました。なぜか本当にアトラスがしつこかったんです。


この国の料理を牽引した2人の女の子の話と、最後まで自分の愛を諦めなかったしつこい男の話はこれでおしまい。


読んでくれた方、本当に貴重な時間をありがとうございました。


またどこかでお会いしましょう。

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