試作完成
次の日、真紀ちゃんは卵白をふわっふわに泡立ててふわっふわのケーキを作った。
ケーキがぷるぷると立っている姿が可愛い。
(シフォンケーキ久しぶりやな。卵白泡立てるんめっちゃしんどいわ。)
「真紀ちゃん、すごいふわふわ。」
(そやろ、これにな、、、、)
「へぇ、そんな事するんだ。でも楽しいね。」
真紀ちゃんはシフォンケーキに合わせる3種類のジャムを作った。
1つ目は薔薇のジャム、2つ目は苺のジャム、3つ目はキウイを使った目にも鮮やかなグリーンのジャムだった。
(実際にはもう少しジャムは緩めてシフォンケーキにかけて食べるようにするんや。)
(ケーキセットには好きな飲み物とケーキと3種のジャムがつく。)
(もう一つは図書館に来た人が記念に買うお土産のクッキーを販売するんや。
これには薔薇の花びらを乾燥させた物を刻んで入れる。)
他にも試作が何点が出来た。
もうくたくただ。明日のお昼からレオン殿下のお迎えが来るので持ち運べるようにしてから部屋に戻り休んだ。
◇◇◇
次の日の朝、寮の前にギィと馬車が止まる音がした。
急いで試作を持って馬車へと向かう。
ドアがさっと開き、レオン殿下が出て来られた。
「おはよう。オフェーリア嬢、今日は無理言って済まない。荷物はこれだけですか?持ちましょう。」
と手から荷物を持ってくれた。たくさんあったので助かった。
「では行きましょうか?さぁ、お手をどうぞ。」と乗車を促されたので、さっさと乗った。
レオン殿下と他愛もない話をしていたらすぐに王宮に着いた。
馬車から降りると王家用の出入り口を通り
厨房へ着いた。うん、なんか懐かしいわ。
「レオン殿下、実は試作を幾つか持ってきています。見ていただけないでしょうか?」と話しかけると
「えっ、そうなんだ?わかった。お茶を用意させよう。」と頷いてくれた。
厨房近くのお部屋へ移動し、テーブルの上に次々と並べていく。
「これは、何て言うケーキですか?」と聞かれたので
「シフォンケーキです。材料はシンプルなのでジャムを緩めたソースが合いやすいのです。いかがですか?」
レオン殿下は慎重にシフォンケーキをフォークでひと口食べると
「このケーキは口溶けが良いね。これだけでも美味しいよ。」とケーキの感想を述べて、更にジャムを伸ばしたソースをかけていた。
「うん、薔薇のジャムと苺のジャムは相性がいいね。でもこのキウイのジャムは口の中が爽やかになるよ。これにクリームを付けてもいいね。」
「そうですね。おっしゃる通りだと思います。それでこちらのクッキーはお土産用です。試作に使用した花びらは街で買った物ですが、コストの面でも本来なら王宮の薔薇園の物を使用したい所です。」
「少し薔薇の香りがするのがいいね。見た目も華やかで女性受けもしそうだ。」
「このクッキーは特に入れ物にこだわりたいと思います。貰った方がワクワクして早く中がどうなっているのか見たくなる様な工夫が欲しいです。」
「もし可能なら美しい薔薇を型どった陶器で作り、陶器に薔薇園のエピソードを印刷するか、無理なら中にそのエピソードを書いたカードを入れれば良いかと思います。」
「クッキーの入れ物は検討が可能だ。薔薇園の花ならほぼ材料は無料だから原価も抑えられるね。」
「シフォンケーキの添え物ですが、恐らくアイスクリームを添えても良いのでは無いでしょうか?」
「そうだな。一度王宮のシェフ達にシフォンケーキを教えて置いてくれないか?薔薇のジャムと。」と話が進んでいく。
「わかりました。これからでも大丈夫ですか?」と聞くと
「一応話は通してある。宜しく頼むよ。」
そのまま厨房へ移動して、何名か担当のシェフがいらしたので、このために用意しておいたレシピをパティシエへ渡す。
注意点を伝えて、付き添ってケーキを教えた。さすが王宮お抱えのパティシエ。
キチンとやってくれました。薔薇のジャムの作り方も教えクッキーは配合を伝えておいた。
パティシエ達と和気あいあいと話し合っているとレオン殿下に呼ばれた。
「オフェーリア嬢ちょっと良いかな。」
と言われたのでパティシエさん達に挨拶し、レオン殿下に付いて他の部屋へ入る。ソファーに着席を促されたので側にあったソファーに座った。
レオン殿下が話し出した。
「正直に話そう。今の学校に通いながらで良いから、しっかりと料理関連の資格を取らないか?王宮のシェフ達が後押しすると言っている。どうだろうか?」
うわぁ、願っても無い。
「えっ、でもそんなにして戴いて良いのですか?実はいずれ家を出てレストランを経営したいと思っています。本当に助かります。」
「こちらこそ兄弟で助けて貰ってばかりだ。これぐらいはさせて貰おう。もちろん送り迎え付きだ。うちのシェフ達の話しだと、3ヶ月もあればオフェーリアなら余裕で取れると言っていた。」と何も言わずしてさらりとハードルが上げられてしまった。




