やっぱり実家は良い
お兄様と帰郷した次の日、久しぶりにお父様とお母様と畑を耕していた。
やっぱり土に触るのはホッとするなぁ。
お兄様は領地へ視察に出かけた。
今度、領地内の川に橋を掛けるんだけど、その下見を国から頼まれてたらしい。他の所も見たいから帰りは夕方になると言ってた。
ちょうど収穫した新じゃがいもがあるから新じゃがでポテト料理を作ろうか~。なんてお母様と話してた。
今日はカインも休みだし私が作る日だ。
久しぶりに家族に腕を振るうか。
お兄様も食べるって言ってたから5~6品は欲しいし、肉ガッツリ入れようか?後は何しようかな~。肉も魚もカインが気を利かせて買ってくれてる。さすが。
畑仕事もひと段落し屋敷へ帰ってきた。
みんなでお茶をいれ、クッキーがあったのでクッキーと果物を2種類カットしてそえる。お茶を楽しみ、そろそろ晩御飯の支度を始めようかと思った時だった。
急に玄関の方が騒がしくなった。
「おい!誰か来てくれ。出来れば男の奴がいい!」と玄関のホールから聞こえてきた。
急いで出て行くと、お兄様と見知らぬ男性がいた。誰かを抱えているみたい。
2人が抱えていたのは何とアトラス殿下だった。
何、どうして?いったい何があったの?
とびっくりしていたが、
「先触れも出さず、急な訪問失礼します。私はアトラス殿下の側近のエドモンドと言います。」とにかく慌てている様子。
「本日、遠乗りの途中、アトラス殿下が急な高熱で倒れられてしまったのです。」
「途方にくれていた所、こちらのランスロット殿に偶然出会い、自宅で療養をとお誘いを受けました。すいませんが暫くお世話になります。この件に関しましては王宮より必ずお礼致します。」
と事情を話された。
お父様が「とりあえずお部屋へご案内を。」と執事に指示を出す。
部屋に運ばれて行く殿下を見ながらお兄様に「何か手伝える事がありましたら教えてください。」と言っておいた。
お兄様が殿下を着替えさせ、側近の方に王宮へ連絡するように提案した。その間に主治医を呼びに行った。
主治医はすぐに来てくれた。
ふんふんと例によって鼻歌を歌った後、「疲れが溜まっていたのと、急な暑さによる発熱ですな。しばらくは安静に。たくさん水分を取らせ、お薬も出しておくので呑ませてあげて下さい。」
と帰っていった。
相変わらずマイペースな医者だ。
今はお兄様が付き添っている。オフェーリアは先に晩御飯を済ませるとお兄様と交代した。
ベッドに意識がない殿下が苦しそうに眠っている。額を触ると熱が下がってないのがわかる。
額のタオルを冷たいのと替えてやる。
うなされて苦しんでいる姿が普段の元気な姿からは信じられない。
しばらく看病しているとアトラス殿下の気が付いた。
「大丈夫ですか?殿下。」と問いかけると
「俺は夢を見ているのか?」と虚な目で答えた。
「お水飲まれますか?」と聞くと頷くので
上体を起こし少し飲ませてやった。これを3回ほど繰り返すと首を振ったので、ゆっくりと寝かせてやる。
「今夜は私がついてます。安心してお休み下さい。」と伝えるとホッとした顔で再び眠った。
オフェーリアは自室に戻りいくつか本を持つとアトラス殿下の看病に戻った。
途中、お兄様が交代を申し出てくれたが、本を指差して、お兄様の顔を見て首を振ると察してくれた。
◇◇◇
暑い、体が重い。息苦しい。
俺は体の不調で目が覚めた。ここはどこだ?なぜか目の前にオフェーリアがいる。
「大丈夫ですか?殿下。」とオフェーリアが聞いて来た。
たぶん頷いたと思う。
「お水を飲まれますか。」と聞いてくれたので頷くと、ゆっくり上体を起こし少しずつ水を飲ませてくれた。
水を飲み終わるとオフェーリアは「今夜は私が付いてます。安心してお休み下さい。」と言ってくれた。
今夜はと言わずいつも一緒にいてくれたら良いのに。
でもその言葉はすごく安心したんだ。
気がつくと朝だったから。
目が覚めるとオフェーリアがベッドのそばで眠っていた。思わず頭を撫でてしまった。
しまった。怒られるかも。と思ったが柔らかくてサラサラで気持ちがよかった。
もう少し寝顔を見ていたいがオフェーリアを起こすと、「うぅーん、殿下ぁ?」と寝ぼけ眼でこちらを見た。
うん、元気出た。主に下半身が。
「看病してくれたのか。ありがとう。」と礼を言うと、目を擦りながら
「話せる元気が出たなら良かったです。では、私はこれで失礼します。」とそそくさと部屋を出て行った。
可愛いかったなぁ。やっぱりもう少し見てたらよかった。




