第3話 過去の思い
「それで、どこに行くか決めてんの?」
「別に決めてないけど、とりあえず焼肉でいいんじゃない?俺ら結婚式出たはいいけど、殆ど飲んだだけで空腹なんよ。」
「ここから近くの焼肉って言ったら、京昌園になるけど、大丈夫?」
「あそこ高いんだよな…。」
「こっちをチラチラ見てもお前の分は出さんぞ。」
「でもこの中で一番稼いでるのは、お前だろ?」
「あ?宮田さんじゃねぇの?」
そう言いながら、宮田さんの方を向くと、身振り手振りで盛大に否定された。
「私は知名度がまだまだだから、新卒者の平均年収くらいしかもらってないよ…」
つまり、300万くらいってところか。
確かにそれだと俺のほうが高くなってしまう。
因みに俺の実家は、解体業を営んでいる。
解体業とか運送業は、筋モンが絡んでいることが多い。
俺の家は、一族で色々と様々な分野で緋村グループとして動いている。でもうちはそういう輩はいない。
まぁ、とどの詰まり俺は、本家の御曹司に当たるわけだが、俺は次男坊なのでどれだけ成績を上げても役員止まりだ。でも、兄貴とは仲いいからグループ内の社長位にはしてくれるかもしれんけど。今は、営業部第二課副課長が俺の肩書だ。社会人になる前から事務作業を手伝ってきたから入社した瞬間に役職を貰った。
それでも、初年度の年収は、600弱位はいっている。
営業車は、社用車を使っている。愛車は、カローラスポーツ。家族がポルシェやら、ランボルギーニやら、フェラーリに乗っている中で乗るのは浮くけど、俺としては、車にお金をかける気持ちが理解できない。乗ってしまえば、そんな変わらないだろうに…。
「でも、焼肉は食べたいし…。」
「なら、少し遠いけど牛角にすりゃいいじゃん?」
「え〜牛角〜。」
「牛角なら食べ放題の贅沢コース飲み放題スタンダードコース付で全員分奢ってやるよ。」
「「「「「いいの(か)!?」」」」」
女子勢は目をキラキラさせて、男共はギラギラさせてこちらを見てきた。男どもはみんなキモイ。
まぁ、一人分税込み6200円×6=37200円
120分コースで、好きだった女子と同じ空間で飲めるんだからこれくらい数に入んないでしょ。
それにこちとら親に外で食べてくると伝えたら、俺の風貌で察したのか、
「良いもの食わせてやんなさい」
とか言われて5万渡された。
タダ酒、タダ飯にウキウキした面々を連れて歩いて10数分の牛角へと向かった。
「でも、良かったろ?好きだった女子と食事できるなんて、男冥利に尽きるってもんだろ?」
堂々とかなり大きな声で聞かれたくないことを言いやがったせいで、女性陣からの注目を集めてしまった。こいついつか殺す!
「それどういうこと?りょうたん。」
ほれみろ、真面目な齋藤さんが反応しちゃった。
「あれ?知らなかったの。麗ちゃんも、燈花さんも、麻織ちゃんも緋村が学生時代に本気で好きだったんだよ。な!緋村。」
こいつ、現地についたら飲ませまくって潰してやる。
「まぁ、それはそうだけど過去のことだよ。」
「あれれ、もう好きじゃない?」
「好きじゃないというか、3人とも中学以来だろ?流石に会えない状況で好きでい続けるのは、無理ってもんだ。」
俺は、心臓が高鳴るのを感じながら、冷静さを保ちながら話を続けた。
「高校でも、大学でも好きな人はできたし、そもそもつい最近まで付き合ってたしな。」
「え!?緋村彼女いたの?」
「いたし。」
「これまでなんにんとつきあったの?」
「高校で一人、大学で四人かな」
「じゃあ、この三人の中で今付き合うとしたら誰?因みに三人とも今はフリーだよ。」
涼太の馬鹿な質問を聞いたとき、ようやく京昌園に到着した。この質問の答えは決まっている。燈花さんには一度振られてるし、麗子さんはそこまでの思いはない。
「そりゃ麻織ちゃんでしょ。」