伽藍堂の社
私は主の元を離れ、ふらりと街中を放浪していた。昔は付きっきりで面倒を見ていたが、今は四神もいる。私が居なくても大丈夫だろう。
各神社仏閣を巡り、挨拶を済ませる。祀られている神が本日も息災か確認して回る。そして信仰なき神や、堕ぶれた者にならない為に、前もって手を打っておく。これが放浪の理由である。幸いこのお陰で大事に至らなかった神も数多くいらっしゃる。
今日も「神が去った」と皆から言われている社の様子を見に来た。長い参道を通じ、大きな鳥居が迎え入れる。相も変わらず気配は感じない。神も、物の怪の気配も。
神が留守にしていると、物の怪共が根城にし出す。故にこうして様子を見に来るのだが、幸い大きな出来事は今のところ無い。平和で何より。しかし。
「この辺りで人が消えたんだって」
「えー嘘ー」
「昨日聞いた話なんだけどー」
私の後ろを去った娘達が、きゃらきゃらと明るい声で話している。都市伝説、特に自分が被害を受けない不可思議な話は何時でも人の心を刺激する。だがそれが本当なら笑い話では済まされない。僅かに目を見開いて、神通力を使った。この社の参道を通った人間の気配を探る。
今、物を話しているのは、とある式神。
久々過ぎて懐かしさに浸ってます。