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(9)疑惑



11月18日

研究所本棟 B3


              ――『機密保管室』





【23:15現在】



「それでどうする――?」


 ジュードの問いかけに合流したイメルダは「決まっている」と迷うことなく答える。


「装置がここになければ、出発点である『実験室ラボ』を確認するだけだ。そもそも移送プロトコルの発動自体がなかったとも考えられる」

「けどその可能性は低い」


 ジュードは即座に否定する。 


「テロリストの脅威が高まるほどに、施設で最も安全な『機密保管室』に運ぶのが当然の理だ。警備員にそれを判断する力も時間もなかったとは考えられない」

「だがこの部屋に記録装置はない。それはまぎれもない事実だ」


 今度はイメルダによる否定。


「繰り返すが、ないのが確かなら、元の場所から動かしていないと考えるのが筋だ」

「あるいは、すでに強奪されている(・・・・・・・・・・)か――」


 その可能性はイメルダも思い至っていたはずだ。

 ジュード達にとっても無報酬に終わるかもしれない不都合なケースは、これまで意図的に議論から外してきたのが真実だ。

 だが不都合だからと目を反らし続け、状況判断を見誤れば、最悪、こちらのミスだと依頼者に不満をぶつけられかねない。

 だから事ここに至り、ジュードも逃げずにはっきりと可能性を示す。


「事態発覚から偵察のヘリが到着するまでのおよそ1時間――誰にも見られず強奪する時間はテロリストにあった」

「確かに」


 イメルダもそれを認めつつ、「だが記録装置にはGPSが内蔵されている」と後出しで初耳の否定材料を放り込んでくる。


「地中の研究所では、電波が遮断されて位置信号を捕捉できないが、一歩でも外へ搬出すれば別だ。セオドラ本社で最長72時間の信号追跡ができる仕組みになっている」

「そのGPS機能で外部搬出されていないことを把握していると?」

「そういうことだ」


 その確信があるからこそ、彼女は落ち着いていられるのか。

 ジュードの理解を表情から読み取ったのだろう。

 イメルダがさらに言葉を募る。


「どの可能性を探ったところで何らかの疑念は必ず出てくる。ならば余計な憶測の捻出に時間を費やすよりも、任務を遂行することのみに注力すべきだろう」

「それで、『実験室』の確認か?」

「現状、もっとも手堅い確認の方法だ。捜し物が見つかれば、そこで任務に区切りが付けられる」

「なかったら?」


 そう口を挟むのはダリオ。

 横合いからの声にもイメルダは冷静に応じる。


「仮になかったとしても、施設内のどこかにあることを前提に、くまなく調べる必要がある。少なくとも、任務を“次なる段階”に進められることは確実だ」


 それはそうだが。

 聞いたダリオがうんざりした顔になる。

 タイムリミットまでの時間はまだあるが、少人数で施設全体を探し回るのは、さすがに骨が折れそうな話しだ。

 ジュードも内心の嫌気が表に出ぬよう声を張る。


「ならさっさと済ませよう」

「待て」


 そこで再び先導しようとするジュードをイメルダが止めた。怪訝な顔をするジュードに「ここから先は機密案件だ」と今さらながらな理由を口にする。


「悪いがチームAとクォンだけで行かせてもらう」「本気か? テロリストはどうする」


 装置が奪われていなければ、敵の脅威が去ったとは言い難い。

 ならば依頼者の盾となり、また、脅威を排除するために雇われたジュード達からすれば、あまりに困惑させられる発言だ。だが彼女にとっては、機密案件を守る方が重要視されるらしい。


「『実験室』には部外者の目にさらしたくない事物もある。我々だけで対応するのはやむを得ない処置だ。

 なに、万一セオドラ社員が危機に陥った場合、保安規定にある“緊急時対応”が適用され、おまえ達の介入が特別に認められることになる。その時は支援を要請するからすぐに対応してくれ」

「――わかった。そう云うしかないようだな」


 不承不承とはいえ、承諾するジュードに「ちょ、ちょっと待て!」とダリオがまたしても話に割り込んでくる。柄にもなく責任感に目覚めたのかと思えば、


「それで報酬を削るわけじゃないよな?」

「ダリオ――」


 ジュードの制止を無視してダリオはイメルダにもの申す。


「こっちはやるべきことをやってるんだ。ラボの調査をそっちがやったからといって、その分の報酬を削られちゃかなわんぜ」

「そんな真似はしない」


 硬質の声音で応じるイメルダは、「本当か?!」と念押すダリオを無視して、無線機でクォンに呼びかけた。


「――状況は伝えたとおりだ。この先はオレ達だけで調査するしかない。悪いがこっちまで来てくれ」

≪……はぁ……クソッ、分かったよ≫


 しぶしぶとした返事はよほど厭なのだろう。

 ここまできて、何も起きなさすぎる(・・・・・・・・・)異常さ(・・・)に、クォンは本能的な恐怖を感じているのかもしれない。

 だが機密事案のラボは、防犯上の理由で同じフロアにある『第2監視室』でなければ情報収集ができない仕組みになっている。

 『第1監視室』に閉じ籠もっていたのでは、自ら耳目を塞いでいるのと同義なのだ。さらに無線機の交信にしても、『第2監視室』で通信設定を調整しなければ回線がシャットアウトされ、セキュリティの高いフロアでの運用が不可能となる。どうあっても、一度はクォンが現場へ出向く必要があった。

 

「ま、無駄骨かもしれんがな」


 また肩すかしを食らう――現状を把握できない苛立ちや不安がダリオに皮肉を口にさせるのだろう。それを「いいじゃねえか」と返してきたのはベイルだった。


「これだけ便利な世の中で、結局は自分の足を使って確かめる――泥臭いのは嫌いじゃねえ。むしろ、安心するってもんだ」

「へえ――」

「なんだ?」


 意外そうな顔をするダリオにベイルが眉を怒らせる。その肩を叩くのはメジャー。


「ガラにも無いこと云うからだ。あっちは、あんたが“元コップ”だなんて知らねえからな」

「え、あんた警官だったのか?!」


 軽く声を裏返させるダリオにメジャーがニヤニヤしながら返事する。


「驚くよな? でもこんな下品な顔は“コップ”か“売人”のどちらかさ」

「好き勝手云いやがって」


 ベイルが肩を荒々しく振って、不機嫌そうに横を向く。「とにかく――」と咳払いして。


「足で掴んだネタほど、確かなものはねえ。ひとつひとつポイントを潰してきゃ、いずれ捜しモンにぶち当たるだろうよ」

「道理だな」


 ダリオが納得したように頷くも、どこか釈然としない表情でいるのは仕方がない。

 他の者もそうだ。


「それにしてもテロリスト共め……どこに消えやがった?」


 ここまで沈黙を保っていたバックスが、顎髭をしごきながら、初めて口にした言葉がその疑念であった。

 もちろん誰も答えられない。

 バックスの疑問は、冷たいリノリウムの床に弾かれ消えた――。




         *****




11月18日

研究所本棟 B3


           ――『第2エレベータ』前



【23:18現在】



「しばらく待機しててくれ」

「ああ。休憩時間コーヒー・ブレイクだと思っておくさ」


 これも隔離対策の一環らしい、別系統のエレベータに乗り込むチームAをジュード達はリラックスした空気で見送った。

 エンゲルは廊下の壁に背をもたせかけ、ダリオは肩回しのストレッチ、クリスに至ってはその場に座り込んで拳銃の点検に余念が無い。

 そんな彼らにメジャーやバックスが苦笑を漏らして「じゃあな」と別れを告げる。

 最後に緊張で表情を強張らせるクォンの姿が扉の隙間から見えなくなった途端、表情をガラリと変えたダリオがジュードを睨み付けてきた。


「ぜったいにおかしいぞ――」

「何がだ?」

「人の気配がなさすぎることです」


 なぜか答えたのはクリス。


「センターにあった死体はわずかに四体、研究所に入ってからはそれすらも見てません。まあ血痕くらいですか――でも、あれだけの失血をして、誰もテロリストに捕まらなかったのでしょうか? かなりの混乱があって、そこかしこに所員が散らばっているのが普通だと思うのに。

 それと気付いてますよね? 一発の弾痕もないこ(・・・・・・・・・)とに(・・)


 その問いかけで憮然となるジュード。

 気付かぬはずがない。

 警備員がテロリストにここまでの侵入を容易く許すはずがなく、なのに争った形跡がない奇妙さは、誰もが抱いていた疑問だ。


「もうひとつ。そもそも事態発覚の切っ掛けになった、“実験トラブルの話し”は本当に無関係なのでしょうか――」

「他にも気になる点はある」


 とエンゲル。


「昨日今日作ったとは思えないあの食事(・・・・)――」

「床の血も同じだよ」


 ダリオが頷く。


「ありゃ、何日か前の痕跡だ(・・・・・・・・)

「何を云ってる? 緊急警報が入ったのは2時間前だぞ」


 眉間にきつく眉を寄せるジュード。それは疑っているのでなく、彼自身が見て見ぬ振りをしていた違和感だったからだ。

 気付いていたのだ、ジュードも。

 それでも「あり得ない」と語気を強めるボスにダリオの自信ありげな態度が崩れることはない。


「間違いない。けど、それがどういう意味を持つかは俺にも分からん。それにおかしいことはまだあるぜ……ただの一企業が“旧軍事施設”を買い取れるなんて、ミステリーがな」


 駄目押しのように疑念を畳み掛けるダリオ。その口端を意味深に歪めてみせて。


「思うんだけどよ。セオドラが抱える“機密案件”てのは、政府機関発注のヤバいやつ(・・・・・)なんじゃねえのか? 情報も何もかも外部に漏れさせないために、ご丁寧なことに発注者である政府が研究場所まで提供した――そう考える方が筋もイイ」

「はぁ……」


 観念したように大きく息を吐くジュード。


「そうなると案件の内容は、軍事利用目的か――」


 ひどく苦い顔でジュードは唸る。

 そういう厄介事に関わりたくなかったのにと。


「こうなると、ほんとうに“環境テロ”かも怪しいもんだぜ。いや、むしろ“本物のテロリストに襲われた”と云ってくれた方がしっくりくる」


 政府関連の兵器研究。

 それを狙ったテロリスト。

 妙に説得力のある妄想にダリオが唇をいっそう歪めてみせれば、


「また“大尉”に乗せられましたね」


 元上司との関係をクリスに突つかれて、ジュードの顔はすっかり不機嫌なものに変わる。


 YDSの役員会を占めるのは、“元米軍士官”のお歴々だ。そして現場で活動する請負人コントラクターの大半もまた、軍歴を有する者達だ。そんな“米軍予備軍”とも言えるYDSが、政府発注の大口業務を受託したセオドラと絡むのは当然の流れ。

 つまりYDSが今回の後始末だけ請け負ったというよりは、研究所の危機管理業務に深く関わっていると捉えるべきなのだ。そう思えば途端に、今回の一件もきな臭くなってくる。

 いやひどく真っ黒だ。


「早々に手を引くのも一考だ」


 エンゲルの大胆な発言に「報酬は惜しいですが」とクリスも渋々賛意を示す。驚くべきは、ダリオまでがそうすべしとフォローしたことだ。


「さっき確認したが、報酬の全部がパアになるわけじゃねえ。あれが嘘だったとしても、最低3割くらいはもらえるはずだ。それでも十分だ」

「勝手なことをぬかすな、おまえら」


 撤退すべしで盛り上がるメンバーにジュードは呆れ気味な感じで叱責する。いつもなら、任務続行を果敢に推すのは彼らの方なのだ。


「俺も任務中止には賛成だが、実際には明確な危機に見舞われてるわけじゃない。この状況で辞めると云ってみろ――相手から“任務放棄”としか見なされない。

 そうなればダリオ。お前が言った“報酬”が本気で守られると思うのか? いやそれ以上に――相手がYDSであっても、俺は会社の信頼を損なう真似はしたくない。今は信頼を築く大事な時期なんだ」


 起業してまだ三年目。

 民間軍事会社『無色の支援者(カラーレス)』は産声を上げたばかりで世間に名が知れ渡っていない。

 その顧客獲得に精を出すべき時期に信用を落とす真似をすれば、それは致命的な失態になる。

 多少のリスクをとっても積極的に成果を狙っていく必要が、経営者たるジュードにはあるのだ。


「でしたら、確かめてみてはいかがでしょう」


 ジュードの切実な訴えに、クリスがさらりとした感じで提案する。


「確かめる? 何を?」

「このフロアです。確か『B3』は“サンプル・パーク”と呼ばれているとか」



 『実験試料園サンプル・パーク』――。

 数々の常温倉庫に冷蔵倉庫、劇薬保管庫など。研究所で使われる実験用資材のすべてが、このフロアで貯蔵・管理されているのが名前の由来らしい。

 なので相応の知識があれば、フロアにある資材の全体像を把握するだけで、本研究所で行われる研究の方向性を見出せるかもしれない。

 いや、それよりも。



「ここなら実験動物の檻もあるようですし、案外、施設の人達が閉じ込められていたりするかも……それに、監視カメラが壊された理由も気になりませんか?」


 悪巧みするシマリスがいれば、こんな表情をするのだろう。

 明らかに好奇心9割で探索に誘ってくるクリスとジュードはしばし見つめ合う。


「「……」」


 そのまま目を反らさずジュードが告げる。


「残念だが“休憩タイム”と云っても、万一に備えてエレベータ前に待機しておく必要がある」

「別に私とボスだけで、ササッと確かめに行って戻ればいいだけです。もし何らかのトラブルで間に合わなかったとしても、最低二人は支援に送れます」


 だから問題ないと言い切るクリス。


「しかし施設全体はもちろん、このフロアの状態でさえろくに把握できない状況で、“戦力分散”の愚を犯すのはいただけない」

「だからです。今回、そのセオリー通りでラチが明かないから、“思い切った決断”が必要なんです」

「……確かにな」


 ささやかな抵抗を論破されて、ジュードはあっさりと折れた。本心では結局確かめてみたいのだ。居心地の悪い疑念が脳裏から離れないために。




 それらしき足跡を残しながら、一向に姿を見せぬテロリスト。


 例え殺されていたとしても、遺体さえ見つからない多くの警備員や研究者達。


 そしていまだ発見できない機密データ。




 それらはどうなってしまったのか?

 法外な報酬に目が眩み、任務遂行を優先にしてきたジュードの思考が、メンバーとの話し合いによって多少なりと冷静さを取り戻す。


依頼者あいつらの意向に添うことで、知らず俺達の思考がある程度限定されていたことは否めない。だったら――)


 あえて“待機方針”を無視することで、見えてくる何かがあるかもしれない。

 ジュードがエンゲルを見る。


「少し離れるぞ」

「了解」

「なら、途中までバックアップしてやるよ」


 そう名乗り出たダリオが、エンゲルをその場に残してついてくる。

 今いる地点――B4以降へのアクセス手段となる『第2エレベータ』はB3フロアの西南端に位置していた。そこから『機密保管室』を巻くようにして通路を歩き『小型検閲通路』を通過、最初の広い通廊に合流する。

 

「俺はここまでだ」


 ダリオが合流部の要所を抑え、ジュードとクリスが通廊を横断しようとしたところで。

 クリスに肩を叩かれ、ジュードが足を止める。

 理由は聞くまでもない。

 かすかなモーター音がどこからともなく聞こえてきたからだ。

 

「「「……」」」


 三人で耳を澄ましていると、やがて右手の暗がりから何かが現れた。

 成人男性の腰高まである直方体が、薄ぼんやりと遠くからの明かりを鈍く照らし返しながら進んでくる。


「何です……?」

「“清掃用ドローン”だ」


 ジュードが答える。

 足下で何かが回転しているのはモップだろう。ドローンの通った跡が淡く濡れ光っているように見えるから間違いない。

 おそらく各フロアに何台もの清掃用ドローンが配置され、自動的に施設のメンテナンスをしているのだろう。


「テロリストの兵器じゃないですね?」

「連中が“掃除テロ”なんかを本気でやってない限りはな」


 銃口やペンシルミサイルは見当たらない以上、軍用ドローンであるはずがない。

 施設に不測の事態が起きていても、ドローンだけは忠実にタイムテーブルに則って、職務を遂行しているのだ。

 しばらく様子を見守っていると、やがてドローンは暗がりの向こうに消えていき、二人は今度こそ通廊を横切った。ちなみに左手――西側すぐの突き当たりに『第1エレベータ』が見えた。

 横断した先にあるのは壁一面――右手に進むほど照明が切れて視認しずらいが、ぽつりぽつりとドアが貼り付いている。使途不明な部屋が列を為していた。


「どこから調べましょうか?」


 SMGから拳銃へ持ち替えながらクリスが指示を仰ぐ。


「別に手前からでいいだろ」


 部屋番号以外の差異が無い部屋では迷っても仕方がない。

 ジュードは手近の部屋に入る間際、クリスとアイコンタクトで突入タイミングを合わせる。

 開閉パネルに指先を触れさせる程度でドアは敏感に反応した。

 滑り込むクリス。その背がびくりと強張った。



「――なんだ、これは?!」



 一歩踏み込んだジュードも思わず呻く。

 二人のフラッシュライトが照らし出すものは、天井から吊り下がる肉袋・・。そう錯覚してしまうほど血に塗れ、血を滴らせる人体は、損傷が酷く濃厚な血臭を室内に充満させていた。それも複数ある。

 

「まるで屠畜場ですね」


 無神経なクリスの言葉だが、その顔は死人のごとく青ざめている。

 実際、部屋隅の小山も無造作に人体を積み上げたもののようだ。加工用の大型包丁やまな板が見当たらないだけで、精肉工場のごとく意図的に人体を集めている部屋なのは確かだろう。

 だが誰が、何のために?


「――おい、動いた」

「へ?!」


 クリスが今にも発砲しそうな勢いでUSPの銃口を突きつける。


「どれです――?」

「左だ。左隣の白衣」


 血で汚れてはいるが、目立つ外傷のない白衣の女が人山の裾に倒れていた。その細い指先がぴくりと動く。


「おい、聞こえるか?!」


 ジュードの声に反応は無い。

 慎重に歩み寄り、助け起こそうとしたところで、胸元の無線機が急に目を覚ました。




≪……A……チームA!!≫




 思わず目を見交わすジュードとクリス。

 目覚めた無線機からは、切迫した女の声が斬りつけるように迸る。



≪応答しろ、チームA! こちらイメルダ――≫



 その途中で、激しい銃声がイメルダの声を引き裂いた。

 絶叫する男の咆哮。

 合間にギィギィ響く甲高い声。

 その人間とは思えぬ肌を粟立たせる奇声に、ジュードは力強く無線のPTTボタンを押し込んだ。


「こちらジュード。何があった、チームA!!」

≪反応が遅いっ≫


 切り返しは鋭く、声には苛立ちがたっぷりとこめられていた。それでも怒りに振り回されることなくイメルダは端的に告げる。


≪襲撃を受けている。至急、支援に来いっ≫


 思わぬ要請に、もう一度、ジュードはクリスと顔を見合わせた――。



********* 業務メモ ********



●確定事項

 B3の一室:死体の山。生存者1名?

●懸案事項

 センターで起こしたテロリストの不審な行動。

●行動方針

 試料倉庫の探索。

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