第八話旅の始まり
その後、村から南の方位にある、暗黒騎士のシルが村長の村へと向かった。
「それで、その村はここからなんキロメートルはなれているんだっけ?」
「うーん、ざっと数えて、100キロメートル地点です」
おじいさんは驚いた顔をしながら、
「100!?もあるのかよ…」
「まぁ、ピクニック気分で頑張りましょう!」
「そうだな」
1時間後、
まだ、村を出て一時間歩いただけなのに
おじいさんはもう、へとへとだった。
「ちょっと休憩にしないか?
もう年齢的にも、体力もおじいさんだからよ…」
「まぁ、良いですけど…」
そして、草原が見渡せる丘で、少し休憩した。
「そういえば、この世界の地図ってのはないのか?」
「はい、ありますよ」
私は魔法を使い、地図を見せた。
「みての通り、東には人間、西には魔物が統治しています。そして、この魔物と人間の境界線が魔境です。そしてこの、魔境が付近にあるのが、村です。」
「じゃあ、俺たちはこの、魔境付近にいるってことか?」
「はい!そうなりますね」
おじいさんは納得したような素振りを見せて、
背伸びや足腰を伸ばす運動をした。
「よし、行くか!」
「ですね!」
それから12時間、休憩をとりつつも、何とか歩いて、人の村まできた。
「ここが、人間の村か…」
「そうですよ、でも、ここは大きい方ですよ…ここで休息をとってから、次の地点へ歩きます。それと、そのゴークの首飾りはとっておいてください。嫌な目で見られますから…」
そう言うと、おじいさんはゴークの首飾りを大事そうにポケットにいれた。
人間の村と、魔物の村の生活様式などは、あまり変わらない。なので、お風呂もあるし、鍛冶屋もあるし、料理屋も、宿屋もある。
「ここが、宿屋のようですね」
「おー、案外いいな」
見た目は普通の家のようだが、3階建てでなかにはいると広々とした空間になっていた。
「すいません、今日泊まりたいんですが、」
受付の方に話しかけると、笑顔で
「分かりました、2階の2号室と3号室がありますが…別々の方がよろしいですか?」
「そ、そうですね」
「では、案内します、お荷物…」
「いや自分達で持てるからいいよ」
「かしこまりました。では、ご案内致します」
そして、2階に登り、部屋まで行った。
「当宿屋は1階にある温泉などのサービスも使えますので、気軽にお使いくださいね」
「おお、そうなのか…案内ありがとな。」
「いえいえ、では、ごゆっくりおくつろぎ下さい」
そう言い、受付の方は礼をし、受付所へ戻っていった。
「じゃあ、先に温泉入って、明日の確認にするか!」
「ですね!」
そう言い準備をし、一階の温泉へと向かった。
リリアと別れた後、男湯へ入った。
「まさか、この世界にも温泉があるとはなぁ」
そして、脱衣所に牛乳が、あることに気づきテンションが上がった。
服を脱いでいると、隣の男から声をかけられた。
「なぁ、お前も騎士か!?」
(ブォン!)
腹が立ったので、頭を殴った。
「いきなり、お前より年上の相手にあんたはねぇだろうが!」
「す、すみません…自分と同じ、騎士だと思ったので…」
「ほぉーお前は騎士なのか」
「はい、騎士のラルドと申します!18です!」
いきなり始まった自己紹介に少し困惑したが
「俺の名は塩田泰蔵だ。64だ。」
「それにしても、その筋肉すごいですね!」
「うん?ああ、これか…これは普通に仕事していたらついたぞ?」
そういえば、リリアが
「異界の者だと言うことは誰にも言わないで下さい!禁じられた魔法なのですから…」
って言ってたなぁ、あまり言わないようにしておこう。
「そ、そんなにも歴戦の猛者なのですか?」
「歴戦の猛者なんてそんな…俺は15のときから、仕事して今年引退して、今は旅に出ているんだ」
「でも、その剣は…」
「あぁ、これはゴー、護身用なんだ」
そうだった。魔物の村にいたことは内緒にしておけって言われていたんだった…
「護身用にしては、なんか、妙な感じがしますね!」
ヤバい、気付かれたか!?
すると、次に続いた言葉はなにかおかしかった。
「俺の剣も見てくださいよ!妙な感じがするでしょ!?」
「あぁ、そうか?」
こいつはなんだろう…アホなのかな…
「取りあえず、温泉に入ろう、話はその時で…」
「そうですね!入りましょう」
そして、ラルドと一緒に体を洗い湯につかった。久しぶりの湯が歩いた際の疲れを流してくれて気持ちよかった。
「えっと…塩田…」
「泰蔵でいいぞ。」
「泰蔵さんは、一人で旅をしているのですか?」
「いや、もう一人女の子がいるけど…お前はどうなんだ?」
「はい、僕は幼馴染みの女の子二人ですね、」
「なんで、騎士なんかになったんだ?」
すると、ラルドは少しうつむきながら、
「僕の村は五年前、一回魔物に襲われて…それで、焼けちゃって、その頃ぼくは家で病床についていた母を看病していて…それで、母とさっき見せた剣、あれは父の形見なんですけど、それを持って出ようとしたら、火はもうそこまで来ていて、母に(私は重荷になるから、あなただけでも逃げて)って言われてそれでも僕は嫌だっていったんですけど、最終的に、母自らがおんぶしていた僕の背中から離れて、もう、炎の宇津に巻き込まれた家に残って、死んでいきました。それで、生き残った僕は騎士団に引き取られて、その時にあった2人と魔物退治をしています」
そう言うと、涙が溢れた。
「泣けるなぁ…」
「え?」
「俺、そう言う話聞くと駄目なタイプでよ…俺、お前のことアホだと思っていたけど…普通にアホじゃなくて、いい奴だったじゃねえか…」
「ありがとうございます、すいませんね、こんな気持ちのいい温泉に入っているのに、変な気持ちにさせちゃって…」
「いやいや、気にするな!サウナに入って、落ち着かせて来るから…」
「サウナ?」
ヤバい、この世界にあるのか分からないサウナという言葉をつかってしまった…
「良いですね!そうしましょうか!」
よかった。ここにもサウナがあるのか…
そして、俺とラルドはサウナに入った。すると、大柄な男と、細身ながら、鍛えぬかれた男がいた。
「あ、あれは…」
「うん?知り合いか?」
「歴戦の猛者のバルガと最強の剣士候補のジンですよ!知らないんですか!?」
「あぁ、そっち系統のことは疎くてな…」
そして、俺とラルドは椅子に座った。
そうするとバルガが口を開いた。
「ぬるいな、」
そう言うとジンが反応し、
「確かにな」
そう言うと、ラルドが
「あ、何度上げますか?」
そして、バルガとジンがラルドを睨み付けながら、
「10度上げてくれ!」
「は、はい!」
それから10分後
ラルドはのぼせていた。
バルガとジンはどっちが先に出るのか、争っていたらしいが、もうどちらもギブアップ寸前だった。すると、ラルドが
「すいません!先に出てます!」
と言い、ドアを開けた、すると、涼しい風が入ってくると、ジンもバルガも気持ち良さそうな顔をしていたが、すぐにまた、ギブアップ寸前へと戻っていた…
それから10分後…
「も、もう無理だ!」
そして、バルガが出ていった。すると、ジンは勝ち誇った顔をしていたが、俺を見るとすぐに勝負するぞという顔に戻った。
「あぁ、ぬるいなぁ。」
と言うとジンが「は?」という顔をして、俺を見ていた。
「じゃあ、10度上げるかな…」
そして、上げようとすると、ジンは撤退していった。
「サウナを誰かとの戦いにしちゃいけねぇ
本当は自分との戦いなんだからなぁ」
そう言い、10度あげた。
20分後
まだまだいけると思ったが、俺を探しにきたラルドが入ってきた。
「泰蔵さ…」
そう言いかけると、ラルドはぶっ倒れた。
「おい!ラルド!大丈夫か!?」
すぐさまラルドへ応急処置をし、服を着させて、ロビーでラルドの仲間が出てくるのを待った。
すると、リリアと一緒に出てきた女の子達がラルドを見るなり駆け寄ってきた。
「あれ!ラルドどうしたの!?」
「あぁ、風呂に入ってたらぶっ倒れてな…それで、仲間を待っていたんだ。」
女は本当に申し訳なさそうに謝った。
「大変ご迷惑をかけました…」
すると、リリアが駆け寄ってきて、
「あれ?おじいさんじゃないですか…?」
「おぉ、リリア!この子達は…知り合いか?」
「いえ、さっき話しかけてくれて、同じ冒険者だって言ったので、一緒に入ってましたけど…おじいさんとその方とは…?」
少し困惑気味のリリアに対して話した。
「こいつは俺が服脱いでるときに話しかけられてよ、それで、一緒に入ったんだ」
「へぇーそうなんですね!」
すると、ラルドが目を覚ました。そして、一人の女の子が話しかけた。
「おい!大丈夫か?ラルド!」
そう、言うと、ラルドは起き上がり、
「おう、少しのぼせてな…」
「もう、心配しましたよ…」
ラルドは俺を見るなり、
「あ!泰蔵さんがここまで運んできてくれたんですね!ありがとうございます!」
情報把握が早いな…
「いやいや、きにするな」
そして、ラルドは紹介を始めた。
「こっちの二人はさっき、話した幼馴染みです」
「こっちの元気な子がリルで、こっちがシオンです!」
そして、リルが話しはじめた。
「リルです!よろしく泰蔵さん!」
そして、シオンも話し始めた。
「シオンです、ラルドをここまで運んで来てくださり、ありがとうございます」
「いやいや、いいんだ。ラルド!これがさっき話した旅の仲間だ」
「リリアですよろしく」
「ラルドですこちらこそよろしく」
そして、握手を交わしていた。
それを、見届けたあと、シオンが話した。
「すいません、私達やらなきゃいけないことがあるので先に失礼します」
「あ、そうなんですね!では、また、あえたらいいですね」
「そうですね、では、」
「リリアちゃん!泰蔵さん!じゃあね!」
「では、泰蔵さんリリアさんまた会う日まで…」
そして、手をふられたので、ふりかえした…
リリアと、泰蔵が見えなくなると、リルが話し始めた。
「まさか、あのラルドがのぼせるとはね…」
リルが少しにやけた顔をしながら、ラルドに話しかけた。
「うん、そうだね…久しぶりにいい湯だなとおもってさ…」
ラルドは笑顔で答えると、リルは「ちぇー」っとした顔でまた話し始めた。
「今日の調査でなにか報酬はあった?」
リルがそう訪ねると、ラルドは少し間を開けてから答えた、
「うーん、泰蔵さんかなぁ」
シオンが訪ねた。
「なにかあったのですか?」
「まあちょっとなんだけど、サラナのことをサウナっていったり、そこで20度も温度を上げたり、ここの人間じゃ、あり得ないことばかりしていたからね…」
「じゃあ、魔物が人間に化けている…ということですか?」
「いや、魔物ではない。ちゃんと体をみたし、変身しているとは思えなかったしね…
そして、妙な剣を持っていたね…」
「あ、それは分かった!なんか、変な感じしたけどね…」
「そして、僕の剣をみても、なにも感じなかった素振りをしていたしね…」
「もしかしたら…」
「そのもしかしたら…異界の者かもしれないかも…しかも…只者じゃない…
いつか戦う日がくるかもね…」