第七話これから3
いつものように、朝起きて外の空気を吸いに家を出て、背を伸ばす、そしてご飯の支度をして、朝ごはんをみんなで食べる。
これが、我が家のルールだ。
でも、今日は私が一番乗り、昨日は大人のいっぽを踏むために、一人で寝た。
パパもママもまだ寝ている。我が家は一番先に起きた人が大きな音をたてて、みんなを起こしてあげる。
だから、大きなあくびをしたり、階段を大きい音をたてて、下に降りる。一段、二段、三段と降りていく、でもまだパパやママは起きてこない。四段、五段、六段。もう、階段を降りてしまう、早く起こさないと……
「パパ!、ママ!早く起きて!」
大きい声で言っても返事はなかった。
「仕方無いなぁ…もう先にやっちゃうからね!」
そして、外に出て背伸びをしたけれど、なんだか、いつものように気分がよくない。
「いつもなら、気持ちいいのに…」
…あれ?なにかおかしい、ママもパパも来ないし、なぜかひとりぼっちな気がする。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
私はうずくまり、
「 なんでこんなに、頭の中は恐怖だらけなの?ここには、ママもいるしパパもいる……
あれ?、いないっけ?あれ………」
「大丈夫だ!俺がいるから…」
その声を聞き、目が覚めた。
「おいリリア!大丈夫か!?」
おじいさんが、私の手を暖かい手で握っていた。
「わ、わたし、なにかしましたっけ?」
「朝起きたら隣で寝ているリリアがずっと、怖い、怖い、って言いながら、震えていてすごい量の汗かいてたから、何かあったと思ったけど、大丈夫そうだな…」
確かに、汗はビッショリかいていた。
「大丈夫かい?リリアちゃん!」
昨日、私のことをかわいいと言ってくれた、オークのおばさんが来てくれた。
「あ、ありがとうございます、え、えっと」
「おばさんって呼んでいいわよ、それより、なにか怖い夢を見た?」
「はい、、幼い頃の記憶だと思うのですが、その頃には、まだ生きていた父と母がいなくてひとりぼっちになって、ずっと怖いという、文字が頭から離れなくて、それが恐怖でひとり、うずくまっていたら、おじいさんの声が聞こえてきて、目が覚めました。」
そう言うと、おばあさんは私に抱きつき、
「大丈夫だよ、リリアちゃんは強い子だから。」
と耳元で囁いてくれた、それを聞くと涙が溢れてきた。
その後、オークのおばさんが用意してくれた、お風呂にはいり、汗ばんだ体を芯から暖めた。
「もう、大丈夫そうか?」
「はい、お風呂に入ってきて、気分がスゴく良いですよ!」
「まぁ、朝風呂は凄く気持ちいいからな。
でも、こっちの世界にも風呂という文化があるとは……」
「はい!こっちにはお風呂という文化もありますし、温泉という文化もありますよ!」
おじいさんは、すごく嬉しそうな顔をしながら言った。
「そうなのか!?いつかはいりてぇなぁ!」
「温泉と言えば、前に、温泉がわいてきた場所をめぐって、魔物と戦争したこともありますしね、誰しもが好きなんですよ!」
「おいおい、そんなことでも戦争するって、どんだけお前らの世界の人たちは、いざこざが絶えないんだよ…」
「まぁ、人間と魔物は姿、形が違いますし、敵視するのは、悲しいけど絶えることはないでしょうね…」
「ここに、俺と同じように召喚された奴は、人間側につくのか…それとも魔物側につくのか…どっちにつくんだろうな…」
確かに、元々いる人たちは敵視し合っているが、行きなりこの状況をみたら、どっちにつくのだろうか。そして、おじいさんどっちにつくつもりなのだろうか…
「おじいさんは、どっちにつきますか?」
そう言うとおじいさんは、少し考えた後、話し始めた。
「どっちもかなぁ。」
「どっちも!?」
「うん。だって、ここのやつらは、人間が嫌いな魔物なのに普通に生活してても、なにも悪いところはなかっただろ?なにも悪くしてない奴に対して、嫌いだとは言いたくねぇなぁ。」
たまに、頑固だけど、自分のプライドをしっかりと持っている、おじいさんならこの答え方をして当たり前だろうと思った。
「そう言うと思ってましたよ」
そう言うと、少し照れ笑いしながら
「そうか?ありがとな。」
「そういえば!おじいさん以外にもこの世界に召喚された者がいるらしいんです!」
「そ、そうなのか!?」
「はい!そして、その人がいる村は魔物の村らしいんです。」
「普通に魔物の村に入ったら俺たちは殺されないか!?」
「大丈夫です!その村の村長とゴークさんがお知り合いらしいので話はつけれると言っていましたよ!」
「そうか…なら安心だな!」
「ですね!」
そして、私たちはゴークのもとへ、村の村長と話を付けてもらうために話に行った。
「分かりました!では、連絡しますね!」
「連絡って…この世界には電話があるのか?」
また新しい言葉を聞いた。
「電話…
「電話っていうのはな、遠くの人たちとでも話せる機械なんだ」
「へぇーそんなのがあるんですね!私達の世界ではみての通り、魔法があるので、遠くの人と顔を見ながら、コミュニケーションできるので、電話という奴はないですね…」
「ふーん…」
「ん、繋がった!」
そう言うと、ゴークは少しはしゃぎながら電話
相手の第一声を待っていた。
「久しぶりだな!アル!」
アルってなんだ…
「そっちこそ、元気そうで何よりだよ、シル!」
シル…どんな顔の人なんだろう…
チラッと見てみるとそこにいたのは、暗黒騎士だった。
暗黒騎士
見た目は鎧を着ていて、中身は骸骨の魔物。
腰にある剣を使い敵をなぎ倒していく。
「あ、こちらの方々紹介しますね!」
そして、ゴークが画面を大きくすると、おじいさんは、驚愕した。
「が、骸骨じゃねえか!」
「いえいえ、私は骸骨ではなく、暗黒騎士のシルと申します以後お見知りおきを」
「お、おぅ、」
少し驚いている、おじいさんのことを気にせずゴークは紹介を始めた。
「先程も自己紹介したのですが、もう一度改めて紹介します
彼が暗黒騎士のシルです。」
「以後お見知りおきを」
「シル、こちらの方々は…」
「リリアです!」
「塩田泰蔵だ」
すると、暗黒騎士は少し驚きながら、
「も、もしかして、あの竜を倒したおじいさんって、泰蔵さんですか!?」
少しおじいさんは照れながら、
「お、おう、そうだ。」
「お目にかかれて本当に嬉しいです!」
「お、おう、そうか?…」
「それで、アル、なんのようだい?」
「この方々が、召喚された者を探しにそっちの村に行きたいと言うことと、リリア様が魔石を今、必要としているから少しわけてくれないか?」
「私は全然良いんですが、村の方たちがどういう反応をするかわかりませんがよろしいですか?」
「あぁ、大丈夫だ」
自信満々におじいさんがは答えた。
「泰蔵殿は何か考えがあるんですか?」
「あぁ、村の新しい魅力を発見して資源にするために来てもらったって言うことにすれば大丈夫じゃないか?」
すごい、頭がいいな…
「なるほど!それなら大丈夫です!村でお待ちしております!」
そして、電話は終わった。
すると、おじいさんがはゴークに向かって質問を投げかけた。
「魔物にも名前があるんだな」
「そりゃ、生きてますからあって当然ですよ?」
「じゃあ、今度からお前のことアルって呼ぶわ」
「あ、はい!呼び方は別にとれでもよろしいですよ!それで、いつシルのもとに向かいますか?」
「今日だ」
今日!?
「!?」
アルも急すぎるおじいさんの話に付いていけなかった。
「なんか、文句あるか?」
「い、いえ、ありませんけど準備とか…」
「準備なら整ってるぞ、毎日朝、いつ出てもいいように準備してたからな。」
「そ、そうですか、リリア様もですか?」
「はい、おじいさんに付いていかないとこの村の外の魔物に襲われちゃうので…」
そして、アルははっと思いつき何か持ってきた。
「これ、ゴークの首飾りって言って、ゴークよりも弱い相手は攻撃してこないって言う代物なんです!」
「ほぉーそれはすげえや」
おじいさんがまじまじと首飾りを見ていた。
「でも、これってアルさんの物じゃ…」
「いや、良いんですそれは、複製したものですから」
「あ、そうなんですか…」
そして、もうひとつ何か持っているものを差し出した
「あと、この刀なんですけど、これはこの村の鍛冶屋が打ってくれた代物で竜を倒してくれたお礼にってことで…」
そして、おじいさんが刀を受け取って腰に付けた。
「おーなかなか似合いますね!」
「うん似合ってますよ!おじいさん!」
「そ、そうか?にしてもこの刀、以外に軽いな」
「はい!その刀は鉄ではなく、魔石を使って打ったものなので軽く、しかも耐久性抜群なおかつ攻撃力も申し分ない、代物です」
「す、すげえなそりゃ…この刀の名前は何て言うんだ?」
「泰蔵殿の泰をとって泰強刀です!」
なんか、名前からしてとにかく強いって言う感じがわかる、というか、強いんだけどね…
そしてそのあと村を後にした。
その時に村のオークみんなで、見送ってくれた。
「頑張れよー!」
「げんきにいきろよー!」
「がんばれー」
そんな言葉が飛び交うなか、ひとつの言葉だけ、耳によく響いた。
「リリアちゃーん!あんたは強いってことだけは忘れないでね!」
「ありがとーう!おばさん!」
そして、手をふって村を後にした。
魔物はこわいし、大切な人を奪った者でもある。だが、それだけが全てではなく、心の優しい魔物もいるということが分かった。