第四話一段落
竜を倒したおじいさんはまた、村のオークから胴上げされた。もはやこの村を助けてくれた神だ、と神格化されそうな勢いだ。そしたら、私は神を召喚した、英雄扱いされるのだろうか…
「お前ら!一回話を聞いてくれ!」
台の上に立ったおじいさんの一言で、村中のオークは静かになった。
「まずは、わしはここの村のボスにはならない」
「えええ!?」
「ウソだろ!?」
「そんなことおっしゃらないでください!」
「なぜですか!?」
おじいさんの一言に村中のオークは、ざわめきだした。
「なぜだと言われても…お前らのボスはここにまだいるだろ?なぁ、ゴークとやら」
「……はい」
おじいさんの影に隠れていた、ゴークが出てきた、というかあの小さなおじいさんの影に良くあんな、でかいゴークが隠れることができたな……
「何をおっしゃられるのですか!そいつは、私達に重労働を強いらせた者です!」
「また、あの日々が続くのか…」
「そ、そんなのいやだぁぁぁ!」
この人たちは、一人で長い間竜の脅威から村の人達を守るためにずっと頑張ってきたのに…
そんなことを考えていたら不思議と私の口は動いていた。
「そ、それは誤解です!この、ごー、あなたたちのボスは長い間、皆さんをあの竜から守ってくれたんですよ!」
「デタラメ言うなこの小娘が!」
「そうよ!このゴークは、あの竜と協力してたらふく魔力をためていたのよ!」
「そうだそうだ!」
「っと言うか、お前は誰だ!」
「引っ込んでろ!」
事実を言っても誰も信じてくれなかった。
「ほ、本当です!」
「ウソつけ!」
「この人間風情が!」
あちこちから起こる暴言に私は耐えきることが出来なかった。そんなとき…
「こいつは、お前らを助けたワシをこの世界に召喚してくれたやつだ。だから、こいつの言ってることは、本当だ」
おじいさんの一言で私に向けられる暴言は終わった。
「そ、そうなのですか!?」
「あらやだ、私ったら本当か分からないのに暴言を…」
「っと言うことはさっきの小娘が言ったことは本当のことだったんだ…」
「ボス…」
「だから、またこのゴークをボスにしてやってはくれないか?」
そんな一言に黙っていたゴークが口を開いた。
「本当に皆、すまなかったな。例え、皆を救うためだとしても、皆に相談せず勝手に重労働を強いた事実は変わらない、だから……ボスからではなく、まずは仲間としてみてほしい、どうか
お願いします」
そう言って、ゴークは頭を下ろした。ゴークとオークの種族は姿は似ているが全くの別種で違う。オークに比べて、ゴークは集団ではなく一人で行動することが多い。そしてオークよりも個体数は少ない。ゴークは、集団ではなく一人で生きれルようにならなければいけない。なので、ゴークの親は子が物心がつくまでに生きていく知恵を教え、ある日子供を独りにし去っていく。そう、母と父を失った私と同じだ。だが、ゴークは子供の頃からなので、私よりも長い間辛く先も見えない人生を歩んできた。もうそんな過去には戻りたくはないのだろう。だから、ボスではなく仲間として1から関係をもう一度作りたいのだろう。
長い間ゴークは頭を下げていた。そんなとき、あるオークが言った。
「確かに、あんたは俺たちに辛い重労働を押しつけたし、竜のことも俺らに相談さえしてくれなかったと言う事実は変わりないが……あんたは俺らを助けてくれた事実も変わらないだろ!」
その一言によって、オークたちが口々に叫んだ。
「そうよ!あなたは私達を助けてくれた命の恩人よ!」
「あんたは最高だぜ!」
「あなたがボスにならなければ、誰がなるって言うんだ!」
「ボス!ボス!ボス!…」
そして、ボスになれと、意図しているようなボスコールが始まった。
「じゃあ、このゴークがもう一度村を統治するボスと言うことで言いな?」
そのあとも、ボスコールは止まなかった。ゴークの顔を見ると、涙が溢れていた。やっと自分を認めてくれる仲間に出会えたのだから…
「本当にありがとうございました、えっと…」
「私の名はリリアです」
「俺は、塩田泰蔵だ、神さまと呼べ」
「ちょっとそれは…」
「いえいえ、良いんですえっと、リリア様と、神さま…」
「やっぱり、泰蔵殿にしてくれ、なんか恥ずかしい」
「分かりました、泰蔵殿」
「先程も申し上げましたが、本当にありがとうございました、お礼に何をすれば良いのか…」
「んー、あ!お前魔石欲しかったんじゃないのか?」
「そうですけど…あ、この度は魔石を盗んでしまい申し訳なございませんでした」
「あ、魔石を盗んだのは泰蔵殿ではなくリリア様でしたか…ですがリリア様が盗んでくれたことで、この村の問題は解決したので…終わり良ければ全て良しと言う感じですから…ちなみに魔石はいくつ必要ですか?」
「ちょっと待ってください…」
「禁術」の本を見て、魔石の個数を確認した…
「ええー!?!?」
「どうした!?」
「あ、あ、あのこ、ここ、この本確認した、ら、らら、」
「あーもう簡潔に言え!と言うか見せろ!」
「なんだこりゃ!?」
「ど、どうしましたか!?」
「あ、あのここには魔石の貯蓄量はどのくらいですか?」
「ざっと数えて600くらいですかね…もしかしてこれでも足りない感じですか?」
「8000」
「今なんて?」
「8000個です」
「ええええ!?そんなに魔石つかう魔法見たことも聞いたこともないですよ!?」
「自分の目で確かめてくれ」
「ここですね」
数字を見た瞬間、ゴークさんは唖然としていた、だって本当に8000個とかいてあるのだから。
「もしかして!リリア様もう(禁術)は使いましたか!?」
「はい、このおじいさん呼ぶために」
「あちゃー」
「なにか不味かったですか!?」
「(禁術)は一回使うと、二度と使わせないように、条件がとてつもなく難しくするんです」
「じゃ、じゃあ私は父を生き返らせることが出来ないってことですか!?」
「はい」
「え…」
ここまでうまく良っていたのに、ここまできて…父を生き返らすチャンスが失くなるとは…そう考えると、また、涙が出てきた…
「なぁ、ゴーク」
「はい、なんでしょうか?」
「村っていうのはどのくらいあるんだ?」
「魔物だけでも30人間は分かりませんがそのくらいはあるでしょう」
「なぁ、小娘まだチャンスはあるな」
「え…?」
「なら、その村全部巡れば良いじゃねぇかそして条件の一つの経験値もその間にたまる、これならどうだ?」
「…」
「あきらめんなや、お前の4倍も生きてるんだ、チャンスは二度と来ないことは、俺の人生ではなかった、これから先お前はたくさん生きれる、時間を使ってゆっくりでも良いからお前の夢を追え!そして困ったときは、俺がいつでも助けれるようにそばにいてやる、そして俺がお前が父親を生き返らすまで俺はお前の父親として生きてやる、分かったかリリア?」
いきなり、父親になってやる、と言われたら誰しもが困惑すると思うが今の私にはなぜだかその言葉は胸に響いた。
「わ、分かりました…ありがとうございます、泰蔵さん」
「本当に申し訳ないんですけど、このシーン台無しにすること言っても良いですか?」
「なんだ?」
「いや、なんかすごい感動したんですけど、いつから泰蔵殿は一人称が俺になったんですか?」
「いや、なんかわしって言うと父親感台無しだから、俺にしようかなって」
「そうですか、あと前までお二人方、小娘!おじいさん!って呼んでたのに、いきなりしたの名前で呼び合うとなんか違和感ありますね!」
「確かになぁ」
あ、来る
(ブォン!)
なぜだか、おじいさんの鉄拳制裁のタイミングが分かったような気がする。
「本当に台無しにしやがって!ふざけんな!呼び方違和感だらけとか普通言わねぇだろうが!」
「こ、これは誠に申し訳ございませんでした」
「いや、でもなんかやっぱり違和感あるんで、おじいさんって呼んで良いですか?」
「お、おう」
私が父を生き返らすまで、泰蔵さんは私の父になるということになったのたが、呼び名は変化することはなかった。
分かったことが2つある1つはゴークはなかなかのkyだったこと。
2つ目はさっきの「禁術」の本を見て分かったことがある。
それは、転生術の説明欄のしたに書いてあった。
転生術
異界の地から、異界の者を呼び出し仲間にすることが出来る。
なお、その者は異界の土地で死期が迫っているものに限定される