~この意味も無い世界で~
第一話
「起立、気をつけ、礼。」
高校に入学して、早くも1ヶ月が立った。俺、酒井和人は、数学の教師の無機質な声を聴きながらぼんやりと窓の外を眺める。
「・・・・・・でーこれがこうなるからー」
校門の前に生えている桜の木もすっかり緑になる今日、5月8日、青い空には昼間の白い月と、
黒々とした大きな星がうかんでいる。
いや、実際にはうかんでいるのではなく近づいてきているのだ。
地球に隕石が、接近しているのが分かったのは今から10年前のことだ。直径15km程の大きさでこれが地球にぶつかると、地球は3000℃の炎に包まれ、海は干上がり地面には灰が降り積もる。地球は隕石衝突から1ヶ月で死の星になってしまうそうだ。
当然各国政府は衝突を止めようとした。しかし、努力もむなしく隕石は止まらず、約1年後の5月1日に地球に衝突することになっている。
余命1年になった人達がわざわざ学校に来るはずもなく、入学から1週間で席の3分の2が空いてしまっている。
キーンコーンカーンコーン
授業が終わり、俺はかばんをもってたちあがる。やることも無いので屋上に上がる。
ぼんやりと遠くに見える黒々とした星を眺めながら考える。
自分の人生はなんだったのだろう・・・・・・
生まれてこの方、いいも悪いもなく普通の生活をしてきた。それがあと1年後には終わる。
それを意識してもなんとも思っていないことが悲しい。
そう思うと、今死んでも、1年後に死んでもどうでもいいような気がしてきた。
屋上の柵を乗り越える。
下を見下ろしてふと考える。
自分が死んだら、誰が悲しむだろうかと・・・・・・
家族は悲しむかもしれない、でも、その家族でさえ、1年後にはしんでいるのだ。
そう、こんな世界は無意味なのだ
屋上の縁に立ち、深呼吸をして、空中に向かって身を投げ出・・・・・・
「ねえ、なにしてるの?」
後ろから澄んだ声が聞こえた。




