商国からの通知2
そこへ間髪入れずにマコトが会話の主導権を奪った。
「とりあえず皆落ち着け。
そんなに頭に血が上ってると、その通知を送ってきた連中の思う壺だぞ。」
マコトに指摘されたことで皆の硬直が解け、まずはリスティがその理由を尋ねてきた。
「・・・マコト、それはいったいどういうことです?」
「冷静に考えればわかることだ。
皆を煽って先に手を出させることが相手の目的だからだ。」
「つまり商国は、私たちが首謀者である商国の王子を排除するために動くことを望んでいる、ということですか?」
ネーナの解釈をマコトは肯定した。
「そうだ。」
それに対してアリアが疑問を口にした。
「ですが何故そのようなことを自ら望んでいるのでしょう。
普通に考えれば、あのような会談の開催通知を送れば、他国を敵に回すのは誰の目にも明らかです。
破滅願望や自殺願望でもあるのでしょうか?」
これにはミーナも同意見のようだ。
「そーよね。
この間の軍国との戦いは詳細を明かしてはいないけど、商国も結果くらいは知ってるはずよ。
そんな軍国との戦いに参加した各国に、そこまで強気な通知をしてくるものかしら?」
「可能性としては、商国が軍国を超える戦力を保有しているから、とも考えられます。
そうであれば他国が先に手を出してくれば、商国は大義名分という名の合法的な侵略ができますから。」
「ラスティお姉様、いくらなんでもそれは考え過ぎかと。」
「レスティお姉様の言う通りですわ。
さすがにあの商国にそのような戦力があるとは考えられませんわ。
経済面ならともかく、これまで商国が巨大な軍事力を保有しているなどという話は聞いたことがありませんもの。」
「しかしミスティお姉様、裏で商国に例の組織が付いているのであれば、かつての軍国の技術が流出していてもおかしくありませんわ。
違いますか、マコト様?」
このヘスティの考えに対して、マコトが詳細を説明した。
「ヘスティの考えは半分正解だ。
確かに商国のバカ王子の裏には、例の組織が付いている。
そして軍国で使用されていた技術と組織の技術が融合し、ある巨大な兵器が商国内で建造され、数日前に使用可能な状態になったんだ。」
「巨大な兵器を建造、そして設置ですか・・・それはつまり、その場所からは動かすことができないほどの巨大兵器、ということでしょうか?」
エターナの予想をマコトは肯定し、詳細を付け加えた。
「正解だ。
正確には、商国に設置された巨大兵器は、全方位に発射可能な長距離魔導砲台だ。
これによって商国から大陸全土に向けて、遠距離攻撃が可能になった。
今回バカ王子は、その兵器を使って会談の場で各国を脅すつもりだろう。」
「マコト様、その長距離魔導砲というのは、どの程度強力な兵器なのですか?」
シーリンの質問に、マコトは限定的な答えを返した。
「威力だけは一級品だな。」
その内容に興味を持ったのか、レミルが詳しい説明を求めてきた。
「威力だけ?
それ以外は全然ダメってことか?」
「俺から言わせれば兵器としては欠点だらけだ。
まず実弾の作成費用が莫大で、作成期間が7日かかる。
その後も、実弾の装填準備に半日、発射するためのエネルギーとして使用している魔力の充填に最低でも100人で半日。
これは距離が遠くなればなるほど、より多くの魔力が必要になる。
更に照準を合わせるのに最低でも2日かかるが、それでも照準精度が着弾誤差50km以上もある。
あらかじめ実弾を多く準備していたとしても、最短でも1発撃つのに3日はかかる。
ちなみにまだ発射準備はできていない。
今のペースだと・・・2日後の昼前といったところだな。」
「それって会談に合わせて準備してるってことか?」
このフェザリースの考えは、マコトによって修正された。
「各国の要人を集めたところで、一発撃って威力を見せつけながら脅すつもりなんだろう。
ただ本当のところは準備が終わるのが2日後の昼前だったため、会談の日程をそれに合わせたんだがな。」
「何の警告もせずに無条件で撃ってくるってことはないのかい?」
ホーネットが呆れた顔で確認してきた。
「余程の馬鹿じゃない限りは撃たないだろうが、あのバカ王子だからな・・・それはそのときになってみないとわからないというのが正直なところだ。
もしかしたら試射とか言って、見せしめのために撃つかもしれないが、そのときは俺が何とかする。」
マコトが保証したので皆が安心していると、リスティが話を先へと進めた。
「そうですか、マコトがそう言うのでしたらそちらは任せます。
それで、マコトは今回の会談には誰が参加すべきだと考えているのですか?
私としては、以前マコトが私に行った変身魔法で若返らせてもらい、自ら引導を渡しに行くべきだと考えています。」
このリスティの話に、皆が興味を示した。
「それってリスティが護衛の騎士とか言って帝国に来たときのことかい?
あれは若かったねぇ。」
「以前帝国で行われた料理大会のときにも、若返った姿で参加していましたね。
本当に若かったです。」
「あーあれね。
若いっていいよねぇ。」
「確かにあれでしたら、私たちも会談へもぐりこめそうです。
若返るのもいいですね。」
「あの魔法であれば、私たちでも一番の問題であった年齢の条件を満たすことができ、直接引導を渡せます。
若返った姿も見てもらいたいです。」
ホーネット、ネーナ、ミーナ、アリア、シーリンが、当時のリスティの姿を思い出しながら賛同し、マコトを一斉に見た。
その視線は、自分たちも若返らせろ、と言っている。
「そのようなことができるとは、さすがはマコト様です。
私も若返ってみたいです。」
「それでしたら私たちが会談の場にいても違和感はありませんね。
私も若返りに興味あります。」
「忌々しい年齢制限が問題無くなったとなれば、あとは誰を連れて行くかですわ。
私もぜひ若返ってみたいですわ。」
「私たちの場合、護衛は娘たちを連れて行けばいいですわ。
私も若返らなければいけませんわ。」
「私のところは自国に頼りになる者がおりませんから、誰かお借りしなければなりませんね。
私のことも忘れずに若返らせてくださいね。」
一方当時のことを知らないラスティ、レスティ、ミスティ、ヘスティ、エターナは、期待のこもった目でマコトを見ている。
こちらも、当然自分たちのことも若返らせてくれるのですよね、と言っていた。
「だったら決まりだな。
俺たちで直接商国に乗り込んで、そのバカ王子とか言う馬鹿をぶちのめしてやろうぜ!
もちろん俺も若返ってな!」
「おうよっ!
ボッコボコにして、誰に喧嘩を売ったか教えてやるぜ!
それと俺も若返るぜ!」
最後に完全にやる気になっているレミルとフェザリースは、若返ることよりも暴れられることが楽しみなようだ。
だが次のマコトの話を聞いてその場の雰囲気が一変する。
「・・・先に言っておくが、俺は元々ここにいる皆を会談へ参加させるつもりは無いぞ。
年齢制限のことに関係無くな。」
これにリスティ、ホーネット、ミーナがすぐに反論してきた。
「なっ!?それはどういうことですか!」
「アタシたちが参加しないで、いったい誰が参加するってんだい!」
「そーよ、そーよ!
私たち以外に適任者がいるわけないじゃない!」
納得がいかないと言うので、マコトは1つ目の理由を突きつけた。
「それじゃぁ聞くが、妊娠中だったり、出産を終えたばかりのその身体で、もし万が一のことがあったらどうするつもりだ?」
「そっ、それは・・・(×3)」
3人が何も言い返せないでいると、ネーナ、アリア、シーリンがマコトの言葉に理解を示した。
「確かに、正直まだ本調子には程遠いですね。」
「そうですね、まだ2、3割ほどといったところでしょうか。」
「私もこの娘に何かあったらと思うと・・・無理はできませんね。」
当然納得できない者たちもいた。
「でしたら私たちはまだ妊娠していませんので、問題ありませんわね。」
「それはそれで残念でなりませんが、ラスティお姉様の言うとりです。」
自分たちは関係無いと、ラスティとレスティがマコトに反論してきた。
だがマコトは譲らない。
「駄目だ。」
それに不満なミスティ、ヘスティ、エターナが説明を求めてきた。
「どうしてですの!」
「私たちは問題無いはずですわ!」
「マコト君、私たちも納得できる理由を教えてください。」
納得するまで引くつもりがない5人に、マコトは2つ目の理由を突きつけた。
「会談が進んでしばらくすると、激しい戦闘がはじまるからだ。」
「・・・(×5)」
これには、普段戦いから遠退いている5人は何も言えず、反論できなかった。
しかしそれで引かない者もいる。
「だったら俺は問題無いな。」
「俺だって戦えるぜ!」
戦闘と聞いてレミルとフェザリースは、ますますやる気を出している。
これをマコトは拒否した。
「だから駄目だと言っているだろう。」
当然納得できず、2人は猛反発してきた。
「何でだよ!」
「俺たちじゃ力不足だって言うのか!」
そんな2人に、マコトはハッキリと現実を突きつけた。
「そうだ。
今回の戦闘では、王力までしか使えない2人では完全に足手まといだ。
最低でも神力以上を使いこなせなければ話にならない。」
「ぐぅ・・・(×2)」
まだ神力の域まで到達していない2人は、何も言えなくなってしまった。
代わりにリスティとホーネットが、相手の正体について追及してきた。
「マコト、そこまで言うからには、今回の相手がわかっているということですね?」
「誰なんだい、マコトがそこまで警戒する相手ってのは?」
マコトは少し考えたものの、その正体を正直に答えた。
「・・・天使だ。」
天使と聞いて真っ先に反応したのはシーリンだ。
「っ!?マコト様、それはユーリを連れ去ったあの天使ですか!」
マコトはシーリンが求めている回答の意味を理解して答えた。
「連れ去った本人かは、今のところまだわかっていない。
だがその天使で間違いない。」
「そう、ですか・・・」
マコトの答えに、シーリンは複雑な表情をしている。
親友を攫った本人、またはその仲間が出てくると聞いたものの、自分では力不足であることもわかっているため、仕方のないことだろう。
そんなシーリンに今は何も言わず、マコトは話を続けた。
「今回バカ王子の後ろ盾になっている組織との仲介役には、中級の天使が1人就いている。
そいつは会談にも出席するはずだ。
他にも何人か、手強い相手がバカ王子の護衛に就いている。」
これを聞いて、ネーナとミーナからは反対意見が出なくなった。
「話には聞いてましたが、まさかここで天使が関わっているとは思っていませんでした。」
「万全の状態でも厳しい相手ね。」
「しかしそうなりますと、代表者と付き添う2名はどうされるおつもりですか、マコト様?」
アリアの質問に、マコトはあらかじめ考えていた内容を伝えた。
「それについては既に決めてある。
その前に今回、術国、剣国、槍国、弓国、拳国の5国と、軍国、機械国、魔導国、科学国の4国は、それぞれ合同で会談に参加してもらう。」
当事者でこの場にいる5人は、不安そうにしている。
「合同、ですか?
私たちは構いませんが・・・それで商国が納得するでしょうか?」
「入国時に無理難題を突き付けられそうですわ。」
そう口にするラスティとレスティに、マコトは不安解消するための説明をする。
「おそらくだが、それは問題にならないと思う。
バカ王子としては大勢集めたいだろうが、会談を計画した奴からしたら、早く各国を従えたいから、交渉する手間が省けて、むしろ簡単に受け入れるはずだ。」
続いてミスティが質問してきた。
「大勢集めたい、というのは、何を考えているようでしょうか?」
「単純に各国の権力を持つ女性を集めて、自分の側室にするつもりだろう。
あのバカ王子は女好きだからな。
それで各国とのつながりを強引に作り、自分が世界の支配者になるとか考えているんだろうな。」
今度はヘスティが別の質問をしてきた。
「では早く各国を従えたいというのは、どのような意図があるのでしょうか?」
「これには2つの理由がある。
1つ目は、軍国を掌握して、軍王と軍師の状況を確認したいから。
組織にとって軍王は大切な研究素材だから、早く取り戻したいんだろう。
2つ目は、各国を掌握して、継承者探しを加速させたいから。
これによって1人でも多く継承者を確保し、組織の目的達成へ近づくためだ。」
そしてエターナが話を戻した。
「それでマコト君、私たち5国合同の代表者たちは、誰にするつもりなのですか?」
「俺が考えている各国の代表者たちは、次の内容だ。
王国からは、ティリア、シェイラ、サーシャ。
連合からは、ナタリィ、ミザリィ、ケイ。
帝国からは、ノワール、エリス、シーノ。
武国からは、マリス、ロンフォン、メイア。
連邦からは、エミル、シャーリィ、イシス。
軍国合同からは、エステル、ラン、ノルン。
術国合同からは、サラ、トウカ、ミィ。
鼓翼国からは、フェウィン、キリ、フィーア。
ただ大半は素性を明かすことができないから、姿を変えた状態で参加してもらうことになる。」
するとレミルが、代表者に選ばれた人物の中で、条件を満たしていない者がいることに気づいた。
「うーん、確かに実力者揃いで、見た目の年齢も大丈夫そうだけどよ、1人だけ実力が条件に合わねー奴がいるのはなんでだ?」
「それはエステルのことだな。
これにはちゃんと理由がある。
最初は軍国合同の方も代役を立てようと思ったんだが、今回皆の傍にいた方がいいと判断したからだ。
どうやら組織は、会談に合わせて軍国への再潜入も計画しているらしい。
今回俺もシルフィナも会談の方に集中するから、軍国側に対応できない可能性もある。
だったら一緒に商国に来てもらった方が確実に護れるし、組織の目を集めることもできると思ったんだ。
エステル1人くらいなら、護衛することは可能だからな。」
このマコトの説明に、フェザリースも納得した。
「じゃぁしょうがねーな。
そういや皇国からは誰が参加するんだ?」
「おそらくだが、皇国からは、クロエ、ガーネット、セーラ、この3人が参加するはずだ。
商国とのことなので、代表者は銀行総裁であるクロエが適任だからな。
そしてガーネットはギルドマスターとして、セーラは教会の関係者として、という名目で選ばれるだろう。
それに2人なら、護衛役として最も適しているからな。
ところでエターナ、今回の人選に、何か問題はあるか?」
「サラさん、トウカさん、ミィさんでしたね。
私としましては、何も問題は無いと思います。
むしろサラさんという、とても優秀な方を選出していただいて、こちらからお願いしたいくらいです。
ですがいいのですか?
確かサラさんは、連合の代表補佐だったはずでは?」
そう言ってエターナがある人物の方を気にしていると、すぐにその本人が異議を申し立ててきた。
「そうです、マコト!
どうしてサラが連合ではなく術国合同の方なのですか!」
その人物、ネーナが、珍しく怒った顔で文句を言ってきたので、マコトは理由を説明した。
「一応知名度を考慮した結果だ。
連合と言えば、白黒の双姫として有名な、ミザリィとナタリィの名前の方が知れ渡ってるからな。
基本的にサラは内政専門だったから、あまり顔を知られていない。
だから政務の能力と合わせて術国合同の代表を任せられると判断したんだが、もしかしてネーナはそう思わないのか?」
最後マコトが少し煽ると、ネーナが全力で否定してきた。
「そんなことはありません!
サラならどこの国の代表であろうと、見事こなすことができます!
それが術国合同であろうと、何も問題ありません!」
「だったら大丈夫だな。」
「当然です!
会談程度、サラの能力で出来ないことなど、何一つありません!」
見事な親馬鹿っぷりを発揮するネーナの気が変わらない内に、マコトはエターナたちへ最終確認を行った。
「なら決まりだな。
というわけだから、代表としてサラに術国合同の権限を与えて構わないな、エターナ?」
「はい、私は異存ありません。
皆さんも構いませんね?」
「はい。(×4)」
エターナだけでなく、ラスティ、レスティ、ミスティ、ヘスティも了承したので、余計な横槍が入る前にマコトは話を決めた。
「なら術国連合の件については決まりだ。
他に文句は・・・誰も無いな。
以後異論は受け付けないからそのつもりでいてくれ。
会談参加の件と、軍国連合の件は、この後俺から皆に伝えておく。
ということで、この話はここまでだ。
この後は、このまま例のアレについて打ち合わせをしようと思うが、構わないか?」
マコトの提案に、その場にいる全員が無言で頷くと、ここからは秘密の会議がはじまった。
この会議は何度も場所や参加者を変え、ある人物にだけ知られないように、今日1日をかけて秘密裏に行われた。
そして全ての準備が整い、皆は明日の本番に向けて意欲を燃やしながら眠りについたのだった。




