真竜の願い7
狙い通りの結果にパイは内心満足すると、再び話がおかしい方向へ行かない内に説明をはじめた。
「任せてよ。
まずヘイの能力は、周囲に漂っている力や相手の力なんかを所有権に関係なく奪って吸収して無害化すること、だよ。
今はまだ吸収できる上限があるけど、これからもっともっと進化すれば、ゆくゆくは制限なんて無くなっちゃうはずだよ。
どう、すごいでしょ!」
「吸い込む、です。
奇麗にする、です。」
少し胸を張って得意げにしているヘイの姿がとても可愛らしく、見ている皆はその微笑ましい姿に癒されていた。
「でも1つだけ欠点があるんだよね。
それは吸収するときに力の種類によって味覚が反応しちゃうから、味を感じちゃうことなんだ。
ヘイ、さっき狂龍が周囲に撒き散らしてた毒性の力を吸収したときに、どんな味がした?」
このパイの質問に、ヘイの表情が一気に沈んだ。
「苦くてピリピリした、です。
すごく不味かった、です。」
そのあまりの落差に、相当酷かったのだろうと、その場にいる全員がヘイに同情していた。
そこへすかさずパイが、ヘイに次の質問をした。
「じゃぁリュジュさんへのメッセージが隠されてた力の方はどうだった?」
すると今度は一変して、幸せそうな満面の笑顔に変わった。
「ポカポカで優しい甘さ、です。
口直し、です。」
そんなヘイの可愛らしさに、皆がほっこり温かい気持ちになっている中、パイはマイペースに話を続けている。
「とまぁ、こんな風にヘイが精神的ダメージを受けたり、逆に癒されたりすることになるんだ。
でも味を感じることは無害化するのに必要だから、どうしようもないんだよ。
そこはパイに我慢してもらうか、何か解決方法を探さないとだね。」
「頑張る、です。」
「まぁその辺のことは、後で詳しい専門家にアドバイスをもらうのもいいかもね。」
「です。」
ちなみにこのパイの専門家という言葉に、その場にいるほとんどの者たちが、同じ人物を頭に思い浮かべていたのは言うまでもない。
そのことには誰も触れず、パイが待ってましたとばかりに得意げに説明を続けた。
「ではお待ちかね、次は僕の能力だね。
僕ができるのは、ヘイが吸収した力やフォンの力を変換、融合、圧縮することなんだ。
そうすることで精製されるのが、竜気なんだ。
これは竜力の真の力を解放して到達できる真竜の域を通り越して、極真竜にまで昇華させることができるんだよ。
どう、すごいでしょ!」
ドヤ顔のパイだったが、リュジュは真剣な表情で質問してきた。
「その極真竜というのは初めて聞く言葉だ。
真竜とは違うのか?」
「極真竜は、真竜から1段階進化した状態のことだよ。」
「真竜が最上位と思っておったが、その上が存在していたとは驚きだ。
では同じ竜力を持つ我も、その極真竜に至ることな可能なのか?」
「うーん・・・たぶん可能性はゼロじゃないと思う。
でも個人の力だけで極真竜の域まで力を高めるのは、相当大変だと思うよ。
竜神力、竜気、極真竜、最低でもこの3つを維持し続けなきゃいけないから、並大抵の制御能力じゃ無理だね。
今回フォンの担当は、竜神力の発動と供給、それと極真竜の操作だったんだ。
そして足りない力の供給をヘイが担当して、竜気の精製と極真竜への変換と維持を僕が担当したんだよ。
つまり僕たち3人分の制御を1人でできるようになるだけの制御能力が、最低でも必要になるってことだね。」
「ふむ・・・中々に厳しいようだな。
とりあえず参考にはなった。」
「それならよかったよ。」
少し残念そうなリュジュだったが、気を取り直して次の質問を行った。
「それと先程、極真竜飛行形態、と言っておったな。
飛行形態ということは、他にも別の形態が存在するということなのか?」
「正解っ!
さっきは空戦用の飛行形態だったけど、他にも環境や戦法に合わせた形態があるよ。
リュジュさんは真竜だから竜化はできるよね?」
「うむ、真竜としての最大の特徴は、リスクなく竜化できることだ。
本来竜化は逆鱗を剥がすことで起こる暴走だ。
そのため元の人型に戻ることができず、やがて理性を失って本能だけで動く野生の獣と化すであろう。
だが真竜の場合は竜化に伴うリスクがない。
自分の意思で竜化と人化を行うことができ、意識も保つことができるため暴走はせぬ。
しかし先程フォンは、身体の一部だけが竜化しておったな。
あれが極真竜としての特徴ということか?」
「またまた正解っ!
極真竜は通常の竜化だけじゃなくて、部分竜化ができるのが最大の特徴なんだ。
更にサイズは自由自在で、人型の身体の大きさに近ければ近いほど、凝縮されて強い力が発揮できるんだよ。
しかも全身の竜化と比べて、部分的な竜化は力が集約されるから、より強力な力が発揮できるようになる。
まぁ他の形態については、今後披露する場があったときのお楽しみだよ。」
「うむ、他の形態は気になるが、隠し玉は常に持ち続けておくべきだ。
我もその姿が見られるときを楽しみにしておくことにしよう。」
「うん、期待してて。
後はアズールたちと同じで、僕たちの能力を全開で使うと、すぐにフォンがバテちゃうってとこかな。
ヘイが吸収した力が多くて強いほど、極真竜化したフォンも強力な力を得られる。
でもその高出力を維持するのは、フォンの竜力なんだ。
だから長時間維持するためには、フォン自身が竜力を高出力で安定供給する必要があるんだよ。
今のフォンだと極真竜化して戦えるのは、マリスと同じ3分くらいが限界だね。」
「だがそれでも凄まじい力であることに変わりはない。
マリス、フォン、其方たちはそこまでの強大無比な力を得て、更にその上を目指しておる。
その先にいったい何を望むのだ?」
急に真剣な表情でリュジュが質問してきたが、2人迷うことなく即答した。
「それは当然決まっています。」
「聞くまでもありません。」
「マコトの隣に並び立つことです。(×2)」
しかしリュジュはその意味を正しく理解できなかったのか、2人へ更に質問してきた。
「ふむ、欲のないことだ。
だがそれだけの力があれば、今の世を好き勝手に変えることも難しくはないぞ。
そちらの興味はないのか?」
すると逆に2人から、リュジュに質問が返ってきた。
「ではお聞きしますが、リュジュさんは何故それをしないのですか?」
「少なくともリュジュがこれまで世界に影響を及ぼしたという話は聞きません。」
リュジュは2人が何を考えて質問に質問で返してきたのかを理解しているようで、自分の素直な考えを答えた。
「そんなことは決まっておる。
そのような面倒臭いこと、我は望まぬ。
我は自由な生き方が性に合っているのだ。」
このリュジュの答えに、2人も同意した。
「その意見には私も同感です。
私は私の意思で自由に生きていきたい。」
「此方もです。」
2人の答えを聞いて少し考えてから、リュジュは満足そうに頷いた。
「なるほど・・・うむ、2人とも合格だ。
我が見込んだだけのことはある。
これなら我の加護を其方たちに譲渡しても問題無いであろう。
試すような真似をしてすまぬ。
だが力を持つ者は、それを正しく使うための責任が伴う。
だからこそ加護の権利を譲渡するには、慎重になる必要があるのだ。」
謝罪するリュジュであったが、2人は気にしておらず、むしろ当然だと納得していた。
「お気になさらないでください。
リュジュさんが慎重になられる気持ちもわかります。」
「過去の悲劇は繰り返してはいけませんから。」
「そう言ってもらえると助かる。
では早速だが、加護の譲渡を行ってしまおう。
2人とも、我の前に立ち、背を向けてくれ。」
「はい。」
「わかりました。」
2人はリュジュに言われた通り、前に立って背を向けた。
「2人とも、準備はいいか?」
「どうぞ。」
「いつでも。」
2人の了承を得たので、リュジュはそれぞれの背中に手を添えた。
そのまま目を閉じて集中すると、息を吐いて一度脱力してから、気合を込めた。
「・・・ふぅ・・・はっ!」
そして2人の中の加護に対して、作用する力の変更を行ってから有効にし、権利を譲渡した。
すると狂龍と狂竜から移っていた加護が、2人の中で予想外の変化を起こした。
リュジュは2人の背中から添えていた手を離し、そのことに少し戸惑っているようだ。
「・・・これで加護?は、其方たちのものとなったのだが・・・しかしこれはいったいどういうことだ?」
「どうしたのですか、リュジュさん?」
「何か不都合でも?」
「いや、不都合というわけではないのだが・・・何が原因かわからぬのだが、おそらく加護が進化しておる。」
「進化、ですか?」
「つまり効果が上がったと?」
「正直なところ、我には変化後の名称がわかるだけで、どのように効果が変わったのかまではわからぬ。」
「どのように名称が変わったのですか?」
「マリスは、龍爪牙の加護、となるはずが、辰爪牙の祝福、となっておる。
フォンは、竜鱗骨の加護、となるはずが、竜鱗骨の祝福、となっておる。
マリスの龍が辰に変化したのは、力の違いから許容範囲内であるが、加護が祝福に変わった意味がわからぬのだ。
既に我には権利が無いため、どのような効果があるのか確認することもできぬ。
さて、どうしたものか・・・」
元は自分が権利を譲渡した加護のため、リュジュは2人を心配して今後のことを考えている。
だが当の本人たちは、全く心配していないようだ。
「まぁ名称からして、妨害の類ではないと思いますから、問題無いでしょう。」
「ですね。」
気楽に考えている2人に、リュジュは警告を続ける。
「いや其方たち、そのように簡単に片付けていい話ではないぞ。
まずは加護か祝福になったことで、どのような影響があるのか早急に調べる必要がある。」
するとロンフォンが、解決策を提案してきた。
「でしたらマコトに確認してもらいましょう。」
それにマリスも同意した。
「確かに、それが確実ですね。
それでマコト、どうなんだ?」
だがマリスが話を振る前から、マコトは既に2人のことを視ていたようで、すぐに答えが返ってきた。
「リュジュの予想通り、祝福は加護の上位版みたいだな。
一番の特徴は、持ち主の成長に合わせて、効果も変化と成長をするようだ。
今のところは加護のときと同様の効果だが、今後どうなるのかは俺にも予想できない。」
「今後は私たち次第ということだな。」
「それはとても心強いことです。」
当たり前にマコトの言葉を受け入れる2人とは対照的に、リュジュは驚きの声を上げていた。
「なっ、其方、あれの効果がわかるのか!」
「ああ、俺は相手を視ることで様々な情報を得ることができる。」
「そのようなことが・・・相変わらず其方は底が知れぬな。」
「俺はできることをやっているだけだ。」
「いや、それが底が知れぬと言って・・・はぁ、もうよい。
話を先に進めてくれ。」
リュジュは同じ問答を繰り返すのを嫌ったのか、それ以上マコトに突っ込むことはせず、話の先を促した。
「ああ。」
マコトもリュジュが途中まで言った言葉を聞き流し、話を進めることに賛成した。
しかしそこへロンフォンが割って入ってきた。
「その前にちょっといいでしょうか?」
「何だ?」
「素朴な疑問です。
どうして加護が祝福になったのでしょうか?」
この質問に対して、マコトは考えることなくすぐに答えた。
「ハッキリとしたことはわからない。
だが可能性の話ならできるが聞くか?」
「お願いします。」
「わかった。
おそらくだが、元の持ち主たちの想いが込められた可能性が高い。」
「それは狂龍と狂竜の身体の元の人格である、リュジュの子供たちのことですか?」
「そうだ。
想いというのは、時に想像を超えた奇跡を起こすことがある。
自分たちを呪縛から解放してくれた2人に感謝する想いが、加護に働いたのではないかと俺は思う。」
マコトの話を聞いたマリスとロンフォンは、受け継いだ祝福の重みをようやく実感した。
「そうか・・・ならば大切に育てていき、次代に正しく受け継がせ続けなけれないけないな。」
「そしてできることなら、此方たちの子供に受け継がせたいです。」
「ええ、そうですね、フォンさん。」
そんなことを話しながら、マリスとロンフォンはマコトに期待を込めた視線を送っていた。
マコトは2人の視線とその意味に気づいていたが、あえて触れずに話を終わりにしようとした。
「さて、これでリュジュからの頼み事に関することは、一通り終わったな。」
しかしこれにはリュジュが待ったをかけた。
「・・・いや、まだ気になることが残っておる。」
「何が気になってるんだ?」
「我が子たちの身体に宿っていた人格、あれらはいったい何だったのだ?
あれらを、マリスは竜神の身体を乗っていた者、フォンは龍神の孫だと言っておった。
我の知る限り、その2人は古代文明時代に存在しておらぬ。
それに実験完了後に我が子たちに植え付けられた人格は、今日見た人格とは違う。
つまり、途中で人格が入れ替えられた、ということだ。」
「リュジュの言う通りだ。
あれらの人格の方が、最初に植え付けられた人格よりも同調率が高く、力を引き出すことができる。
だから入れ替えられたんだ。」
「ではいったい誰がどうやって、人格を入れ替えたというのだ?
古代文明時代の研究者は全員この世にはおらぬし、当時の重要な研究施設も破壊されて残っておらぬ。
せいぜい残っているのは断片的な研究資料と、施設の防衛機能くらいのはずだ。
いや、我が知らぬだけで、必要な資料や施設が残っているのかもしれぬ。
しかしそれだけでは人格の入れ替えを行うことなど不可能であろう。
何故なら人格の移植という高度な技術と知識を持つ者が存在せぬからだ。
そのようなことができたのは、古代文明の研究者の中でもほんの一握りだけだったのだからな。」
どうやらこれこそがリュジュの知りたかったことらしく、マコトは少し考えると、あくまで推測であることを付け加えてから自分の考えを答えた。
「・・・可能性としてはいくつか考えられるが、どれも推測の域を出ない。
だが実際に人格の入れ替えは行われている。
となればその技術や知識を持つ者がいるか、技術や知識が無くても可能な方法があるのかもしれない。
それが古代文明の遺産なのか、それとも新たに技術を開発したのかはわからないがな。」
答えとは言えない予想ではあったが、リュジュはマコトの言葉に満足して、自分の決意を語った。
「ならば我は、その全てを根絶する。
それこそが我ができる、我が子たちの弔いだから。
ただ前者でも後者でも、完全にとなると骨が折れそうだ。
それでも我はやらねば、やり遂げねばならぬのだ・・・我の一生をかけてでもな。」
そのリュジュの想いに、マコトも応えた。
、
「そうか・・・なら情報は俺の方で集めよう。」
「いいのか?」
「構わない。
それにリュジュの目的を果たすことは、俺の目的を果たすことにもつながるからな。」
「ならば頼む。
どうか我にマコトの力を貸してくれ。」
「ああ。
必要であれば手も貸すが、どうする?」
このマコトの申し出にリュジュは少し考えたが、首を横に振った。
「・・・いや、それは止めておこう。
これは我の手だけで決着をつけねばならぬことだ。」
「わかった。」
「だがもし我が志半ばで倒れたならば、そのときは其方の言葉に甘えさせてもらおう。」
マコトなら自分の想いを継いでくれる、そう思って口にした言葉なのだが、返ってきたのは予想外の言葉だった。
「悪いがそれは断る。」
リュジュは慌てることなく、まずは理由を尋ねた。
「何故だ?」
「少しでもリュジュだけで対処できないとわかったら、その時点で強制的に介入させてもらうからだ。
俺は黙ってリュジュを害させるつもりは無い。」
その答えはリュジュの考えと違ったものの、まさにマコトらしいと納得できる答えであった。
更にマリスとロンフォンも、マコトの意見に同調していた。
「マコトの言う通りです!
私たちもリュジュさんの子供たちの想いを受け継いでいるのですよ!
その想いに応えるためにも、微力ながら私もお手伝いさせていただきます!」
「此方もマコトやマリスと同じ想いです。
子供たちのためと言うのであれば、リュジュは手段を選ぶべきではありません。
使える人脈があるのであれば、それを最大限に活用すべきです。
もちろん子供たちに恥ずかしくない範囲でですが。」
それはリュジュの希望とは違うものの、最終的な目的は一致していた。
そのためリュジュは、目的の経過ではなく結果を選んだ。
「マリス、フォン・・・そうであるな。
我は我のプライドよりも、目的を果たすことを何よりも最優先すべきであるな。
マコト、我自身の言葉を覆してすまぬが、どうか我が目的を果たすために、あらゆる手助けを頼めぬであろうか?
ただ決着だけは我自身の手でつけたい。
そこだけはどうしても譲れぬ。
自分勝手で我儘な願いではあるが、どうか聞き入れてはもらえぬだろうか?」
このリュジュの願いを、マコトは迷うことなく了承した。
「わかった。
今後は俺のできる範囲で、リュジュを全面的に支援すると約束しよう。
決着の件も構わない。」
マコトの全面的な協力を得られ、リュジュは深く感謝した。
だが感謝しすぎるあまり、リュジュは言わなくてもいいことを口にしてしまったのだ。
「感謝する。
当然我が差し出せるものであれば、全て其方の好きにして構わぬ。
それが我自身の身体であろうとな。
それで、我は其方に何を差し出せばよいのだ?
やはり我の身体か?
こう言っては自画自賛になるかもしれぬが、我は女としてもそれなりだと自負しておる。
其方が望むのであれば、今この場で奴隷契約を結んでも構わぬぞ。」
このリュジュの申し出に、あきらかにマコトの機嫌が悪くなった。
しかしリュジュは気づいていないようだ。
そこへマコトがある条件を提示してきた。
「・・・では2つ約束してくれ。」
「約束?それは構わぬが・・・いったい何を約束すればいいのだ?」
自分自身が求められなかったことに少し残念そうなリュジュであったが、ここでようやくマコトが怒っていることに気づいた。
「まず1つは、今後自分自身を対価にするのは止めろ!
それは俺だけではなく、誰に対してもだ!」
あまりの迫力に、リュジュは一瞬委縮してしまったが、すぐにマコトの言葉を受け入れた。
「うっ、うむ・・・わっ、わかった、約束しよう。」
マコトは声のトーンを落としたものの、まだ口調には怒りが込められていた。
「そんなことをしなくても、俺はリュジュを助ける。
俺がリュジュの身体だけを目的としていると思われているのも、正直いい気はしない。
もしできないのであれば、俺は俺で勝手にやらせてもらう。
それは今の言葉を違えた場合でもだ。」
リュジュはマコトの言葉で、何に怒っているのか理解した。
それは相手を侮辱していると同時に、自分自身を大切にしていない、マコトの最も嫌がることなのだと。
すぐにリュジュはマコトに謝罪した。
「すっ、すまぬ・・・我は其方のことをそのようには思っておらぬ。
ただ我の心が弱く、不安から其方をつなぎ止めようとするあまり、侮辱するようなことを言ってしまったことは、心から謝罪する。
それに我自身を差し出すなどという愚行も、今後二度と行わないと約束する。
本当にすまなかった。」
そのリュジュの謝罪で、ようやくマコトの怒りが治まった。
「・・・いいだろう。
さっきの話は聞かなかったことにする。」
リュジュは内心安堵し、改めて感謝の言葉を口にし、話の続きへ話題を変えた。
「感謝する。
それで、もう1つの約束とは何なのだ?」
マコトは自身の言葉通り、何事も無かったかのように話を続けた。
「2つ目は、今後俺はリュジュを口説くが、受け入れるかどうかはリュジュの気持ちを最優先にすること。
今回の俺の協力云々に関しては、一切考慮する必要は無い。
俺自身をリュジュが1人の女として受け入れてもいいと思わない限り、断り続けてくれて構わない。
それによって俺がリュジュへの協力を断ることもないから、一切遠慮することはない。」
マコトの話に、リュジュは思わず気の抜けた返事を返してしまったが、すぐに気を取り直して内容を確認した。
「・・・はぁ?
つまり其方は、我を自分の女としたいが、我が其方を本気で好きにならぬ限り、そして其方に我の気持ちが通じぬ限り、男女の仲にはなれれぬ、そう言いたいのであるか?」
「話が早くて助かる、その通りだ。
俺たちはまだ出逢ったばかりなんだから、まずはこれからお互いのことを知っていかなければならない。
それに俺の状況や女たちのことも最初に知っておいてもらわないと公平じゃないからな。
リュジュを口説くのはそれからだ。」
「・・・其方、意外と面倒臭い男だのう。」
「よく言われるが、今更俺の信念は変わらないし、変えるつもりもない。
これが俺、マコトという男の生き方なんだからな。
ただ言っておくが、俺は女を口説くことに関してはしつこいぞ。」
「なるほどな・・・まぁ早い話が、色恋沙汰では、ただの男と女として考えろ、ということだな?」
「そうだ。」
「はぁ・・・いいだろう。
それも約束しよう。」
「なら決まりだな。
情報が入り次第、リュジュにも共有しよう。
リュジュも何かあれば、遠慮なく言ってくれ。」
「頼む。
ふむ、しかしそうなるとどうしたものか・・・」
「早速何か問題があったか?」
「いや、これは我自身の問題であるから、其方が気にすることはない。
おそらく其方に相談しても解決せぬ話であるからな。」
「そうなのか?」
「そうなのだ。
この話は一旦終わりだ。
今すぐ答えが出る話ではないからな。」
「?まぁリュジュがそう言うのであれば、今はそれ以上は何も聞かない。
だがどうしようもないときは、遠慮なく相談してくれ。
俺じゃなくても、他の者たちにでも構わないぞ。」
「うむ、必要であればそうさせてもらう。」
ようやく話がまとまり、マコトとリュジュは、無事に協力関係を結ぶこととなったのだった。




