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無双するご主人様のハーレム事情  作者: 不利位打夢
第17章 商い革命
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真竜の願い5

戦いがはじまってからしばらく経った頃、それぞれ離れた場所から2人の戦いを映像で見ている2ヶ所では、一緒に状況を分析していた。


マコトがそれぞれの戦場と、山脈と渓谷の入り口で待機している皆のいる場所とを、映像でつなげているからこそできることだ。


まずは山脈、ロンフォンと狂龍の戦いだ。


武器化したパイとヘイを身につけて竜神力を発動したロンフォンは、龍神力を発動した狂龍を圧倒していた。


加護を有効に使い防御に徹しながら反撃の隙を窺う狂龍であったが、それは最初だけだった。


ロンフォンはすぐに加護をものともしなくなり、狂龍の頭を何度も木っ端微塵に四散させていた。


戦いは一方的な展開になったのだが、それは表面上のことだ。


ロンフォンがいくら頭を潰しても、1つずつ順番に潰していてはすぐに狂龍は復元してしまい、同じことが何度も繰り返されているからだ。


今のところは、復元する前に2つまでは確実に頭を潰すことができている。


だが3つ目の頭となると、10回に2、3回潰すのがやっとの状況だ。


しかもマリスとのタイミングが全く合わず、というより全く合わせることを考えていないようで、その所為で復元を許してしまっているのが実際のところだ。


これはあらかじめ決めていた、1分毎に相手を倒す、という約束通りに相手を倒していないことが原因だからだ。


そのためこのままではいつまで経っても決着がつかないであろうことは、ロンフォンに僅かな焦りを感じさせていた。


しかしそれによって逆に狂龍からは余裕が戻ってきている。


今では頭の1つを囮に使ってロンフォンの隙を突く戦法を使ってくるほどだ。


おそらく頭を潰されても痛みを感じていないのだろう。


でなければ自分の頭を囮に使うなど、正気の沙汰とは思えない行動だ。


一見無謀にも思えるこの戦法だが、すぐに復元してしまう狂龍にとっては、消耗戦に持ち込むのに最も適していた。


防御特化の狂龍としては、相手が消耗するのを待ってから、ゆっくりと反撃すればいいのだから。


時間が経てば経つほど自分が有利になることをわかっているからこその戦法だと言える。


だが今のところロンフォンに疲れた様子はなく、平然と攻撃を続けており、付け入る隙が全く無い。


お互いに決定打に欠ける戦いが続いている状況だ。


そんな戦いを見て、メイアは冷静に現状を打破する方法を模索していた。


「・・・やはり問題は最後の一撃かしら。

原因は、復元する前に狂龍を倒しきるのに、フォンに余裕がないことね。

その所為でマリスさんとのタイミングを合わせることまで頭が回らないみたい。

昔から別のことを同時に考えるのが苦手だったのよね、フォンは。

でもそれができなければ、いつまでもこのままだわ。

何かいい方法があればいいのだけど・・・」


「狂龍の加護を突破するために、どうしても力が入ってしまい、次の攻撃に移るとき、僅かに体勢を崩しているのも問題です。

それと狂龍の頭が常に狙いづらい位置にあるため、どうしても攻撃の途中で僅かに流れが止まっています。

その無駄な時間を消費していることも、倒しきるまで余裕がない原因の1つです。」


「だが一番の問題は、フォンとマリスがタイミングを合わせることだ。

おそらく2人にとっては、それが一番難しいであろうな。」


「確かに。(×2)」


「しかしそれは同じことを繰り返していた場合の話だ。

今のフォンは手段を選ばなければ、おそらくこの状況を打破することができる。」


「それはパイやヘイの能力のことですね。」


「そういえばフォンフォンは何も教えてくれませんでしたが、2人の能力はどのようなものなのでしょうか?」


「それは私も聞いておらぬ。

だがマコトの話では、能力を発動すれば、戦いはほぼ一瞬で終わるらしい。」


「それほどまでに強力な能力ということですね。

ですがそれでは、本来の目的の1つからは外れてしまいます。」


「そうですね。

フォンフォンたちにとって今回の相手は、実戦経験を積むのに最適ですから。」


「実戦に勝る訓練はないからな。」


「しかしいつまでもダラダラと同じことを繰り返している今の状況は、そろそろ訓練としては無駄な時間になります。

だからこそマコト様も時間制限を設けたのでしょう。」


「確か、1時間は自身の力と武器化したパートナーのみで戦うこと、でしたね。」


「だがその時間もそろそろ迫ってきている。

このまま行けば能力を解放するのは、まず間違いないだろう。

私としては、どのような能力なのか楽しみではある一方、フォンとマリスがいきなりの実戦で能力を使いこなせるか、こちらの方が心配だがな。」


「初めて使う能力ですから、それはある程度仕方ないのではありませんか?

おそらくマコト様も、そこはあらかじめわかっているはずです。」


「それに能力を持つパートナーたちが加減を調整してくれますよ、たぶん。」


「私もマコトが何も言わぬから問題無いとは思うが・・・ここが未踏の地で、他に誰もいないのが唯一の救いか。

だがマコトよ、実際のところはどうなのだ?」


ベルが映像でつながっている先のマコトに向かって尋ねると、意外な答えが返ってきた。


「ああ、問題無い。

むしろ2人にはやり過ぎてもらっても構わないくらいだ。

その方が後々の手間が省けるからな。」


「それはどういうことなのだ?」


「後でわかる。

それよりも今は2人の戦いだ。

まだ決着がついていないんだから、油断は禁物だ。」


このマコトの言葉で、皆は渓谷のマリスと狂竜の戦いへと意識を向けた。


マリスも武器化したアズールを既に身につけている。


進化したアズールの武器化した姿は、以前と同じ槍ではあるが、その形状は変化していた。


まず全体が蒼くなっており、先端の刃は短刀ほどの大きさになっている。


そして用途はわからないが、いくつか円形の凹みが存在していた。


これによって突きが主体だった攻撃に斬撃も加わり、戦闘の幅が広がっていた。


ただ相手は足場の無い渓谷で自在に空を飛ぶことができるが、マリスは空脚を駆使して無理矢理足場を作っている。


そのため小回りが利く狂竜に比べて、どうしてもマリスの動きは直線的で大きく余計な動きになってしまう。


今のところ狂竜の首を2つまでは確実に、切落したり、突きで木っ端微塵に粉砕している。


しかし3つ目の首はロンフォンと同様に、10回に2、3回の対応がやっとの状況だ。


その所為でマリスにもタイミングを合わせる余裕はなく、狂竜を倒すことだけに集中しているため、すぐに復元されてふりだしに戻ってしまう。


それでもマリスは淡々と狂竜を倒し続けているが、このままではいつまで経ってもただ同じことが繰り返されるだけだろう。


ロンフォンとのタイミングが合うのは、いつになるのかわからない状況だ。


マリスもそのことは理解しているし、何かいい方法はないかと戦いながら試行錯誤を繰り返しているが、今のところ何も思い浮かんでいない。


そして相手の狂竜はというと、様々なブレス攻撃を駆使しながら、同時に魔法や物理攻撃を繰り出してはいるものの、その全てをマリスに躱されてしまっている。


そのため狂竜の加護は全く効果を発揮できずにいた。


攻撃の加護を持っているのに攻撃が当たらないのだから当然の結果だ。


しかも空を飛べないにもかかわらず、マリスにはまだまだ余裕があり、このままではいつまで経っても自分が一方的にやられるだけだということも狂竜は理解している。


おかげで狂竜のストレスは溜まりに溜まっており、いつ爆発してもおかしくないところまできている。


狂竜の性格上、それでも我慢しているのが少し不気味ではあるが、マリスには特に警戒する様子はない。


それが自信や余裕からくるのかはわからないが、狂竜が何かを狙っているとすれば、そこを突いて何かを仕掛けてくるつもりだろう。


映像で見ていたリュジュが、真っ先にそこを指摘してきた。


「・・・何か狙っているな。

マリスは気にしておらぬようだが、あれでは足元をすくわれるぞ。

それはフォンの方も同じようだが、あれは少し拙くはないか、マコト?」


これに対してマコトは、涼しい顔で即答した。


「問題ない。

マリスもロンフォンも、最初から相手の奥の手を考慮して戦っているからな。」


「そうなのか?

我にはそのようには見えぬが・・・」


そこへルフェも会話に入ってきた。


「大丈夫、大丈夫。

2人ともそんな軟な鍛え方はしてないって。

マコトたちは普段から、いろいろな事態を想定して訓練を行っているからね。

相手が何をやってきても、大抵のことは平気な顔で打ち破るよ。」


「だがな・・・」


「それにマコトが問題無いって言ってるってことは、相手が何を狙っているか、もうわかってるってことでしょ?」


「そうなのか?」


「ああ。

あいつらは最初から戦いが長引いたときのための保険をかけていた。」


「保険?」


「だがそろそろ気づくはずだ。

その保険が2人には何の意味も持たないことを。」


「いったい何を仕掛けているというのだ?」


「もうすぐわかる。

そろそろ相手も痺れを切らしそうだし、それに・・・時間だ。」


マコトがそう言った瞬間、戦っている最中のマリスとロンフォンに異変が起きた。


意識が突然別の場所へと引き込まれたのだ。


そこにはそれぞれ別の場所で戦っているはずの、マリスとアズール、ロンフォンとパイとヘイが、顔を合わせていた。


「フォンさん?」


「マリスですか?」


「ここはいったい・・・それに戦いはどうなったのでしょうか?」


「此方にもわかりません。」


2人が警戒していると、そこへアズールが話に入ってきた。


「それについては私たちからお話しします。」


「アズール、これはお前の仕業か?」


「正確には僕とヘイもだよ。」


「です。」


「戦いの最中だというのに、3人ともどういうつもりです?」


険しい顔をしているマリスとロンフォンに、アズールが詳しく説明した。


「ここは普段私たち武精族が意思疎通を行うために使っており、精神のみ来ることができる場所です。

そこへパートナーである貴女たち2人を招待しました。

ですが安心してください。

ここで過ごした時間は現実ではほとんど経過していませんから。

相手に対して貴女たちが無防備な姿をさらすことはありません。」


「まぁいいだろう。

それで、私たちをここへ呼んだ理由は何だ?」


この質問には、パイとヘイが答えた。


「残念だけど、時間切れだよ。」


「マコト父さんとの約束、です。」


それだけでマリスとロンフォンは状況を理解した。


「何っ!?もうそんな時間か!」


「すぐに何とかしますから、もう少しだけ時間をください。」


ロンフォンが食い下がってきたが、すぐにそれをアズールが却下した。


「駄目です。

貴女たち2人にとっては不本意でしょうが、マコト父様の言葉は絶対です。

よって当初の予定通り、ここからは私たちの能力を解放します。

2人とも、異論はありませんね?」


有無を言わさないアズールに、2人は渋々ではあるが納得して受け入れた。


「・・・わかった。

最初からそう言う約束だったのだから仕方がない。

潔く今の自分の実力を受け入れよう。」


「此方も了解しました。」


「ではここからは、私たちの現時点での全能力を解放します。

2人とも、今更説明は不要ですね?」


「ああ。」


「当然です。」


「よろしい。

ならば、これより一方的な蹂躙を開始します。

いいですね、マリス。」


「任せろ。」


「僕たちもやるよ、フォン!」


「全力、です。」


「ええ、すぐに終わらせます。」


「しかしタイミングの方はどうする?

能力を解放したとしても、結局はそこが重要で、一番の問題点だと思うんだが。」


不安を口にするマリスだったが、アズールは違うようだ。


「必要ありません。

マリス、私は、一方的な蹂躙を開始する、そう言ったのですよ。

貴女はまだ私たちの能力と自分の力を理解していないようですね。」


「何?」


「いいですかマリス、貴女はただ全力で相手を蹂躙すればいいのです。

その結果が相手を倒すことにつながるのですから。」


「・・・いいだろう。

アズールがそこまで言うのであれば、私も全力で応えるまでだ。」


「それでいいのです。

パイ、ヘイ、そちらは問題ありませんね?」


「うん、フォンは本能的に何をすればいいかわかってるからね。」


「大丈夫、です。」


「ではこれより現実へと戻ります。

ただ、今の2人では私たちの能力を解放するまで多少の時間がかかります。

戦闘を再開するのは3分後です。

いいですね?」


「ああ。」


「了解しました。」


「はーい。」


「です。」


全員が了承したのを確認して、アズール、パイ、ヘイは、マリスとロンフォンを現実へと戻したのだった。




事前に説明を受けていた通り、現実へと戻ると、全く時間は経っていなかった。


ロンフォンが現実に戻って最初に行ったのは、攻撃の手を止め狂龍から距離を取ることだった。


するとその行動を打つ手なしと勘違いしたのか、狂龍が勝ち誇ったように声をあげた。


「ぎゃははははははぁ、とうとう俺の作戦に屈して観念しやがったな!

てめーはもうまともに動けねーはずだ!

なんせこの場所一帯には、俺がずっとまき散らしてた麻痺、混乱、弱体化などの効果を持つ神経毒で充満してるんだからな!

ここからは俺が一方的に、てめーを嬲って嬲ってぶっ殺してやるぜ!」


狂龍は聞いていないのに、ベラベラと奥の手をバラしていく。


しかしロンフォンは狂龍の言葉を無視して、パイとヘイの能力解放を進めていた。


「フォン、準備はいい?」


「いつでも。」


「はじめる、です。」


ヘイの合図で、ロンフォンが左手を上に上げて掌を開いた。


その姿を見て、狂龍は降参の合図だと勘違いした。


「今更抵抗を止めようったってもう遅いぜ!

てめーはもう終わり・・・」


だが次の瞬間、言葉の途中で狂龍は信じられない光景を目にする。


ロンフォンの左手に、自分がまき散らした神経毒などが一瞬で吸い込まれてしまったからだ。


それまで周囲に漂っていた高濃度の神経毒は、完全に消えてしまった。


唖然とする狂龍を更に無視して、ロンフォンはヘイへと確認を行った。


「どうですか、ヘイ?」


これにヘイが気持ち悪そうにしながら答えた。


「・・・不味い、です・・・それに少ない、です・・・でも、ちょっとだけ使える、です。」


「十分でしょう。

残りは此方が補います。」


「パイ、後は任せた、です。」


「パイ、持っていけるだけ持っていきなさい!」


ロンフォンは全力で竜神力を発動すると、パイが能力を発動した。


「ここからは僕に任せて!

いっくよー・・・ヘイから力の譲渡を確認・・・変換完了。

続いてフォンから力の譲渡を確認・・・変換完了。

力の融合と圧縮を開始・・・完了。

フォン、いつでも行けるよ!」


「やりなさい、パイ!」


「了解だよ!

フォンへ力の注入を開始・・・極真竜飛行形態、発動!」


すると右手からロンフォンの全身に力が流れ込み、その姿が変形をはじめた。


背中に竜のような翼が生えたのだ。


他には変化は見られない。


ロンフォンは確かめるように軽く翼を動かしてみた。


それだけで竜巻と風の刃が発生し、一瞬で周囲を更地に変えてしまった。


更に狂龍へと向かって行った風の刃の1つが、その首の1つを簡単に切落していた。


「なっ、何じゃそりゃぁ!?」


状況を理解できていない狂龍は、訳がわからず、ただただ驚くことしかできずにいた。


そしてロンフォンも、先程までとの大きな違いに、自分の力に戸惑いを感じているようだ。


「これが極真竜の力・・・まさかここまでとは・・・」


様々な感情が渦巻く中、ロンフォンにかけたパイとヘイの言葉が、全ての考えを吹き飛ばした。


「行けーっ、フォン!」


「やっちゃえ、です。」


2人に現実に引き戻され、ロンフォンは迷いを振り払い、目の前の敵を倒すことだけに集中した。


「・・・そうですね。

あれこれ考えるのは止めです。

今は此方のやるべきことをやるだけです。

では・・・行きます!」


ロンフォンは、今度は全力で翼を羽ばたかせると、そのまま周囲の被害を一切気にせず、狂龍へと向かって突っ込んで行ったのだった。




一方現実へと戻ったマリスの方も、全く時間が経っていなかった。


こちらもロンフォンと同じく、まずは攻撃の手を止めて狂竜から距離を取っている。


すぐにマリスはアズールへ能力の解放を指示した。


「アズール、はじめてくれ。」


「わかりました。」


それを合図に、武器化したアズールがマリスの辰神力を吸収しはじめた。


するとそこへ、マリスが動きを止めたのを見て、狂竜がここぞとばかりに疑問をぶつけてきた。


「ちょっとちょっとぉ、どうして貴女はまだ立ってられるのよ!

今この場所一帯には、私の全身から出ている猛毒の霧が立ち込めているはずなのよ!

普通なら全身から血が噴き出してきて、1分くらいで死んじゃうはずなのよ!」


これに対してマリスは、時間稼ぎも兼ねて、会話に応じることにした。


「そうなのか?」


「そうなのか?ってぇ・・・だから何で平然としてるのよ!」


「そんなことは決まっている。

毒などの状態異常対策は常に行っているからだ。

それくらい実戦では常識のはずだ。」


当たり前のことを何故聞く、と言いたそうな顔をしているマリスに、狂竜はその非常識さを訴えてきた。


「状態異常対策が常識って・・・貴女どんだけの数の状態異常に対策してるのよ!」


「当然全てに対してだが?」


しれっと答えるマリスに、狂竜は猛烈に反発した。


「貴女ねぇ、そんなの無理に決まってるでしょ!

この世にどれだけ状態異常の種類があると思ってるのよ!

そんなの1つ1つ対策してたら切りがないわよ!」


「そんなことは知らん。

私が行っているのは、辰神力による状態異常の完全耐性付与だけだ。

それさえやっておけば、どんな状態異常であろうと対応が可能だ。」


「そんな非常識なこと、いったいどうやったらできるっていうのよ!」


「それは・・・」


「それは!」


「私が答えるわけがないだろう。」


会話を誘導して秘密を聞き出そうとした狂竜だったが、答えを聞く前にマリスに見抜かれてしまった。


「・・・ちっ・・・だったら・・・」


狂竜は質問を変え、マリスから情報を引き出そうとしたのだが、それは叶わなかった。


アズールから合図が来たからだ。


「・・・マリス!」


「了解した。

悪いが時間切れだ。

ここからは一方的に蹂躙させてもらうぞ!」


そう言って狂竜との話を強制的に打ち切ると、マリスの目の前に真っ赤な玉が現れた。


迷うことなくマリスがその玉を左手で掴むと、突然金色の雲が現れた。


すぐに雲はマリスの全身を覆い、身体のいたる所に纏わりついてきた。


最後に玉を、武器化したアズールの窪みにはめ込む。


そしてマリスが無造作に、槍を軽く横薙ぎに一閃した。


すると意図せぬ斬撃の衝撃波が発生し、その射線上にいた狂竜へと向かって行った。


「はっ!?うぎゃーーーっ!」


狂竜は反射的に避けたものの、完全には衝撃波を避けきれず、気づいたときには身体の半分が小間切れにされていた。


マリスは自分の行動の結果を目の当たりにし、先程までとはあきらかに違う威力に驚いてはいるものの、取り乱すようなことはなかった。


「これがアズールの能力を解放した結果か・・・凄まじいの一言だな。」


「この程度で何を言っているのです。

私もマリスも、今後更に成長するのですよ。

それにまだ動きが荒いです。

だから先程のように自分の意思とは関係ない攻撃を放ってしまうのです。

今回は周りに敵以外いないからいいものの、誰かと共闘する場合、このままではただの迷惑です。

この機会に力に振り回されないよう慣れておきなさい。」


「わかっている。」


「ではお喋りはここまでです。

そろそろあちらもはじまる頃ですから、こちらもはじめて、すぐに終わらせましょう。」


「ああ・・・参る!」


マリスは槍を構えて一呼吸置くと、そのまま狂竜へと向かって突っ込んで行ったのだった。




こうしてパートナーの能力を解放した2人だったが、どちらの戦いも、もはや戦いとは呼べないほど、一方的な結果になっていた。


山脈では、ロンフォンが飛ぶだけで自然発生した竜巻と風の刃は、狙ったかのように全て狂龍へと襲い掛かっていた。


そこへ更にロンフォンの徒手空拳による攻撃を受け、狂龍は首どころか全身が数秒に一回バラバラにされたり、圧殺されたりしている。


狂龍は何とか防御を試みてはいるものの一切通用せず、もはや加護も意味を成していなかった。


同時に渓谷の方でも、金色の雲を纏ったマリスは、飛ぶように自在に空を駆けていた。


そして槍を一振りしただけで、狂竜の全身を小間切れにしている。


狂竜は何とか加護を使って攻撃しようとするものの、絶え間なく続くマリスの攻撃の前では、行動することすら許されなかった。


そんな一方的な蹂躙がはじまって1分程経つと、いつの間にか狂龍と狂竜は復元することなく、ただの物言わぬ肉塊へとなり果てていた。


攻撃の手を止めたマリスとロンフォンは、油断することなく警戒を続け、更にしばらく待ってみた。


だが肉塊が復元することはなく、ようやく2人は警戒を解いてパートナーの能力を解除した。


するとそれと同時に2人は全身の力が一気に抜けて、その場に崩れ落ちてしまい、膝をついて少し息を切らせていた。


そんな2人の元にマコトとの映像がつながった。


「2人ともよくやったな。

無事に同体の狂龍と狂竜を倒せたようだ。

その証拠に、リュジュの加護が2人に移っている。

これで山脈と渓谷は安全になった。」


マコトの言葉に、2人は息を整えてから答えた。


「しかしマコト、此方が戦った狂龍は、神経毒とやらを撒き散らして周囲を汚染していました。

おそらくここ以外にもそういった場所が多数あると思いますが、それらはどうするつもりですか?」


「確かにフォンさんの言う通りだ。

こちらも狂竜の猛毒とやらで汚染されている。

さすがにこのまま放置するわけにはいかないと思うぞ。」


そんな2人の心配は杞憂に終わった。


「それについては大丈夫だ。

これから浄化するからな。」


マコトがそう言いながら右手を上げると、山脈と渓谷全体を覆いつくすほどの無数の魔法陣が、突然上空に現れた。


すぐに魔法陣から白い光が下に向かって照射される。


そして山脈と渓谷の全体からは毒々しさが消え、とても澄み切った空気に変わったのだ。


同時に狂龍と狂竜の肉片もいつの間にか跡形も無く消えており、マリスとロンフォンの破壊の跡だけが残っていた。


マコトは手を下ろしながら、問題が解決したことを告げた。


「・・・これで大丈夫だ。

全体を浄化したから、今後は一般人が立ち入ったとしても問題無い。」


「マコトがそう言うのでしたら、問題ありませんね。」


「そうですね、フォンさん。

しかしマコト、1つだけ気になることが残っている。」


「何だ?」


「中に入っていた連中のことだ。

私の方はたぶん、以前話しに聞いていた竜神の身体を乗っ取っていた者が入ってたようだ。

それを話したら、あきらかに態度が変わったからな。

フォンさんの方はどうでしたか?」


「此方の方は龍神の孫のようでした。

同じく指摘したときに態度が変わっていました。

ただ兄の身体に入っていた方は今日消滅させたというのに、これはどういうことなのでしょうか?

マコトは何か知っているのですか?」


この2人の疑問に、マコトは自分の考えを答えた。


「おそらく元の人格をいくつも複製しているんだろう。

もしかしたら他にもいるかもしれない。」


「そうですか・・・ならば今後も全て消滅させるだけです。

あれは存在してはならないものです。」


「フォンさん、私も手伝います。

あれらを世に出してしまては、不幸を撒き散らすだけです。

実際に対峙したことで、より一層実感しました。」


「頼みます。

頼りにしていますよ、マリス。」


「はい。」


2人は新たな目的を通じ、より一層絆を深めたようだ。


そんな2人の話が一段落したので、マコトは場所を移すことを提案した。


「さて、2人共もう動けるだろうから、そろそろ戻ってきてくれ。

今後の詳しい話は、合流して武国に戻ってからにしよう。」


「わかりました。」


「わかった。」


まだ少し疲れているようだが、2人はすぐに立ち上がって皆がいる山脈と渓谷の入り口へと向かった。


2人が合流すると、マコトが開いたゲートを通って、武国へと戻っていったのだった。

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