真竜の願い2
リュジュは一度姿勢を正してから、改めてマコトたちに向き直って話をはじめた。
「では本題に入ろう。
今回マリスとフォンを呼んでまで、我が頼みたいことというのは、我の子供たちのことなのだ。
其方たちは、大陸を南北に分断している山脈と渓谷のことは知っているな?」
「商国を中心に、遥か西の彼方まで連なる名も無き山脈と、遥か東の彼方まで連なる名も無き渓谷のことだな。
どちらも大陸の端の海すら南北に分断するほどの、果てしなく長い巨大な山脈と渓谷だ。」
「国の名前は知らぬが、おそらく其方が言う山脈と渓谷で間違いないであろう。
他にそのようなものは存在せぬからな。
ならば、そこへ足を踏み入れると、誰も帰ってこれぬということも知っておるか?」
「ああ。
昔から大陸の南北を行き来する道を開拓しようとして大勢が踏み込んだが、誰1人として帰ってくることはなかった。
今では誰もが知っている未開の秘境として有名だ。」
「実はその原因が、我の子供たちなのだ。
正確には、我の子供たちの身体を使っている不届き者、なのだがな。」
そう口にしたリュジュの表情は、とても深い悲しみを帯びていた。
しかしリュジュは話を途切れさせることなく、詳しい説明を続けた。
「まずは順を追って説明しよう。
遥か昔、我を含む多くの者たちが、古代文明によって人造の神として造られた。
それは其方たちも、そちらの2人から聞いて既に知っているであろう。」
「同時に我らは古代文明の研究者たちによって支配され、自分の意思とは関係なく、好き勝手に様々な実験を強要された。
その内のいくつかの実験で、我は望まぬ相手との子を何度も産まされた。
いや、相手や産まされたというのは正しくないな。
その全てが顔も知らぬ者たちの精子で、人工子宮を使った人工授精だったのだから。
これまで実際に我が腹を痛めて産んだ子は1人もおらぬ。
だがそれでも愛しい我の子供たちだということには変わりない。」
「それを古代文明の研究者たちは、我だけでは飽き足らず、あろうことか我の子供たちまで実験体にしたのだ。
そうして行われた実験は、当然まともなものなど1つもない。
古代文明の研究者たちは、我の子供たちの命をただの材料としてしか見ておらず、実験の内容は常軌を逸していた。
しかし支配されておった我は、子供たちを助けるどころか、庇うことも、泣き叫ぶことすらできなかった。
そして我の目の前で、1人、また1人と、子供たちはその命を無残に散らしていった。」
「そんな中、ある実験だけが唯一成功したのだ。
それは、我の子供たちを同体とすること、であった。
同体とは、どちらか片方に変化が起こると、その変化が元に戻る存在のことを言う。
これは変化が起こっていない、もう片方の状態を元にしているらしい。
例えば片方が傷を負っても、もう片方には傷が無いので、負った傷が一切無かったことになる、というわけだ。」
「しかも子供たちは竜神力と龍神力を身につけており、更には我から加護を与えられておる。
片方には、攻撃特化した、竜爪牙の加護だ。
これは攻撃時にのみ自身の持つ力以外のあらゆる力に対して有利になる効果を与え、更に竜力の攻撃力を高めることができるものだ。
もう片方には、防御特化した、龍鱗骨の加護だ。
これは防御時にのみ自身の持つ力以外のあらゆる力に対して有利になる効果を与え、更に竜力から派生した力の防御力を高めることができるものだ。」
「ただ補足しておくが、これらの加護は完全でも万能でもなく、加護を上回る防御力や攻撃力であれば、攻撃を防ぐことも防御を突破することもできる。
その場合は当然、加護の分だけ相手の攻撃力や防御力は減衰されてしまい、本来の力には遠く及ばぬがな。
しかしそこまでの力を持つ者など、我を含めて神として創られた者たちくらいのものだ。
更に加護をものともせずに我の子供たちを倒せる者となると、神たちの中でもほんの一握りであろう。
1人1人の力は我よりも劣るとはいえ、それだけ我の子供たちの竜神力と龍神力は強力なのだ。」
「ここまで話せばわかると思うが、その実験体となった我の子供たちが、それぞれ山脈と渓谷を縄張りにしているのだ。
そしてこれまでその縄張りに一歩でも踏み入った者を亡き者としているため、あの山脈と渓谷は長らく未踏の地となっておる。」
だがあそこにいるのは、身体だけが我の子供たちではあるが、その心は既に消えており、中身は完全に別物となっておる。」
「そこでだ、我の頼みというのは、その我の子供たちの身体を不届き者たちから解放してほしい、ということなのだ。
そのため我は長い間、山脈と渓谷を監視しながら、竜力と竜力から派生した力を真に使いこなすことができる者たちが現れるのを待っておった。
そうして今回現れたのが、マリスとフォンなのだ。」
「同体である我の子供たちを倒すには、別の場所におる2体に対して同時に同じ場所へ致命傷を与えるしかない。
更に加護との相性もあるため、竜爪牙の加護には竜力を、龍鱗骨の加護には竜力から派生した力をぶつける必要がある。
そうでなければ我の子供たちを相手にすることができぬであろうからな。
そのため我の子供たちを倒せるのは、竜力と竜力から派生した力を持つ、其方たち2人以外にはおらぬというわけなのだ。
マリス、フォン、どうか我の頼みを聞き入れてはもらえぬだろうか?」
話を終えたリュジュは、2人に向かって深く頭を下げながら頼み込んできた。
そんなリュジュに、マリスが口を開いた。
「なるほど・・・話はわかりました。
リュジュさん、と呼ばせていただいてもよろしいですか?」
頭を上げて、リュジュはマリスと顔を見合わせてから答えた。
「構わぬ、好きに呼ぶがいい。」
「ではリュジュさん、いくつか確認させていただいてもよろしいですか?」
「我が答えられることならば何でも聞くがよい。」
「ありがとうございます。
私が聞きたいのは、何故リュジュさん本人が出向かないのか、ということです。
おそらく今の段階では、私たちよりもリュジュさんの方が実力は上です。
それなのに私たち2人に頼む意味がわかりません。」
これに対して、リュジュは複雑そうな表情を浮かべながら答えた。
「・・・そう思うのは当然であろうな。
だが我には無理なのだ。」
「それは同時に首を落とす必要があるからですか?
しかしそれでしたら、片方をもう片方がいる場所へ無理矢理にでも連れていけばいいのでは?
それくらいはリュジュさんであれば簡単なはずです。」
「確かにそれならば、1人でも2体同時に致命傷を与えることは可能であろう。
しかしそれでも我には無理なのだ。」
頑なに無理だと言い張るリュジュは、申し訳なさそうにしているものの、どこかそれを安堵しているようにも見える。
そんなリュジュの表情が気になり、マリスは理由を尋ねてみた。
「理由をお聞きしても?」
リュジュは隠すことなく、マリスの疑問に答えた。
「理由は2つある。
1つは、我の力は竜力だけであるため、竜力から派生した力を持っておらぬ。
そのため竜爪牙の加護は問題ないが、龍鱗骨の加護を相手にするのは相当苦労することになる。
そのため同時に致命傷を与えることが非常に難しいのだ。」
「もう1つが、我は子供たちに対して本来の力を発揮することができぬ。
これは我の心の問題なのだが、其方たちも身をもって体験したはずだ。
竜力や竜力から派生した力が、心の状態に大きく左右されることを。」
「今の子供たちは、既に心が存在せず、身体だけが別の存在に利用されていることは、我も頭ではわかっておる。
そんな子供たちの身体を解放してやるのが、親として務めであることも理解しておる。
だがこれまで子供たちに何もしてやることができなかった我に、そのような資格があるのか?
そう考えてしまうと、我は子供たちの前で本来の力を全く出すことができぬのだ。
その様な状態の我では、成す術もなく返り討ちにあってしまうであろう。」
「以前は我ともう1人、竜力から派生した力を真に引き出すことができる者がいれば、我とその者で子供たちを解放しようとも考えた。
だいぶ昔の話ではあるが、ある男がもう少しのところまで力を引き出すことに成功していたのでな。
しかしすぐに力の反応が消えてしまい、そのときはこうして話すことすら叶わなかった。」
「だが今にして思えば、我自身を戦力と考えていた時点で、失敗するのが目に見えておったのだ。
今ではあのとき行動を起こせなかったことは、運が良かったと確信しておる。
あれから長い年月が過ぎたが、我の子供たちを解放できる者たちを、こうして2人同時に見つけることができたのだからな。」
答えを言い終えたリュジュは、嬉しそうな表情をしているものの、その内からは悲しみをこらえているのがわかる。
そんなリュジュに、マリスは話を聞いて自分が感じたありのままを伝えた。
「確かに身体だけとはいえ、ご自分のご子息たちをその手にかけるというのは、親としてとてもつらいことでしょう。
それによってリュジュさんが本来の力を発揮できないことも理解できます。
しかしそう気を落とすことはありません。
こう言っては失礼かもしれませんが、私はリュジュさんが直接ご子息たちを、その手にかけることができなくて良かったと思います。
早く解放したいという気持ちはわかりますが、親が子を手にかけるなど、本来あってはならないことです。
その逆もまた同じです。
ましてやご子息たちに何の罪も無いとなれば尚更です。
そんなことをすれば、リュジュさんには一生消えない深い傷が残ってしまい、ご子息たちも浮かばれないでしょう。」
マリスの優しさに触れ、完全にではないが、少しだけ心が軽くなるのを感じたリュジュは、自然と感謝の言葉を口にしていた。
「・・・そうであるな・・・マリスよ、その心遣いに感謝する。」
「いえ、私は私の考えを伝えただけです。」
「そうか・・・」
リュジュはそれ以上何も言わず、話を切り替えるために続きを促した。
「・・・他に聞きたいことはあるか?」
「ではもう1つだけ。
竜力や龍力、そして私の辰力について教えてください。
何故私の力は龍力から辰力へと派生したのでしょうか?
私は龍人族なので龍力を継承していると思っていましたが、実際には辰力という違う力でした。
私の知る限り、他の力は同じ種族間で継承されていて、別の力に派生したという話は聞いたことがありません。
これには何か意味があるのでしょうか?」
「ふむ、我は他の種族のことはわからぬが、竜に関する力についてであれば、ある程度は知っておる。
そもそも大元の力となっておるのは、我の持つ竜力だ。
そして竜人族と龍人族は、我を起源とする種族なのだが、本来そこには種族という垣根は存在しない。
あくまでその外見や力の特徴に違いがあるだけで、種族としては本来どちらも竜人族なのだ。
つまり結果としてほとんどの者たちが、外見に力の特徴が偏ってしまうことが多かった、というだけなのだ。
その証拠に、フォンの外見は龍人族であるが、竜力を持っておる。
これは2つの種族の根源が同じだからであり、外見や力の特徴が違うのはあくまで個性だからなのだ。」
「ということは、私も厳密には竜人族なのですね?」
「そういうことになる。」
「であれば、私も後天的に竜力を使えるようになったり、外見が竜人族のように変化する可能性もある、ということでしょうか?」
「絶対とは言い切れぬが、外見はともかく、力についてはおそらく無理であろう。
これは力が変化する方向に関係しているのだと考えられる。」
「どういうことでしょうか?」
「まず先程も言ったが、大元になっておるのは竜力だ。
そして龍力というのは竜力から派生した力であり、辰力というのは龍力から更に派生した力なのだろう。
我はこれが、時代の移り変わりを現しているのではないかと考えておる。
竜力は過去を、龍力は現在を、そして辰力は未来を、それぞれ象徴しているのではないのかとな。
つまり時間を遡り、過去を変えることはできないが、新たな未来を作り出すことはできるからだ。」
「なるほど・・・その考え方を当てはめると、龍力から辰力へ変化することはできても、竜力へ戻すことはできない、そういうことですね?」
「その通りだ。
しかし龍力も辰力も、大元である竜力も、得手不得手や特徴の違いなどはあっても、そのどれもが優劣の差はなく同列の力なのだ。
そのため力の派生は変化であって進化ではない。」
「それは力が個性に合わせて変化したということですか?」
「おそらくではあるがな。
これは他の種族に継承されている力に対しても同様である可能性は高い。
そしてそれぞれの力は何かしらの意味があり必要であるからこそ、現代にまで継承され派生しているのだ、とな。
我はそう考えておる。」
「つまりリュジュさんは、私たち力を継承した者には、その力を使って果たすべき役割や使命が存在している、と考えているのですね?」
「うむ、そうだ。
だがそれが何であるのか、そこまでは我にもわからぬ。」
「そうですか・・・ありがとうございます、リュジュさん。
今のお話で、少しだけですが謎の解明に一歩近づけたと思います。」
「我の知識や経験が其方の力になれたのであれば幸いである。
さて、他に聞きたいことが無ければ、我の頼みを聞いてもらえるか、そろそろ返事を聞かせてもらっても構わぬか?」
マリスは少しだけ考えていたが、すぐに答えた。
「・・・わかりました、私はこのお話し、お受け致します。
フォンさんはどうしますか?」
マリスに話を振られたロンフォンは、すぐに返事を返したのだが、それは答えではなかった。
何故か珍しく難しい顔をしながら考え事していたのだ。
「此方も受けるのは構わないのですが・・・」
「リュジュさんの話に、何か気になることでもあるのですか、フォンさん?」
「いえ、リュジュの話を聞いて、此方も受けることに異論はありません。
ただマコトなら1人で全てを解決することが可能なはず。
未開の地であれば、その開発は各国に大きな利益をもたらします。
そのことにマコトが気づかないはずはありません。
此方が気になったのは、何故マコトがこれまで何もしなかったのか、という部分です。」
ロンフォンの疑問にマリスも納得すると、すぐにマコトへと確認した。
「なるほど、確かに。
そこのところはどうなんだ、マコト?」
マリスがロンフォンの代わりにマコトへ尋ねると、別に隠していたわけではないようで、あっさりと答えが返ってきた。
「確かにロンフォンの言う通り、いつでもどこでも倒すのは可能だ。
今すぐにこの場でもな。
だが俺がやってしまうと意味が無くなってしまう。」
このマコトの説明だけで、ロンフォンはその意味を正しく理解した。
「つまり此方たちにやらせる意味があるということですね?」
「そういうことだ。」
「それで、その意味というのは何なんだ?」
「此方も教えてほしいです。」
2人はマコトへ意味について尋ねたが、これにはリュジュが答えた。
「それについては我から話そう。
先程の話に何度か出てきた加護、あれは倒した者に受け継がれるのだ。
おそらく其方たちに加護を受け継がせることを考えてのことなのであろう。」
「私たちがその加護を受け継いで使うことができるようになる、ということですか?」
「そうだ。
だが受け継いだだけでは加護は名前だけで、何の効力も発揮しないただのお飾りなのだ。
それでは使うことはできぬ。」
「ではどうすればいいのですか?」
「元々加護を創り与えた我が、加護を受け継いだ者を認め、加護の効果を有効にする必要があるのだ。
今回我の頼みを完遂した暁には、其方たちを認め、受け継いだ加護を使えるようにすることを約束する。
また受け継いだ加護は其方たちだけのものとなり、以降は我の手を完全に離れるようにもしよう。
そうすれば其方たちの意思で加護を次代へ受け継がせることも、消し去ることも、自由にできるようになる。
これを今回の報酬とさせてもらいたいのだが、どうだろうか?」
リュジュから報酬の提示を受け、2人は何も問題はないと判断したようだ。
早速その条件でリュジュの頼みを叶えることを伝えようとしたのだが、そこへマコトが割って入ってきた。
「ちょっと待ってくれ。
リュジュ、その条件を少し変えてほしいんだが構わないか?」
「変えるのは構わぬが、内容によるぞ。」
「たぶん大丈夫だ。」
「まぁよかろう。
それで何を変えるのだ?」
「変えてほしいのは、加護の効果だ。」
「加護の効果か・・・ある程度はできないこともないが、大きく変更することはできぬぞ。」
「わかっている。
変えてほしいのは、竜爪牙の加護と龍鱗骨の加護の効果はそのままで、それぞれ作用する力を逆にしてほしいだけだ。」
「それはつまりこういうことか?
竜爪牙の加護の方は、竜力から派生した力の攻撃力を高める。
龍鱗骨の加護の方は、竜力の防御力を高める。」
このように変更すればいいのか?」
「そうだ。
できるか?」
「作用する力を変更するだけならば、受け継いだ後、我が認める際に加護の名前を少し変えればいいだけであるから可能だ。
竜爪牙の加護は龍爪牙の加護、龍鱗骨の加護は竜鱗骨の加護、とな。
しかしそうなると、2人が加護を引き継ぐ意味が無くなってしまうぞ。」
「それはマリスが龍鱗骨の加護を受け継いで竜鱗骨の加護に変更した場合。
そしてロンフォンが竜爪牙の加護を受け継いで龍爪牙の加護に変更した場合。
この場合は確かに宝の持ち腐れになってしまうだろう。
だが受け継ぐ加護が逆の場合はどうだ?」
このマコトの提案に、リュジュは首を横に振った。
「それは無謀だ。
竜力から派生した力を持つマリスでは、竜爪牙の加護を受けた攻撃を防げぬ。
そして竜力を持つフォンでは、龍鱗骨の加護を受けた防御を突破できぬ。
それこそ加護を受け継ぐどころではない。
まず倒すこと自体が無理であろう。」
無理だと断言するリュジュだったが、マコトの考えは違うようだ。
「そうでもないぞ。
確かに相性は悪いが、今の2人なら倒せない相手じゃない。
まぁ単独では多少の苦戦はするかもしれないがな。」
「そこまで言い切るからには、ハッキリとした根拠が其方にはあるのだろうな?」
「当然だ。
俺だって自分の大切な女たちを死地に送り込むなどという無謀なことはしない。
そもそもリュジュは相手の力を読み間違えている。」
「それはどういうことだ?」
「リュジュは遥か昔、最後に直接感じ取った力から相手の成長度合いを考えて、今の強さを予想しているんじゃないのか?」
「其方の言う通りだ。
直接相まみえてはおらぬのだから、そうするしかあるまい。
だが我とて過去の情報や経験から、様々な可能性を考慮しておる。
子供たちの成長速度や環境などを考えた上で、今の強さを算出しておるのだからな。」
「つまり同体になる前の個人個人の過去の成長率を加味している、ということだな?」
「うむ、その通りだ。
最悪の結果を想定しているため、予想は多少上方修正してはおるが、大きな違いは無いと考えておる。
それのどこに問題があるというのだ?」
「なるほどな。
通常ならそれで問題無いだろう。
だが今は通常ではない。」
「どういうことだ?
我が予想に使った情報や経験が間違っているというのか?」
「だったら聞くが、同体による弊害は考慮しているのか?」
「弊害?それはなんだ?」
どうやらリュジュは何も知らないようで、マコトはその内容について説明をはじめた。
「やはり知らなかったか。
まぁそれも当然だな。
同体については古代文明でも成功は1例だけで、検証が完了する前に滅んでしまったからな。
さっきリュジュは、同体とはどちらか1人に変化が起こると、その変化が元に戻る存在だと言ったな?」
「うむ、確かにそう言った。
それが間違っているということなのか?」
「いや、間違ってはいない。
ただ補足するなら、これは全てのことに対して当てはまる、という部分が抜けているくらいだ。」
だがこのマコトの説明を聞いても、リュジュには意味が伝わらなかったようだ。
「それがどう弊害とやらにつながるというのだ?
もっと詳しく頼む。」
詳細な説明を求めてくるリュジュに、マコトはある例えをあげた。
「そうだなぁ・・・リュジュは訓練を行えば強くなることができる。
だが何もせずに怠けていれば弱くなる、そうだな?」
「そんなことは当然であろう。」
「ああ、当然のことだ。
だが同体は違う。
片方が強くなったり弱くなったりしても、それは変化として扱われてしまい、すぐに元に戻ってしまう。」
「ちょっと待て、では同体は強くなることも弱くなることもできないということなのか?
つまり最初の状態から一切変化することが無いと。」
「必ずしもそうとは言えない。
同体は互いの変化を感知するまで、僅かな時間差がある。
それを上手く利用すれば、基本となる状態を更新して変化することは可能だ。
例えば同時に強さを増していけば、それは変化として扱われない、といったことができる。
しかし効率は圧倒的に悪い。
同じ部分が同じ強さにならないと、元の状態に戻されてしまうからな。」
ここまでの説明で、リュジュは自分の予想を改めた。
「なるほど・・・そうなると我が考えていたよりも、それほど強さは増してはおらぬであろうな。」
「それだけじゃない。
身体を乗っ取っている連中は同体の弊害に気づいていないし、そもそも強くなるつもりもないようだ。
既に竜神力と龍神力を使えることに満足しているらしく、ただそこにいて侵入者を排除しているだけだ。」
「ならば更に変化は少ない・・・いや、場合によっては弱くなっている場合もあるか・・・
であれば、加護との相性が悪い相手であっても、倒せる可能性は高くなるであろう。
しかしそれでも不利なことに変わりはない相手であるぞ。
そこはどうするつもりなのだ?」
リュジュはマコトの話を聞いて、不利な相手でも勝ち目はあると考えだしたが、それでも自分の与えた加護が気になるようだ。
しかしそれでもマコトは自分の判断を変えなかった。
「問題ない。
2人には相手を倒すための効果的な手段がいくつかある。
それも上手く使えば圧勝できるほどのな。」
自信満々なマコトの言葉に、少しだけ考えたものの、リュジュも先程の提案を受け入れることを決めたようだ。
「・・・わかった。
そこまで言うのであれば、どちらを相手にするかは其方に任せよう。
ただし我も見届けさせてもらうぞ。」
このリュジュの提案は、あっさりと聞き入れられた。
「最初からそのつもりだ。
マリスの方には、俺、ミィ、ルフェ。
ロンフォンの方には、フウロン、メイア、ベル。
俺たちは今言った4人ずつにわかれて行くつもりだが、リュジュはどっちについてくる?」
「我がついていくのは・・・」
リュジュはどちらについていくのか既に決めているようで、すぐに答えを出したのだった。




