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無双するご主人様のハーレム事情  作者: 不利位打夢
第17章 商い革命
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真竜の願い1

温泉から上がって一息ついてから、マコトたちは武国の王城へとやってきていた。


出てくる前にマコトが、シルフィナ、カーラ、アスモを呼んで何か指示を出すと、3人はそのままどこかへと行ってしまった。


そのため今回一緒に来たのは、呼ばれたマリス、ロンフォンに加え、マコト、フウロン、メイア、ミィ、更にベルとルフェの8人である。


出迎えてくれたフェイに案内されてマコトたちが向かったのは、王城の食堂だった。


そこでは見知らぬ女性が大量の料理に囲まれながら、夢中になって食事をとっているところだった。


何故このような状況になっているのかというと、話は少し遡る。


その女性はいつの間にか武国の王城の入り口である門の前に立っていた。


そして大きく息を吸ってから、大声を出そうとしていた。


「すぅーーーっ・・・たの・・・」


しかしそこへ1人の女性が現れ、頭を下げて出迎えてくれた。


「お待ちしておりました。」


出鼻を挫かれた女性は少し驚いたものの、特に慌てた様子もなく、すぐに出迎えてくれた女性のことを尋ねてきた。


「おぉ!?

・・・其方は?」


出迎えた女性、フェイは、すぐに自分の素性を明かした。


「武国の第1王女、リーリス様の補佐を務めております、フェイと申します。

以後お見知りおきを。

貴女様がいらっしゃることは事前にお伺いしておりますので、どうぞこちらへ。」


女性は疑うことなく、フェイの案内に従ってくれた。


「うむ。」


歩き出してすぐに、フェイはこれからのことについて女性へと説明をはじめた。


「ただ少し準備に時間がかかるそうです。

そのため少しの間お待ちいただくことになってしまいますが、よろしいでしょうか?」


「急な話であるからな、仕方あるまい。」


「ありがとうございます。

しかしただお待ちいただくわけにはまいりません。

お食事をご用意させていただきましたので、よろしければお召し上がりになってお待ちいただいてはいかがでしょうか?」


すると食事という言葉が、女性の興味を引いたようだ。


「食事とな!

それは助かる。

何せ、しばらくまともな食事をとっていなかったのでな。

それに今の食事がどのようなものなのか、とても楽しみだ。」


「それはようございました。

たくさんご用意させていただきましたので、存分にご堪能ください。」


「うむ!」


女性は上機嫌になると、そのままフェイの後について行った。


そして目の前の光景につながる、というわけだ。


マコトたちは何も言わずに女性の正面に座ると、まずは一緒に食事をはじめた。


女性は何も言わず、黙々と目の前の料理を食べることに集中している。


新たに8人も加わったことで、大量に並んでいた料理は、みるみるうちに平らげられ、ものの数分で無くなってしまった。


全ての料理が無くなると、そこへタイミングよく、フェイ、ミィ、メイアが、全員分のお茶を運んできてくれた。


そのお茶を飲んで一息ついたところで、ようやく女性が口を開いた。


「・・・ふぅ・・・久しぶりに美味い料理を堪能することができた。

フェイと言ったか、まずは感謝する。」


「ご満足いただけたのでしたら幸いです。」


フェイに感謝を伝え終えると、女性はようやくマコトたちへと顔を向け、まずは謝罪した。


「さて、待たせてすまない。

あまりにも美味い料理だったので、一心不乱に食べてしまった。」


これに対して、マコトが答えた。


「いや、俺たちも朝食はまだだったから、ついでに同席させてもらったしな。

だから気にしなくていい。」


「そうか。

それで、其方は何者だ?」


女性は真剣な表情で、何かを探るような目をマコトに向けながら訊ねてきた。


当然マコトの答えはいつも通りである。


「マコトだ。」


相手が名前しか名乗らなかったため、最低限の素性を知りたかった女性としては、このマコトの答えに不満だったようだ。


少し不機嫌そうにしながらも、他に何もないのか更に訊ねてきた。


「・・・それだけ、か?」


「そうだが、何か問題があるか?」


この答えが気に入らなかったのか、女性はマコトから興味を失い、早々に目的の人物たちへと話しかけた。


「・・・まぁよい。

今回用があるのは其方ではなく、そちらの2人だ。

其方たちが我の待ち望んでいた、我のメッセージを受け取った者たち、つまりは竜や龍を受け継ぐ者たちであろう?

それは先ほどから感じておる、内に秘めた隠しようもない力からわかっておる。

よくぞそこまで力を磨き上げた、見事である。

まずは名を聞いてもいいか?」


女性に訊ねられ、マリスとロンフォンが、簡単に自己紹介を行った。


「マリスです。

種族は龍人族で武国の第2王女でもあります。

受け継いだ力はおそらく龍だと思われます。

ただ訓練をしていただいている方からは、厳密には龍力とは違うので、区別するために、辰力、と名付けていただきました。」


「此方はロンフォンです。

ですがこれは真名ですので、フォンと呼んでください。

種族はおそらく龍人族だと思いますが、受け継いだ力はおそらく竜の方です。」


マコトと違い、2人は自己紹介に自分たちのことを含めていたので、女性は満足そうな顔で自分の自己紹介をはじめた。


「うむ、マリスとフォンか、良い名だ。

では我も名乗るとしよう。

我は古代文明時代から生き続ける、かつて神と呼ばれた存在。

神としての名は、真なる竜、トゥルードラゴン、かつて人だったときの名は、リュジュである。

気軽にリュジュと呼んで構わぬ。

では早速本題に入・・・」


簡単に自己紹介を終え、リュジュと名乗った女性が、すぐに2人へ用件を伝えようとすると、そこへ割って入ってくる人物たちがいた。


「相変わらずせっかちであるな、(ぬし)は。

そう焦る必要もなかろう。」


「しょうがないよ、だってあのリュジュだもん。」


2人のあまりにも馴れ馴れしい口調と話を遮られたことに、リュジュは不機嫌になりながら少し警戒した。


「・・・何者だ、其方らは?」


しかしそんなことは一切気にせず、2人の態度は全く変わらなかった。


「そう言われると少し寂しいであるな。

昔あれほど世話を焼いてやったというのに。」


「まぁ別の班だったリュジュとこうして本来の姿で逢うのは初めてだし、今は気配を隠蔽しているからね。

私たちのことがわからないのも無理は無いよ。」


「昔?本来の姿?気配を隠蔽?其方らはいったい・・・」


2人が何を言っているのか意味がわからないリュジュだったが、すぐにそれを理解させられることになる。


「ならば、これでわかるであろう?」


「ちょっとだけ解放してあげるよ。」


何故なら2人がリュジュにだけわかるように、隠蔽していた自分たちの力を僅かに表へ出したのだ。


それだけでリュジュは、懐かしくも苦々しい思い出しかないその気配から、かつての苦汁の日々の記憶を無理矢理掘り起こされた。


「なっ!?まっ、まさか其方らは、暴食のベルゼブブと怠惰のベルフェゴールか!」


「ようやくわかったか。」


「正解だよ。」


落ち着いた様子の2人とは対照的に、リュジュの表情からはそれまでの余裕が消えていた。


「まっ、まさかあの状態で生きていたとはな・・・いっ、今更何をしに来た!

我の邪魔をしに来たのか!

それとも我を捕らえに来たのか!」


リュジュは警戒レベルが一気に最大まで上がったと同時に、あきらかに怯えていた。


おそらく昔の2人を知るからこそ、この場から逃げることはもうできないと悟ったのであろう。


しかしそんなリュジュに対して、ベルは何もするつもりがないことを説明した。


「そう警戒するな、(ぬし)を今更どうこうするなどと、私たちは微塵も思っていない。

そもそも昔は私たちも支配されていたからこそ、古代文明の研究者共に無理矢理従わされていただけだ。

その支配から既に解放されているのに、どうしてわざわざ昔と同じように(ぬし)を管理せねばならぬというのだ。

そんな面倒なこと、こちらから願い下げである。」


「・・・その話を信じろと?」


「私たちの話を信じようが信じまいが、リュジュの勝手だよ。

でもこれだけは言っておくよ。

リュジュが私たちと敵対するっていうなら、力づくでおとなしくさせるからね。

だけどリュジュが何もしないなら、私たちからは何もしないから。」


警戒は維持したまま、リュジュはとりあえず2人の話を信じることにした。


しかし新たな疑問が生まれ、それについて質問してみた。


「・・・いいだろう、我としても其方たちと敵対しないで済むのなら、それに越したことはない。

だがそうなると、其方たちの目的がわからぬ。

何をしに我の前に姿を現したのだ?」


この質問に対して、ベルからは意外な答えが返ってきた。


「そもそも(ぬし)が、こちらの2人を呼んだからこそ、私たちはついでに(ぬし)の顔を見に来ただけである。

昔の顔見知りなど、中々逢えるものではないからな。」


「・・・それだけ、なのか?」


「後は、私たちがリュジュと直接の面識があったから顔をつなぎに来た、ってだけだよ。

私たちも、今はここにいるマコトの世話になっているからね。

ただ飯ぐらいにならないように、護衛も兼ねたちょっとしたお仕事をしている、ってわけ。

まぁ護衛なんて必要ないんだけどね。」


2人の答えがあまりにも普通だったのと、どう見てもこの中で最弱と思われる男の庇護下にあると聞き、若干リュジュの警戒が緩んだ。


それと同時に2人に対するかつての畏怖が薄れていき、リュジュの態度が徐々に大きくなっていった。


原因はマコトだ。


「・・・かつての最高神2人が、今ではどこの馬の骨ともわからぬ何の力も持たない男の使いっ走りというわけか・・・惨めだな。

どうやら神の身体を失ったことで、力以外は全て失ったようだな。」


これに対して、ルフェは声を出して笑っていたのだが、目だけは違った。


「あははははっ、まぁかつての私たちを知ってるリュジュならそう思うよねぇ。

でもそれは大きな間違いだよ。

マコトが本気になったら、ここにいる全員を一瞬で拘束するくらいは簡単だからね。」


それまでの和やかな雰囲気が一変し、ルフェはリュジュを軽く威圧しはじめたのだ。


だがリュジュは臆することなく、更に態度が大きくなっていく。


「この男がか?

わははははっ、さすがにそのような冗談には騙されん。

それにしても其方らがその様な冗談を言うとは、少し驚いたぞ。

しかし先ほどはかつての其方たちを思い出してしまい、反射的に警戒してしまったが、その必要はないらしい。

・・・どうやら其方たちは、平和な時代が長く続きすぎて、相当腑抜けているようだからな。」


リュジュの態度は、あきらかに2人を見下しはじめているが、ベルは落ち着いた様子のまま一口お茶をすすってから質問した。


「それは、(ぬし)は腑抜けておらぬ、と言っておるように聞こえるが?」


「当然だ。

我はかつて其方たちに管理されていた頃とは違う。

長い年月をかけて力を磨き、今では其方たちを超えたと自負しておる。

其方たちを2人同時に相手してではわからぬが、1人ずつならもはや負けることなどないはずだ!」


「そうか。」


このリュジュのあからさまな煽りに、ベルは繭一つ動かさずに、相変わらずお茶をすすっている。


しかしルフェは違った。


自信満々なリュジュの態度が気に入らなかったのか、挑発だとわかっていながらあえて乗ってきたのだ。


「へぇ・・・だったら試してみるかい?」


自分の思惑通りに事が運び、当然リュジュが断るわけがなかった。


「望むところだ。

我は逃げも隠れもせぬ。」


「ベル姉、リュジュとは私1人でやるから、手出ししないでよ。」


完全にやる気になっている2人の姿に、ベルは内心ため息をついていた。


「・・・ルフェよ、私は手出しするつもりはない。」


「さっすがベル姉、話が早くて助かるよ!」


「だが一言だけ言わせてもらおう。」


「何?」


「今この場に私たちがいる意味を、もう一度思い出せ。」


「意味?」


「リュジュ、(ぬし)もだ。」


ベルは警告のつもりで言ったのだが、2人の熱を冷ますことはできなかったようだ。


「忘れてなどおらぬ。

だがその前に、後顧の憂いを断っておく必要がある。」


「後悔するよ!」


「その言葉、そっくりそのまま返すぞ!」


完全にやる気になっている2人の姿に、ベルだけでは穏便に収めることはできないと判断したのか、マコトへと助力を求めてきた。


「はぁ・・・すまぬ、こうなってしまっては、私では力技以外にどうすることもできぬ。

力を借りても構わぬか?」


「仕方ない。

俺としても余計な時間を取られたくはないからな。」


「助かる。」


マコトの協力を得られたことで、ベルは全てを丸投げできて一安心したのか、再びお茶をすすりだした。


そしてマコトは、まずは御しやすいルフェへと声をかけた。


「ルフェ。」


しかしルフェは聞く耳を持ってくれなかった。


「止めないでよ、マコト!

こいつ私たちだけじゃなく、マコトのことまで馬鹿にしたんだからね!

こういう言ってもわからない脳筋には、実力で黙らせるしかないんだよ!」


さすがに自分の名前を出されてしまっては、マコトとしても強硬手段はとりたくなかった。


そのため最初はやんわりと注意することにした。


「ルフェがいろいろと気遣ってくれたのは嬉しいが、俺は別に気にしていないから、とりあえずここは引いてくれないか?

このままだと話がこじれて、いろいろと面倒なことになりそうだ。」


これで終われば何の苦労もないのだが、当然ルフェがおとなしく引き下がるわけがなかった。


「それはダメ!

マコトが気にしていなくても、私が気にするの!

それにこいつは今ここで屈服させておく必要があるんだ!

その方がどっちの立場が上なのか、ハッキリさせられるからね!」


ルフェの言いたいこともわかってはいるが、マコトとしてはそれを今この場で行ってほしくなかった。


「だが2人が本気で暴れたら、この辺り一帯は跡形もなく消えてしまうぞ。」


「だったら場所を用意してよ!

マコトなら簡単でしょ!」


これ以上何を言っても今のルフェは聞き入れないと判断し、仕方なくマコトはかけていた保険を使うことにした。


「・・・はぁ・・・やれやれ、この手はあまり使いたくなかったんだが、仕方ない。

最後まで黙ってるつもりだったんだが、ここの様子はシルフィナも見聞きしてるぞ。」


「えっ?・・・」


マコトがそう言ったとほぼ同時に、突然上から何かが飛んできて、ルフェの足元に突き刺さった。


「うわっ!?・・・なっ、何?・・・」


いきなりのことで驚くルフェだったが、その飛んできた物体を見て、急に顔色が悪くなった。


「・・・げっ!」


それはただの長方形の形をした紙だったのだが、そこにはこう書かれていた。


『警告です』


「まっ、マコト、これって・・・」


恐る恐るマコトに確認しようとしたルフェだったが、答えが返ってくるよりも先に、次の紙が足元に突き刺さった。


『今すぐ止めてください』


「でっ、でも・・・」


『お仕置きしますよ?』


「ちょっ、待っ・・・」


『お仕置きされたいのですか?』


「いっ、いや、だから・・・」


『お仕置きされたいのですね?』


「ちっ、違・・・」


『ではお仕置きしましょう。』


「ひぃっ!?」


次々と紙が足元に突き刺さっては、そこに書かれた言葉を見て、ルフェはだんだん顔色を悪くしていった。


そしてとうとう、決断を迫ってきた。


『最終勧告です』


これを見てルフェは反射的に戦闘態勢を解くと、マコトの後ろに隠れながらひたすら謝っていた。


「わっ、わかりました!

御免なさい、止めます、何もしません!

だからお仕置きは許して!」


するとこの悲痛な願いが届いたのか、上からヒラヒラと紙が舞い降りてきて、ルフェの手のひらに乗った。


『でしたら今回は不問とします』


そこに書かれていた言葉を見て、ルフェは安堵の表情を浮かべていた。


「・・・ほっ・・・」


しかし安心したのも束の間、再び上から勢いよく紙が飛んでくると、手のひらの紙だけを粉砕して、新たな言葉を残した。


『ですが次は無いですよ』


「はいっ!」


そんな反射的に直立不動で返事を返してしまったルフェの姿を見て、リュジュは盛大に大笑いしていた。


「・・・ぷっ、わはははははははっ・・・そっ、其方本当に・・・ぷっ、あの怠惰のベルフェゴールか?

ぷぷっ、我らを管理していた・・・くっくっくっ・・・かつての最高神が・・・わっはっはっはっ・・・たかがお仕置きに怯えるとは・・・あはははははは・・・」


「ぐっ・・・」


悔しそうな表情のルフェだったが、これ以上何かをすれば、全て自分に返ってきてしまうため、その場をジッと堪えていた。


ルフェが何も言い返してこないので、それまで笑っていたリュジュが突然真剣な表情になった。


「・・・どうやら本当にただの腑抜けになってしまったようだな。

ならばこのような好機を逃すわけにはいかぬ。

今ここで後顧の憂いを絶たせてもらう!」


リュジュは全力で力を発動して、まずはルフェに襲い掛かろうとした。


当然その手前にいるマコトもろともだ。


しかしリュジュは、行動を起こすこと自体ができなかった。


力を発動するよりも先に、影から飛び出してきた無数の鎖が、リュジュの全身に絡みついて拘束してしまったのだ。


「なっ、何だこれは!

くっ、くそっ・・・うっ、動けん・・・」


必死に抜け出そうと暴れるリュジュだったが、鎖はビクともしない。


それに何故か力も発動することができず、リュジュには為す術がなかった。


そこへその鎖を放った人物、マコトがリュジュへ警告してきた。


「それ以上やるつもりなら、後で場所を用意してやるから、そこで思う存分やってくれ。

だが今は駄目だ。」


「まさか・・・其方がこれをやっているというのか?」


「ああ。」


「我をどうするつもりだ!」


生殺与奪権を握られてしまったリュジュは、殺意のこもった視線を向けてきたが、マコトは気にすることなく自分の要望を伝えた。


「別に何もするつもりはない。

ただおとなしくしてほしいだけだ。」


「・・・嫌だと言ったら?」


「しばらくこのまま拘束させてもらう。

そしてリュジュが2人に頼もうとしていたことを、こっちで勝手にやらせてもらうだけだ。」


このマコトの言葉を聞いて、リュジュが途端に焦りだした。


「なっ!?それは駄目だ!」


「だったら本来の目的を優先するべきだな。

違うか、リュジュ?」


マコトの言葉でリュジュは落ち着きを取り戻したらしく、その要望を受け入れた。


「・・・わかった。

其方の言う通り、我の本来の目的を優先しよう。」


「いいだろう。

おとなしくしてくれるなら、こちらとしても何もするつもりはない。

ああ、それと先に言っておくが、次はないからな。」


マコトは少しだけ威圧を込めた視線を一瞬リュジュ向けながら最終警告をした。


だがその一瞬だけで、リュジュは自分のマコトに対する評価が間違っていたことに気づき、隙を付こうなどという考えはきれいさっぱり消えてしまった。


「っ!?・・・わっ、わかっておる。」


「では拘束を解くぞ。」


そう言ってマコトが1回だけ指を鳴らすと、鎖は一瞬で消えてしまった。


リュジュは軽く身体を動かしながら、おかしいところが無いか確かめた。


「・・・どうやら本当に解放してくれたようだな。」


「約束したからな。」


「なるほど、少しだけ其方のことがわかった。

まず其方が我に対して言うのは、本当のことだけのようだ。

そして其方は我よりも遥かに強い。

力の片鱗を全く見せずに、我を手玉に取ることができるほどにな。

となれば其方と今争うのは得策ではない。

ここはおとなしく我の目的を果たすことが、一番賢い選択であろう。」


「理解してもらえて助かる。」


「ところで話は変わるのだが、其方、我とつがいにならぬか?」


このリュジュの言葉に、マコトは内心でため息をつきながらも、理由を知っているため、それを表に出さずに答えた。


「・・・ずいぶんいきなりだな。」


「そうでもあるまい。

其方なら知っているであろう。

竜や龍の因子を持つものは、自分よりも強い異性を本能的に求める、ということを。」


マコトは以前マリスたちに起こったことを思い出しながらも、あえて何も答えなかった。


「・・・」


しかしそんなことにはお構いなく、リュジュはマコトが知っていることを前提として話を続けた。


「そしてそれは我も例外ではない。

圧倒的な力を持つ其方に対して我が発情してしまうのは、当然でありどうしようもないことだ。

ただ勘違いしないでほしいが、我から異性を求めたのは、其方が初めてのことだ。

これでも身持ちは堅い方だと自負しておるからな。」


リュジュの初めてという言葉に、マコトは思わず本音を口にしてしまった。


「そいつは光栄だな。」


するとリュジュは嬉しそうに、そのまま強引に押し切ろうとした。


「そうであろう。

ということで早速・・・」


リュジュは着ている服を脱ごうとして手をかけたが、次のマコトの言葉でその手を止めることになる。


「だが見たところ、リュジュは理性で発情を抑え込めることができるようだが、違うか?」


「そっ、それは・・・」


図星を突かれて答えを躊躇するリュジュに、マコトは最後の駄目押しをした。


「何だ、そんなこともできないのか?」


少し挑発するように言ったこの言葉を聞き、リュジュは思わずカッとなって反射的に本当のことを答えてしまったのだ。


「っ!それくらい余裕でできるに決まっているであろう!・・・はっ!」


リュジュが自分で何を言ったのか、気づいたときにはもう遅かった。


言質を取ったマコトは、当然正論でリュジュの逃げ場を奪いはじめた。


「だったら緊急性はないはずだ。

悪いがその話は後にしてもらうぞ。」


痛い所を突かれてしまい、リュジュは最後の悪あがきをするしかなかった。


「うっ・・・しっ、しかし、時間をおいてしまっては、其方がこの話を有耶無耶にしてしまうかもしれぬではないか!」


「そんなつもりはない。

むしろ俺としてもリュジュの好意を嬉しく思っているからな。」


「ならば確実に其方が後で我とこの件について話し合うことを、今この場で確約してくれ!」


リュジュは必死に獲物を逃さないよう、真剣な表情でマコトを見つめてきた。


それに対して、マコトはあっさりリュジュの要望を受け入れた。


「いいだろう。

まずは2人をここに呼んだ用件を先に片付けてくれ。

その後であれば、俺が時間を作れるときに、リュジュとの話し合いに付き合うと約束しよう。

それで構わないか?」


口約束ではあったが、不思議とリュジュはマコトの言葉を信じることができ、この場はおとなしく引き下がることにした。


「・・・よかろう。

其方は約束を守る男だと信じておるぞ。

まぁ当然我としても、これまでの人生で初めて惹かれた男を逃すつもりはないがな。

だがもし其方が我から逃げようものなら、我は手段を選ばぬぞ。」


「何度も言うが、そんなつもりはない。」


「ならばよい。

これ以上しつこくして其方に嫌われるのは、我としても不本意だ。

この話は一旦お終いとしよう。」


「そうしてくれ。」


こうしてようやく話がまとまり、マコトもリュジュも表情を緩めて一息つくことができたのだった。

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