新たな覚醒と進化
話は少し遡り、場所は訓練場へと移る。
いつも通り訓練で模擬戦をしていた皆は、今日も派手にやられていた。
相手は当然シルフィナだ。
相変わらず反則級の強さで、皆のことを圧倒している。
しかし誰も折れることなく、何度も何度も立ち向かっているのもいつものことだ。
そんな中、1人だけ不自然に足を止め、少し混乱している者がいた。
普段なら訓練中にこんなことをすればシルフィナのお仕置きがはじまりそうなものなのだが、この日だけは違った。
シルフィナはその人物、マリスの許へと近づき、まずは理由を尋ねてきた。
「マリスさん、どうかされましたか?」
「あっ、ああ、シルフィナさん。
実はこんなことを言ってはおかしいと思われるかもしれないが、突然頭の中に声が聞こえてきたんだ。
それも全く知らない声でだ。」
「その声は何と言っていましたか?」
「それが片言すぎて意味が全くわからないんだ。
確か、『・・・願い・・・竜と龍?・・・武国・・・城・・・至急・・・』、だったはずだ。
だが私には何のことかさっぱりだ。」
このマリスの話を聞いて、シルフィナは1人で納得していた。
「なるほど、どうやらマコト様の方は上手くいったようですね。」
「どういうことだ、シルフィナさん?」
自分に何が起こっているか全くわからず不安なマリスは、すぐにシルフィナへ理由を尋ねたのだが、それは叶わなかった。
「すぐにわかりますよ。
皆さん、今日の模擬戦はここまでとします。」
突然模擬戦の終了を告げられ、皆は不思議に思いながらも、とりあえずシルフィナの許へと集まってきた。
「シルフィナさん、何かあったのですか?」
「まだいつもの半分も時間が経っていないと思うのですが?」
ティリアとサラの質問に対して、シルフィナは理由を説明した。
「フォンさんの訓練が上手くいったようですので、この後の予定を変更することになりました。」
「・・・どういうこと?」
「意味がわからない。」
ミザリィとナタリィはシルフィナの要領を得ない説明に理解が追い付かないようだ。
そしてシェイラは、このままでは埒が明かないと思ったのか、関係しているであろう、ずっと気になっていた点を質問してきた。
「そもそもフォンさんはマコト様と一緒に、どのような訓練を行っていたのですか?」
しかしシルフィナは答えを後回しにした。
「それについては後です。
その前に、先にやっておくことがあります。」
「やっておくこと、とは何でしょうか・・・わかりますか、エリス姉様?」
「情報が少なすぎてわからない。」
「シルフィナさん、これから何をはじめるのですか?」
相変わらず要領を得ないシルフィナの説明に、ノワールとエリスは首を傾げ、イーリスは詳しい説明を求めてきた。
だがシルフィナは直接答えずに、実際にそのやることをはじめた。
「マリスさん、右手を前に出してください。」
「うん?こうですか?」
マリスはシルフィナの言葉に素直に従い、右手をシルフィナに向かって突き出した。
「そのまま動かないでください。」
そう言ってシルフィナは、マリスの右手首にある腕輪を、両手で優しく包み込んだ。
すると腕輪が一度だけ光ったのだ。
「なっ、何だ!」
突然のことに驚くマリスだったが、光はすぐに消え、シルフィナも腕輪から手を離した。
「・・・はい、これでお終いです。
マリスさん、今の状態で何か違和感はありますか?」
「何かと言われても・・・特にさっきまでと変わりはないと思うが・・・」
確かめるように軽く身体を動かしてみるマリスだったが、特に変化は感じていないようである。
しかしそれこそがシルフィナの狙いだったようだ。
「どうやら問題無いようですね。
ではマリスさん、今度は何も考えずに自然に身を任せて、半分くらいの力で龍神力を発動してみてください。」
「それは構わないが・・・これでいいのか?
しかし別にいつもと変わっているところなど・・・」
マリスは特に気合いを入れることもなく、呼吸をするかのようにいつもの感覚で力を発動してみせたが、相変わらず何の変化も感じていないようだ。
だがそんなマリスとは対照的に、周りの皆はすぐにその変化に気づいたようだ。
「おっ、おい、マリス・・・お前いったい何したんだ!」
「何だエミル、突然。」
「お前もしかして自分で気づいてねーのか?」
「気づく?何にだ?」
「あーもうっお前じゃ埒があかねーっ!
シルフィナねーちゃん、マリスのアレはいったい何なんだ!」
「もちろん龍神力ですよ。」
「そんなわけねーだろ!
さっきの模擬戦のときと全然強さが違うし、そもそも根本的な力の本質が全く別物じゃねーか!」
「よく気づきましたね、エミルさん。
ですがそれは当然です。
これまで腕輪の能力で、マリスさんの秘めていた力の出力と感覚に制限をかけていたのですが、先程それを解除しましたからね。
今の状態こそが、本来のマリスさんの龍神力、あえて区別するために別の名前で呼ぶのでしたら、辰神力、とでも呼びましょうか。」
「辰神力・・・それが私の継承者としての力か・・・」
「でもマリスはあれだけ力が変質して出力も上がったっていうのに、何もを感じてねーのはおかしくねーか?」
「ですから感覚にも制限をかけていたのです。
それによってマリスさんの感覚にズレは無いはずです。
あとは本来の力に身体の感覚がついてくるかですが、これは実際に確かめてもらいましょう。
というわけですのでマリスさん、軽く行きますよ。」
「へっ?」
完全に油断していたマリスに、返事も待たず突然シルフィナが正面から殴り掛かってきた。
それはさっきまでの模擬戦と変わらない威力と速さだったのだが、マリスは驚いてはいたものの、余裕をもってシルフィナの拳を受け止めてみせたのだ。
「うわっ!?・・・いっ、いきなり何をするんだ、シルフィナさん!」
「ですが防げましたよね?」
「これはたまたま・・・」
「次、行きますよ。」
「私の話を聞いてくれ!」
「問答無用です。」
シルフィナはマリスの言葉に耳を貸さず、連続で攻撃を繰り出した。
「ちょっ!?まっ!?くっ!?わっ!?」
それをマリスは、少し慌ててはいるものの、全て躱すか防いでみせたのだ。
別にシルフィナが手を抜いているわけではない。
さすがに本気というわけではないが、攻撃を重ねる毎にその威力と速さはどんどん増していっているというのに、マリスは何とか攻撃をしのいでいる。
そしてシルフィナの攻撃がある一定の威力と速さに到達すると、そこで固定された状態のまま攻撃が続けられた。
そこからは徐々にマリスの動きに余裕が見えはじめ、冷静にシルフィナの攻撃を捌きだしたのだ。
更に少し経つとマリスは防御だけでなく、自分からも攻撃を行う余裕まで出てきたようだ。
防戦一方だったのが、互角の攻防にまで立て直してしまったことに、見ていた皆はただただ驚くしかなかった。
すると突然シルフィナが攻撃を止めた。
「・・・もういいのか、シルフィナさん?」
「はい、問題無いことが確認できましたので。」
「じゃぁそろそろ全部教えてくれないか?」
「はい、と言いたいところですが、それはあちらの皆さんと一緒に、マコト様が説明してくださいます。」
シルフィナに言われて、その場にいる全員は、ようやくマコトたちの存在に気づいた。
「いったいいつの間に・・・」
「シルフィナがマリスに攻撃をはじめたあたりからだな。
だがこれでマリスも問題無いことが確認できた。
ここまでは予定通りだな。」
そこにはマコトと一緒に別訓練を行っていたロンフォンとサクヤ、そして別の場所で訓練を行っていたはずのミレーヌとレティシア、更にメイドの皆もいた。
だがその中に2人、それまでいなかった人物たちが紛れていた。
1人はメイド服を着ていることから、シーノたちの同僚だということがわかる。
そしてもう1人が、ロンフォンとは色違いの服を着ており、その容姿はマリスが成長したかのような美女だ。
そのためほとんどの皆が、その美女の正体に気づいていた。
だがマリスには、2人のことよりも先に聞きたいことがあった。
「いろいろと聞きたいことはあるが、まずは突然聞こえてきた謎の声についてだ。
マコトは、あの声の主が誰で、その言葉の意味を知っているのか?」
「ああ、ロンフォンの力が完成すれば、あっちから接触してくるのはわかってたからな。
まず言葉の意味は、頼みがあるから武国の王城へ早く来てくれ、という意味だ。
俺も直接の面識はないが、もうしばらくすれば武国の王城に姿を現すはずだ。
だからマリスとロンフォンには、これから武国の王城へと向かってもらう。」
「武国へ行くのは構わないが、何故フォンさんの力の完成が切っ掛けなんだ?
それに私にも声が聞こえてきたのは何故だ?」
「正確には、マリスとロンフォンの力が完成したから接触してきたんだ。
マリスの方は先に力が完成していたからな。
とりあえず訓練に支障が出ないように、マリスの力は腕輪の能力で抑えさせてもらっていた。
まぁ理由は、徐々に力になれるためだとでも思ってくれ。」
「・・・完全に納得したわけではないが、今はそういうことにしておこう。」
「そうしてもらえると助かる。」
「とりあえず状況は理解した。
ならば急いで準備をして、武国へ向かう必要があるな。」
「まぁそう慌てることはない。
事前にリーリスとフェイに伝えて、待ってもらうように頼んであるからな。
とりあえず風呂で汗を流すくらいの時間はある。」
「そんな悠長なことでいいのか?」
「大丈夫だ。
あっちも長年待ち望んだ存在と接触できる機会を、みすみす逃すなどということはしないからな。」
「その待ち望んだ存在というのが、フォンさんと私、だということか?」
「そうだ。
それに万全の状態で逢う方が、いろいろと都合がいいからな。」
「どういうことだ?
そもそも私たちを待っているのは、いったい誰なんだ?」
「それは直接逢えばわかる。」
「・・・まぁいいだろう。
マコトがそう言うのであれば、それが最善なのだろうからな。
だがそちらの2人のことは、そろそろ紹介してくれ。
皆もそう思っているはずだし、それくらいの時間はあるのだろう?」
「ああ、もちろんだ。
まずメイド服を着ている方が、メイア、だ。
まぁ皆も気づいているだろうが、今まで俺が頼んでいた仕事で別行動をとっていたんだが、そっちが片付いたのでついさっき合流したんだ。
メイア、皆に挨拶を。」
「かしこまりました、マコト様。
はじめまして、皆さん。
マコト様のメイドを務めております、メイア、と申します。
これから一緒に行動させていただきますので、どうぞよろしくお願いします。」
「よろしくお願いします!(×皆)」
メイアを紹介して皆との簡単な挨拶が済むと、今度はフウロンの紹介を行った。
「そしてもう1人、ロンフォンの隣にいるのが、フウロンだ。」
フウロンはマコトに紹介されてすぐ、自ら自己紹介を行った。
「この度、無事に元の身体に戻ることができました。
皆さん、フォンフォンともども、今後もよろしくお願いしますね。」
そう言いながらフウロンは、ロンフォンの後ろから抱きついて仲の良さをアピールしてみせた。
これに対する皆の反応は微妙なものだった。
「・・・よろしくお願いします。(×皆)」
自分の期待した反応が皆から返ってこなかったため、フウロンは途端に焦りだした。
「えっ?あれ?皆さん、どうしたんですか?
お待ちかねの初代龍王フウロンさんの復活ですよ。
それなのに、ずいぶん反応が薄いじゃないですか!」
これに対する皆の反応はというと、いつもと変わらない普段通りであった。
「いえ、何と言いますか・・・」
「いつも通りだな、と・・・」
「容姿もマリスにそっくりだということは・・・」
「以前から聞いていましたし。」
「それにブレないよね。」
「でも逆に安心。」
「あっ、それわかりますわ。」
「フウさんはフウさん。」
「ホント、変わんねーよなぁ。
だから改まってよろしくとか言われても、正直、何を今更、って感じなんだよ。
フウさんとは前から一緒に生活してたから余計にそう思うぜ。」
「皆さん・・・」
フウロンは既に自分が皆から受け入れられていると知り、泣きそうなほど感動していた。
しかし皆の反応はそれだけではなかった。
「ただマリスと似た顔でそれはちょっと・・・」
「そうね・・・」
「とても違和感があります。」
「マリスはまず、あんな風にだらしなくデレないわね。」
「これってまさにあれだよね。」
「妹ラブ。」
「それですわ!」
「でも仲が良くて、とてもいいこと。」
「だけどよぉ、なんかフォンさんの様子が変だぜ。」
エミルが言った通り、ロンフォンの表情がだんだん不機嫌になっていた。
そしてとうとう、フウロンに文句を言い出した。
「・・・フウ姉ね、もう離れてください。」
「えっ?フォンフォン?」
「そんなにベタベタくっつかれると、いい加減暑苦しくて邪魔です。」
「じゃっ、邪魔!?・・・そっ、そんなぁ・・・」
ロンフォンに拒絶されて落ち込むフウロンだったが、そこへ1人だけ目を輝かせながら近づいてくる人物がいた。
その人物はフウロンの両手を自分の両手で包むと、がっしりと握りしめてきた。
「フウさん!」
「・・・えっ?・・・まっ、マリスさん?」
突然のマリスの行動に驚くフウロンだったが、その表情を見て更に驚きが増していた。
何故ならその目には、あふれんばかりの涙がこぼれ落ちていたからだ。
「えっ!?ちょっ、マリスさん、どうしたのですか!」
状況がわからず慌てるフウロンだったが、そんなことはお構いなしに、マリスは自分の想いを力説しはじめた。
「やっと・・・やっと・・・お逢いすることができました!
憧れ尊敬する初代龍王様であり、偉大なご先祖様でもあるフウさんとこうして直接触れ合え、私は今、猛烈に感動しています!
よくぞ・・・よくぞ・・・無事に復活してくださいました!」
このマリスの反応に、それまで下がりっぱなしだったフウロンの気持ちが、一気に急上昇した。
「マリスさん・・・これです・・・私が求めていた反応はこれなんですよ!
やはり奇跡の復活には、このような感動の場面が必要なのです!
さすがは私の子孫です、マリスさん!」
「ありがとうございます、フウさん。
ですが皆を責めないでやってください。
本当の意味でフウさんを理解しているのは、同じ龍人族である私だけなのですから!」
「マリスさん!」
「フウさん!」
2人はそれ以上は言葉を口にせず、代わりに熱い抱擁を交わしていた。
そんな2人の姿を、周りの皆は冷めた目で見ていた。
「えーっとぉ・・・何あれ?」
「茶番ね。」
「さすがにそれは言い過ぎでは?」
「あー・・・あれなら気にしたら負けよ。」
「知ってるの、イーリス?」
「あれは何?」
「あれは龍人族特有の、ある意味病気よ。」
「病気、ですか?」
「治療が必要?」
「残念ながら治療は不可能です。
ただ本人たちに害はないので、周囲が少し我慢すれば、その内慣れます。」
「そういうことか。
だったらほっとこうぜ。」
「それが賢明よ。」
「ところであれっていつ終わるの?」
「そのうち終わるとは思うけど・・・でも時間がかかりすぎると問題ね。」
「ええ、この後の予定にも影響が出ます。」
「でも当分終わりそうもないよ。」
「止める?」
「あそこに割って入るのはちょっと・・・」
「無理、というより嫌。」
「俺も面倒ごとに巻き込まれるとしか思えねーからパス。」
「仕方ないわね。
こうなったら私が・・・」
イーリスは腕輪を銃に変化させて、マリスに向けて狙いを定めた。
しかしそれを止める人物たちが現れた。
「大丈夫だよ。」
「適任者がいますから。」
「そろそろ。」
「目覚めるよ!」
「はじまりました。」
それはいつの間にか人型になっていた武精族、ノン、ステラ、リスット、リーフェ、ファムだった。
その言葉通り、突然マリスの腕輪が一瞬だけ激しく光って、そのまま光の玉になったのだ。
そして鼓動が聞こえてくると光の玉にひびが入り、中から10歳くらいの少女が出てきた。
少女は青みを帯びた長い黒髪を後ろで一つにまとめており、幼いながらも凛とした面持ちである。
しかしマリスは全く気づいておらず、相変わらずフウロンと熱い抱擁を交わしたままだ。
そんなマリスの姿に、少女は心底呆れた表情で苦情を訴えてきた。
「・・・はぁ・・・いい加減にしなさい、マリス。
もっと周りの迷惑を考えなさい。」
声をかけられて、マリスは少女の存在に気づいたようだ。
「んっ?・・・うわぁっ!?・・・だっ、誰だ?」
突然のことに驚いてはいたものの、マリスには少女の素性を確認するだけの余裕はあるようだ。
だたそれはますます少女を不機嫌にさせた。
「自分のパートナーのこともわからないとは、失礼ですよ。」
この言葉で、ようやくマリスは少女の正体に気づいたようだ。
「パートナー?・・・まさか・・・」
「そうです。
今しがた私も進化したのですよ。
まずは名乗らせていただきます。
私の名は、アズール。
貴女の更なる力となるため、こうして顕現しました。」
「そうか!
これからよろしく頼むぞ、アズール!」
「ええ、よろしくお願いします。
さて、自己紹介はこれくらいにして、本題に戻りましょう。
それでマリス、貴女が今何を優先して行うべきか忘れたのですか?」
「今優先すること?」
「マコト父様の話を忘れたのですか!
お風呂で汗を流し、それから武国の王城へ向かうと言われていたはずです!」
「・・・あっ・・・」
「はぁ・・・これでは先が思いやられます。
私のパートナーなら、あまり面倒を掛けないでください。」
「うっ・・・すまない・・・」
「まぁ今回は大目に見ましょう。
時間を無駄にするわけにもいかないですから。
ですが、次はありませんよ。」
「わっ、わかった。」
「それと貴女たちも、いい加減姿を現しなさい。」
そう言ってアズールが視線を向けたのは、ロンフォンの方だった。
「えっ?此方ですか?」
突然のことに驚くロンフォンだったが、アズールが声をかけた先は違うようだ。
「いいえ、違います。
私が話しかけているのは、その娘たちです。
これ以上時間を取らせるというのであれば、強硬手段を取りますよ!」
すると突然慌てたようにロンフォンの腕輪が一瞬だけ激しく光り、先程と同じように光の玉になったのだが、これまでとは違う変化が起こった。
何故か光の玉が2つ存在しており、そしてそれぞれから鼓動が聞こえてくると光の玉にひびが入り、中から10歳くらいの少女たちが出てきたのだ。
1人は白髪の少しウェーブがかかったセミロングで、もう1人は背中まで長い黒髪を2つ結びにしていた。
しかし黒髪の少女は、すぐに白髪の少女の後ろに隠れてしまい、少しだけ顔を覗かせて様子をうかがっている。
そんな状況の中、白髪の少女が申し訳なさそうに話しはじめた。
「ゴメンゴメン、この娘が恥ずかしがっちゃってさ。
何とか説得して人化はしてくれたんだけど、すぐに慣れると思うから今はこれで許してくれないかな?」
「時間を無駄にしないのでしたら問題ありません。
ただ自分たちのパートナーへ、自己紹介くらいはしてください。」
アズールに指摘され、まずは白髪の少女がロンフォンへと向かって自己紹介を行った。
「うん、もちろんだよ。
はじめまして、フォン。
僕はパイ。
そしてこの娘が・・・」
パイに促されて、黒髪の少女は顔だけロンフォンに見えるようにしながら、おずおずと自己紹介を行った。
「・・・私・・・ヘイ・・・です・・・」
「僕たちは2人ともフォンのパートナーだよ。
これからよろしく頼むよ。」
「・・・よろしく・・・です・・・」
「パートナー?此方の?」
「うん、そうだよ。」
「それも2人ですか?」
「あー・・・やっぱりそこが気になっちゃうよね。
たぶんなんだけど、ちょっと前までフウ姉さんの魂が、僕たちと一緒に腕輪に宿っていたことが原因だと思うんだ。
通常パートナーは1対1だけど、僕たちはフォンとフウ姉さんの魂に同時に触れながら成長したから、それで2人になっちゃったんじゃないかな。
あっ、でも、さっきも言ったけど、僕たち2人ともフォンのパートナーだから、そこんところは勘違いしないでね。
あくまでフウ姉さんはきっかけだった、ってだけだから。」
「なるほど、2人が此方のパートナーだということは理解しました。
しかしパイは此方と普通に話してくれますが、どうしてヘイは後ろに隠れて警戒しているのです?」
「違う違う。
ヘイは警戒してるんじゃなくて、ただ恥ずかしがっているだけ。
さっきもちょと言ったけど、ヘイって極度の恥ずかしがり屋で人見知りなんだよ。
僕とは少し前から話してたから慣れたんだけど、初対面に対しては誰にでもこうなっちゃうから許してあげて。」
「別に怒っているわけではありません。
此方はヘイを心配しただけで、理由があるのなら問題ありません。
これからよろしくお願いしますね、パイ、ヘイ。」
「うんっ。」
「・・・はい・・・」
返事が返ってきたので、ロンフォンは自然な動作で2人の頭を優しく撫でてやった。
パイは特に警戒した様子もなく、嬉しそうに撫でられている。
ヘイは突然のことに一度身体をビクッとさせたものの、次第に緊張が解けてきたのか、表情を緩めてロンフォンに身を委ねていた。
「・・・どうやらもう大丈夫みたいだね。」
「・・・ありがとです・・・パイ・・・」
「気にしなくていいよ。
僕たちは双子の姉妹で、同じフォンのパートナーなんだからね。」
「・・・はい・・・
・・・あっ、あの・・・フォン・・・」
「どうしました、ヘイ?」
「・・・私・・・頑張る、です・・・」
「互いに助け合いながら、一緒に頑張りましょう。
此方たちはパートナーなのですから。」
「・・・はい。」
「僕たち3人で、だよね?」
「当然です。」
「・・・はいっ。」
こうして新たに進化したパートナーたちとの出逢いは無事に終わった。
その後、皆で温泉へと入って一緒に汗を流したことで、更にパートナーとの絆を深めたのだった。




