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無双するご主人様のハーレム事情  作者: 不利位打夢
第17章 商い革命
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姉妹の未来のために4

しばらくしてから顔を上げたメイアは、涙を拭って2人に笑顔で話しかけた。


「・・・1つ2人にお願いがあるのだけど、聞いてもらえるかしら?」


「もちろんです!」


「私たちにできることでしたら。」


「その・・・あの子の・・・白龍となって最後まで貴女たちを守ったあの子の墓前に、3人で一緒に手を合わせたいの。

駄目・・・かしら?」


「もちろんいいに決まってます!」


「ええ、ぜひご一緒します。

きっと兄も安心して安らかに眠ることができるはずです。」


「ありがとう、2人とも。」


2人から快い返事がもらえたメイアは、安堵の表情を浮かべていた。


しかしそれも束の間、今度は逆にロンフォンが真剣な表情で話しかけてきた。


「此方からも1つお願いがあります!」


「なっ、何かしら?」


ロンフォンが何を願ってくるのか、メイアは緊張した面持ちで耳を傾けたが、その内容は予想外のささやかな願いであった。


「これからは貴女のことを・・・お母さん・・・と呼んでもいいでしょうか?」


「えっ・・・えーっ!?」


「ちょっ、フォンフォン、何を言っているのですか!」


あまりにも突然のことに、メイアは驚きの声をあげ、フウロンは慌てていたのだが、ロンフォンには何故2人がそんな反応を返すのかよくわからなかった。


「此方は何かおかしいことを言いましたか?

メイアは此方たちの本当のお母さんなのですよ?」


「それはそうなんだけど・・・でもフォンフォン、ちょっと急過ぎないかしら?」


「何がですか?」


「だってついさっきまで憎むべき因縁の相手だったのですよ。

やはりここはもう少し時間を置いてから・・・」


「ですがそれは疑似人格に対してですよね?

であれば何も気にする必要は無いはずです。」


「でもね、フォンフォン・・・」


「それに、お母さんをお母さん、と呼んでは駄目な理由でもあるのですか?

他の皆は自分の母親に対して呼び方は違っても、全員がお母さんと呼んでいますよね?」


まくしたててくるロンフォンに対して、フウロンは返す言葉が見つからなくなり、とうとうマコトに助けを求めてきた。


「あうぅ・・・まっ、マコト様ぁ・・・」


マコトは仕方なく、助け舟を出すことにした。


「はぁ、しょうがない。

ロンフォン、少し落ちつけ。」


「まさかマコトまで、お母さんをお母さんと呼んではいけない、などとは言いませんよね!」


「駄目とは言わないが、ここにいる皆や、シルフィナ、エイリ、アイ、この3人以外がいる場所では、今はまだ母娘であることは隠していてくれ。」


「どうしてですか!」


反発するロンフォンに、マコトは理由を説明した。


「組織の目を欺くためだ。」


「意味がわかりません!

此方の納得いく答えを要求します!」


「メイアたちが今まで生きてこれたのは、呪いによって身体の成長をほぼ止められていたというのは、さっきの話からわかっているか?」


「はい。」


「だが呪いの効果はそれだけじゃない。

他にも一時的に意識を停止させたりすることもできるし、解除すれば相手にそれが伝わってしまう。」


「では皆は呪いにかかったままなのですか?」


「いや、既に皆は呪われていない。」


「ですがそれでは、相手に呪いが解除されたことが伝わってしまうのですよね?」


「解除したのならな。

皆の呪いは解除したのではなく、皆の情報をコピーした人形に移したんだ。

それもあって組織はまだ皆が解放されたことに気づいていない。

しかし情報はどこから漏れるかわからない。

そのためには少しでも隠せることは隠す必要がある。

今はまだ組織に目を付けられるわけにはいかないからな。」


「つまり此方が皆の前でメイアをお母さんと呼ぶことで、皆に迷惑が掛かってしまうかもしれない、ということですね?」


「あくまで可能性の話ではあるが、それだけ慎重に事を運ぶ必要があるということだ。」


ここまでの説明で、ロンフォンはマコトの話に納得して受け入れてくれたようだ。


「皆に迷惑をかけることは、此方としても不本意です。

・・・わかりました、マコトの言う通り、今は我慢します。」


「すまないな、ロンフォン。

だがなるべく近い内に、皆にも話すことができるようにするから、しばらくの間我慢してくれ。」


マコトが申し訳なさそうに、ロンフォンの頭を優しく撫でてやると、少しだけ機嫌が直ったようだ。


「はふぅ・・・仕方ありませんから、今はこれで我慢します。」


ロンフォンが気持ちよさそうに撫でられていると、それを羨ましそうに見ていたフウロンも我慢できなくなったようだ。


「あっ、あの、マコト様!

わっ、私も・・・撫でてもらいたいです!・・・駄目、でしょうか?」


「別にいいぞ。」


すぐにマコトは、既に近づいてきていたフウロンの頭を優しく撫でてやった。


「はうっ!?・・・これが皆さんが言っていた至福の時なのですね・・・はぁ、最高に幸せです・・・」


そのまましばらくの間2人の頭を撫で続けていたマコトだったが、さすがに切りがないので、一応終了を宣言してから撫でるのを止めた。


「・・・とりあえず今回はここまでだ。

まだ他にもやることが残っているからな。」


少し残念そうな表情の2人だったが、我慢しておとなしくマコトの言うことを聞いてくれた。


「むぅ、仕方ありません。

今回はこれで我慢しておきます。」


「私も今回は十分堪能しましたので問題ありません。

ただ、またお願いしてもよろしいでしょうか?」


「まぁ時間があるときなら。」


「はいっ、それで構いません!」


「フウ姉ねだけずるいです!

マコト、此方もまたしてほしいです!」


「ああ、わかっている。」


「ならいいのです。」


次回の約束を取り付けて2人が満足そうにしていると、マコトは逸れてしまった話を元の流れに戻した。


「それでは次の話に進む前に、他に2人からメイアに聞きたいことはないか?」


「此方は大丈夫です。」


「では私からいくつかよろしいでしょうか?」


フウロンが質問を求めてきたので、メイアがすぐに了承した。


「はい、私が答えられることでしたら。」


「私が聞きたいのは疑似人格についていです。

どうして組織は貴女にだけ疑似人格を植え付けたのでしょうか?」


「その認識は間違っています。

ここにいるレティシアさんとミレーヌ以外のメイドの皆は全員、疑似人格の種を植え付けられていました。

その中で完全に発芽してしまったのは、私だけだった、というだけです。」


「種ですか・・・つまり、疑似人格が目覚めるためには条件がある、ということですね?」


「そうです。

私の場合は恐怖心や罪悪感などの負の感情が栄養分となって、疑似人格が目覚めてしまいました。

他の皆はそれらの感情よりも、自制心が強くて自我を保つことができたため、疑似人格が目覚めることはありませんでした。

例外として、フィーアは後付けで改良版の疑似人格が植え付けられていました。

しかし私の場合のように身体や精神を乗っ取ることはできず、あくまで監視が目的だったようです。

ただ危なかったのはシーノです。

もう少しで私と同じようになりそうだったと、マコト様から聞いています。」


するとこの話を聞いたサクヤが、真っ先に反応した。


「それはどういうことですか!」


「サクヤさん・・・もしかして何も聞いていないのですか?」


「メイアさん、何か知っているなら教えてください!」


「・・・」


「メイアさん!」


「・・・実は・・・」


観念して説明しようとすると、そこへシーノが制止してきた。


「メイア!」


「シーノ・・・」


「話す必要は無いわ。」


「でも・・・」


「これは私とサクヤの問題よ!

他人が勝手に首を突っ込まないで!」


するとこのシーノの言葉に、メイドたちが動いた。


一瞬でシーノを取り囲んだのだ。


「それは聞き捨てならないな。」


「シーちゃん、本気でそう思っているなら怒るよ。」


「トウカさん、サーシャ・・・」


「私も今の言葉には納得いきませんね。」


「そんな寂しいことは言わないでほしいわ。」


「ケイ、フィーア・・・」


「私たちはそんなに安っぽい関係だったのか?」


「思ってもいないことを、嘘でも言わないでほしいのよ。」


「ノルン、ミィ・・・」


「シーノ、いつまでもウジウジしてんじゃねーよ!

いい加減腹くくれ!」


「イシス・・・でも、私は・・・」


ハッキリしないシーノの態度に、メイドたちはそれまで我慢していたものを解放した。


「シーノ、私たちは今までお前の意見を尊重して、この話に関してだけは静観してきた。

だが先程のメイアたちのことで、考えを改めることにした。」


「そもそもサクヤちゃんが何も知らないままなのは駄目だよね。」


「ええ、公平ではありません。」


「逃げているだけだわ。」


「卑怯だな。」


「らしくないのよ。」


「ってわけだから、こっちは気にしねーで話しちまえ、メイア!」


強力な援軍を得て、メイアは昔と変わらない雰囲気に楽しくなってくると、自然な笑顔で返事を返していた。


「うふふっ、了解。」


「ちょっ、待ちなさい、メイ、むぐぅっ!?」


慌ててメイアを止めようとしたシーノだったが、取り囲んでいた7人によって全身を拘束されながら口も塞がれていしまったため、それは叶わなかった。


すぐにマコトへと助けを求める視線を送ったが、マコトはあえてシーノの方を見ていなかった。


どうやらこの件に関しては、静観することにしたようだ。


マコトの助けが得られないとなると、自分と同等の力を持つ者たち数人がかりに抑え込まれてしまっては、さすがのシーノもお手上げだった。


そのため早々に無駄な抵抗を止め、おとなしく拘束されていた。


そんなシーノの様子を確認してから、メイアはサクヤとの話を再開した。


「では障害が無くなったところで、話の続きをしましょう。」


「はい、お願いします。」


「まず疑似人格が身体や精神を乗っ取るためには、いくつかの方法があって、それぞれ条件があるわ。

1つ目は、相手の身体や精神が無防備な状態だった場合。

これは転生装置で転生する際などが当てはまるわね。

2つ目は、宿っていた相手が死を迎えた場合。

これは最上級の魔物などが当てはまるわね。

3つ目は、疑似人格が制御しやすい感情を増幅させて、相手の精神に負荷をかけながら、徐々に乗っ取っていく場合。

これが私やシーノに当てはまるわ。」


「1つ目と2つ目は、突然疑似人格に切り替わるけど、3つ目はいくつかの段階を経て徐々に切り替わっていくのよ。

第1段階では、夢の中にもう1人の自分が現れる。

第2段階では、少しずつ精神を汚染され、思考誘導を受けるようになる。

第3段階では、感情を必要以上に揺さぶられ、感情的になって思ってもいないことを言ってしまうようになる。

第4段階では、眠っているときに身体の支配権を奪われてしまうようになる。

第5段階では、起きているときに短時間だけど身体の自由が利かなくなり、自分の意思に反して身体が動いてしまう場合がある。

そして最終段階では、完全に身体と精神を乗っ取られ、意識だけが覚醒した状態になるわ。」


「既に知っての通り、私の場合は最終段階だったの。

そしてシーノは、第3段階まで疑似人格に汚染されていたわ。

でも恐怖や罪悪感などの負の感情よりも、怒りや使命感などの方が強かったおかげで、疑似人格からの汚染を無意識に防いでいたのよ。」


「じゃぁシーノさんがいつも不機嫌そうにイライラしていたり、私に冷たく当たっていたのは、疑似人格によって必要以上に感情を揺さぶられていた所為なのでしょうか?」


「そこは本人にしかわからないけど、私の経験から言うと、たぶんそうだと思うわ。

ただ貴女に冷たく当たったのは、シーノ本人の意思だったのではないかしら。

きっと貴女に恨まれることが、自分に対する罰だとでも思っていたのよ。」


「そう、なのでしょうか?」


「ええ、きっと。

シーノは昔からとても責任感が強かったわ。

だから許せなかったのでしょうね、自分が最初に捕まってしまったことが。

あのときは誰にもどうすることができなかったとわかっていても。

そんなことがあったから、わざと自分の身を犠牲にして、率先して組織に逆らってみせたんだもの。

その結果がどうなるか、私たちに見せるためにね。」


「そんなシーノが、自分の娘である貴女に対して、その責任を放棄するとは絶対に考えられないわ。

ただシーノってとても頑固なのよね。

一度こうだと決めたら、最後まで貫き通すのよ。

それがいい所でもあるのだけど、こういうときにはとても厄介だわ。」


「・・・何となくわかります。

私が小さい頃、シーノさんが別人に成りすまして世話をしてくれていたとき、よく言っていました。

一度決めたことは、絶対に最後までやり抜くこと、と。

あの教えがあったからこそ、私は今まで耐えることができたのですから。」


懐かしむように表情を緩めたサクヤを見て、メイアはある疑問を口にした。


「・・・シーノから聞いていた話とは、ずいぶん違っているのね。」


「どういうことでしょうか?」


「シーノは、これまで貴女にひどいことをし続けてきたから、すごく嫌われている、と言っていたわ。

でも今の貴女を見ていると、逆にシーノのことをすごく尊敬していて、とても嫌っているようには見えないわ。

それはどうしてなのかしら?」


メイアに問われ、サクヤはシーノの方を見ながら本音を語った。


「・・・メイアさんの言う通り、私はシーノさんのことがずっと嫌いでした。

むしろ憎んでいたと言ってもいいでしょう。

ですがそれは、私が表面上しか見ていなかったからです。

解放されてからこれまで一緒に生活してきたことで、いかに私の目が曇っていたかを思い知らされました。

他にも本来のシーノさんは全然違っていたことを、これまでいろいろな人たちから教えられました。

そして私は気づいたのです。

シーノさんの本当の姿は、小さい頃に私を傍で見守ってくれていたときの方なんだ、と。」


「そう・・・ならこれ以上、シーノの状況について私から説明する必要は無いわね。

既にサクヤさんは、シーノと正面から向き合う覚悟を持っているのだから。

あとはシーノが素直に応じるかだけど・・・それが一番難しいのよね。」


「そうなんです・・・そもそも普段は話しかけようとすると逃げられてしまうんです。

唯一まともに話してくれるのは、訓練中と料理中の質問に対してくらいで・・・どうすれば私と本音で向き合ってくれるのでしょうか?」


どうしたものかと悩み相談してきたサクヤに、メイアはある決心をした。


「それは本当に面倒ね・・・うん、決めたわ。

サクヤさん、ぜひ私に協力させてくれないかしら?」


「協力、ですか?」


「そうよ。

シーノがサクヤさんから逃げるというのであれば、逃げられない状況を作ってしまえばいいのよ。

それこそ力づくでね。」


「ですが私と目覚めたばかりのメイアさんだけでは、正直なところ今のシーノさんの足元にも及びません。

いつも通り逃げられてしまいます。」


「確かに私たちだけならそうでしょうね。

でも今のシーノの状況を見て。

あれなら問題無いのではなかしら?」


「なるほど、確かに。」


「ねぇ、皆も協力してくれるでしょ?」


メイアの問いかけに、皆は次々と答えた。


「当然協力する。」


「いいよーっ。」


「付き合いましょう。」


「私も協力するわ。」


「協力するからには、徹底的にやるぞ。」


「当然なのよ。」


「わかりきったことをいちいち聞いてくんじゃねーよ。」


メイドたち7人が迷い無く協力することを了承したので、メイアは最後にマコトへと確認を行った。


「マコト様、私たちは全員、シーノとサクヤさんの関係改善に協力いたしますが、問題はありませんか?」


「・・・ああ、問題無い。

皆の好きにすればいい。」


「ありがとうございます。」


「ただ俺は既に1度、サクヤに協力してシーノとの関係改善に協力している。

そのときシーノとの約束で、これ以上は直接そのことで2人に干渉しないことになっている。

その範囲を超えない限りは、俺が2人の関係改善に関することで止めに入ることはない。」


「なるほど・・・つまり、直接でなければ問題無い、ということですね。

仮にシーノとサクヤさん以外の私たちの誰かがマコト様の協力で何かを得た場合、それを私たちがどのように扱おうと何も問題は無い、ということでよろしいでしょうか?」


「問題無いな。

その時点では俺の手を離れているわけだから、後のことは俺のあずかり知らぬところだ。」


「それだけ確認できれば大丈夫でございます。」


「だが限度はわきまえてくれ。

あきらかにやり過ぎだと思ったら、俺は止めに入るからな。」


「はい、肝に銘じておきます。

ということですからサクヤさん、私たちにお手伝いできることがあれば、何でも遠慮なく言ってくださいね。」


「ありがとうございます、メイアさん、それに皆さんも。」


「サクヤ、私も協力しますよ。」


「ありがとう、フウ。」


最後にメイアは、当事者にも確認を行った。


「シーノ、当然文句は無いわよね?」


話がまとまったからか、ようやくメイドの皆の拘束から解放されたシーノに向かってメイアがそう言うと、素っ気なくだが答えが返ってきた。


「・・・好きにしなさい・・・」


それだけ言ってそっぽを向いてしまったシーノだったが、拒絶されなかったことにサクヤは一歩前進できたことを素直に喜んでいた。


そんな2人の姿にホッと一安心してから、メイアは改めてマコトに感謝を伝えた。


「・・・マコト様、重ねて感謝いたします。

この様な機会を設けていただき、本当にありがとうございました。

私のことだけでなく、シーノたちも今回の事できっと何か変化があるはずです。」


「俺はただ場を用意しただけで、これは全て皆の強い想いが導いた結果だ。」


「はい。」


メイアはこれ以上感謝を伝えても同じことの繰り返しになってしまうと思い、表面上はマコトの言葉に納得した。


そんなメイアの想いに気づき、マコトもそれ以上は何も言わず、この話を一旦終わらせることにした。


「さて、そろそろメイアとの話は1度終わりにしてもいいか?」


「私は大丈夫です。」


「私も大丈夫です。」


フウロンとサクヤが了承したので、マコトは次の話へと移った。


「それじゃぁ次だが、ロンフォン、まずは竜神力を発動してみてくれ。

そうだなぁ・・・まずは半分くらいの力でだ。」


「それは構いませんが、何をはじめるつもりですか?」


「すぐにわかる。」


ロンフォンは疑問を感じながらも、素直にマコトの言う通りにした。


「・・・わかりました・・・はっ!

・・・これでいいのですか?」


「ああ、どうやら上手くいったみたいだな。」


力を発動したロンフォンの姿に、マコトは自分の思惑通りになったことを喜んでいた。


「どういうことですか?」


しかしロンフォンは、マコトの言葉の意味がよくわかっていないようだ。


だが近くにいたフウロンは違うようだ。


何故かロンフォンのことを驚いた顔で見ている。


「ふぉっ、フォンフォン・・・そっ、それは本当に、半分くらいの力なのですか?」


「どうしたのですか、フウ姉ね?

これくらいはいつもの訓練よりも弱い力ではないですか。

何をそんなに驚いているのですか?」


「気づいていないのですか、フォンフォン?」


「何がです?」


どうやらロンフォンは本当に気づいていないようで、フウロンは自分が何に驚いているのかを伝えた。


「今フォンフォンが発動している力からは、いつもより圧倒的な強い力を感じます。

フォンフォン、いったい何をしたのですか!」


「そうなのですか?

此方はいつもと同じように力を発動しているだけです。

何か変わったようには感じないのですが・・・」


これ以上変化に実感がないロンフォンでは埒があかないと思ったフウロンは、原因を知っているマコトへと理由を尋ねた。


「マコト様、これはいったいどういうことなのでしょうか?」


するとマコトは隠すことなく、その理由を説明してくれた。


「それは、ロンフォンが抱えていた、迷いや不安などが解消されたからだ。

龍力や竜力という力は、とても感情に左右されやすい力なんだ。

特に情動が起こっている状態で発動すると、本来の力を全く発揮できない、とても扱いが難しい力だ。

しかし心穏やかに自然体で発動すると、本来の力を発揮することができる。

今のロンフォンが、まさにその状態というわけだ。」


このマコトの言葉で、フウロンはある考えに至った。


「それはつまりフォンフォンが、以前お聞きした、無私無欲の境地に至った、ということでしょうか?」


「そうだ。

今の状態こそが、ロンフォンにとっての無私無欲の境地、というわけだ。

これで一先ずロンフォンの竜神力は完成した。

それを証明するために、こいつの出番というわけだ。」


そう言ってマコトがゲートから取り出したのは、ある人形だった。


その人形を見て、フウロンはそれが何なのかすぐに思い出した。


「それは確か・・・兄の、白龍の亡骸を奪おうとしていた、龍神の孫の魂が宿った人形ですね?

これまでフォンフォンが訓練中に何度か跡形も無く消滅させようと試みましたが、一部を破壊するので精一杯だったものです。」


「そうだ。

だが今のロンフォンなら問題無く消滅させられるはずだ。」


「確かに・・・その前にマコト様、私も試してみても構いませんか?」


「ああ、構わないぞ。

ほらっ。」


マコトは人形を放り投げると、そこへフウロンが気合と共に渾身の一撃を叩き込んだ。


「はっ!」


『ボゴォッ!』


すると人形は激しい音と共に地面に叩きつけられ、一瞬だけ胴体を除いて消滅したが、すぐに再生して元の形に戻ってしまった。


フウロンは人形を拾いながら、冷静に自分の実力を分析していた。


「・・・これが今の私の力ということですね。

次、フォンフォン、いきますよ?」


「いつでもいいです、フウ姉ね。」


「では。」


フウロンが人形を放り投げると、ロンフォンは自然な動作で軽い気合と共に人形を殴った。


「はっ!」


するとそれだけで、人形は衝撃も音も一切無く、塵一つ残さず消滅していったのだ。


だがあまりにも手ごたえがなかったからか、ロンフォンは実感が湧かないようだ。


「・・・もしかしてこれで終わりですか?

以前はどれだけやっても消滅させられなかったのですが、ずいぶんあっけなかったように思います。

これが本来の竜神力の力ということなのでしょうか・・・」


物足りなさを感じているロンフォンだったが、少しずつ自分の力がこれまでとは違う次元へ変貌を遂げたことを理解しはじめているようだ。


「それが完成した竜神力の力だ。

ところでロンフォン、そろそろ何か聞こえてこないか?」


「何か、ですか?

特に何も聞こえては・・・」


マコトの言葉の意味がわからず、ロンフォンが首を傾げていると、突然見知らぬ声が頭の中に響いた。


『・・・願い・・・竜と龍?・・・武国・・・城・・・至急・・・』


片言でいくつか単語が聞こえてきたのだが、あまりにも突然のことだったため、ロンフォンはそれどころではなかった。


「なっ、何ですか、今の声は!」


「ある人物からの、まぁ招待状といったところだな。

意味はわかるか?」


ロンフォンは腕組みして少しだけ考えたものの、自信満々にすぐ諦めた。


「・・・全くわかりません!」


しかしマコトには最初から答えがわかっていたのか、言葉の意味を教えてくれた。


「要約すると、頼みがあるから武国の王城へ早く来てくれ、といったところだな。」


「此方に、ですか?」


「正確にはロンフォンともう1人にだな。

あっちも混乱しているだろうから、一度皆のところに戻るぞ。」


それだけ言ってマコトはゲートを開くと、すぐに中へと入って行ってしまった。


「待ってください、マコト!」


ロンフォンも慌ててゲートへ入り、他の皆もすぐに後を追った。


そして最後のトウカが中へ入ると、ゲートが閉じてその場からは誰もいなくなったのだった。

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