出産準備2
ミザリィとナタリィがミーナのお腹を撫でていると、ふと何かを思い出したミーナが、2人に質問してきた。
「そういえば2人とも、前に上げたアレ、ちゃんと着ている?」
「アレって、この服?」
「もちろん着ている。」
そう言ってミザリィとナタリィは、今着ている服を少しはだけて、その下に着ている服をミーナに見せた。
それを見て、ミーナは満足そうにしている。
「うんうん、ちゃん着ているわね。
どう、すっごく便利でしょ?」
「うんっ、あまり洗濯しなくていいから、すごく楽だよ!
もう絶対に手放せないね。」
「必需品。」
「そうでしょそうでしょ。」
「でもこれって何でできているの?」
「不思議。」
「まぁその内わかるわよ。
そんなことよりも、訓練の方はどうなの?
マコトの条件はクリアできそうなの?」
急に話を変えたミーナだったが、ミザリィもナタリィも不自然には思わず、むしろ興味が移っていた。
「もちろんだよ!」
「もう少しで3つ目がクリアできそう。」
「じゃぁ訓練は順調なのね。」
「そっちはね。
でも・・・」
「どうしたの、何か問題があるの?」
「夢幻の森がどこにあるかわからないのが問題。」
「そうなんだよね。
マコト様が言うには、そろそろわかるはずだって話しなんだけど、」
その話を聞いて、ミーナは一瞬だけ悲しそうな顔をしたが、すぐに元に戻って気楽な答えを返した。
「そう・・・でもマコトが大丈夫だって言ってるんでしょ?」
「うん。」
「だったらすぐに見つかるはずよ。
だから今は訓練に集中してれば、すぐにそのときが来るはずよ。」
「それもそうだね。
ありがとう、母様。」
「今は訓練に集中する。」
「ええ、それがいいわ。」
話が終わると、ミザリィとナタリィの興味は再びミーナのお腹へと移っていた。
そこへ周りで見ていた皆も我慢できなくなり、ミーナとネーナに近づいてきて、今後のために2人といろいろな話をしていた。
それから数時間が過ぎ、もう少しで昼食になろうかという時間になったところで、連合の政務を片付けていた4人の作業が全て完了した。
サラは数枚の書類だけを持って、ネーナの許へとやってきた。
「ネーナ母様、最後にこちらの書類だけ確認をお願いします。」
「わかったわ。
・・・うん、全部問題無いわね。
助かったわ、サラ、ありがとう。」
「いいえ、これくらい何でもありません。」
「じゃぁ今度からたまに手伝いをお願いしようかしら?」
「今後は育児もあると思いますので、遠慮なく言ってください。
私が手伝えなくても、マコト様にお願いして他の方を派遣することもできますから。」
「ええ、そうさせてもらうわね。
それにしてもずいぶん速かったわね。
やっぱり優秀な人材が揃うと、仕事が速くて助かるわ。
これで3日くらいは楽できそうよ。」
「それは違いますよ、ネーナ母様。
10日くらいは楽できるはずです。」
自分が最初に用意した仕事量の3倍以上が片付いたと言われ、さすがにネーナも半信半疑のようだ。
「えっ?だってそこにあったのは3日分だったはずよ?
それだけでも大変なのに、いくら何でもこの短時間で、10日分もの仕事を処理するのは無理よ!」
しかしサラは、ネーナが無理だと言ったことを、平然と肯定した。
「4人で協力しましたので、たいしたことではありません。
今回は時間が余ってしまいましたから、更に追加で7日分を処理しておきました。
これなら追加が発生したとしても、しばらくは他の方だけで対応できるはずです。」
そこまで聞いて、ネーナはサラの言葉が真実であることを知り、その能力の高さに感心しつつも呆れていた。
「いったいいつの間に・・・本当にサラは優秀な人材だわ。」
「私だけの力ではありません。
ケイさん、キラさん、ラミさんの協力があったからそこです。」
「そうね、訂正するわ。
ハーレムメンバーは、本当に優秀な人材の宝庫だわ。
・・・定期的に外部委託しようかしら。」
「私としては仕事の手伝いよりも、教育に力を注ぐべきだと思いますよ。
今はネーナ母様やミーナさんだけでほとんどの仕事を回していますから、これでは下が全く育ちません。
幹部候補を集めて、実戦的な教育を行うべきだと提案します。
必要なら教育プランをまとめましょうか?」
「でもサラも忙しいでしょ?
そこまで甘えるわけにはいかないわ。」
「大丈夫です。
そこは専門家に任せますから。」
「専門家?」
「忘れたのですか、ハーレムメンバーの中には、各国のトップや上層部、他にも元々国を運営していた方たちが大勢いることを。
それらの方たちから意見を出し合ってもらい、精査してまとめた教育マニュアルを作成すればいいのですよ。
そうすればいろいろな国で使えますから一石二鳥です。
ハーレムメンバーにはそれをできるだけの人材が揃っていますし、時間を持て余している方にとっては、たまに仕事をするのはいい刺激になりますからね。」
サラに言われて、ネーナは自分が知るハーレムメンバーたちの素性を思い出してみた。
「・・・確かに・・・すごいものができそうね。
マコト、サラはこう言ってるけど、お願いできる?」
それまで黙って話を聞いていたマコトであったが、ネーナに話を振られても慌てることなく、すぐに答えた。
「ああ、大丈夫だ。
たぶん皆張り切って、その教育マニュアルの作成を手伝ってくれると思うぞ。
ただやり過ぎないようにだけ注意しないとな。
そうしないと、とんでもないものが出来上がってきそうだ。」
マコトにそう言われてネーナが最初に考えたのは、制限がないと悪乗りしてやり過ぎてしまうことだった。
下手をすれば、最悪の場合は国そのものが無くなる可能性も秘めている。
そう考え、ネーナは対策を講じる必要性があることを認識した。
「・・・それはさすがにまずいわね。
マコト、誰か常識の範囲内で監修してくれる人はいないかしら?」
「そうだなぁ・・・」
マコトが誰にしようか考えていると、サラが候補者を推薦してきた。
「マコト様、参考までに私から推薦してもよろしいでしょうか?」
「ああ、かまわないぞ。」
「ありがとうございます。
では、ミランダさん、フェイさん、ルナーさん、こちらの3人の方たちにお願いしてはいかがでしょうか?」
「なるほど・・・一応その人選の根拠を聞いてもいいか?」
「はい。
まず全員が国の政務に深く関わっているため、何が必要かを熟知しています。
それに貴族などの上流階級の出身ではないので、身分に対する偏見がありません。
そのため相手の実力を正確に判断し、評価することができます。
しかも全員上司と部下に挟まれて苦労しているため、そこを緩和する方法についても期待できます。
そして最大の理由は、全員が一般的な常識人だということです。
つまり大それたことができない、というわけです。
最後に国が違うため、様々な意見が期待できます。
以上が3人を推薦した理由です、いかがでしょうか?」
聞く者によってはとんでもないことを口にしたサラであったが、この場にそのことを言及する者はいなかった。
「・・・確かに、いい人選だ。
わかった、その方向で話を進めよう。
後のことは俺の方で話を進めておくが、構わないか?」
「はい、よろしくお願いします、マコト様。
ただ、出来あがった教育マニュアルを確認する際には、私も参加させていただければと思います。」
「そうだな。
いろいろな視点からの指摘があった方がいいだろうから、それはサラにも頼むとしよう。」
「ありがとうございます。」
マコトが自分の意見を聞き入れてくれたので、サラは安心して後のことを任せたのだった。