思わぬ再会と協力
マコトたちがおっちゃんとおばちゃんを連れて病院にいた頃、フィマとエマにせがまれて一緒に遊んでいたカーラとニナは、早々にダウンしていた。
2人の元気の良さを甘く見ていたようで、終始振り回されてしまい、今は疲れて小休止しているようだ。
するとある人物が、そんな2人のことを見つけて近づいてきた。
「おや、ニナじゃないか。」
「あれ、ホーネットさん?」
「何でアンタがここにいるんだい?」
「実はこの度マコトさんのハーレムに入ることになったんです。」
「そうだったのかい、そいつはおめでとう。
改めてこれからもよろしく頼むよ。」
「ありがとうございます。
こちらこそよろしくお願いします。」
「わからないことがあれば、アタシの方が先輩だから、何でも聞いておくれ。」
「はい、そうさせてもらいます。
ところでホーネットさん、早速ですけど、何で今ここにいるんですか?」
このニナのぼかした質問の意図に気づかず、ホーネットは平然と答えた。
「何でって、子供たちの顔を見に来たんだよ。
アタシもマコトのハーレムの一員なんだ、別に来ても問題無いだろ?」
ホーネットに伝わらなかったので、ニナは今度はぼかさずに、聞きたいことをそのまま伝えた。
「それはそうですけど・・・でも確か今の時間って、まだ執務中じゃないんですか?
そもそもセレスさんやルナーさんは、ホーネットさんがここに来ていることを知ってるんですか?」
的確なニナの指摘に、ホーネットは苦しい言い訳で答えた。
「それは・・・じっ、自主休憩中、ってことで。」
苦しい言い訳をするホーネットの姿に、ニナは全てを察した。
「もしかして、また2人に黙って来ちゃったんですか?」
「だっ、大丈夫だよ。」
「後で怒られても知りませんよ。」
「しょっ、しょうがないじゃないか。
とっくに魔王を引退したアタシを、2人してこき使うんだよ!
こうして可愛い子供たちの顔でも見て癒されないと、あんなに大量の仕事なんてやってられないよ!」
開き直ってため込んでいたものを吐き出すホーネットの姿に、ニナは同情しつつも少し呆れていた。
それも当然である。
こうやってホーネットが仕事を抜け出す姿を、ニナは少なくとも2、3日に1回は見ているからだ。
そのときは決まって店にやってくるのだが、今日は店が休みだったため、ここへとやってきたのだろう。
もしかしたらここも逃げ場の1つで、他にも何か所かあるのかもしれない。
つまり自分が知っている以上に、ホーネットのサボっている回数や時間は多いのかもしれない。
その考えに至ったため、呆れてしまったのだ。
しかしそれをハッキリ伝えることはせず、ニナは乾いた笑いで誤魔化した。
「あははははは・・・相変わらず忙しそうですね。」
「忙しいなんてもんじゃないよ!
アタシが1つ仕事を片付けたら、間髪入れずにセレスとルナーは次の新しい仕事をポンポン寄こしてくるんだからね!
これじゃぁいくら仕事をしても、一向に減らないよ!」
「だけどそのおかげで帝国はどんどん発展してるんですから、私たち帝国民にとっては、すごくありがたいことですよ。」
「それを言われると弱いんだよねぇ・・・はぁ、とりあえず気力を充電したら、また仕事に戻ろうかねぇ。」
「そうしてください。」
ホーネットはニナとの話を終えると、今度はその隣にいるカーラへと声をかけた。
「ところでそっちのアンタ・・・もしかしてだけど、カーラ、かい?」
「はい、ご無沙汰しています、ホーネットさん。」
どうやら2人は昔からの知り合いのようで、久しぶりとあってホーネットは嬉しそうに話しはじめた。
「やっぱりそうかい!
最後に逢ったのはアタシが魔王を引退するちょっと前だったから、3年くらい前だったかね。」
「はい、それくらいです。」
「もうそんなに経っちまったんだねぇ。
それにしてもカーラ、アンタ亡くなった母親に似て、ずいぶんと美人に成長したじゃないか。」
「ありがとうございます。
ホーネットさんも昔とお変わりなく、といいますか、以前よりもお若くなっていませんか?」
「当然だよ。
今は最高の男に愛してもらってるからね。」
「なるほど、納得です。
ちなみにニナと同じく私もマコトのハーレムに入りましたので、今後ともよろしくお願いいたします。」
「そうなのかい?
いったいいつマコトと知り合いに・・・そういえばアンタの母親はマコトの故郷に出入りしてたんだったね。」
「はい、私も母の後継者として、8年ほど前から出入りしておりました。」
「つまり、その頃からマコトのことは知っていた、ってわけだね。」
「そうです。
そして2年ほど前、最後に逢ったときにマコトから口説かれ、今回それを受け入れました。」
「2年も待たせたってことは、何か条件でも付けてたのかい?」
「はい。
一応マコトは私の弟子、という立場でしたから、その辺りのことで少し。
それと私の血統が代々受け継いできた使命のことで、マコトに託せるか見極める必要がありましたので。」
「最初のはアンタの立場を知っているから何となくわかるけど、次の使命ってのはいったいどういうことなんだい?」
「それはマコトたちが来れば、すぐにわかりますよ。」
別に隠すつもりは無いようなので、ホーネットは追及するようなことはせず、その場はおとなしく引き下がった。
「ふーん・・・まぁそれなら今すぐ聞かなくてもいいかね。
ところでそのマコトはどこに行ったんだい?
それにシルフィナとエイリもいないみたいだけど?」
これにはカーラではなくニナが答えた。
「マコトさんたちでしたら、お義父さんとお義母さんを連れて、どこかに行っちゃいましたよ。
何か話があるって言ってました。」
「ふーん・・・って、そういや無事に養女になったんだったね。
そっちもおめでとさん、ニナ。」
「ありがとうございます。
ホーネットさんがいろいろ融通してくれたおかげです。」
「いいっていいって。
アタシとしてもニナがあの店を継いでくれた方がいろいろと助かるし。
何てったってアタシたちの事情を知ってるし、それに店の味を受け継いで更に進化させることができるのは、ニナしかいないと思ってるからね。
じゃなきゃ、店に食べに行きづらくなっちまうよ。」
「あはは、そうですね。
これからもご来店お待ちしてます。」
「もちろんだよ。
それにしてもこれも何かの縁なのかねぇ。」
そう言って急にホーネットが感慨深い顔になったので、気になったニナが理由を尋ねた。
「どういうことですか、ホーネットさん?」
「いやね、実はアタシに店のことを教えてくれたのが、カーラの母親だったんだよ。
美味くて居心地がいい店があるから、ってね。」
「そうだったんですね。
もしかしてお義母さんのために宣伝してくれたのかな?」
「うん?それはどういうことだい?」
「あれ?もしかして知らなかったんですか?」
「何がだい?」
「お義母さんは、カーラ姉ちゃんのお母さんの妹ですよ。」
思いもよらなかった事実に、ホーネットはカーラにも確認を取った。
「へっ?・・・本当なのかい、カーラ?」
「はい、本当です。」
カーラも認めたので、ホーネットは改めて2人のことを思い出して比べてみた。
「おばちゃんがカーラの母親の妹だったとはねぇ・・・言われてみれば、確かに雰囲気が似ているよ。
それにしても黙ってるなんて、水臭いじゃないか。
そうならそうと最初から言ってくれればいいのに。」
「それは仕方がありません。
母としては、自分の血縁者が私以外にいることを、公にはしたくなかったのですから。
その辺りのことは、ホーネットさんならご存じかと思いますが?」
「まぁ余計な波風を立てないようにってことなんだろうけど。
でもアタシがそう簡単に口を滑らすと思ってたのかねぇ。」
「それはご想像にお任せしますが、ホーネットさんの立場を考えれば、どこから情報が洩れるかわかりませんから。
慎重に慎重を重ねた結果だとご理解ください。」
「まぁいろんな有象無象を含めて、今も昔もアタシに言い寄ってくる連中は多いからね。
文句の一つも言いたいところだけど、既に逝っちまった奴には無理だから、娘のアンタに愚痴をこぼすことで許してやるかね。」
「母もそれくらいでしたら何も言わないはずです。」
「じゃぁこれからもそうさせてもらうよ。」
「はい、そうしてください。」
話が一区切りつくと、それまでの雰囲気が一変し、突然真剣な表情でホーネットが話を変えてきた。
「・・・ところでカーラ、あのことは皆に話したのかい?」
これに対してカーラは、これまでと全く変わらない雰囲気で答えた。
「いいえ、それはまだ。
この場にいる方で知っているのは、マコト、シルフィナ、それとホーネットさんだけです。
ですがマコトたちが戻ってきたら、皆さんに説明するつもりです。」
このカーラの答えを聞いて、ホーネットから緊張した雰囲気が消えた。
「そうかい。
それならアタシがでしゃばる必要はないみたいだね。」
「お気遣いありがとうございます。」
「いいんだよ。
アンタの母親には、昔世話になったからね。
だけど全部返す前に逝っちまった。
だから残りは娘のアンタに返させてもらうよ。
何かあれば遠慮なく言うんだよ。」
「はい、私個人でどうにもならない時は、お力をお借りします。
実は今回私がマコトの許へと来たのは、そのどうにもならない事態が発生しそうだからなのです。
そしてそれはホーネットさんも無関係とは言えません。」
今度はカーラが気になることを言い出したので、当然ホーネットが興味を持った。
「そのどうにもならない事態ってのは、アタシが聞いてもいい内容なのかい?」
「はい、むしろ一緒に聞いてください。
そしてできれば各国へと伝達し、事態に対応できるように準備しておいてほしいのです。」
「余程深刻な事態になりそうだねぇ。
ちなみにそれはいつ頃発生しそうなんだい?」
「今日から5日後です。」
「それはまた急な話だねぇ。
5日後で間違いないのかい?」
「はい、間違いありません。」
カーラが迷い無く断言したので、ホーネットはすぐにできることを行動に移すことにした。
「なら伝達の手間は、できるだけ省いた方がいいね。
リスティ、ネーナ、シーリン、レミル、フローラ、エターナ、フェザリース、ちょっとこっちに来な!」
ホーネットが名前を呼ぶと、今までどこにいたのか、その人物たちがぞろぞろとやってきた。
「お待たせしました、ホーネットさん。」
「どうかしましたか?」
「何か問題でも?」
まずはネーナ、フローラ、エターナが、真面目な表情で理由を聞いてきた。
「大声を出して、いったいなんですか、ホーネット。」
「せっかくの癒しを邪魔してまで、私たちを呼びつけて何事です。」
「貴重な時間を邪魔したんだ、つまんねーことだったら、ただじゃおかねえぞ。」
「さっさと要件を言いやがれ。」
続いてリスティ、シーリン、レミル、フェザリースが、不機嫌そうに軽く文句を言ってきた。
ホーネットは一部聞かなかったことにして、簡潔に用件だけ伝えた。
「アンタたち、どうやら面倒ごとが起こりそうだよ、
とりあえず話はマコトが戻ってきてからだ。
ってわけでカーラ、これで、王国、連合、武国、連邦、公国、術国、翼国、それと帝国は、一緒に話を聞くから伝達の必要は無いよ。
残りはマコトに頼めば、すぐに連絡がつくはずだ。」
このホーネットの判断の速さと手際の良さにカーラは感謝しながら、マコトのハーレムにいる女性たちの地位にも驚いていた。
「さすがはホーネットさん、助かります。
それにどうやら私の想像を大きく超えて、マコトは各国とのつながりが広く深いようですね。
これなら何とかなりそうです。」
「そいつはよかった。」
カーラは集まってきた者たちの顔と素性を知っていたため、これからのことを考えると、とても心強く思っていた。
一方ニナも集まってきた全員とは既に顔見知りのため、今更紹介などは必要ないのだが、1つだけどうしても聞きたくてしょうがないことがあった。
どうして今この場所にいるのか、本来であれば今の時間は政務中のはずなのに、と。
だがすぐに、返ってくる答えはホーネットと似たり寄ったりだろうから聞いても無駄だろう、と考え、その言葉は飲み込んでしまった。
ニナがそんなことを考えていると、そこへ治療を終えたおっちゃんとおばちゃんが、エイリと共にやってきた。
おっちゃんとおばちゃんは誰かを探しているようだが、そのとき偶然ホーネットと目が合った。
そしてすぐに2人はホーネットの許へと近づいてくると、声をかけてきた。
「おや、ホーネットちゃんじゃないか。
また仕事をサボってるのかい?」
おばちゃんはいきなり核心を付いてきたが、ホーネットはとぼけた答えを返した。
「おばちゃん、アタシだっていつもサボってるわけじゃないよ。
今日は癒されに来てるんだ。」
するとこの答えに、意外にもおばちゃんは納得した。
「おっと、そいつは悪かったね。
癒しは大事だからね。
心に余裕がないと、いい仕事はできないよ。
ゆっくり癒されて、それから仕事を頑張んな。」
「さすがおばちゃん、わかってるじゃないか。
ところでおばちゃんたちはどうしてここにいるんだい?」
「ちょっとマコトちゃんに問題を解決してもらってたんだよ。」
「問題?ってなんだい?」
「それは後のお楽しみだよ。
そのときが来たら教えてあげるよ。」
「まぁおばちゃんがそう言うなら、そのときまで待つとするかね。
それでマコトは?一緒じゃないのかい?」
「片付けするって言ってたから、少しすれば来るはずだよ。」
「じゃぁ待つとするかねぇ。」
「ホーネットちゃんは、マコトちゃんに用事かい?」
「ああ、どうやらカーラの用事にアタシたちも関係するみたいでね。
それでマコトを待っているのさ。」
「そうだったのかい。」
「ところでおばちゃん、誰か探してるみたいだったけど・・・」
このホーネットの言葉で、おばちゃんは自分の目的を思い出した。
「はっ!そうだよ!
フィマちゃんとエマちゃんを探しているんだった!
ホーネットちゃん、子供たちは何処にいるんだい?」
「それなら、今はあっちで遊んでるよ。」
「あっちだね。
行くよ、とーちゃん!」
「おうっ。」
「ニナちゃんも!」
「えっ!?お義母さん、私まだ休憩中なんだけど・・・」
完全に自分には関係ないと油断していたニナは、突然おばちゃんに声をかけられ少し焦っていた。
しかしそんなことは、おばちゃんには関係なかった。
「若いのにだらしない。
そんなんじゃ妹ができたときに先が思いやられるよ!
私が直々に鍛えてあげるから、ほらっ、行くよ!」
「えっ?えっ?ちょっ、ちょっと、お義母さん!?」
ニナはおばちゃんに腕を掴まれ、そのまま問答無用で強引に引きずられて行ってしまった。
そしておっちゃんは黙って2人姿を嬉しそうに見ながら、その後について行ったのだった。




