カーラの用事
そしておばちゃんがいくつかシルフィナの質問に答えると、すぐに元の場所へと戻ってきた。
途中おばちゃんにしては珍しく、顔を赤くしながら恥ずかしそうにしている場面が何度も見られたが、戻ってきたときにはいつもの笑顔になっていた。
マコトはそのことには触れず、すぐにシルフィナへとある確認を行った。
「シルフィナ、どう思う?」
「私もマコト様のお考えの通りではないかと思います。」
「やはりそうか・・・」
するとマコトはシルフィナの答えを聞いて、少しの間何かを考え込み、おっちゃんとおばちゃんに、まずは予定の確認を行った。
「・・・おっちゃん、おばちゃん、2人は今日この後空いているか?」
急な話に2人はマコトの意図がわからなかったものの、すぐに頭の中で今日の予定を確認してから答えた。
「今日かい?
店が休みだから、あたしは大丈夫だけど、とーちゃんはどうだい?」
「俺も大丈夫だぜ。
どうせ明日の仕込みは朝からだからな。
今日は何にもねーよ。」
2人の予定が問題無いことを確認したマコトは、ある提案をしてきた。
「だったら急な話で悪いが、この後2人も俺たちが住んでいる場所に招待したいんだが、どうだろうか?」
突然の提案に、おばちゃんとおっちゃんは、ますますマコトの意図がわからなかったが、特に断る理由もないので招待を受けることにした。
「あたしは構わないけど、とーちゃん、どうする?」
「俺もいいぜ。
にーちゃんたちがどんな所に住んでるのか興味あるしな。」
「決まりだな。」
「でもマコトちゃん、急にどうしたんだい?」
「どうせならついでに俺の家族も紹介しておこうかと思ってな。」
おばちゃんはこのマコトの答えに納得しつつも、他にも理由があることを確信しているようで、それについても聞いてきた。
「まぁそういうことなら・・・もしかして、さっきのシルフィナちゃんの質問も何か関係してんのかい?」
だがこのおばちゃんの問いにマコトが答えるよりも早く、おっちゃんが反応した。
「そういえばかーちゃん、さっき嬢ちゃんと何話してたんだ?」
このおっちゃんの言葉に対して、何故か言いづらそうにいているおばちゃんは、強い口調で強引に話を終わらせた。
「そっ、それは・・・とーちゃんは気にしなくていいんだよ!
この話は終わりだよ、いいね、とーちゃん!」
そのあまりの迫力に、おっちゃんはそれ以上何も言えず、返事を返すことしかできなかった。
「おっ、おうっ。」
マコトはそんな2人のやり取りには触れず、話を先に進めようとした。
「じゃぁ早速移動を・・・」
しかしそれを止める者が現れた、カーラだ。
「待ちなさい、マコト。
その前に私の用事を先に済ませましょう。
マコトにとっても、その方が都合がいいはずです。」
そしてマコトも、そのカーラの提案を受け入れた。
「失礼しました。
確かに家元の仰る通りです。
ではすぐにはじめようと思いますが、場所のご希望と立会人はどうされますか?」
この確認に対して、カーラは迷い無くマコトに委ねた。
「全てマコトに任せます。」
「いいのですか?」
「問題ありません。
マコトのことは信用しています。」
「わかりました。
では場所はこちらでご用意させていただきます。
それと立会人はシルフィナに任せます。
よろしいですか?」
マコトの提案を、カーラは考えることなく受け入れた。
「構いません。」
「ありがとうございます。
それとシルフィナとの方はどうされますか?」
「まずはマコトとが先です。
シルフィナとはその後でも問題ありません。
それでいいですね、シルフィナ?」
「はい、家元のお心のままに。」
「よろしい。
マコト、時間が惜しいので、すぐにはじめます。
案内しなさい。」
「ではこちらへどうぞ、家元。」
「ええ。」
カーラはマコトが開いたゲートの中へ、何も確認することなく入って行ってしまった。
マコトは一度皆の方を向いて、声をかけた。
「悪いが片付けでもしながら、少しだけ待っていてくれ。
すぐに戻ってくる。」
「かしこまりました、行ってらっしゃいませ、マコト様。」
シーノだけが反応し、その場で見送ると、マコトとシルフィナが入ったと同時にゲートも消えてしまった。
他の皆は急な話の展開について行けず、ただ唖然とした表情でそれを見ていることしかできなかった。
その後、シーノによって現実に引き戻された皆は、どこかに行ってしまったマコト、シルフィナ、カーラのことを気にしながらも、とりあえず誕生日会の後片付けを行った。
そして片付けが終わったとほぼ同時に、再びゲートが開いた。
中からはマコトとカーラが横に並んで同時に、それに続いてシルフィナが出てきたのだが、先程まではとはあきらかに様子が違っていた。
しかしマコトもシルフィナもそれに触れることなく、カーラに至っては何事もなかったかのように、当然のこととして振舞っている。
それを見て、皆の反応は大きく3つにわかれた。
まずは、すぐに状況を理解して、いつものことだと冷静な者が4人。
次に、こちらもすぐに状況を理解して、温かい目で見守る者が2人。
最後に、状況が全く理解できず、驚きのあまり声を失って固まってしまった者が1人。
そんな中、マコトの発した言葉で、状況が動き出した。
「皆待たせたな。
カーラとの用事は済んだから、早速移動しよう。」
そう言ってマコトがゲートを開こうとしたところへ、1人だけ固まっていた人物、ニナが、現実に引き戻された。
「・・・ちょっ、ちょっと待ってください!」
「んっ?どうした、ニナ?」
ニナは大きな声で引き留めたものの、マコトの問いには答えず、ある人物の許へと向かった。
そうして正面に対峙した相手は、カーラだった。
「カーラ姉ちゃん、これっていったいどういうことなの!」
「どういうことって、見た通りよ。」
「見てわかんないから聞いてるの!」
「それは無いでしょう。
だって他の皆さんは、今の状況をわかっているみたいよ。」
「私だって結果くらいはわかってるわよ!
だから、何でマコトさんとカーラ姉ちゃんが、そういう関係になったのかって聞いてるの!
さっきまで全然そんな雰囲気じゃなかったじゃない!
それにマコトさんだってずっと家元って呼んでたのに、いつの間にか呼び捨てになってるし・・・」
何故ここまでニナが執拗なんでに説明を求めてくるのか、それはマコトとカーラ、2人の物理的な距離が、先程までと比べてあまりにも近いからだ。
今2人は、マコトの左腕にカーラが自分の胸をこれでもかと押し付けながら抱きついている体勢だ。
そんなカーラをニナは羨ましそうに見ながら、抗議を含めた疑問をぶつけてきたのだ。
カーラは、このニナの反応を楽しそうに見ながら、質問には答えずに煽ってきた。
「ふふふふっ、可愛いわね、ニナ。
もしかして焼いているの?」
「そっ、そんなんじゃないもん・・・」
「駄目よ、貴女もマコトのハーレムに入ったのだから、これくらい軽く受け流さないと。
それにニナも遠慮することないのよ。
ほらっ、反対側が空いてるわよ。」
カーラに言われてニナが気づくと、マコトの右腕に熱いまなざしを向けた。
「あっ・・・ジーーーっ・・・」
するとその意図を汲んだマコトが、ニナの方へ向けて自分の右腕を差し出した。
すぐにニナは嬉しそうにしながらマコトの右腕に抱きつくと、カーラと同じように自分の胸を押し付けた。
しかしそれで満足してめでたしめでたし、とはいかなかった。
そのままカーラとニナは、マコトを挟んで話を続けたのだ。
「ふふふふっ、よかったわね、ニナ。」
「それはまぁそうだけど・・・でもそれとこれとは話が別だよ、カーラ姉ちゃん!
ちゃんと説明してよね!」
「ふふふふっ、もちろんよ。
でもそんなに複雑な話ではなくて、とても単純な話なのよ。」
「どういうこと?」
「もともと私は、数年前からマコトに口説かれていたの。
そこで私はいくつかの条件を提示し、それを全て満たせばマコトの女になることを約束していたのよ。
もちろんハーレムのことを含めてね。
でもまさか、こうもあっさり条件を満たされるとは思っていなかったわ。」
このカーラの説明を聞いて、ニナは盛大に勘違いをした。
「それって別にマコトさんのことが好きなわけじゃなくて、条件をクリアしたから受け入れたってこと?
いくら何でもそれはマコトさんに対しても失礼だし、カーラ姉ちゃんも本当にそれでいいの?」
「ニナ、それは違うわ。
昔から私とマコトは相思相愛だったもの。
だからニナが考えているような、打算的なことがあるわけではないわ。」
「えっ?・・・じゃぁ何でハーレムに入るのに、条件なんて付けたの?
相思相愛なら、そんな必要ないじゃない!」
「ニナの言いたいこともわかるわ。
私だって全てを捨ててただの女になれるのならどれだけ楽だったか・・・
でもね、私にも今の立場というものがあり、様々なものを抱えてるの。
それはマコトも同じよ。
だからこそ私はマコトに条件を提示したの。
そして今回マコトは、その提示した条件を全て満たしてくれた。
おかげで私も、何の迷いもなく自分の素直な想いで、マコトを受け入れることができたのよ。
だからニナ、どうか私とマコトのことも祝福してくれないかしら?
本当の妹のように思っているニナに受け入れてもらえないのは、姉として辛いわ。」
初めて聞くカーラの秘めた本心に、ニナは心の底から祝福を送った。
「カーラ姉ちゃん・・・ゴメン、私が間違ってたよ。
だから言わせて、おめでとう、カーラ姉ちゃん。
一緒に幸せになろうね。」
「ありがとう、ニナ。
ええ、一緒に幸せになりましょうね。
もちろん、マコトと他のハーレムの皆さんも含めてね。」
「うんっ!」
こうして2人は笑顔になり、以前にも増して仲の良い姉妹へとなったのだった。




