ノワールの自慢話
更にノワールは、ニナを祝福するためと称して、自分に起こった嬉しい変化について教えることにした。
「ではニナさんの新しい門出を祝って、私からも、私のとっておきの秘密をお教えしますわ!」
実は今回ノワールは、この話をニナにすることが目的の1つであった。
だが当初の予定であった自慢話としてではなく、秘密を打ち明けるという形にすり替えるつもりのようだ。
そのため気を使って話を変えてくれたのだと勘違いしたニナも、ノワールの秘密に興味津々で話に乗ってきた。
「とっておきの秘密?
なになに、教えて、ちびっ子!」
上手く話の流れを作ったと内心で思っていたノワールだが、それを一切表情には出さずに話を続けた。
「ふっ、ふっ、ふっ、私の秘密・・・それは・・・これですわ!」
そう言ってノワールは、周囲に影響が出ないように淫神力を発動した。
するとノワールの全身が一瞬だけ光ってすぐに身体が成長し、幼い美少女の姿から妖艶な大人の美女へと、その姿が変化したのだ。
「えっ?・・・えーっ!?」
さすがにこれにはビックリしたようで、ニナはノワールを指差しながら口をパクパクさせて、声にならない驚きをあらわにしていた。
「いかがですか、ニナさん?
これでもう、ちびっ子、とは言わせませんわ!」
勝ち誇ったような表情でノワールがそう言ったものの、ニナからは一向に反応が返ってこなかった。
それを不思議に思ったノワールは、ニナの様子を確認するために声をかけた。
「どうしましたか、ニナさん?」
しかしニナは返事を返さず、驚いた表情をしたままだ。
だが徐々に冷静さを取り元してくると、あることに気づいたようだ。
目の前にいる人物が、自分の知る人物にとてもよく似ていることに。
そのため回りに回って辿りついた答えが、その人物がノワールと入れ替わった、と勘違いしたようだ。
「・・・ホーネット、様?
・・・もう、嫌ですよぅ、驚かさないでくださいよ。
それにしてもいつの間にちびっ子と入れ替わったんですか?
私全然気づきませんでしたよ。
それで、ちびっ子はどこに隠れてるんですか?
どうせ種明かしをするときにいきなり出てきて、更に驚かせようとか考えているんですよね?」
そう言いながらニナは、キョロキョロと周囲を見回した。
どうやらノワールがどこかに隠れていて、自分のことを驚かせようと出るタイミングを見計らっていると思っているらしい。
「もう、違いますわ!
私です、ノワール本人ですわ!」
「またまたぁ。
そうやってちびっ子の真似をしても駄目ですよ。
私は騙されませんからね、ホーネット様。」
こう言ってニナは、ノワールの言葉に耳を貸してくれない。
では何故ニナがこのような勘違いをしたのかというと、目の前にいる人物がノワールだとは思えなかったからだ。
一瞬の出来事だったとはいえ、目の前で突然成長したのを見たのにもかかわらずだ。
だがそれも仕方ないことだろう。
今のノワールの姿は、ホーネットと瓜二つなのだから。
ただシルフィナ曰く、スタイルは大人の姿になったノワールの方がいい、とのことだが、実際にはあまり大きな差はない。
そのためシルフィナ以外が見ても、体形だけでは判断が難しいのだ。
しかしよくよく冷静に考えれば、服装はともかく、声や話し方、他にも雰囲気などが、ホーネットとは全く違うことに気づいただろう。
だが急に身体が成長して姿が全くの別人に変わるという、普通ではありえないことが目の前で起こった。
そのためニナの中で、本来起こった身体の成長が無かったことにされ、結果だけが受け入れられたようだ。
つまりノワールの身体が成長したという過程が、身体が光った一瞬でホーネットと入れ替わったという、ありえそうな内容に置き換わったのだ。
ちなみに隣で同じ光景を見ていたおっちゃんはというと、意外にも冷静で、ノワールの成長した姿に感心していた。
「へぇ、ノワールの嬢ちゃんもやるじゃねぇか。」
そういうもんだと柔軟に受け入れた、というわけではない。
実は以前ホーネットがお忍びで店に来る際に、逆のこと、つまり幼い身体になっていたことがあったので、ノワールの変化も素直に現実として受け入れたようだ。
すると、おっちゃんと意見が分かれたため、ニナが間違いを指摘してきた。
「何言ってるの、お義父さん。
どう見てもホーネット様じゃない。」
「お前こそ何言ってんだ、ニナ。
確かに姿はホーネットの嬢ちゃんとそっくりだが、声や口調、それに雰囲気が全然違うじゃねーか。」
逆におっちゃんに指摘され、ニナは少し冷静になった頭で思い返してみると、納得する部分が多いことに気づいた。
「・・・確かに・・・でもあのちびっ子だよ。
こんな一瞬で成長するなんて、普通は無理だよ。」
とりあえず自分の常識を基準にして反論するニナだったが、それを逆におっちゃんが自分の常識を基準にして反論してきた。
「ニナ、お前の常識だとそうかもしれねー。
俺だってお前が考えた末に間違ってるって判断したんなら、文句は言わねーよ。
でもな、どう見ても今のは違うだろ。」
「それは・・・」
「まずは考え無しに否定するのは止めろ。
何でもかんでも頭ごなしに否定しちまったら、そこで終わっちまって損しちまうぞ。
世の中には俺たちの知らねー非常識なことが数多くあるんだから、ときにはそれを認めることも覚えろ。
お前に足りねーのは、そういう柔軟な頭だと俺は思うぜ。
ありのままの結果を受け入れてから、自分の中でそれが正しいのか間違っているのか判断する。
そうやって真贋を見分ける目を養いながら、自分の世界を広げていくことで人ってのは成長していくんだ。
これは料理にも言えることだぞ。」
「お義父さんの言いたいこともわかるけど・・・」
ニナはおっちゃんの言葉も理解はしているようだが、すぐには受け入れられないようだ。
そこでおっちゃんは、ニナのことを考えてノワールへと頼みごとをした。
「しょうがねぇなぁ。
ノワール嬢ちゃん、さっきのってもう一度できるか?
ただし一瞬でじゃなくて、ゆっくりとだ。」
そのおっちゃんの頼みを、ノワールは快く引き受けてくれた。
「もちろんできますわ。
ではまずは元に戻って・・・」
すぐにノワールは一度淫神力の発動を止め、一瞬でいつもの幼い姿に戻った。
「・・・ではもう一度最初から・・・」
間髪入れずに再び淫神力を発動し、自分の身体を成長させた。
先程が一瞬で成長したのに対して、今回は1分ほどの時間をかけたので、成長の過程が誰の目にもあきらかだ。
ゆっくりとノワールの身長や髪が伸び、胸やお尻の肉付きが増し、顔つきが大人びて妖艶な雰囲気を纏っていく様がよくわかる。
そして先程と同じく、ホーネット似の美女が再び現れた。
「・・・こんな感じでいかがですか?」
その成長過程の一部始終を見ていたニナは、ようやく今目の前にいる人物が、ノワール本人であることを認めた。
「・・・すごい・・・すごいすごい!
ちびっ子ってそんなことまでできちゃうんだね!
あっ、でも今後はもう、ちびっ子、って呼べないね。
これからは・・・ノワール・・・って呼んだ方がいいかな?」
「ふふふっ、ニナさんのお好きなように呼んでください。
今はまだ、どちらの姿も私なのですから。」
そう言いながらノワールが淫神力の発動を止めると、いつもの美少女の姿に戻った。
「じゃぁその姿のときはいつも通り、ちびっ子、で。
あっちの姿のときは、ノワール、って呼ぶね。」
「はい、ニナさん。」
「それにしても、不思議ね。
いったいどんな原理なの?
もしかして私にもできるのかな?」
ニナが興味津々で質問してくると、ノワールは簡単に説明をはじめた。
「これはですね、私の封印されていた力が関係していまして・・・」
ノワールがニナに説明をはじめると、そこへティリアとシェイラも加わり、話に花を咲かせたのだった。




