誕生日会への招待
マコトに大勢の娘が生まれ、ルフェやレティシアと合流した日から、既に1週間が過ぎていた。
その間マコトたちは、普段と変わらず厳しい訓練の日々を送っていたが、いくつか変化もあった。
そこには教える側にルフェが、そして教わる側にレティシアが新たに加わったことだ。
ルフェの実力は事前に武人族たちとの模擬戦で皆も知っていた。
しかし意外にもレティシアの実力が相当なものだったことに、ほとんどの皆が驚くことになる。
かなりの練度で魔神力を使いこなしたこともだが、やはり一番注目されたのは技の精度の高さだ。
臨機応変に柔と剛を使い分け、打撃のみならず、多彩な投げ技や組み技を操る様は、まさに見事の一言だった。
また武器の扱いにも長けており、多彩な武器を自分の手足のように扱う姿には、皆が圧倒されていた。
そのため力を使用しない素の状態では、皆の中でも上位に入る実力だ。
このレティシアの実力に多くの者たちが刺激を受ける中、特に影響を受けたのが、マリスとロンフォンだ。
原因として、ミザリィ、ナタリィ、シェイラ、この3人の成長を目の当たりにしたことが大きい。
先日試練をクリアして新たな力を得た3人は、パートナーと契約した精界の住人の力を使うことで、皆の中では頭1つ抜き出るほどの強さを手に入れていた。
それが自信につながったのか、最近では基礎能力の方も著しく伸び、その成長は目を見張るものがあった。
そんな調子を上げている3人だったが、少し前に行われた力を使わない模擬戦では、レティシアを相手に惨敗してしまった。
敗因は技の精度の差、この一言に尽きる。
力や速度などの基礎能力は3人の方が上だったが、それを全く感じさせないレティシアの洗練された技に、簡単にあしらわれてしまったのだ。
このレティシアの姿に感銘を受け、最近マリスとロンフォンは、互いに組んでフウロンにアドバイスをもらいながら、技の研鑽を行っているところをよく見かけるようになった。
そんな2人に刺激され、他の皆も同様に2~5人ほどで組んで、訓練とは別に独自の研鑽を積む姿が見られた。
そして生活環境は大きく変わっていた。
新たに生まれたマコトの娘たちは、全員が拡張された陰の一族の拠点で生活をすることになった。
これはマコトの娘ということもあり、様々な危険から遠ざけるためである。
最初は赤ちゃんの人数が多いため、いろいろと大変かと思われた。
だがそこは有能なメイドたちや経験者たちによって、効率的な赤ちゃんのお世話をするシフトが組まれたことにより、大きな問題は起きていない。
それに赤ちゃんたちは元気いっぱいなものの、夜泣きなど手がかかるようなことがほとんどなく、生活の周期もほぼ全員一緒のため、お世話がそれほど大変ではない。
それでもたまに連鎖的な夜泣きが起こることはある。
ここで意外にも活躍したのがミィとセイだ。
2人が子守唄を歌うと、何故か赤ちゃんたちが歌に聞き入って泣き止み、そのまま静かに寝入ってしまうのだ。
どうやら2人の歌声が赤ちゃんたちにとっては、とても心地いいものらしい。
そのため今は交代で赤ちゃんの夜泣きに備えている。
逆に残念なのがランだ。
別にランの歌が下手とか声が変だというわけではなく、むしろかなり上手い方で、赤ちゃん以外にはとても好評である。
だが何故かランが歌うと赤ちゃんたちは全く眠らず、目を見開いて無表情になってしまうのだ。
普段ランが赤ちゃんたちを抱っこしてあやしているときは、普通に笑顔になったり心地よく眠ってくれるので、余計にその差がハッキリと出てしまう。
泣き出したりするわけではないので特に問題はないのだが、本人はこの赤ちゃんたちの反応にひどく落ち込んでしまい、赤ちゃんたちの前では歌うことを封印してしまった。
またダークエルフ族の半数も、定期的に交代で神魔樹と行き来しながら陰の一族の拠点で一緒に生活している。
何故半数だけなのかというと、これは連合の仕事もあるため、全員が神魔樹を離れるわけにはいかないからだ。
アリアも一族の長として、そして連合での様々な仕事を抱える重要な立場として、同様の生活を送っている。
それはミーナとネーナも同様だ。
しかし産後に無理をさせるわけにはいかないと考えたマコトが、しばらくは何人かを補佐として付けることにしたのだ。
おかげで普段よりも仕事がはかどり、今後も定期的に人員を派遣してほしいと、改めて打診されている。
そんな中、新たな生活環境に、フィマとエマが最初は戸惑うかと思われたのだが、そんなことは全くなかった。
2人の面倒は基本的に、シルフィナ、エイリ、アイの3人が見ているが、遊び相手は全員が交代で行っている。
これはフィマもエマも好奇心が旺盛で人見知りをしなかったというのが大きい。
ただあまりにも元気が良すぎて、逆に皆の方が振り回されている状況だ。
さすがにマコトたちの言いつけもあって、陰の一族の拠点から出てしまうことはないが、それでも予測不能な行動をする2人と遊ぶのは大変なようだ。
だがこれがとてもいい訓練になっていることに、ほとんどの皆が気づいていない。
それを知るのは、もう少し後の話だ。
ハーレムの方でも動きがあった。
王国ではリスティ、フィリア、レフィーレ、アーネスが、帝国ではホーネットが、それぞれ無事に安定期へと入ったのだ。
そのため5人は中断していたマコトとの夜の性活が解禁されている。
そんな中、出産はまだ先だが、初めてのとのことで、フィリア、レフィーレ、アーネスの3人が、最近は陰の一族の拠点へ頻繁に訪れている。
生まれたばかりの赤ちゃんの様子を見たり、経験者たちに出産までの状況をいろいろ聞いて回っているようだ。
一方、既に出産経験があるリスティとホーネットは、3人ほどではないものの、忙しい合間を縫って来ては、可愛い赤ちゃんに癒されて帰っていく姿が見られた。
普段一緒に行動していない他のハーレムメンバーたちも、最近は以前よりも陰の一族の拠点を訪れる回数が増えている。
これにはマコトたちゲートを使える者たちが、負担を増やして皆を行き来させている、というわけではない。
実は以前からマコトが研究していた、ゲートを汎用化する方法、これが大きく進んだことによって、限定的ではあるが移動問題が大きく改善されたのだ。
ゲートの特徴として、
①使えるのは時空間魔法の素養がある者だけ。
②物質世界間の移動は、近距離では問題無いが、長距離の場合は何かしらの代償を支払う必要がある。
③物質世界と異空間(精神世界を含む)の行き来は、距離の概念が関係しないため、代償を支払う必要がない。
④異空間を経由して物質世界で長距離移動を行う場合は、入った場所と出た場所が違うため、代償を支払う必要がある。
⑤例外として、物質世界間で長距離移動を行う場合は、移動する者が元々そこにいたかのように、存在を世界に偽る必要がある。
などがある。
元々ゲートが使える者がその場にいれば、物質世界から異空間への移動は問題無かった。
しかしマコト以外は物質世界間の長距離移動ができないため、頻繁には移動できなかったのが問題だった。
そこで開発されたのが、ゲートの機能を限定的に付与した扉型の魔導具だ。
これは各国に点在するハーレムメンバーたちの私室に置かれており、異空間に存在する陰の一族の拠点とを行き来することができる。
ただし使用できるのは、マコトのハーレムメンバーたちと、マコトが許可した一部の者たちだけだ。
それ以外の者が扉を通っても、扉の裏に出てしまうだけで、ゲートとしての機能は発揮されない。
おかげでゲートが使えなくても、気軽に陰の一族の拠点とを行き来することができるようになったのだ。
中にはこれを利用して、各国の代表同士での話し合いなどを、陰の一族の拠点で行う者たちもいる。
それもあって最近は陰の一族の拠点が、大勢の人たちで賑わっている状態だ。
これに一番喜んだのが、フィマとエマだ。
毎日いろいろな女性たちが入れ代わり立ち代わりでやってくるので、好奇心を大いに刺激され、とても楽しい日々を送っているようだ。
この一週間、そんな日々を過ごしていたマコトたちだが、今日も日課の早朝訓練を終え、今は数人を連れて帝国へと来ていた。
時間はお昼前、メンバーは、マコト、シルフィナ、ティリア、シェイラ、ノワール、シーノの6人だ。
何故この6人だけなのかというと、これから逢いに行く人物と最も縁が深く、予定を空けることができたからだ。
マコトたちは目的の場所である、お店の扉の前に着いた。
しかし扉には、本日臨時休業、の札がかけられている。
だがマコトたちは気にせずに、そのままお店の扉を開いて中へと入っていってしまった。
普段なら店の中はお昼の客であふれかえって大忙しのはずなのだが、休業とあって今日は落ち着いた雰囲気だ。
そんな中、ティリアとシェイラが、目的の人物の姿を見つけて声をかけた。
「ニナ!(×2)」
呼ばれた人物、ニナは、自分を呼ぶ声に反応し、すぐに駆け寄ってきた。
「いらっしゃい、2人とも来てくれたのね!」
「こっちこそお招きありがとう。
それと、おめでとう、ニナ。」
「おめでとうございます、ニナ。」
2人がお祝いの言葉を伝えると、ニナは嬉しそうに笑顔で答えた。
「うん、ありがとう。」
そこへマコト、シルフィナ、ノワール、シーノの4人も、ニナにお祝いを伝えた。
「おめでとう、ニナ。」
「おめでとうございます、ニナさん。(×3)」
「ありがとうございます。
マコトさん、シルフィナさん、シーノさん、それにちびっ子も。
今日は皆さん来てくれて嬉しいです。」
実は今日はニナの誕生日で、少し前にマコト経由で誕生日会に誘われたので、6人はそのお祝いとして店にやって来たのだ。
するとそこへ店の店主であるおっちゃんもやってきた。
「おっ、にーちゃん、それに嬢ちゃんたちも、今日はニナのためによく来てくれたな。」
「めでたい日が重なったんだ、当然お祝いに来るさ。
それにしても、ニナがおっちゃんを超える日がこんなに早く来るとはな。」
「んっ?何言ってんだよにーちゃん。
ニナはまだまだヒヨッコだ。
俺を超えようなんて、50年ははえーよ。」
「どういうことなんだ?
俺はてっきり、ニナがおっちゃんを超えたから、今回の話が決まったんだと思ってたんだが、違うのか?」
「違うに決まってんだろ。
まぁその何だ、今回の事はその辺は一切関係ねーんだよ。
俺とかーちゃんがニナに根気よく頼んで、ようやく決心してくれたんでな。
それで今日の日と合わせたんだ。」
「なるほどな。
確かに、そういう日としては、誕生日の今日は最良の日だな。」
「だろ?
まぁこれはかーちゃんの案なんだけどな。」
「そうだろうな。
おっちゃんじゃぁ、こんな気の利いた考えは出てこないだろうからな。」
「ちげーねえ。
さすがかーちゃん、いい女だぜ。
にーちゃんもそう思うだろ?」
「ああ、まったくだ。」
マコトとおっちゃんが2人だけで盛り上がっている中、ニナ以外の皆は2人の話の内容に首を傾げていたのだった。




