メイドたちの秘密5
マコトはどうしたものかと考えた結果、今のレティシアの言葉を、一部聞かなかったことにして話を進めることにした。
「・・・まぁその何だ、嫌われていないことがわかったから安心したよ。
それでどうだろうか、俺がレティシアのことを口説いても構わないか?
返事は急がないし、もちろん無理強いするつもりは無い。
まずはこれから一緒に過ごして、俺のことを知ってくれた上で、受け入れてくれるか考えてくれればいい。
ただ俺としては、レティシアの許可が出るまで何度でもこの話をするから、それは覚悟しておいてくれ。」
レティシアもそんなマコトの気遣いに便乗して、少し考えてから答えた。
「・・・それは、私が断ったとしても、ですか?」
「当然だ。
そもそもレティシアのようないい女に、誰も相手がいない状況で口説かないなんて、逆に失礼だろ。」
「では、私に決まった相手がいたら、マコトさんはおとなしく引き下がるのですか?」
「さすがに相手の男がいる女性を、口説くようなことはしない。
まぁ相手の男が女性を不幸にするような奴だったら、黙ってることはできないがな。」
この答えが気に入ったのか、レティシアは楽しそうに笑顔を浮かべていた。
「ふふふふっ、本当に面白い方ですね、マコトさんは。
でもマコトさんも知っての通り、今の私には相手はいません。
ですから私を口説くのに、別に私の許可は必要ないと思いますよ。
マコトさんの好きなように、私のことを口説けばいいと思います。
もしかして私の興味を引く目的もあって、そのようなことを言っているのですか?」
「そのつもりが全く無いとは言わないが、これは俺の性分なんでな。
だからそういうもんだと思ってくれ。」
「そうなのですね。
わかりました、今後はマコトさんのお好きなように、私のことを口説いてください。
ただしお返事は、私の心が決まりましたらさせていただきます。
それまでお時間をいただきますが、構いませんか?」
「ああ、それで構わない。
では改めて、これからよろしく頼む。」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。」
レティシアの了承を得たので、マコトはもう1つの用件を伝えた。
「それじゃぁ急な話ですまないが、レティシアも一緒に引っ越ししてもらおうか。」
「・・・はい?
引っ越しとは、どういうことですか?」
「ここはもう引き払うから、これからは皆と一緒に別の場所で生活してもらう、ということだ。」
「それはまた急なお話ですね。
しかしいいのですか、突然私が他の皆さんと合流しても。
マコトさんのハーレムの皆さんからは、あまりいい顔をされないのではありませんか?」
「それについては大丈夫だ。
そんなことを気にする女は1人もいないからな。
だからレティシアも遠慮することはない。」
しかしこのマコトの言葉が信じられなかったのか、レティシアは事情を知るトウカに確認した。
「・・・そうなのですか、トウカさん?」
「はい、マコト様の言う通り、女性が何人増えようが今更です。
ですからレティシア様が気にされることは何もありません。
それに皆とても気のいい者たちばかりですから、すぐにレティシア様も馴染まれると思います。」
迷い無く答えたトウカの言葉が後押しとなりレティシアは決心したようだが、どうやら1つだけ心残りがあるようだ。
「・・・わかりました、では改めて、私もそちらでお世話になります。
ですがそうなりますと、エイリさん、それにフィマちゃんやエマちゃんとは離れてしまうことになるのですね。
それは寂しいです。」
だがそれは次のマコトの言葉で解決した。
「それも問題無い。
3人も一緒に引っ越すからな。」
「本当ですか!」
そのマコトの答えが余程嬉しかったのか、レティシアにしては珍しく大きな声で確認してきた。
「ああ、本当だ。
どちらかといえば3人が引っ越すことになったから、レティシアも一緒にということなんだがな。
さすがにレティシアをこっちに1人だけ残すわけにはいかないだろ?」
「そういう事だったのですね。
では何も心配する必要はありませんね。」
「そういうことだ。」
一安心したレティシアは、引っ越しの前にメイドの皆へ向けて、ある願いを口にした。
「ところでトウカさん、それに皆さんも、これから一緒に生活するにあたって、1つだけお願いがあります。」
「何でしょうか、レティシア様?」
するとこのトウカの言葉が気に入らなかったのか、少し怒ったような表情でレティシアが訂正しながら指摘してきた。
「それです!
今の私はただのレティシアです。
ですから今後私のことは、敬称をつけずに呼んでください。」
このレティシアの提案に、トウカやメイドの皆は難色を示した。
「しかしそれは・・・」
すると自分の要求を通すために、レティシアが強硬手段に出てきた。
「もし私のことをこれからも、レティシア様、などと呼んだら、逆に、トウカ様、と呼びますよ。
それでもいいのですか?」
さすがにそれは受け入れられず、トウカはレティシアの要求を受け入れることにした。
「そっ、それは・・・はぁ、わかりました、レティシアさん、これでよろしいですか?」
まだ硬さは抜けないものの、自分の要望が通ったので、レティシアはとりあえず納得したようだ。
「・・・まぁいいでしょう。
本当は、さん、もいらないのですが、それくらいは妥協します。
改めて、よろしくお願いしますね、トウカさん、それに皆さんも。」
「はい、こちらこそ、よろしくお願いします、レティシアさん。」
トウカがレティシアの要求を受け入れたので、他の皆も反論せずに受け入れるしかなかった。
「よろしくお願いします、レティシアさん。(×7)」
メイドたちとレティシアの話が一区切りついたところで、マコトは話しの締めくくりに入った。
「じゃぁ話がまとまったところで、早速引っ越しの準備をはじめるぞ。」
「はいっ!(×皆)」
話を終えたマコトたちは、引っ越しや今夜の寝床の準備を行い、神魔樹へと戻った。
その頃には既にそれなりの時間が過ぎていたが、フィマもエマも大勢と一緒にお風呂へ入ったり遊んだりするのが余程楽しかったらしく、時間を忘れて夢中になっていたようだ。
おかげで戻ってきたマコトたちに、文句を言うようなことはなかった。
その後、夕食の席で皆にもレティシアのことが紹介された。
とりあえずキラやキリと同じく、軍国内の転生装置に捕らわれていたことは隠さずに伝えた。
しかし全神や軍王、トウカたちメイドとの関係については秘密にしておき、レティシアの素性も時代は隠さなかったものの、身分については、過去の有力者の令嬢、とだけ伝えた。
当然皆からは様々な質問が投げかけられたが、レティシアはそれらに対して、言葉巧みに自然な流れで全てに答えていた。
ほとんどの答えが真実だったが、本当の答えを言えない質問については、当たり障りのない内容で上手くぼかしたりかわしたりし、見事な対応を見せていた。
そんな人当たりの良いレティシアの姿が、皆にも好意的に受け入れられたようだ。
またフィマとエマが既に懐いていたことも、皆と打ち解けるのに一役買っていた。
どうやら一緒に生活していたときに2人の世話を手伝っていたらしく、2人についていろいろなことを知っていたことが大きい。
おかげで話題は尽きず、皆との距離が一気に縮まっていた。
レティシアも最初に抱えていた不安はすぐに消え、逆に自ら進んで皆との親交を深めている場面もあった。
ただしあの場にいなかったミレーヌにだけは、後に真実が伝えられた。
そしてトウカたちに行ったのと同じように、レティシアからミレーヌや母親のイレーヌに対しての謝罪が行われた。
最初は恐縮していたミレーヌだったが、最終的にはその謝罪を受け入れ、互いにわだかまりが無くなったことで、2人はすぐに打ち解けることができたようだ。
こうして怒涛の1日がようやく終わりを告げ、穏やかな日常が戻ってきた。
マコトたちは新たな家族や仲間を迎え、そして新たな真実を知り、それぞれ新たな目標や疑問を抱えることになったのだった。
今回で第16章は終わりになります。
次回からは新たに第17章がはじまります。




