メイドたちの秘密4
そして真実を求めて、自分の考えを口にした。
「まさか全神様は・・・人造の神・・・」
それに対してマコトは、当時の全神の状況について自分の知る情報を公開した。
「正確には少し違う。
全神は神として創られた両親から、つまり人造の神同士の間に生まれた神だったんだ。
だから生まれたときから神としての力を持っていた。
だがそれだけではなく、更に組織は全神へ神としての調整を施した。
つまり全神が自分たちに都合がいい存在になるようにしたんだ。
そして最初の内は表に出さず、存在を隠したまま裏で様々な実験を行っていたんだ。
その過程で、全神が多重人格者で、魂が死んで次の人格になる毎に、新たな能力が増えることが解明された。
ちなみにトウカたちが知る全神は、生まれてから99回死んだ後の人格だ。
たまたまおとなしくて品行方正な性格の人格になったことで、表に出して実験したんだろう。」
このマコトの答えに、トウカはうんざりといった表情を浮かべていた。
「・・・また実験か・・・つまり全神様も、組織によって意図的に生み出された存在だった、というわけか・・・」
「そういうことだ。
表には公表されていないが、一応全神は、光の聖母神の養子、という立場だったからな。
だがこの事実を知っていたのは、全神と妻であるレティシアだけだ。」
「そうなのですか、レティシア様?」
「はい、マコトさんの仰る通りです。
私が夫と結婚することが決まったときに、本人から直接聞きましたから。
ただこの事実が広まってしまうと、いろいろと面倒なことになるため、私の胸の内にだけ秘めておくようにと、夫からは念を押されました。」
「そうでしたか・・・確かに当時は光の聖母神といえば、善神の妻であり、陣営の実質的なトップでした。
ですから養子とはいえ息子がいると知られれば、もっと様々な陰謀に巻き込まれていたことでしょう。
だからこそ光の聖母神も、全神様の存在を公にしなかったのだと思います。
実験中に邪魔が入ることを望んではいなかったはずですから。」
「そう、なのかもしれませんね。」
互いの言葉に納得するトウカとレティシアだったが、そこへマコトが説明を続けた。
「いや、それだけじゃない。
光の聖母神としては、できるだけ実験の期間を長くしたかった、というのも理由の一つだ。」
「それは余計な連中の介入を防ぐためではないのか?」
「それも理由の一つだが、肝心な理由は別にある。
実は全神の人格は、感情がある上限を超えると、すぐに魂が死んでしまうんだ。
しかもその上限がかなり低い。
実際にトウカたちやレティシアが知る全神の人格は、屋敷が何者かに襲われた跡を見ただけで発狂して暴走した後に、簡単に死んでしまったからな。
誰の遺体も残ってなかったのにだ。」
これにはトウカも驚きを隠せなかった。
「なっ!?そんな簡単になのか!」
「組織の連中としては、全神の人格がどの程度の負荷まで耐えられるかのテストも兼ねていたんだろう。
だがこれまでの実験の中でも一番高い負荷だった所為で、全神は死ぬ前に発狂して暴走してしまった。
そして連中にとっての最大の誤算、それは新たな全神の魂が得た、魂の死後に身体が別の場所で変質して再構成される、という能力だ。
これまでは魂が死んでも、身体はそのまま残っていたから、全神を見失うことはなかった。
しかし新たに得たこの能力の所為で、組織の連中はその後全神の行方を見失ってしまったんだ。
おかげで組織は全神の実験を続けられなくなってしまった。
だから代わりに死亡したレティシアのお腹の子供、全神の遺伝子を受け継いだ軍王を創って実験を行っていたんだ。」
「そんなことがあったのか・・・では全神様の身体は、別の人格と共に今もどこかで生きている、ということなんだな。」
「表現が難しい所ではあるが、その認識で間違ってはいない。
だが勘違いするな。
身体は何度も分解されて、その都度変質して再構成されているし、人格も当時の全神とは違う別物で、同じなのは知識と能力だけだ。
今はどんな人格なのかわからないが、皆が知る全神とは別人であることだけは理解し、警戒してくれ。
それにこれまで出てきた全神の人格は、危険な考えを持つ奴ばかりだったからな。
皆が知る全神は穏やかな人格者だったが、それは非常に稀な人格だったんだ。
次にもし全神と出会うことがあったら、最大限に警戒し、絶対に気を許さないでくれ。」
マコトが真剣な表情で警戒を促してきたので、トウカも素直に受け入れた。
「わかった。
基本的にマコト様以外の男に対しては、常に警戒しておくようにするとしよう。」
「頼む。」
「お前たちもいいな?」
そう言ってトウカは、他のメイドたちにも有無を言わさず納得させた。
「はっ、はい・・・(×7)」
しかしメイドたちは頭では理解しているものの、すぐには気持ちの切り替えが難しいようだ。
そんなメイドたちへ、マコトは厳しい言葉をかけた。
「・・・いきなりこんな話をされて、皆も気持ちが理解に追い付かないのはわかる。
今すぐに全神と出会うことはないだろう。
だが対峙したときには、すぐに気持ちを切り替えられるように、今から覚悟を決めておいてくれ。」
このマコトの言葉を、トウカは正確に理解して受け取った。
「・・・それは今の全神様と対峙したら、殺す気でいろ、ということか?」
トウカの問いに、マコトはハッキリと断言した。
「そうだ。
全神は危険だ、放置することはありえない。
これまではたまたま表立って行動していなかっただけで、今後はどうなるかわからない。
だが皆は手を出すな、全神は俺がやる。
悪いがこれは決定事項だ、異論は一切認めない。」
珍しく強い口調で言い切ったマコトの言葉に、メイドたちは素直に頷くことができないでいた。
そんな中、真っ先に返事を返したのが、レティシアだった。
「・・・マコトさん一人に押し付けるようで申し訳ありませんが、どうかよろしくお願いします。
私にできることでしたら、協力は惜しみません。」
「大丈夫だ、何も問題無い。」
「そういうわけにはまいりません。
私にも何かお手伝いできることがあるはずです。
遠慮せずに、何でも仰ってください。」
一向に引く気配のないレティシアに、それならばとマコトがある頼み事をしてきた。
「・・・どうしてもというなら、1つだけ頼みがある。」
「はいっ、何でしょうか?
遠慮せずに仰ってください。」
「今まで我慢していたが、今後はレティシアのことを口説いても構わないか?」
あまりにも予想外だったマコトの頼み事に、レティシアは自分の聞き間違いかと思って聞き返した。
「・・・はい?
すっ、すみませんマコトさん、よく聞き取れなかったので、もう一度お聞きしてもよろしいですか?」
マコトは表情を変えずに、同じ内容を繰り返した。
「レティシアのことを口説いても構わないか、と言ったんだ。」
聞き間違いではなかったとわかり、レティシアは途端に顔を真っ赤にしながら慌てはじめた。
「わっわっわっ私のことを、まっまっまっマコトさんが、くっくっくっ口説いてくださるんですか!?
・・・じょっじょっじょっ冗談・・・ですよね?」
最後は何とか取り繕ったものの、レティシアの顔は真っ赤なままだ。
周りのメイドたちも、先程までの緊迫感は消えており、いつも通りの雰囲気に戻ったことで表情を緩めていた。
対してマコトは、いつも通りの変わらぬ表情のまま、真面目な口調で答えた。
「もちろん本気だ。
レティシアのようないい女を口説かないなんてありえないだろ。」
「わっ、私がいい女だなんて・・・でっ、ですが、私は人妻ですよ?」
「それは正しくないな。
全神は既に亡くなっているんだから、レティシアは未亡人だ。
それは事前に説明したときに、レティシアも理解して受け入れたはずだ。
つまり、今のレティシアには相手が誰もいない、ということになる。
だったら俺が口説いても何も問題無いはずだ、違うか?」
「そっ、それはそうですが・・・」
「別に今すぐ答えを出して、俺の女になってほしいと言っているわけじゃない。
ただ、俺がレティシアを口説いてもいいか、と聞いているだけだ。
それとも俺のことがそんなに嫌いか?」
このマコトの言葉に、レティシアは反射的に反論した。
「そんなことはありません!
これまでマコトさんは、傷心の私に対して優しく紳士的に接してくれました!
そして弱っていた私につけ込むことだってできたはずなのに、今もこうして正面から私と向き合ってくれています!
そんなマコトさんのことを好きになりこそすれ、嫌いになるなんて絶対にありません!
・・・はっ!・・・」
思わず口にしてしまった自分の言葉で、レティシアは更に顔を真っ赤にしながらうつむいてしまったのだった。




