メイドたちの秘密2
すぐにトウカがその意味を尋ねてきた。
「れっ、レティシア様、それはどういうことですか?」
しかしレティシアはトウカの問いにすぐ答えず、まずはマコトへと確認を行っていた。
「・・・マコトさん、話しても構いませんね?」
「ああ、皆にも知っておいてもらった方がいいだろう。
そのために今いる全員を集めたんだからな。」
「マコト様まで・・・いったいどういうことなんだ!」
トウカはとうとう我慢できなくなり、声を荒げてマコトへと詰め寄ろとした。
そんなトウカをレティシアがなだめた。
「落ちついてください、トウカさん。
順番に説明します。
その前に確認しますが、あのとき皆さんは、どこで何をしていましたか?」
トウカは逸る気持ちを何とか抑え、当時のことを思い出しながらレティシアの質問に答えた。
「・・・忘れもしません。
あのときはメイドたち全員で、お腹が大きくなったイレーヌの傍で休憩していました。
ですが、それがどうかしたのですか?」
「では私が何をしていたのか、覚えていますか?」
「もちろんです。
あのときレティシア様は、イレーヌの夫である医師と話があるとおっしゃられて、2人でレティシア様のお部屋におられました。
そのため部屋の中には、他に誰もついて行かなかったのですから。」
「そうです。
ではそのとき私と医師が、どのような話をしていたか知っていますか?」
「いえ、そこまでは聞いておりません。」
「実はあのとき私は、自分が妊娠したのではないか、そう思って医師に相談していたのです。
そしてその予想は当たっていました。」
「ではあのときレティシア様は、既にご懐妊されていたということですか?」
「そうです。
私は驚かせようと、あの人が留守のときを狙って医師に相談しました。
しかしこれが裏目に出てしまったのです。」
「裏目?・・・いったい何があったのですか?」
「私が妊娠していると判明した瞬間、私はなす術なく医師によって拘束されてしまいました。」
「えっ?・・・何故イレーヌの夫である医師が・・・いったい何があったのですか!」
突然レティシアから語られた衝撃の事実に、トウカは混乱しながらも、すぐに理由を尋ねた。
だがレティシアから明確な答えは返ってこなかった。
「・・・わかりません。
当時私は訳もわからない内に捕らえられ、気づいたときには意識にもやがかかった状態で、何かの液体の中に閉じ込められていました。
2ヶ月ほどそのような状態で過ごした後、そこで私の意識は一度完全に途絶えたのです。
そして次に目を覚ましたときに最初に目にしたのが、こちらにいるマコトさんたちだった、というわけです。」
その話を聞いて、すぐにトウカはマコトへと詰め寄った。
「マコト様!いったいどういうことなんだ!
何故今まで私たちにレティシア様のことを黙っていたんだ!」
しかしその疑問に答えたのはレティシアだった。
「待ってください、トウカさん!
マコトさんは私や皆さんのために、今日まで皆さんに黙っていたのです!」
「・・・それはどういうことですか?」
「マコトさんに助け出されてすぐの私は、心身ともに激しく衰弱していました。
特に心の方は、ちょっとしたことで壊れそうなくらい、とても脆くなっていました。
そのためマコトさんたちは、そんな私の心を介抱するために、これまで皆さんに秘密にしていたのです。
もし私があの状態のまま皆さんに逢えば・・・きっと皆さんのことを恨んで、責めてしまったはずですから。
そして皆さんは、そんな私の言葉を何も言わずに受け入れてしまう。
しかしそれでは、お互いに間違ったままになってしまい、私は激しく後悔したことでしょう。
ですが今はこうして、落ちついて真実を受け入れることができるようになりました。
だからこそマコトさんも、私と皆さんが逢うことを許してくださったのです。」
レティシアから真実を聞き、トウカはすぐにマコトと謝罪した。
「そうだったのですか・・・マコト様、申し訳ありませんでした。」
「いや、気にしなくていい。
どんな理由があるにせよ、俺がレティシアのことを皆に黙っていたことは間違っていないからな。」
「そんなことはない!
マコト様は私たちのことを想って、まだレティシア様のことを教えるべきではないと判断したんだろう?
そんなマコト様の優しさを私は・・・」
落ち込むトウカだったが、突然マコトがトウカを優しく抱きしめた。
「何度も言わせるな。
わかってくれたなら、それでいい。
この話はもう終わりだ、いいな?」
「はい、マコト様。」
このときトウカは、皆の前だということも忘れて、メイドではなく、マコトの女としての顔になっていた。
それを皆も羨ましそうに見ていた。
そんなトウカや皆の姿を見て、レティシアが嬉しそうにしながらも、少し楽しそうにしていた。
「ふふふふっ、トウカさんはマコトさんのことが本当に大好きなんですね。
それに皆さんも。
そしてマコトさんも、そんな皆さんのことが大好きで、とても大事な存在なのです。
ですからここは私に免じて、どうかマコトさんのことを許してあげてください。」
レティシアなりに場の雰囲気を和ませようと、そのようなことを言ったのだとすぐにトウカも気づいた。
「もっ、申し訳ありません、レティシア様!
おっ、お恥ずかしい姿をお見せしてしまって・・・」
珍しく皆の前で顔を真っ赤にしながらアタフタするトウカの姿に、レティシアは更に楽しそうな表情をしていた。
「そんなことはありませんよ。
トウカさんのそのような姿が見られて、私としても一安心しました。
しかしあのトウカさんが、ここまでマコトさんのことを・・・」
「そっ、それ以上はお許しください、レティシア様。
私自身もこれほどまでに、マコト様が大切な存在になるとは思っていなかったのですから・・・はっ、わっ、私ったら何を・・・」
恥ずかしさのあまり何も言えなくなってしまったトウカの姿に、それ以上はレティシアも悪いと思ったのか、その場はおとなしく引き下がった。
「ふふふふっ、そうですね、少し意地悪を言ってしまいました、許してください。」
「いっ、いえ、お気になさらないでください。」
「では話を元に戻しましょう。」
「お願いします、レティシア様。
ではいくつか私の方からもお聞きしてもよろしいでしょうか?」
気を取り直してトウカは、レティシアへ質問をはじめようとした。
「構いませんよ、と言いたいところなのですが、私自身が知っていることは、今話したことが全てです。
すみません、お役に立てなくて。」
「いっ、いえ、レティシア様はほとんど意識が無い状態だったのですから、それは仕方がないことです。
しかしそうですか・・・」
どうしたものかとトウカが悩んでいると、そこへレティシアが解決策を提案してくれた。
「ですからここからは、知っている方にお願いしましょう。
お願いできますか、マコトさん?」
「わかった。
それで、何が聞きたいんだ?」
レティシアに頼まれ、それをあっさりと受けたマコトは、トウカに内容を確認した。
すぐにトウカも話の流れに乗り、レティシアにしようとしていた質問をマコトへとしはじめた。
「では、イレーヌの夫だった医師について教えてくれ。
私が知る限り、普通の医者だったはずだ。
しかしレティシア様に何もさせずに拘束してしまうとは、いったい何者だったんだ?」
「トウカの言う通り、普通の医師だ。
だが、その内に疑似人格が潜んでいた。
そしてレティシアの妊娠が発覚した瞬間に、その疑似人格が元の人格を喰らって、無防備なレティシアを拘束して攫ったんだ。」
「また疑似人格か・・・連中はどこにでも潜んでいるんだな。」
「別にどこにでも潜んでいるわけじゃない。
当然以前から狙われていたからだ。」
「つまりあの御方が狙われていたというわけだな。」
「いいや、それは違う。
最初から狙われていたのは、レティシアの方だ。」
「それはレティシア様を捕らえて、あの御方に言う事を聞かせるためだった、というわけか?」
「それも違う。
連中の狙いは、レティシアのお腹の中の子供だ。
正確には、自我が芽生える前の胎児を確保したかったんだ。
皆があの御方と呼ぶ人物、全神の能力を受け継ぎ、そして超える可能性を秘めた子供をだ。
しかしここで連中にとって誤算が2つ起こった。」
「誤算?」
「そうだ。
まず1つ目の誤算、それは、レティシアのお腹の子供が奇形児だったことだ。
子供は生まれつき皮膚が無く、身体の結合が弱かったため、人としての形を保つことができなかった。
そのため出産した瞬間に、死ぬ運命だったんだ。
だが連中は必死に人としての形を保てるよう、何とか生まれる前に、人としての形を整えてから皮膚を与えようとした。
しかしその試みは失敗し、レティシアのお腹の子供は、生まれる前に死亡してしまった。」
「そんな・・・それではレティシア様がお心を痛めて壊れそうだったというのは・・・」
「・・・ええ、そうです。
お腹の子供が生まれる前に死亡してしまったと聞いたとき、母親として自分の身を引き裂かれるよりも辛かったからです。
ですがそれ以上に、私の心を苦しめることが起こっていたのです。
私を捕らえた者たちは、死亡してしまったお腹の子供を、その後も利用したのです。」
「何という卑劣なことを・・・レティシア様、お辛いとは思いますがお教えください。
連中は、死亡してしまったお腹のお子様に、いったい何をしたのですか?」
「それは・・・」
レティシアは辛そうにしながらも、何とかトウカの質問に答えようとしたのだった。




