ルフェの秘密19
ミザリィとナタリィだ。
「第一世代の神様って、どんな神様だったんですか!」
「第三世代も気になる。」
どうやら空気を読んだわけではなく、質問したくてうずうずしていたようだ。
ルフェはその流れに乗り、2人の質問に答えた。
「そういえばまだ教えてなかったね。
まず第一世代だけど、そこら中に湧いてるよ。」
「えっ?」
「第一世代って言うのは、魔獣や神獣もどきのことだからね。」
「えーっ、魔獣とか神獣って神様だったんですか!
それって魔獣や神獣が、元々は人だった、ってことですか?」
これまでさんざん倒してきた相手が実は神だったと知ってミザリィが驚いていると、1点だけルフェが訂正してきた。
「そういうこと。
だけど1つだけ勘違いしているよ。
神獣じゃなくて、神獣もどき、ね。
これ重要だから、そこんとこ間違えないように気をつけて。」
「それってどういうことですか?」
「一般的に神獣と呼ばれているのは、元々魔獣のことなんだよ。
だけどその姿が魔獣っぽくないのと、神力を内包していることから、とりあえず神獣って呼んでるだけ。
だから私たちの間であれは、神獣もどき、なんだ。
そもそも本当の神獣に対して失礼だからね。」
「本当の神獣?」
「そうだよ。
だって真に神獣と呼べる存在が、第四世代にいるからね。」
「そうなんですね・・・どんな神様なんですか?」
「それは、逢ってからのお楽しみ、だね。
まぁそう遠くない未来に、あっちから接触してくると思うし。
だからそれまで正体については秘密だよ。」
「気になるけど・・・わかりました。」
「それと魔獣には、第一世代として生み出された、原初の魔獣、っていうのがいるんだけど、こいつらが結構厄介なんだよね。」
「原初の魔獣、ですか?
そんなに強いんですか?」
「強さはたいしたことないよ。
普通に魔神力が使えれば、簡単に倒せるくらいだからね。
ただ厄介なのが、臆病で隠れるのが上手くて逃げ足が速い上にしぶとい、ってとこなんだ。」
「うわぁ面倒臭そう。」
「まぁだてに今まで生き残ってはいないってことだよ。
それと異常なまでに繁殖力が高くて、今いる魔獣や神獣もどきは、ほとんどがその子孫なんだ。」
「うわぁ更に面倒臭そう。」
「まったくだよ。
だから見つけたら確実に倒してほしいんだよね、それも徹底的に。
あいつら生命力だけは高いから、どれだけ瀕死の状態になっても、生きていればすぐに再生して復活しちゃうんだよ。」
「わかりました。
もし見つけたら跡形も無く消滅させときます。」
「頼んだよ。
ちなみに一部自然発生する魔獣もいるけど、生まれ方が違うだけで、どっちの魔獣も存在としてはほとんど違いが無いよ。」
「そうなんですね。
そういえば原初の魔獣かどうか、見分ける方法とかってあるんですか?」
「あるよ。
原初の魔獣には、核が3個以上存在するんだ。
だから魔力感知したときに、2個以上の複数の核を感知したら、そいつが原初の魔獣だよ。
ただあいつらを倒すには、その核を全て同時に破壊、もしくは無効化するしかないから、かなり面倒なんだよね。」
「そうですか?
アイテム化させなくてもいいなら、核ごと魔獣を消滅させればいいじゃないですか。」
「それで倒せれば簡単なんだけど、そうもいかないんだよ。
厄介なことに、あいつらは体内の核を1つだけ外に出すことができるんだ。
つまり体内に全ての核が存在していない場合があるんだよ。
もし1つでも核が無事だと、そこから1日くらいで再生しちゃうからね。
しかも核の数も、元に戻っちゃうし。」
「うわぁ・・・もう存在自体が面倒臭いですね。
でもそれってどうやって倒すんですか?
常に核が1つ体外にあったら、倒しようがないじゃないですか。」
「大丈夫、ちゃんと方法はあるよ。
まず原初の魔獣を見つけたら、倒すんじゃなくて拘束すること。
このとき拘束するのは原初の魔獣の本体で、核が2つ以上存在していないと駄目だよ。」
「でもそれだと、体外の核に逃げられちゃったら駄目じゃないですか?」
「ところがそうじゃないんだなぁ。
体外に出した核は、本体との距離が離れれば離れるほど、更に時間が経てば経つほど、核としての機能を維持できなくなるんだよ。
これは本体の核から体外の核へ供給される魔力や神力が、物理的な距離で減衰していくのと、体外に出た時点で存在を維持するための力の消費量が供給量を上回るからなんだ。
そして維持するのに最低限必要な魔力や神力が足りなくなると、体外の核は勝手に無効化されてしまうんだ。
仮に本体から100m離れた状態だと1ヶ月、1km離れた状態だと3日もあれば核が勝手に無効化されちゃうだろうね。
ちなみに本体を異空間に隔離すれば、魔力や神力の供給を完全に遮断できるから、体外の核がどこにいても1日ほどで無効化されるよ。
そして体外の核が無効化された状態になると、本体の方で無効化された核が復活するってわけ。
そうなれば全ての核が本体に揃うから、その状態で本体を消滅させれば、原初の魔獣を倒すことができるんだよ。
でも体外の核が無効化される前に本体の方の核を無効化させちゃうと、無事な体外の核の方で他の核が復活しちゃうから、また一からやり直しになっちゃうんだ。」
「倒すのにずいぶん手間がかかるんですね。」
「こればっかりはしょうがないね。
だけど今説明したのは、あくまで原初の魔獣を発見した後の話だよ。
大変なのは原初の魔獣の本体を見つけて拘束することなんだ。
あいつらは常に多数の魔獣や神獣もどきと群れを作っていて、しかも前には出てこないで後方の安全な場所からいつでも逃げられるようにコソコソ隠れてるんだ。
少しでも異変を感じると群れを犠牲にして、その隙に逃げちゃうから捕まえること自体が難しいんだよ。」
「・・・なんか関わらずに放置しておきたくなってきました。」
「わかる、わかるよその気持ち。
私だって害が無ければ、放置しておきたいもん。
でもね、あいつらがいるとその繁殖力の高さから、群れが一気に大きくなるんだ。
しかも原初の魔獣は、直系の子孫に対して絶対的な命令権を発動することができる、群れの支配者として君臨しているんだ。
だから原初の魔獣を1体見つけたら、群れには確実に100体の忠実な僕がいると思っていた方がいいよ。
そして群れが大きくなると様々な交配や実験が試されて、中には強力な魔獣や神獣もどきが誕生する可能性があるんだ。
まぁそれもあって群れは100体前後までにしか増えないんだけどね。
だけど場合によっては、国を亡ぼすことができるくらいまで強力な群れに成長しちゃうかもしれないんだよ。」
「さすがにそれを放置することはできないですね。
でもそんな昔からいるのに、何で今まで原初の魔獣が率いる群れに遭遇したことがないんでしょうか?
だってこれまで魔獣の群れに何度か遭遇したことがあるけど、そこまで強力な個体はいませんでしたよ。」
「さっきのはあくまで最悪の可能性を話しただけだからね。
まぁ基本的に原初の魔獣ってビビりだから慎重なんだ。
自分の駒になる群れの数を極端に減らすような、無茶な交配や実験は行わないはずだよ。
それにわざわざ敵を作って、自分の身を危険にさらすようなことはしないだろうね。
つまり自分の身の安全を確保するために群れの数を維持することが最優先で、強力な個体を創ることについては優先度が低いんだ。
そのおかげでこれまでそんな強力な固体ばかりの群れが発見されたことはないはずだよ。
だから余程のことが無い限りは、あっちから接敵してくることはないだろうね。」
「そうなると余計に探すのは大変そうですね。」
「そうでもないよ。」
「どうしてですか?」
「だってこっちにはアイ姉がいるじゃない。」
「・・・あっ、そっか。
アイさんなら記録から原初の魔獣の場所も・・・」
「そっ、簡単に見つけることができるはずだよ。
でも今は緊急性が低いから、放置してるんじゃないかな。」
「それってつまり、原初の魔獣の群れに、脅威となる強力な個体はいない、ってことですね。」
「そういうこと。
まぁその内マコトの方から、訓練を兼ねてとか言って、討伐でもするんじゃないかな。
だからそれまでは無理に探す必要は無いと思うよ。」
「それもそうですね。」
ミザリィはルフェの言葉に納得し、そのときが来るまで自分からは動かないことを決めたのだった。




