ルフェの秘密17
そんなサラの心情に気づきながらも、ルフェはそのことには触れずに説明に移った。
「それじゃぁ答え合わせしよっか。
まずは1つ目の方法についてだね。
異なる2つ以上の神力を融合させて新たな力を生みだすことを、古代文明の研究者たちは、双重合神法って呼んでいたんだ。
昔は神力まで高めた、魔神力以外の2つの力を融合するだけだったけどね。
これは皆が言っている、発現者や継承者としての力のことだよ。
権能を防ぐには、この発現者や継承者としての力を2つ以上の融合して、新たに作った力を使用する必要があるんだ。」
このルフェの答えを聞いて、サラは自分の考えが間違っていないことを確信し、内心喜んでいた。
しかしそんなサラの考えを見抜いてか、ルフェが注意点を付け加えた。
「ただし力としては正解なんだけど、これは個人でできるようにならないと駄目だね。
2人で作った力だと、どっちか1人は完全に無防備になっちゃうから、簡単に無力化されちゃうよ。
そうなると力の維持ができなくなっちゃうから、結局共倒れになっちゃうでしょ。」
ルフェの指摘に、サラはそうなったときの状況を想像してすぐに納得した。
「確かに・・・その指摘は最もですね。」
「それとこの方法の場合、権能を完全に防ぐには、もう1つ条件が加わっちゃうんだよ。
それが、権能を使う者の力と同等以上の力で防ぐこと、なんだ。
つまり完全に権能を防ぐには、1人で2つ以上の発現者や継承者としての力を持ち、それを融合して作った力が、権能の持ち主の力を上回る必要がある、ってことなんだよ。
ただ力が下回っていた場合でも、ある程度は権能の効果を軽減することが可能だよ。」
「試練を受けた3人と同じくらいの力を持つ今の私たちでは、まだ個人で権能に対応するのは不可能、ということですね。」
「1つ目の方法ではそうだね。
まぁ私が見たところ、近い内に何人かはそれも可能になるんじゃないかな。
いやー、こうも逸材が揃っていると、教えがいがあるってもんだよ。」
「ご期待に添えるよう、より一層の努力に努めます。」
「うんうん、本当に楽しみだよ。
で、次に2つ目の方法、精神面から防ぐ方法だけど、そのために必要なのが、無私無欲の境地に至ること、だよ。」
初めて聞く言葉だったものの、サラは自分なりに解釈してみせた。
「無私無欲、ですか・・・つまり意識的に自分の感情を殺して余計な欲を捨てる必要がある、ということでしょうか?」
しかしルフェが望む内容ではなかったようだ。
「うーん、それだと違うんだよね。
私たちの権能が利用するのは、相手の無意識下にある欲望や感情なんだよ。
いくら表面上の欲望や感情を制御しても、全く意味が無いんだよね。」
「無意識下、ですか?」
「そうだよ。
感情や欲望というのは、本人が自覚しているものだけだと勘違いすることが多いんだけど、実際にはそうじゃないんだ。
本人が自覚していない感情や欲望が、無意識下には存在するんだよ。」
「しかしそれでは防ぎようが無いのではありませんか?」
「確かに普通だと無理だね。
だからこそ私たちは、神を管理する神として、第四世代以前の神たちを制御することができたんだから。」
「神にも、無意識下には感情や欲望がある、ということですね。」
「まぁ神とはいっても、元は人から創られた神だからね。
むしろ無意識下の感情や欲望はかなり多いよ。
だからこそ私たちの権能が有効で、容易に管理することができていたんだけどね。」
「なるほど・・・ですがそうなりますと、ますます防ぐことは難しいのではありませんか?
そもそも無意識下の感情や欲望を利用されないようにすることなど可能なのでしょうか?」
「できるかできないかと言われれば、答えは、できる、だよ。
ただ私もどうやってやるかまでは知らないけどね。
あくまで知っているのは、無私無欲の境地に至ることで、権能を防ぐことが可能だってことなんだ。」
「つまりルフェさんにはできないけれど、それをできる人に逢ったことがあり、実際に権能が効果を発揮しなかったことがある、ということですか?」
「そういうこと。
私がこれまで逢った中で、私の権能が効かなかったのは9人。
6人は同じ第五世代の神となった姉妹たち。
どうやら権能は別の権能をぶつけると、効果が打ち消されちゃうみたいなんだよね。
ただし1つの権能に対して、打ち消すのに必要な権能は1つだから、権能の数が多ければ効果を発揮するよ。」
「効果は違っても権能事態に優劣は存在しないということですね。」
「そうだよ。
そんな私たち第五世代の神以外で権能を防いで見せたのが、第六世代の神になっちゃった末の妹なんだ。
最初は効果があったんだけど、戦闘中に急激な成長を遂げていたから、おそらくは1つ目の方法を使ったんじゃないかと考えてる。」
「確かに・・・ですが疑問があります。
先程のマコト様のお話しでは、第六世代の神となった末の妹さん1人に対して、ルフェさんたちは7人で協力したと聞きました。
1つ目の方法で7つの権能を同時に防ぐことは可能なのでしょうか?
もしかして権能は、同時に使用すると打ち消し合ってしまい、重ね掛けすることができないのでしょうか?
そうなのでしたら、1つ目の方法で対処可能だとは思いますが・・・」
このサラの仮説を、ルフェは否定した。
「うーん・・・正直な話、普通は1つ目の方法で7つの権能を全て防ぐことは無理だと思う。
確かに権能は権能で打ち消すことができるけど、それは権能に権能をぶつけた場合だけだからね。
だから対象者に対して権能を使った場合は、重ね掛けすることが可能なんだ。
ただし同じ権能を同じ場所に複数重ね掛けすることはできないっていう制限はあるけどね。
あの戦いで私たち7人は、末の妹に対して7人が権能を同時に重ね掛けしていた。
だけど次第に効果が弱まってしまったことによって、力関係が逆転しはじめちゃったんだ。
当時は完全に防がれるところまではいかなかったけど、おそらくあのまま続けていたら確実に権能は無効化されてただろうね。
たぶん末の妹の力が、私たち7人の力を合わせたものよりも、強くなりかけたことが原因だと思うよ。」
「そうですか・・・」
ルフェの話を聞いてサラは自分なりに当時の状況を分析してみたものの、すぐに答えが出てはこなかった。
そのためルフェは、サラの答えを待たずに、話を先に進めた。
「まぁ話を戻すけど、残りの権能が効かなかった2人については、そこにいるマコトとシルフィナだよ。
無私無欲の境地については、そのときマコトから聞いたんだ。
だからどうやってやるかについては、マコトかシルフィナに聞いてみるといいよ。」
「そうなのですね。
マコト様、こうルフェさんは仰っていますが、無私無欲の境地について教えていただくことは可能ですか?」
「それは別に構わないんだが、説明するのが難しくてな。
簡単に言えば、無意識下の感情や欲望を理解して受け入れ、外部からの干渉を一切受けないように全て受け流すことだ。
ただしこれは俺の感覚で説明した場合だ。
別の言い方をすれば、明鏡止水や無我の境地なども当てはまる。
これは人によってとらえ方や感覚が違うからだ。
それを無双流では統一して、無私無欲の境地、と呼んでいる。」
「つまり人によって千差万別の方法が存在するため、自分なりの方法を自分自身で見つけるしかない、ということでしょうか?」
「そういうことだ。
ちなみに無双流では、無私無欲の境地を会得することが、皆伝の条件の1つだ。
今後の訓練で、皆にも会得してもらう予定だが、今はまだ考える必要は無い。」
「わかりました。
ですがよろしければ、私たちが今現在で、無双流でどの程度の伝位にまで達しているのか教えていただけないでしょうか?」
「サラたちの大半は、現在のところ中伝といったところだな。
これは発現者か継承者としての力で神力を1つ使いこなし、更にそこへ魔神力を喰わせることができるようになることが条件だ。
そこに特性を使いこなすことができれば奧伝で、シーノたちがこれに該当する。
ちなみに初伝は、神力以上の力を使えるようになることだ。
そして皆伝は、2つ以上の発現者や継承者としての力で発動した神力を1人で融合できるようになり、無私無欲の境地に至ることだ。
今のところ皆伝はエイリだけだな。」
この話を聞いてサラは一瞬だけ、離れた場所でエマを抱っこしながら楽しそうにしているエイリへと視線を向けた。
「エイリさんが・・・只者ではないと感じてはいましたが、そこまでの実力者だとは思いませんでした。
ですがわからないことがあります。
マコト様はともかく、何故シルフィナさんの名前が皆伝の中に出てこなかったのでしょうか?」
サラの疑問に対して、マコトは隠さずにすぐ答えた。
「当然だ。
シルフィナは唯一皆伝の上に位置する、極伝、だからだ。
極伝の条件については、説明が難しいので省かせてもらう。
まぁそういうものだと思っていてくれ。」
マコトの説明には謎が多く残るものの、サラは規格外の実力を持つシルフィナのこととあって、最後の言葉に納得していた。
「詳細が気にはなりますが、マコト様がそう仰られるのでしたら、そういうものだと思っておきます。」
「頼む。
他に聞きたいことはあるか?」
「・・・いえ、今は大丈夫です。」
サラはマコトについても聞こうか迷った。
無双流の創始者であり、シルフィナを軽くあしらえる実力を持っているのだから、極伝の上であることは確実である。
しかし話の流れからマコトが自分のことについては何も触れなかったので、おそらく今は聞いても教えてもらえないだろうと感じたからだ。
そのため何も聞かずに質問を終えたのだった。




