ルフェの秘密15
しばらくして、ようやくルフェが泣き止んで落ちつきを取り戻すと、少し恥ずかしそうにしながらアイから離れた。
「・・・あの・・・ありがとう、アイ姉。
恥ずかしい姿を見せちゃってゴメンね。」
「いいえ、気にしないでください、ベルフェゴールさん。」
「ダメだよアイ姉、ルフェ、だよ。
昔みたいにそう呼んでもらえないかな?」
「いいのですか?」
「うん、その方が嬉しいから。」
「わかりました、ルフェさん。」
「ルフェ。」
「しかし・・・」
「ルフェ。」
全く引く気が無いルフェの姿に、とうとうアイの方が折れた。
「・・・わかりました、ルフェ。
これでいいですか?」
「うんっ、アイ姉!」
今のアイを受け入れたルフェは、嬉しそうにしていた。
そんなルフェの姿を、アイも優しい笑顔を浮かべながら見つめていた。
そこへ少し申し訳なさそうにしながらも、ベルが2人に話しかけてきた。
「最初はどうなるかと思ったが、ルフェも大丈夫そうだな。
それにしても先程のアイの姿を見る限り、以前マコトが言っていた仮説が正しいという信憑性が、かなり増してきたぞ。」
「仮説ってどういうことなの、ベル姉?」
「私たち姉妹が全員集まれば、アイの記憶が戻るのではないかというものだ。
先程ルフェを抱きしめていたアイの姿は、雰囲気も昔に戻ったようであった。
おそらくルフェと再会したことで、無意識に身体が当時を思い出したのではないかと思うがな。」
「じゃぁ他の皆のことも見つけてアイ姉に逢せれば・・・」
「うむ、アイの記憶が戻って、昔と変わらぬ姿を見せてくれるかもしれぬ。」
この話を聞いて、ルフェがすぐに行動しようとした。
「だったら早く皆を探しに行こう、ベル姉!」
今にもこの場を飛び出して行きそうなルフェだったが、それをベルが冷静に引き止めた。
「慌てるでない。
先程マコトが言っていたように、1人は近い内に向こうからやってくるのだ。
残る2人はいまだに行方がわからぬが、私たちが闇雲に探しても簡単には見つからぬであろう。
しかしマコトやアイが探してくれておるのだから、そちらは任せておけばよい。
私たちは私たちのできることをする、それが最善なのだと私は思うぞ。」
「私たちのできること?」
「そうだ。
まずはひよっこ共を鍛えることだ。
それはマコトの手伝いにもつながる。
つまり少しでもマコトに余裕が出来れば、その分皆の捜索がはかどるというもの。
そうは思わぬか?」
ベルの説明にルフェは少し考えたものの、すぐに納得した。
「なるほど・・・よーしっ、私も頑張るよ、ベル姉!」
「その意気だ、ルフェよ。」
「というわけで、これからは私もベル姉と一緒に、皆のことをガンガン鍛えちゃうからね!
アイ姉、私頑張るよ!
そしてアイ姉の記憶を、絶対に取り戻して見せるからね!」
張り切るルフェの姿に、アイは更にやる気が増す答えを返した。
「ええ、お願いね、ルフェ。」
「うんっ!」
そんな気合いの入ったルフェの姿を確認してから、アイはその場を離れることにした。
「・・・さてと、それじゃぁ私はマコト様にフィマちゃんを頼まれているから、そろそろあっちに戻るわね。」
「えーっ、まだいいじゃん!」
文句を口にするルフェの頭を撫でながら、アイは優しく諭した。
「大丈夫よ、これからはいつでもすぐに逢えるのだから、慌てる必要はないわ。
だから今はお互いにできることをしましょう。」
「・・・わかったよ、アイ姉。」
渋々ではあるが、ルフェが納得したのを確認してから、アイはマコトへと許可を求めた。
「ではマコト様、私は戻りたいと思いますが、よろしいでしょうか?」
「ああ、途中で呼び出して悪かったな。」
「お気になさらないでください。
マコト様にお声がけしていただけるだけで、私は幸せなのですから。」
「そうか。
引き続きフィマのことを頼んだぞ。」
「はい、お任せください、マコト様。
ベル、ルフェのこと助けてあげてね。」
「うむ、こちらは任せてくれ。」
「お願いね。
ルフェも頑張ってね。
それと後で時間を作るから、またそのときにゆっくり話しましょう。」
「本当!約束だよ!」
「ええ、必ず。
約束するわ。」
「うんっ、私頑張るよ、アイ姉!」
アイは元気いっぱいに応えたルフェの姿を楽しそうに見ながら、その場から離れていった。
その後ろ姿を見届けてから、ルフェはやる気に満ちた顔で、これからのことをマコトに尋ねてきた。
「・・・よーしっ、マコト、私は何をすればいいの!
何でも言ってよ!」
「とりあえず当面の間は、ベルと共に皆の訓練の手伝いを頼む。」
「任せてよ!
どうする、この後すぐに訓練はじめちゃう?」
完全にやる気になっているルフェであったが、それは叶わなかった。
「いや、さすがに今日はもう遅いからな。
それは明日の早朝訓練からだ。」
出鼻を挫かれたルフェであったが、特に気にした様子は無いようだ。
「残念だけど、まぁしょうがないね。
じゃぁ明日から頑張っちゃうよ!」
「ああ、頼む。
だがその前に、ルフェには他にやることが待っているぞ。」
「やること?何かあったっけ?」
「忘れているようだが、さっき一通り説明してから、質問の途中だっただろ?
皆知りたいことがいろいろあるみたいだから、早く次の質問がしたくてうずうずしているぞ。」
「あっ・・・忘れてた。
よーしっ、皆の質問に答えちゃうよ!
ただ、答えられる範囲でだけどね!」
このルフェの言葉を聞き、待ってましたと皆からの質問が殺到した。
まずは武人族の4人だ。
「ルフェは神だったのですね。」
「道理で桁外れに強いはずだ。」
「しかし今は神としての身体ではなく、人としての身体なのですよね?
神の力を使っても問題無いのですか?」
「うむ、それは気になるところじゃな。
先程の儂らとの模擬戦では、大丈夫そうではあったが、実際のところはどうなのじゃ?」
「あー、それなら大丈夫。
だってさっきは神としての力を全然使ってないから。」
このルフェの言葉に、イクスは驚きの声をあげた。
「えっ?・・・それはつまり、神となる前から、あれだけの強さを持っていたということですか!」
「そういうこと。
まぁ久しぶりに自分の身体に戻ったから、まだ完全には馴染んでないけどね。」
「それであの強さか・・・悔しいが今は素直に負けを認めるしかないな。
だがいつか必ず追いつき、そして追い越して見せるぞ!」
「いつでもかかってきなさい。」
熱くなっているルフェとノーラだったが、アーシアが気になっていた疑問を口にした。
「では、ルフェの神としての力とは、どういうものなのですか?」
この質問にどう答えたものかと迷ったルフェは、マコトへと確認を行った。
「うーん・・・マコト、これって説明しちゃってもいいの?」
これに対してマコトの答えは、あっさりしたものだった。
「別にルフェが問題無いなら、話しても構わないぞ。」
マコトにそう言われ、ルフェは少し迷うと、今度はベルへと意見を求めた。
「・・・ベル姉、話しちゃっても大丈夫かな?」
これに対するベルの答えも、実にあっさりとしたものだった。
「いいのではないか?」
「そんな簡単に・・・」
「別に何も考えていないわけではない。
むしろ今後のことを考えれば、知っておいてもらった方がいいかもしれぬと、私は思っておる。」
「どういうこと?」
「今後皆とは共闘することもあるはずだ。
そのときに私たちの神としての力について事前に知らぬと、下手をすれば巻き添えを食うかもしれぬ。」
「あー・・・確かにあり得ない話じゃないね。」
ルフェはベルの指摘を聞いて、その状況を想像すると、自分たちの神としての力を説明することに納得したのだった。




