ルフェの秘密13
この事実を知ったことによって、まずは皆の注目がベル個人へと移った。
更にマコトは残りの4人について話を続けた。
「一方、他の姉妹たちはどうしているのかというと、1人は魔族の女性に宿り、今も世界中を調査して回っている。
おそらく近い内に姿を見せてくれるはずだ。
しかし2人はいまだに行方がわからず、現在調査中だ。」
「そして最後の1人だが、目覚めたのは5人の中で一番早かったんだ。
宿主の女性はエルフ族で、最初に宿った女性の娘だった。
こちらもベルと同じく、表に出て自由に行動することができなかったので、まずは情報収集を行っていた。
だが数年ほどして転機が訪れた。
宿主の女性は奇跡的な偶然により、ある場所へと迷い込んでしまうことになる。
そこは物質世界と精神世界の狭間、夢幻の森だったんだ。」
「今更もったいぶってもしょうがないから先に教えておくが、これはルフェのことだ。
すぐにルフェは宿主の身体から抜け出し、宿主だった女性だけを物質世界へ帰した。
これでようやくルフェは、精神世界限定ではあるが、自分の意思で自由に行動できるようになったんだ。」
「しかしルフェの目的はそれだけではなかった。
夢幻の森を含む精界を管理する者と交渉すること、それこそが真の狙いだったんだ。
それが、第四世代の神の1人、精命の樹だ。」
これを聞いた瞬間、ミザリィ、ナタリィ、シェイラの3人は、驚きのあまり思わず声をあげてしまった。
「えーっ!?」
「あの樹が!?」
「神だったのですか!?」
しかしすぐに3人は、マコトの話に割り込んでしまったことを後悔しながら、これ以上は邪魔をしないようにと、慌てて両手で自分の口を押えた。
それを見てマコトも何も言わず、何も無かったかのように話を続けた。
「これまで精命の樹は、精界を創り、多くの精界の住人を生みだした。
そこには目的があり、当然意思を持っている。
そして精命の樹は第四世代の神の中でも穏やかな性格の持ち主で、ルフェたち第五世代の神に対しても悪い印象は持っていなかった。
そんな精命の樹に、ルフェは自分の素性を素直に明かしたことで信用を得ることに成功し、約定という名のいくつかの交換条件を持ちかけたんだ。」
「まずは精界に留まる許可をもらい、これに対して夢幻の森の番人を引き受けた。
次に1度だけ物質世界で行動できる身体を用意してもらい、精界の有事の際には最優先で手助けすることを約束した。
最後に精界を治める者たちの契約者が現れたときは、その力を借りる許可をもらい、代わりに精界の住人を教育することとなった。」
「こうして互いに持ちつ持たれつの条件を交わした後、ある言葉を残して精命の樹の意識は深い眠りへとついてしまい、現在に至るまで目覚めていない。
どうして目覚めないのかはわからないが、俺は何かを待っているのではないかと考えている。
そのときが来れば再び目覚め、少なくとも敵にはならない、そう思っている。
まぁこれは俺の勘だから、そのときになってみないことには、どうなるかわからないがな。」
「だが根拠はある。
それが精命の樹が残した言葉だ。」
『理を無にせし双極と無数の絆が育まれしとき、世界にはびこりし全ての闇を滅する光りとなるであろう。
しかしそこに至るまでは、引き裂こうとする数多の試練が訪れ、望む未来を掴むことは容易ではない。
苦難の道が続き、何度も挫折を繰り返すことになるであろう。
試練に抗い目的を果たすためには、力と技を磨き、絆を深め、たった1つの可能性を導き出すことが、何よりも大切である。
そして唯一の可能性を辿ることができたときこそ、私も絆の1つとなる、かもしれない?』
最後は何故か疑問形で終わった言葉であったが、気になる気持ちを抑えながら、今は黙ってマコトの話の続きに耳を傾けた。
「この言葉の意味はまだわかっていないが、少なくとも精命の樹を味方に引き入れる必要がある、ということだけはわかる。
そんな謎を残したままではあるが、精命の樹は自分の運命が重なる瞬間を今も静かに待ち続けているのではないか、俺はそう考えている。
「こうした経緯があって、ルフェは長い時を精界で過ごすことになる。
その間にさっきルフェが話していた武人族とのことがあり、今回継承者の3人が試練を終えたことによって、あらかじめ俺が見つけておいた本来の身体に戻ったというわけだ。
ちなみにルフェからの条件にあった探しものというのは、ルフェの本来の身体のことだ。
これが今話せる範囲での、ルフェ、そしてベルの秘密だ。」
一通りマコトの説明が終わり、皆は聞いた話の内容を自分なりに整理しはじめた。
そんな中、真っ先に口を開いたのがホムラだ。
「・・・つまりルフェやベルの目的は、最優先が、今は封印されている破壊神となった妹を元に戻すこと。
そして次に、行方不明になった一番上の姉を探すこと、というわけじゃな。」
これに対して、ルフェが答えた。
「まぁ簡単に言っちゃうと、そういうことだよ。
とりあえずは最優先の方を先に解決しなくちゃだね。
ただそのためには、クリアしなくちゃいけないことが、いろいろあるんだけどね。
まず破壊神となったあの娘をどうやって元に戻すか、その方法がまだわかっていないこと。
またこの世界のどこかにいる、残り3人の魂と身体を探し出さなくちゃいけないこと。
そして封印ごと何処かの異次元に飛ばした3人を探し出さなくちゃいけないこと。
とまぁ、今のところはこんな感じかな。」
このルフェの話に、アーシアが慌てて確認してきた。
「えっ?・・・ちょっ、ちょっと待ってください。
ルフェたちは、封印された3人をどこに飛ばしたのか知っているのではないのですか?」
「いやぁーそれがねぇ、あのとき私たちは瀕死の重傷を負っていたから余裕がなかったのよ。
とにかく異次元に封印を隠すことだけしか考えてなかったから、適当に飛ばしちゃったってわけ。」
これにはイクスも呆れていた。
「適当って・・・」
他の3人も同様で、ルフェのことを白い目で見ていた。
するとその状況を見かねたのか、ルフェの言葉をベルが補足した。
「ルフェよ、お前は本心をうやむやにするために、そのような面倒くさがった振りをして、すぐに話を端折ろうとする。
しかも根は真面目なくせに、恥ずかしがってそれを表に出そうとせん。
そうやって適当な振りをするのは悪い癖だぞ
もっと素直に本心を口にしたらどうだ?」
ベルの言葉に、ルフェは慌てた様子で否定した。
「なっ、何を言ってるのかな、ベル姉は。
私は自分の思ったことを言ってるだけだよ!」
そんなルフェの姿を懐かしむように、ベルは笑顔を浮かべていた。
「ふふふっ、照れることはないぞ。
私たち姉妹は、そんなルフェの気遣いに心を救われている部分もあるのだからな。」
更に慌ててルフェが否定を続けた。
「べっ、別に気を使ってなんて無いんだからね!」
ルフェがあくまでも否定し続けるので、ベルもそれ以上は言及せず、すぐに真剣な表情になって話の続きに戻した。
「まぁそういうことにしておこう。
さて、私からも当時の状況を説明しておこう。
・・・あのときは仕方なかったのだ。
封印をそのままにしていては、他の神たちがどう動くのか、全くわからなかったのだからな。
それに誰も場所を知らなければ、それだけ見つかるリスクも少なくできる。
しかし私たち5人が再び集まることができれば、見つけるのはそれほど難しい話ではないと考えた。
だからあえて場所を決めずに、封印ごと3人を飛ばしたのだ。」
このベルの話を聞いて、ノーラはすぐに納得していた。
「なるほど、それなら仕方ないな。」
他の3人も納得した様子だったのだが、これにはルフェが不満の声を上げた。
「ちょっ、私の言葉には呆れてたくせに、何でベル姉の言葉だと納得してるのよーっ!」
これに対して、4人はすぐさま答えた。
「当然です。」
「説得力が違う。」
「これまでの自分の行動を見つめなおしてみてください。」
「まったくじゃな。」
自分に対する4人の信頼度があまりにも低かったので、今の段階で自分よりも信頼を得ているベルに、ルフェが泣きついてきた。
「ううううう・・・ベル姉、娘たちが冷たいよう・・・」
しかしすぐベルに突っぱねられてしまった。
「お前の自業自得だ。
これに懲りたら、これからは本当の自分をさらけ出すことだ。」
「うっ・・・いいんだいいんだ、どうせ私は信用ありませんよーだ。」
「はぁ・・・やれやれ、どれだけ長い月日が経とうとも、ルフェはルフェなのだな。
だが変わらぬルフェの姿を見て、私は安心したぞ。
アイと再会したときとは大違いだ。」
突然ベルの口から出たこの言葉に、ルフェは思わず固まって目を見開いていたのだった。




