ルフェの秘密11
そんな2人の様子が変わったことには皆も気づいていたが、マコトが話を止めなかったので、黙って続きに耳を傾けた。
「最初に被験者にならないかと誘われたときに、最年少の女性は研究員に協力するどころか、無視して話に耳を傾ける気が全くなかった。
するとそんな最年少の女性の態度を見た研究員は、楽しそうな笑みを一瞬だけ浮かべた。
すぐに笑みは消え、研究員はある言葉を口にした。」
『今お前が置かれている最悪の状況を作ったのは誰だ?
国か?研究者たちか?世界の理そのものか?それとも・・・何もしないで黙っておとなしくしている自分自身か?』
「その言葉を聞いた瞬間、最年少の女性が研究者の方を射殺すような目で睨みつけてきた。
だが研究者は全く意に介さず、内心では楽しそうに心躍らせながら言葉を続けた。」
『図星か・・・ならば1つだけ解決する方法があるぞ。
国を、研究者たちを、世界の理を・・・そして自分自身を・・・全てを破壊して無に帰してやればいい。
お前にはそれを実現することができるだけの力と素質があり、そして・・・資格がある。』
「この研究者の言葉に、最年少の女性はとうとう耳を傾けてしまった。
そのためそれまでの考えとは真逆になる。
無気力から、全てを破壊して全てを無かったことにしてやろう、と。」
「こうして最年少の女性は、研究者の提案を受け入れ、被験者となることになる。
それが最悪の結果をもたらすと気づかずに。」
「それから2年の月日が流れたが、その間支配国や従属国では新たな世代の神が創られることはなかった。
理由として第五世代を超える神の創造に難航したからだ。
それだけ第五世代の神たちは、最も神としての理想に近い存在だったと言える。
その代わりに第一世代と第三世代は、家畜や労働力として数多く創られることになる。」
「その間に最年少の女性を被験者とした研究は密かに行われた。
そして2年の歳月を経て、とうとう新たな第六世代の神、全てを無に帰す破壊神として生まれ変わったのだ。」
「神となった瞬間、破壊神はあらかじめ約束していた行動を行った。
それが、目の前にいた自分を神へと変えた研究者を、消滅させることだった。
自ら創造した最高傑作の手によって、最初にその成果を自身で体験すること、それが報酬だと契約していたのだ。
何故最後ではなく最初だったのか、研究者が何を考えていたのかはわからない。
そのまま研究者は最後まで死の恐怖に怯えることはなく、狂気じみた笑みを浮かべながら、その身体を消滅させ、跡形も無く消え去った。」
「その姿を無機質な表情で見届けてから、破壊神は次の目的を果たすために、そこから移動をはじめた。
移動した先は、支配国の首都上空だ。
支配国では、常に制御下の神たちが不審者に対する警戒を寝ずの番で行っていたのだが、破壊神は誰にも気づかれることなく突然現れた。
そして次の瞬間、まずは神たちの制御を握っている主たちだけを、一瞬で消滅させたのだ。
これによって全ての神は主を失い、それまで捕らわれていた支配から、一斉に解放されることとなる。」
「まず最も数が多い第一世代は、主の支配が途絶えてしまったことで、生存本能が優先された行動に出た。
どのような行動に出たのかというと、ほとんどの第一世代が、圧倒的な恐怖からその場に留まり続けることを嫌い、逃走を選択することになる。
その結果、世界中で一斉に逃走をした第一世代による、一般人たちの大量虐殺が起こってしまう。
これは逃走に巻き込まれる場合もあれば、道中の餌となる場合もあり、世界中は混沌に包まれ、多くの人々が恐怖に震えた。」
「次に第三世代だが、こちらも主の命令が途絶えた瞬間、第一世代と同様にほとんどが逃走をはじめた。
だが決定的に違うのは、本能ではなく高い知性によって考えた結果だったということだ。
一般人には目もくれず、協力して圧倒的な脅威から全力で逃げることだけに集中したのだ。
それでも全員が破壊神から逃げ切ることはできず、最終的に半数以上が消滅することになる。」
「続いて第四世代だが、こちらは主の命令が途絶えてもすぐには行動せず、状況を注視していた。
元々第四世代は数も少なかったため、破壊神もまずは数が多い第一世代と第三世代を優先していたからだ。
この行動が功を奏し、この後第四世代たちは、無事逃走に成功することとなる。」
「最後に第五世代だが、主の命令が途絶えた瞬間、支配が解けて封印されていた自我が奇跡的に戻った。
そしてすぐさまそれを行った存在の許へと向かったのだ。
何故そのような行動を行ったのかというと、神を管理する神として危険な存在を感知した、というわけではない。
とても懐かしい気配を感じ取ったからだ。」
「第五世代の七柱の神たちは、その存在、破壊神の許へとすぐに集まってきた。
そして破壊神の姿を見た瞬間、それが誰なのかを理解した。
昔はとても甘えん坊で、でも姉妹の中で誰よりも優しく、笑顔が絶えない、自分たちの大切な最年少の妹だということを。」
「しかし面影はあるものの、その表情はあらゆる負の感情によって埋め尽くされていた。
破壊神となった最年少の妹は、その心の内側を表に出したかのような、悲しみ、怒り、絶望などをごちゃ混ぜにした、見ている方が辛くなる表情をしていたからだ。」
「それを見て七柱の神たちは、まずは話し合いによって最年少の妹を止めようとした。
だが姉たちの声は妹に届いていないようで、破壊神はその本能の赴くままに、姉たちすら破壊し消滅させようと攻撃してきたのだ。
そのためやむを得ず、姉たちも応戦することになる。」
「戦いは熾烈を極めた。
破壊神は自身がどうなろうと関係無いようで、目に映る全てをただ破壊することしか考えていない。
それに対して姉たち七柱の神たちは、最愛の妹を傷つけずに拘束しようとしていたため、どうしても受けに回ってしまう。」
「しかし破壊神一柱に対して姉たちは七柱、総合的な力は数の差もあって姉たちの方が上回っていた。
そのため戦いはじめた当初は、これならそう時間がかからずに妹を拘束して説得することができる、姉たちはそう考えていた。
だがすぐにその考えが甘かったことに気づかされる。」
「何故なら妹の成長する速度が、あまりにも速すぎたからだ。
妹の驚異的な成長を目の当たりにし、すぐに姉たちは、このままでは止めるどころか逆に倒されてしまう、という結論に至った。
だからといって妹を倒してしまうという選択肢を、姉たちは選ぶことができなかった。」
「そこで姉たちは、一度妹を封印して時間を稼ぎ、その間に解決策を考えることにしたんだ。
だがそれにはいくつかの問題があった。
まず普通に封印したのでは、妹はすぐに成長してしまい、自力で封印を破ってしまうだろうということ。
そして妹の意識を取り戻し、落ち着かせて話ができる状態にするにはどうすればいいのか、その方法が全くわからなかったということだ。」
「封印に関しては、解決策がすぐに出た。
最善とは言えないが、2人の姉に考えがあったからだ。
その仕組みが、妹の力を利用して、それを鏡のように映すことで、妹の力で妹自身を封印する方法だ。
しかしそのためには、発案者の2人の姉が妹と共に封印に組み込まれる必要がある。
1人が妹の力を映して、もう1人がその力を封印として制御するためだ。」
「ただこれだけでは、いつか妹の成長に封印が追い付かなくなる可能性が高い。
そうなると十分な時間が稼げないと考えた姉たちは、もう1つ封印を組み込むことにした。
それが極限まで妹を停滞させる封印だ。
これによって全ての成長速度を限りなく停止させ、封印を長く維持しようと考えたんだ。
この仕組みも、妹の力を封印内で循環させることで、条件をクリアできると判断した。」
「方針が決まってから、姉たちはすぐに準備へと取りかかった。
しかしその準備には、時間がかかってしまった。
そのため妹と姉たちの戦いは、7日7晩続くことになる。
その間に姉たちは、妹との拮抗を崩さないようにしつつ、同時に封印の準備を隠蔽しながら慎重に進めたんだ。」
話しの雰囲気から決着のときが近いことを悟り、皆は黙ってマコトの話に耳を傾け続けるのだった。




