ルフェの秘密10
マコトは自分の感情を押し殺しながら、続きを口にした。
「しかし姉の処分が決定するよりも前に、それは既にはじまっていた。
そして研究者たちが廃棄処理をはじめようとすると、神となった姉が、突然その場から消えてしまったんだ。
一緒に姉の元の身体も消えてしまい、あまりにも一瞬のことに研究者たちも妹たちも、何が起こったのかすぐには理解できずにいた。」
「しばらくしてようやく状況を理解した研究者たちは、支配国のあらゆる力を使って、神となった姉の行方を追った。
だがしばらくの間探し続けたものの、結局見つけることはできなかった。
ただ目撃情報や自分たち以外の別の者たちが利用した形跡もなかったため、研究者たちは神となった姉がどこかで人知れずくたばったものだと勝手に判断した。」
「そう結論を出したら早いもので、研究者たちはすぐに頭を切り替えて、次の神を創り出す研究へと移っていた。
しかし消えた姉と同じ班の子供たちは、しばらくの間、神の研究から遠ざかることになる。
間近で姉の消える様子と研究者たちの本性を見てしまったことで、研究に対して疑念と嫌悪感を抱いてしまったからである。
そのため態度があきらかに非協力的となり、これでは研究に支障が出ると研究者たちが判断したからだ。」
「それでも研究に歯止めがかかるようなことはなく、むしろ狂気は加速していく。
それから研究は、最初に創られた神の結末を知らない他の班の子供たちを中心に進められていくことになる。
それ以降の研究者たちは最初の反省を生かして、自分たちに従順で都合のいい神を、次々と生み出してく。」
「だがその所為で、支配国内は多数の神々であふれかえることになる。
このままではいずれ収拾がつかなくなる、そう考えた一部の研究者たちは、密かにこれまでとは違う神の創造へと着手する。
ここでようやく出てくるのが、さっき少しだけ触れた、神を管理するための神の創造だ。」
「その被験者に選ばれたのが、最初の神となった少女が所属していた班の少女たちだ。
あれから既に十数年が過ぎていたため、少女たちは大人の女性へと美しく成長していた。
だが選ばれたのは全員ではなく、最年少の女性1人を除いた7人だけだった。
最年少の女性は、潜在能力は圧倒的に高いものの、その制御に難があったため、今回の神の管理という観点とは合わないため、選考から外されてしまったんだ。
そのため他の姉たちとは離されてしまい、以降は1人だけ隔離された生活を送ることになる。」
「そして選ばれた7人の女性たちだが、当然最初は非協力的で、研究が上手く進むはずもなかった。
研究者たちの中からは、女性たちの意識を奪って無理矢理協力させるという案も出たほどだ。
ただそれをやってしまうと問題があり、過去の研究結果から、完成した神の力が著しく低下してしまうことがわかっていた。
そのため意識を奪って自分たちの都合がいいように洗脳するのは、神として完成した直後に施すこととなった。」
「そこで他の研究者から別の案が出た。
するとその案を採用したことで、それまでが嘘のように女性たちが協力的な態度に急変したのだ。
いったい何をしたのかというと、ただ一言、神となれば消えた姉を探せるかもしれないぞ、と伝えたのだ。」
「それだけで女性たちの意識の優先順位が変わった。
これまで女性たちにとっては、研究者たちに対する怒りの感情が最上位だった。
だが消えた大好きな姉を見つけられるかもしれないという新たな希望が生まれたことで、自分たちが神となることが目的として最上位に急浮上することになる。
そのため少しでも可能性があるならと、嫌いな研究者たちの研究にも積極的に協力したのだ。」
「そんな女性たちの強い意志と、これまで蓄積されてきた研究成果によって、神を管理する神の創造は成功することになる。
だがそれと同時に女性たちの希望は奪われ、研究者たちの思い描いた通りの結果となってしまう。
何故なら女性たちの意識は、神となった直後に研究者たちによって洗脳され、支配されることとなってしまったからだ。」
「そこから少女たちは、自分たち以外の神を管理する、ただそれだけのために利用されることになる。
神となった少女たちの力は絶大で、これまで創造された神たちでは到底歯が立たなかったからだ。
ここで当時の神について、簡単に説明しよう。」
「最初に従属国で創られた神たちは第一世代と呼ばれ、その力は神とは程遠い、弱い力しか持っていなかった。
それでも一般人からしたらその力は強力で、一柱だけで軍隊を相手にできるほどだった。
ただ知能は低くて元の人格も保有しておらず、ただ主の命令と生存本能のみで動くだけの存在だった。」
「次に支配国で創られ、すぐに消えてしまった神は第二世代だったが、これは失敗作として欠番扱いとなった。
理由はさっきも言ったが、神として十分な力を発揮できなかったことと、その行方をくらませてしまったからだ。
そのため支配国の研究者たちは、この神の存在を無かったことにしたんだ。」
「その後に支配国で創られた神たちは第三世代と呼ばれ、高い知能と元の人格を保有しており、力も神と呼ぶに相応しいものだった。
最大の利点が、主へ絶対の忠誠を誓うという部分で、従順で扱いやすい神として数多く創られた。
力も第一世代とは比べものにならず、はるかに強力な神となっていた。」
「その次に支配国で創られた神は第四世代と呼ばれ、第三世代よりも更に強力な力を与えられた。
だが第四世代には問題があった。
第三世代と同様に高い知能と元の人格を保有しているものの、決定的にかけている部分があったのだ。」
「それは主に対する絶対的な忠誠心だ。
元の人格が邪魔をしている所為か、主からの理不尽な命令に対して拒否をする、といった行動がときどき見られたんだ。
そのためとても扱いづらく、主にとっては手に余る神となってしまい、その力を必要とするとき以外は、常に封印状態にされるほどだった。」
「何故そのようなことになってしまったのかについては、研究者たちの間でも意見が分かれており、原因はハッキリしない。
最も有力な研究者たちの見解は、強力な力が元の人格を刺激してしまったことが原因ではないか、と考えられていた。
しかし何とか制御はできたので、必要な場合のみ支配国の上層部から承認を受けることで、その力を行使することが許可された。」
「そうした第四世代の危機感から生まれたのが、第五世代と呼ばれた神を管理するための神たちだ。
第五世代には第四世代の反省点から、強固な支配を可能とするために、あらかじめ神となったときに人格と感情を封印し、従順となる因子が埋め込まれる措置が施された。
その措置は研究者たちの思惑通りに働き、神を管理するための神たちが誕生した。
この第五世代たちによって、全ての神たちは管理され、それを創り出した支配国の研究者たちは、絶対的な発言権を持つことになる。」
「それから10年ほどは、支配国による世界の絶対的な統治が揺らぐことはなかった。
あらゆる神の力を有効に活用することで、世界は更なる発展を遂げ続けることになり、人々の暮らしはますます豊かになっていった。」
「・・・だがそんな支配国の統治が、突然終わりを迎えることになる。
ある1人の研究者によって密かに創造された、後に第六世代と呼ばれる一柱の神によって、世界の大半が滅びることとなったからだ。」
「その研究者は誰にも気づかれることなく、たった1人でその第六世代の神を創り上げた。
どんな研究者だったのかと全ての研究者たちに質問すれば、全員がこう答えただろう。
天才とは程遠い、凡才の部類に入る、その他大勢の研究者たちに埋もれていた、ただの研究者だった、と。」
「だが実際にはそう周囲に思わせていただけで、その頭脳は支配国でも最高の天才だった。
その才能は他の天才と呼ばれる研究者たちが霞んでしまうほどで、何世代も先の技術を独自に創り上げるほどだ。
しかも周囲の誰にもそれを悟らせずに行っていたのだ。」
「これがただの天才であれば、何も問題は無かった。
しかしその研究者は、ただの天才ではなく、重大な問題となる欠点を内に秘めていたんだ。
その重大な問題となる欠点というのが、狂気じみた快楽主義である、ということだ。
これは最終的に自分だけが楽しめれば、他がどうなろうと関係がないという、あまりにも危険な思考の持ち主だったんだ。」
「そんな研究者だが、密かにある研究を行おうと、ずっと被験者を探していた。
自分の研究成果を真に生かすことができる被験者をだ。
そしてとうとう自分の求めていた最高の被験者を見つけたんだ。」
「その被験者は、誰よりも強い力と潜在能力を持ちながらも、その心が、孤独、絶望、怒りなどの感情で満ち溢れていた。
まさに負の塊といった人物だ。
その正体は、最初の神や神を管理する神たちがかつて所属していた班の最後の1人、ずっと隔離されて育った最年少の女性だったんだ。」
この話を聞いて、ベルとルフェの2人が怒りに打ち震えていた。
しかし同時にその目は悲しみであふれていたのだった。




