ルフェの秘密8
その後すぐにマコトたち7人が皆の許へ戻ってくると、それと同時に別のゲートが開き、そこから女性が1人出てきた。
既に皆は見知った顔だったため、軽く頭を下げて挨拶をする程度であったが、1人だけそうはいかなかった。
女性の姿に気づいたルフェが、驚きのあまり思わず大声で叫びながら、女性の名前を口にしたのだ。
「・・・あーっ!何でここにいるのよ、ベルゼブブ姉!」
その女性、ベルは、自分を本当の名前で呼んだ人物、ルフェに対して挨拶をしつつ、顔をしかめていた。
「・・・ベルフェゴール・・・いや、ルフェ、久しぶりであるな。
だが・・・それは駄目であろう。」
「へっ?何で・・・あっ!」
ベルの指摘で、ルフェは自分がやらかしてしまったことにようやく気づいた。
ベルが今どういった立場なのかを確認する前に、自分と顔見知りであることを、この場にいる全員に対して明かしてしまったからだ。
しかもベルが秘匿していた本当の名前まで明かしてしまった。
これによってこの場にいる全員が、少なくともベルとルフェが顔見知り以上の関係であることを知ってしまったのである。
まだ自分自身の立場さえ明かしていない状態で、これはあきらかに失態である。
どうしたものかとルフェは必死に考えた。
そして1人の人物が目に入り、その人物に全てを丸投げした。
「えーっとぉ・・・マコト、後は任せた!」
そう言ってルフェは、ベルの後ろへと隠れてしまった。
「ルフェ、お前なぁ・・・」
マコトがルフェに文句の1つも言いたそうな顔をしていると、そこへベルが隠れていたルフェの首根っこを掴んで自分の隣に立たせた。
そして2人して頭を下げてきた。
「すまぬ、マコト。
愚妹のしでかしたことについては、後ほど一緒に私も償おう。
だからどうかこの場は、マコトの裁量で上手く取りまとめてはくれぬだろうか?
ほれっ、お前の失態なのだから、お前からもマコトに頼まんか。」
ベルに促されて、ルフェが申し訳なさそうにマコトへと懇願してきた。
「うううううぅ・・・御免なさい、どうかお願いします。」
涙目になりながら謝罪の言葉を口にしたルフェの姿に、それ以上はマコトも責めることは無く、意識を切り替えた。
「・・・はぁ、まぁこうなっては仕方ない。
だが皆にもある程度の情報提供はするぞ。
それで構わないか?」
「うむ、それで問題無い。
まだ短い期間ではあるが、これまで接してきて、私は全員信用できる者たちだと確信しておる。
ただ私たちの事情を知れば、いろいろと巻き込んでしまうことになってしまうが、マコトはそれでいいのか?」
「大丈夫だ。
時期的にはまだ早い段階だが、皆も無関係とは言えないし、いずれ事情を話すつもりだったからな。
元々それも込みで考えていたから問題無い。
しかし今の段階では全て話すつもりはないがな。」
「そうか。
公開する情報の内容については、全てマコトに一任する。」
「ああ、任せてくれ。
ルフェもそれでいいな?」
「はい・・・お願いします。」
自分の失言が招いたことだったため、ルフェは何も文句を言わず、全てをマコトに委ねていた。
2人が了承したので、マコトは先程から気になって仕方がないといった顔をしている皆に、説明をはじめた。
「さて、まず何から話そうか・・・やはり最初はこれだな。
皆もさっき聞いた通り、ベルとルフェは遥か昔からお互いのことを知っている、というか、2人は姉妹だ。
だが実の姉妹ではなく、義理の姉妹だ。
2人は孤児で、同じ場所で育ったんだ。
他にも姉妹はいるが、何人かは近い内に合流する予定だから、紹介はそのときまで待ってくれ。」
「そして皆が一番気になっているのは、2人が何者なのか、ということだろう。
その話をする前に、まずは古に栄えた古代文明について話をする必要がある。」
聞き覚えのある単語が出てきたので、特に質問に対する制限の注意を受けていなかったため、真っ先にサラがマコトに確認してきた。
「確か以前アイさんのことについて教えていただいたときに出てきましたが、それと同じ古代文明でしょうか?」
「そうだ。
その古代文明で間違いない。
以前少しだけ話したが、今回はもう少し詳しく説明しよう。」
このときマコトがサラの質問にすんなり答えたので、他の皆も気になったことがあれば質問しようと考えていた。
しかし以降の話を聞いていくにつれ、皆はそんなことを考える余裕が無くなってしまうことになる。
「遥か昔、善神と邪神が争っていた時代よりも更に昔に、高度な技術を持つ古代文明が存在した。
その文明は、機械と科学に魔力などの力を融合した技術を使い、人々はとても豊かな生活を送っていた。」
「だが文明も栄えすぎると、馬鹿なことを考える奴も出てくる。
古代文明の連中は自分たちの力を過信して、こんなことを考えたんだ。
もしかして今の技術力なら、崇める神と同等以上の存在を創造することができるのではないか、と。
この言葉に、古代文明で名を馳せた多くの有名な技術者たちが、我こそはと名乗りを上げた。」
「しかし古代文明にとっては、これが破滅のはじまりとなる。
当時古代文明では、1国が世界の全てを支配していた。
他にも複数の国が多数存在していたが、属国として従事していたため、その立場はかなり弱く、発言力はほとんどなかった。
つまり支配国のみ1強で、全ての属国に格差はなかったのだ。」
「そんな中、古代文明の上層部は、属国へ向けてこう宣言した。
神と認められる存在、もしくはその一端を有する存在を創造する技術を確立した国には、その技術と引き換えに相応の地位と報酬を出そう、と。
この宣言によって、それまで同列であった属国の関係が崩れはじめることとなる。
今まで属国間に無かった格差が生まれることになると、各属国がすぐに理解したからだ。」
「それからは狂気の沙汰としか言いようがない、ひどく荒れた時代がはじまることになる。
各属国は我先にと神の創造に取り組み、その技術を次々と支配国へと献上し、自国の地位向上に努めた。
更にこうして得た新たな技術を使用して、支配国は基礎研究の手間を省き、更に発展させた技術の開発へと集中することができた。
そのため支配国と各属国の関係が覆ることはなかった。」
「ここで不思議に思うのが、何故各属国は互いに協力し、その技術を使って逆に支配国の支配から逃れようとしなかったのか、という点だ。
これには理由がある。
支配国は属国に対して、属国であることが当たり前であることを刷り込むように、長年支配してきたのだ。
そのため各属国では、支配国の支配を当たり前だと思い込んでいる者が大半を占めていた。
当然中には支配国の支配に疑問を持つ者たちも僅かにいた。
だが圧倒的多数の意見によって少数の意見はことごとく潰され、支配国に対する反乱の芽が芽吹くことはなかった。」
「こうして支配国は、ますますその力を増し、絶対的な地位を確固たるものとしていった。
しかし外にばかり警戒の目を向けていた所為で、内に対する警戒を怠ってしまったんだ。
その結果、支配国内で様々な派閥ができることになる。」
「これは支配国内に、様々な人種が存在したことが原因だ。
肌の色や言語、価値観が違うことや、何よりも血統を重んじる者たちなど、同族や同じ志を持つ者同士で集まって、いくつもの派閥ができた。
ただそれだけでは古代文明が滅ぶほどの原因にはならない。
では何が問題かというと、そうなってしまった最大の理由が、宗教の違いだ。」
古代文明に関する新たな事実が明らかとなっていく中、今回はマコトから説明中の質問を拒否されていないにもかかわらず、誰もが黙って話に集中している。
そして更なる秘密がマコトの口から語られようとしていたのだった。




