ルフェの秘密2
しかしすぐにルフェの顔が引き締まり、少し悲しそうな表情へと変わって話は続く。
「そんな生活が15年ほど続いたけど、そこで私はとても重要なことを忘れていたことに気づかされたわ。
それは私の身体が、仮初の実体だった、ってことよ。
私は貴女たちと一緒に生活する時間が幸せすぎて、時間制限があることを思い出さないようにしていたの。
たぶん無意識に現実逃避してしまったのね。
気づいたときには、ほとんど時間が残されていない状態だったわ。」
「だからそれまでに調べた武人族に関するいくつかの情報と、簡単な書置きを残すことしかできなかったの。
必要最低限の情報だけ残したところで、ちょうど私の仮初の実体は消滅し、私の精神体は精界へ強制的に戻されてしまったのよ。
その後もどうにか物質世界へ戻る方法を考えたけど、元々仮初の実体は最初の1つしかなかったから、無駄に時間だけが過ぎていったわ。」
「でも私は諦めたくなかった。
無駄だとわかっていても他に方法は無いか、決して希望は捨てなかったわ。
そんなとき精界と私が長年待ち望んだ、物質世界からの訪問者が現れたの。
それがマコトとシルフィナよ。」
「でも2人は本当に待ち望んだ存在ではなかった。
だけど2人は継承者でもないのに、精界に招かれるというありえない状況を作り出し、尚且つ精界を統治する全員と契約までしてしまったわ。
そこで私は考えたの、この2人に協力を仰げば、私の目的を全て果たすことができるかもしれない、ってね。」
「でも安易に信用するわけにはいかない。
私には重大な使命があり、最終的にその使命を果たすことだけが、私の存在意義なのだから。
けれどここで初めての希望を、みすみす逃すわけにはいかない。
だから私はマコトに、2つの条件を課したのよ。」
「その条件というのが、1つは一定基準をクリアした対象の継承者を2人以上、精界に案内してきて無事に契約者となること。
そしてもう1つが、探しものを見つけ出すこと。」
「最初の条件は、霊力の継承者であるミザリィ、妖力の継承者であるナタリィ、幻力の継承者であるシェイラが契約者となることでクリア済みよ。
3人ともまだまだ伸びしろがあって、今後が楽しみな逸材だわ。
そして残りの条件、探し物についても、マコトはあっさりと見つけてきたの。
正直これまで私が散々苦労して見つけられなかったっていうのに、僅か数年で見つけちゃったんだから、ホントやんなっちゃうわよ。」
「そんなこんなで、マコトは私が出した条件を、見事あっさりとクリアしてみせたっていうわけ。
あっ、当然私の出した条件をクリアすることができた場合は、逆にマコトからの要望も聞くことになっていたわよ。
世の中対等でなくっちゃいけないからね。」
「マコトからの要望は2つ。
1つは、今後マコトと共に行動すること。
まぁこれはお互いに協力することで双方に有益な話だから、マコトが条件をクリアできるなら私としても大歓迎だったわ。」
「もう1つが、私を口説く許可、なんだけど・・・これについては正直意味不明だわ。
私としては、マコトの女になれ、っていうのでもよかったんだけど、何故かそこは頑なに拒むのよね。
それだと強要している形になるからって、ちゃんとした段階を踏んで男女の関係になりたいんだって。
まぁマコトがそうしたいって言うんなら、私も構わないけどね。
それはそれで楽しそうだし。」
「とまぁ、ここまでが私と貴女たちが出逢ってから再会するまでにあったことよ。
どう、これで全て謎が解けたでしょ?」
ルフェは話を終え、得意げに黙って聞いていた武人族の4人に向かって問いかけた。
これに対して4人は、満足、など全くしておらず、むしろ不機嫌そうな表情で、次々と不満と文句を口にした。
「・・・全く解けていません。」
「・・・逆に謎が深まったぞ。」
「・・・何となくそんな結果になる気はしていました。」
「・・・ルフェよ、それでは表面上の謎しか解けておらぬし、新たな謎が増えただけじゃぞ。」
そんな4人から白い目で見られているルフェだったが、当の本人は特に気にした様子は無く、逆に文句を口にしてきた。
「えーっ、そんなこと言われても、今の話で私が皆を育ててた理由はわかったでしょ?
だったらそれでいいじゃない。」
「そうはいきません!
それだけしかわかっていないではありませんか!」
「じゃぁどうすればいいのよ?」
「全部説明すればいいだろ。」
「それはちょっと・・・無理、かな。」
「無理って・・・ではこうしてはどうですか。
逆に私たちの方から疑問や謎について質問しますから、ルフェにはそれに答えてもらう、というのではいかがですか?」
「でもでも、私にも知られたくない秘密だってあるし、何でもかんでも答えられないわよ。
それに・・・謎が多い女って、何かカッコイイと思わない?」
「で、本音はどうなんじゃ?」
「面倒。」
「はぁーっ・・・(×4)」
盛大な溜息と共に呆れ果てられた視線を向けられ、ルフェは仕方なくある提案を持ちかけてきた。
「うーん・・・だったらこういうのはどう。
何処まで答えても大丈夫そうか、私と貴女たちとで手合わせするっていうのは。
それにあれからどれくらい強くなったのか興味あるしね。」
「久しぶりすぎる再会ですから、私たちの今の実力を測るというのはわかります。」
「しかし何故それが質問に対する答えの範囲につながるというんだ?」
「決まってるでしょ・・・それだけ私は危険な女なのさ。」
そう言って何やらポーズを決めながら、ルフェは視線を誰も何もいない空中へと向けていた。
どうやら格好つけているらしいが、4人の視線はとても冷ややかだ。
「危険って・・・まぁいいでしょう。
今の私たちの強さは、最後にルフェと手合わせしたときとは比べものになりませんよ。」
「儂らが昔とは違うことを思い知らせてやるとするかのう。」
「決まりだね。
マコト、ちょっと暴れても大丈夫なところってある?」
「あるぞ。」
「ちょっとそこ貸して。」
「別に構わないぞ。」
マコトはそう言うと、その場で右手を突き出してゲートを開いた。
「じゃぁさっさと終わらせようか。」
ルフェがゲートの前で手招きすると、4人が楽しそうな雰囲気に変わり、やる気になったようだ。
「望むところです。」
「誰が先に行く。」
「ではまずは私が。」
「ならば最初はアーシアで、次は儂が・・・」
4人が順番を決めようとしていると、そこへルフェが手招きしながら挑発的な笑みを浮かべて言い放った。
「まだまだなまくらから脱却できないお子様が、何生意気なこと言っているのよ。
軽く遊んであげるから、4人同時にかかってきなさい。」
このルフェの言葉に、4人の目つきがそれまでの和やかなものから、真剣なものへと一気に変わった。
「・・・今の言葉は聞き捨てなりませんね。
それはいくらなんでも私たちを舐めすぎです。」
「確かに昔はルフェ1人に軽くあしらわれていたが、そのような余裕は自分の首を絞めることになるぞ。」
「私たちもあれから様々な経験を積んで成長し、昔とは比べものにならない力を身につけています。
しかもマコトさんの訓練を受けて、ここ最近の力の伸びはかなりのものです。」
「それでもルフェは、まだ儂ら4人を同時に相手すると言うのかのう?」
4人の口調は普段どおりなのだが、今にも内から怒りがあふれ出てきそうだ。
だが周りのことを考えて、何とか抑え込んでいる。
こんなところで殺気を外に放ってしまっては、赤ちゃんたちが盛大に泣いてしまうからだ。
だがそんな4人を前にしても、ルフェは余裕の表情を崩さず、更に挑発的な言葉を口にした。
「成長したのは身体大きさと口だけなのかしら?
御託はいいから、やるの、やらないの?」
そこまで言われて、おとなしく引き下がる4人ではなかった。
「・・・いいでしょう。」
「・・・思い知らせてやる。」
「・・・全力でお相手します。」
「・・・儂らの力を見誤ったこと、絶対に後悔させてやるのじゃ。」
4人がハッキリとやる気を示したのを見て、ルフェは一言口にしてからそのままゲートへと入っていってしまった。
「じゃぁ4人とも、ついてきなさい。」
そのルフェの後ろに、4人は無言でついていき、ゲートの中へと消えていったのだった。




