ルフェの秘密1
数分後、ようやく武人族の4人は落ち着きを取り戻し、少し恥ずかしそうにしながら謝罪していた。
「すみませんルフェ、あまりの嬉しさと突然の驚きで取り乱してしまいました。」
「いいよいいよ、そもそも全てを説明しないでいなくなっちゃった私が悪いんだからね。
それじゃぁ改めて、ただいま、イクス、ノーラ、アーシア、ホムラ。
また4人に逢えて嬉しいよ。
・・・あれ?この場合は、お帰りなさい、なのかな?
まぁどっちでもいっかぁ。」
「この適当なところ、やはりルフェはこうでなくてはな。」
「ええ、とても懐かしいです。」
「幼い儂らを育てた母親のような存在じゃが、儂らが成長してからは苦楽を共にした姉妹のようじゃったからのう。
当然ルフェが末っ子じゃったがな。」
「あーっ、それはちょっとひどいんじゃない!
もっと年長者を敬いなさいよーっ!」
和気あいあいとじゃれ合っている5人であったが、イクスが真剣な表情になり、本題を促してきた。
「本当に懐かしい・・・まるで昔に戻ったみたいです。
ですがルフェ、今は昔を懐かしんでいるときではありません。
教えてください、ルフェが知る全てを。」
ルフェも真面目な雰囲気を察して、表情を引き締めた。
「・・・そうだね。
でもその前に、ミザリィ、ナタリィ、シェイラ、あの3人も呼んでもらってもいいかな?
あの娘たちも知っておいた方がいい話だからね。」
「了解だよ。」
「うん。」
「わかりました。」
3人はルフェの言葉を受けて、その場で霊神力、妖神力、幻神力を発動しながら、自分たちの契約者の名を呼んだ。
「おいで、エリアル!」
「ドリス。」
「来てください、ディアザ!」
すると3人の力がそれぞれ1点に集まった。
そしてそこへ突如、3人の美女がその姿を顕現させた。
美女たちはすぐにその場にいる皆に向けて自己紹介を行った。
「皆様はじめまして、ミザリィの契約精霊、精霊神のエリアルと申します。」
「私はナタリィの契約妖精で、妖精神のドリスだよ!」
「幻精神のディアザである。
私はシェイラの契約幻精である。」
3人の挨拶が終わったのを見計らって、ルフェが話をはじめようとした。
「じゃぁ全員揃ったところで・・・」
しかし思わぬところから予想外の待ったがかかった。
それは、ミザリィ、ナタリィ、シェイラだった。
「ちょっ、ちょっと・・・まっ、待って・・・」
「んっ?どうしたの、3人とも?」
「・・・きっ、キツイ・・・」
「けっ、契約者の呼び出しが・・・こっ、こんなに力を消費するなんて・・・」
3人は辛そうな表情で、先に自分たちの状態を何とかしてほしいと、目で訴えてきていた。
それを見てルフェは、3人が初めての呼び出しだったことを思い出した。
「あちゃーっ、契約したばっかで精神世界からの顕現に慣れてないのを忘れてたよ。」
「こっ、このままじゃやばいよ・・・」
「さっ、最後までもたない・・・」
「せっ、せいぜい数分かと・・・」
予想外の力の消費に、3人は既に相当疲弊しているようだ。
「うーん、どうしたものかな・・・」
その姿を見てルフェが何かいい手は無いかと対策を考えていると、そこへパートナーの3人が手助けに名乗りを上げてきた。
「私たちに任せて。」
「私たちが間に入るよ!」
「そうすれば力の消費が軽減されるはずです。」
そう言ってリスット、リーフェ、ファムは、それぞれエリアル、ドリス、ディアザと手をつないだ。
その瞬間、ミザリィ、ナタリィ、シェイラの力の消費が、半分ほどに軽減されたのだ。
おかげでかなりの余裕ができたようだ。
「・・・たっ、助かったぁ・・・」
「楽になった。」
「これでしたら、しばらくは大丈夫そうですね。」
3人が余裕の表情を取り戻したのを確認して、ルフェは中断されていた話をはじめることにした。
「いやーっ、どうなるかと思ったけど、解決して良かった良かった。
それじゃぁ早速話をはじめるよ。
たぶんマコトから大まかな予想は聞いていると思うけど、一応その辺りも含めて説明するわね。」
「ここにいない1人を含めた5人の武人族は、元は精神世界の住人として生まれる前の精霊の欠片だったわ。
でも不幸な偶然がいくつも重なって、5つの精霊の欠片が物質世界へと迷い込んでしまったの。
だけど奇跡的に物質世界へ出てすぐの場所に、使い古された武具があったみたいなのよね。
そのおかげで5つの精霊の欠片は本能に導かれるまま、その場にあった武具の5つに宿ったというわけなのよ。」
「私は先代の精霊神、そこにいるスレイに頼まれて、物質世界へ迷い込んでしまった精霊の欠片たちを探しに行ったの。
理由は、精界で唯一私だけが、仮初の実体を使って物質世界へ行くことができたから、なんだよ。
私は精界の住人たちの協力を経て、貴女たち5人を探し、そして見つけたのよ。
遥か昔に戦場だった忘れ去られた場所で、武器の中に息衝く5つの精霊の欠片をね。」
「すぐに私は貴女たちを回収して精界に連れ帰ろうとしたわ。
でもそれはできなかった。
何故ならそのとき既に貴女たちは、完全に武器と融合していて、物質世界の住人となってしまっていたから。」
「そこで私は予定を変更して、貴女たちを物質世界で育てることにしたの。
貴女たちだけでも物質世界で生きていけるようにね。」
「まず私は貴女たちを連れて、人目につかない場所へ住居を構えたわ。
そして貴女たちの自我がいつ目覚めてもいいように、快適な環境を整えたのよ。」
「でもなかなか自我が目覚めなかったから、その間に貴女たちの状態をいろいろ調べたの。
精霊の欠片が物質世界で武器と融合してしまうなんて初めてのことだったからね。」
「そして詳細に調べた結果、いろいろなことがわかったわ。
まず精界に住む住人たちとは、完全に違う種族になってしまった、ということ。
特徴として、融合した武器と同じ種類の能力を持つ、ということがわかったの。
更に状況に合わせて、様々な力を行使することができる、ということもね。」
「ただし大きな力を行使する場合は、外部からの力の供給が必要になる、ということも判明したわ。
そしてそのためには、精界の住人と同じく、力の供給元となる契約者が必要になる、ということも。
この辺は精界の住人と同じね。」
「そんなことをしながら、あっという間に10年くらいが過ぎちゃったんだけど、あるとき突然、精霊の欠片が宿った武器たちが変化をはじめたの。
ゆっくりと1日程かけて変化した結果、そこに現れたのが、5人の赤ちゃんだったのよ。
おそらくは自我が形成されたと同時に、物質世界で生活するのに最適な姿へと変化したのね。」
「それからはもう激動の日々だったわ。
まさか子育てがあんなに大変だったなんてね。
私も初めての子育てで、それも5人同時にだったから、それはもうてんやわんやだったわよ。
しかも5人とも自分の力が全然制御できなくて、相当苦労したわ。」
「でも最初はどうなることかと思ったけど、そのときの私には、同時に貴女たち5人の成長を見守るのが何よりの楽しみだったわ。
当時も今思い返してみても、あのときの時間がとても充実した日々だったと、心の底からの本心でそう言える。
貴女たちは私のことを、育ての親で恩人、みたいに思ってくれているかもしれない。
だけど貴女たちは私にとっても、人生の中で最良の時間をくれた大切な存在、なのよ。」
そう言いながらルフェは、優しい微笑みを浮かべた表情を4人に向けていたのだった。




